3月に入り、学校の行事も卒業式を残すだけになった。
そんな目を覚ましたばかりの春の夜に、窓の外に浮かぶ半分の月を眺めながら、俺は珍しく自分から電話をかけていた。
「はい、もしも~し」
「……こんばんは」
「どしたん?八幡君からなんて珍しいね~」
「えっと……明日はそっちが忙しいと思うんで、今日言っとこうかと思って……」
「あー、明日卒業式やもんね」
「ええ。その……卒業おめでとうございます」
「うん、ありがと。ふふっ」
「?」
「なんか卒業式前夜に言われるのって変な感じやね」
「一番に言いたかったもんで……」
「最近は本当に素直やね。お姉さんは嬉しいな~」
「そ、そういや、両親には会いに行くんですか?」
「うん。卒業式終わったら次の日には行こうかなって思ってるよ。なになに?もしかして、ウチの両親に……」
「いえ、家族水入らずを邪魔するわけにはいかんので……」
「え~、八幡君と九州行きたいと思っとったのに~」
「いやほら、まだ心の準備が……」
「あははっ、冗談やから気にせんでええよ。それより次の週はこっちに来るんやろ?」
「ええ。バイトもありますし」
「でもよかったねえ、八幡君」
「何がですか?」
「まだしばらくはウチの巫女姿見れるよ。JDの巫女」
「そりゃあ素晴らしい幸運ですね。しっかり目に焼き付けときます」
「そうそう。そういう心がけは大事にせんとね」
「あー、肝に銘じておきます。そういや大学に入ってからμ'sのほうはどうするんですか?」
「う~ん、それは今度直接会った時に言おうかな。あ、それと気になることがあるんよ」
「?」
「カードによると明日ものすごいサプライズがあるらしいんよ」
「すごいサプライズ……卒業式で?」
「何やろう、八幡君が卒業式でプロポーズしてくれるとかかな?」
「まあ、毎回当たるわけじゃないと思うんで」
「あ、スルーした。ちなみに八幡君もあるらしいよ」
「マジすか。なんか急に怖くなってきたんですけど……」
「大丈夫。あくまでサプライズやから。良い事かもしれんよ」
「……それは、そうかもしれませんね」
「そうそう、前向きな心が大事なんよ。って、もうこんな時間やん。じゃあ、ウチ明日朝早いからもう寝るね」
「わかりました。それじゃあ……おやすみ」
「うん、おやすみ♪」
さて、明日はどんなサプライズがあるんですかね。
この時の俺は大して深く考えることなく、そのまま眠りについた。
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翌日……。
「え?ラブライブの大会を東京ドームで開催?その前にニューヨークでライブ?」
一方その頃……。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!すごいよ!お母さんがニューヨーク旅行当てたよ!」
「…………マジか」