捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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Love can go the distance #3

「ええ!?ニューヨーク旅行当たったってすごいやん!」

「いや、ニューヨークでライブするほうがすごいと思うんですが……」

 

 本当にサプライズが起こりやがった……しかも二人同時に。

 こんな事が本当に起こるなんて思いもしなかった。

 正直まだ現実感がない。希さんと話ながらも、つい頬をつねってしまう自分がいる。

 サプライズという言葉ですませるのも生温い気がした。

 

「ニューヨークかぁ……」

「行ったことあるんですか?」

「あるよ。ただそういうんじゃなくて……」

「?」

「初めて君と一緒に行くのは新婚旅行にしたかったというか……」

「……いきなりそんな事言われるとリアクションに困るんで自重してください」

「あははっ、でも本当にすごいなぁ。スピリチュアルやね」

「やっぱりそっちが言うほうがしっくりきますね。そういや東京ドームでもイベントやるんですよね。そっちもかなりすごいと思うんですが……」

「ああ……うん、でも、まずはニューヨークのライブを成功させんといかんからね」

「?」

「八幡君、ニューヨークで迷子にならんようにね」

「いや、迷子て……まあ、そん時はよろしくお願いします」

「いい子にしてたら迎えに行ってあげる」

「じゃあ大丈夫ですね」

「あはは、本当かな~?……ふわぁ……なんか眠くなってきた。じゃあ今日はもう寝るね。おやすみ~」

「ええ。おやすみ」

 

 通話を終え、いつもの静寂に身を委ねると、先程の会話で感じた違和感を思い出した。

 東京ドームで何か言い淀んだ気がするが……これは気のせいだろうか?

 

 *******

 

 数日後、日本の玄関といわれる成田空港にて、俺は何ともいえない気分で外の飛行機を見つめていた。

 隣には小町がいて、やたらとキョロキョロしている。まるでこれから高飛びでもするかのようだ。

 

「お兄ちゃん、ちょっと緊張しすぎじゃない?」

「いや、お前もさっきからそわそわしすぎだろ……」

「おい、バカ兄妹。搭乗口はこっち」

「…………」

 

 父ちゃんと母ちゃんは割といつもどおりのテンションだった。まあらしいっちゃらしいな。せっかくの旅行なんだし、せいぜい羽伸ばして楽しめっての。

 すると、今度は母ちゃんがキョロキョロし始めた。

 

「ねえ、希ちゃんはどこにいるの?」

「いや、探さなくていいから。何するつもりなんだよ……」

「挨拶に決まってるじゃない」

「まあまあ、お母さん落ち着いて。お兄ちゃんが希さんみたいな美人と付き合えるなんて、ポケモンが実在するくらい低い確率なんだから、ここはそっと見守ってあげないと」

 

 いや、ポケモンて……確率低いどころの話じゃねえぞ。

 ちなみに、希さん達は比企谷家が立ち話しているそばの柱の真後ろにいる。さりげなく誘導しといてよかった。

 やがてアナウンスが聞こえてきて、それと同時に期待に胸が高鳴り始めた。

 

 *******

 

 さっきはあんなにワクワクしていたのに、まさかこんなことになるとは……

 

「ねぇねぇ、私の家あの辺りかな?」

「穂乃果、もう少し静かにしなさい」

「海未ちゃんそう言いながら、ずっと窓の外見てるね」

「にゃあ、なんだか眠くなってきたにゃあ……」

「今のうちに寝ておいたほうがいいよ、凛ちゃん」

「ビジネスクラスの座席ってこうなってるのね。少し眠りにくいかも」

 

 まさか前の列にμ'sが来るとは……しかも、前の座席には……

 

「なんか比企谷君の匂いがするわね」

「さらっと怖いこと言ってんじゃないわよ!あんたヤバい能力でもあるの!?」

「まあまあ、ええやん。エリチやし」

 

 まさかの三年生トリオである。しかも絢瀬さんが謎発言をしたせいで、親父と母ちゃんの顔が引きつっている。ぶっちゃけ俺も少し引いてる。え、何?俺そんなに臭い?

 あと希さんがさらっと笑顔で流しているのがすごい。これはいつもどおりということだろうか。

 とにかくこのまま何事もなく……

 

「そういえば希、もう3月だけど比企谷君とはどこまでいったの?」

「ア、アンタ……アイドルがいきなり何聞いてんのよ?バカじゃないの?」

「何を言ってるの、にこ?旅にコイバナはつきものでしょ。それで、どうなの希?」

 

 やめて!隣にいる親父と母ちゃんが聞き耳たててるから!両親に彼女との進展具合とかしられたら恥ずかしくて死んじゃう!

 

「キスまでしかしとらんよ」

「…………」

 

 いや、そんなはっきり言わなくても……つーか、この人俺が後ろにいるの気づいてるよね?間違いなく気づいてるよね?

 ちなみに親父と母ちゃんはうんうんと頷いていた。やめろ口元に手を当ててこっそり笑うなよ……。

 

「でも、最近は八幡君も少しずつ素直になってきたんよ。二人っきりの時は甘えてくるようになったし」

「「…………」」

 

 おっと何かあることないこと言われそうな雰囲気。絢瀬さんと矢澤さんは黙って聞き入り、ウチの親二人は笑いを堪えている。小町はこちらを肘でつついていた。

 

「たまにやけど、ウチの事『のんたん』って……」

「っ!!!」

 

 この新手の羞恥プレイは約一時間ほど続き、俺はどう誤魔化すかを必死に考えていた。

 

 

 

 

 

 

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