捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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Love can go the distance #8

「私達μ'sは……このライブをもって、活動を終了することにしました」

 

 準備を終え、明日に向けて本日は解散という雰囲気になったところで、高坂さんがその場にいる皆へ告げた言葉。

 驚いた表情はすぐに悲しげなものに変わり、高坂さんの言葉に耳を傾けていた。

 事前に知っていた俺も、やはり改めて聞くと寂しいものがある。

 近くにいた由比ヶ浜は涙を滲ませていた。

 周りにいるスクールアイドル達も涙を隠そうともしていない。

 夕焼けが、やけにもの悲しくこの場所を照らしていた。

 もちろん続けようと思えば続けられるだろうし、それを期待している人達も沢山いる。

 しかし、μ'sはスクールアイドルでいることを選んだのだ。

 彼女達は限られた時間の中で一生懸命輝き、その瞬間のすべてを楽曲やパフォーマンスに注いだという事実はこれからも残り続ける。

 そんなことを考えていたら、少し離れた場所にいた希さんと目が合う。

 彼女はいつもの大人びた笑みに、ほんのちょっぴり寂しさを滲ませていた。

 そして夕陽に目を向けると、さっきより輪郭が曖昧に見えた。

 

 *******

 

 ライブ当日。

 まるでこのイベントのためにと思えるような青空だ。

 真っ直ぐに降り注ぐ陽射しは、昨日とは真逆に新しい何かの始まりを暗示しているようにすら思える。

 もう既に秋葉原のど真ん中にはスクールアイドルがスタンバイしていて、祭りの雰囲気が通行人の目を惹いていた。

 こちらはやることはやったので、後は見守るだけとなり、色んな感情が混じり合っていた。

 だが、決して嫌な感じはなく、むしろ清々しいくらいだった。

 

「八幡君」

「はい?」

 

 背後から呼ばれ、振り返ると、そこには今日のための衣装に着替えた希さんがいた。

 うっかり見とれてしまったこちらの視線に気づいたのか、希さんは得意気な顔をした。

 

「ふふん、どう?」

「……あー、まあ、その、あれです。今までで一番綺麗だと思います」

「ん、ありがと。じゃあ、しっかり見ててね」

「ええ、もちろん」

 

 どちらからともなく、こつんと拳を突き合わせると、何だか言葉にしがたい感情が沸き上がってきた。

 

「お二人さん、そろそろいいかしら」

「ていうか、いくら建物の陰とはいえ、少しは自重しなさいよ!」

「あはは、ごめんね。エネルギー補充しとった。ね?」

「……まあ、そういうことで。じゃあ楽しんできてください」

 

 三人は駆け出すと、すぐに他のメンバーと合流し、自分の配置につく。

 数秒の静寂から穏やかなイントロが始まり、そこから一気に加速していく。

 そこからは華やかな祭りの始まりだった。

 街のあちこちに散らばったスクールアイドルが、皆で踊り、歌を紡ぐ。 

 青空の下、素敵なメロディーが響き渡り、祭りは盛り上がりを見せた。

 どの瞬間も俺はすべて焼き付けようと、しっかり見つめた。

 

 *******

 

 熱狂のうちにライブは終わり、夕焼けが照らす街は、未だに余韻に包まれていた。

 隣にいる戸塚や材木座も感無量といった表情をしていた。

 

「楽しかったねえ」

「うむ。いい日だ」

「……そうだな」

 

 そんなやりとりをしながら、ふわふわした気分でいると、突然高坂さんが「皆さん、ついてきてくださーい!」と誘導を始めた。

 μ'sのメンバー以外、皆がきょとんとしていると、俺は希さんから肩を叩かれた。

 

「さ、八幡君も行こっ」

「え?ど、どこに……?」

「東京ドーム」

「マジですか」

「マジやね。お楽しみはまだまだこれから!」

「……まあ最後まで付き合いますよ」

 

 彼女と共に歩き始めると、やわらかな風がそっと頬を撫で、どこかへ行った。

 それはいつか二人でいる時に吹いた風の感触と似ていた。

 




次回、最終回です!
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