彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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非日常

 

 

 

『ジリリリリリリリリリリリリ』

 

 カチッ。

 

『……ジリリリリリリリリリリリ!』

 

 ……カチッ。

 

『……ジリリリリリリィィィィィィイ!!』

 

 

「だぁぁぁぁあ! うるせぇ!」

 

 

 早朝から無慈悲に鳴り響く目覚まし時計のアラーム音で目が覚める。

 自分でセットしておいてなんだが、最悪の目覚めだ。既に超疲れた。

 しかしこの時計、音で俺を煽ってた気がするんだが気のせいだろうか。

 

 外は晴れているらしく、カーテンの隙間から差し込む日差しは柔らかい。

 俺の機嫌を損ねる原因となった目覚まし時計とは別に、無機質な壁掛け時計の秒針の音が部屋に響いている。

 

 時刻は7時前。このまま睡眠欲に従い再び眠りにつきそうになる身体に鞭を打ち、ベッドから起き上がる。

 

「あれ……?」

 

 そこで、ふと違和感に気づく。

 とてつもなく体がだるい。それに喉も痛む。この感じは叫んだからとは少し違う。

 

 あっれー、これもしかして風邪? 季節の変わり目だから? モンスーンでも吹いたの? 

 

 

「……とりあえず薬飲もう」

 

 

 そう1人呟いてリビングに降り、薬箱が仕舞ってある棚を開ける。歩いた感じフラフラするわけでも無いし、まぁ食欲もある。

 吐き気を催すほど気分も悪く無いし、症状は軽い方なんだろう。

 

 薬箱からル◯を取り出すと蓋を開け、水と一緒に飲み干す。

 

 こういう場合って学校は休んだ方が良いのだろうか。ベンザをブロックするCMでも原因が「風邪引いてるのに無理して学校来た奴から」ってあるくらいだし。……ないか。喉とかですよね。

 

「……とりあえずリサに連絡入れとこう……」

 

 もし学校で悪化なんかしたら湊さん達に移してしまうかもしれないしな。行くのはやめよう。

 体調が悪いから学校休むという旨を送信し終えると、返事を待つ事なくスマホをしまう。

 本来なら湊さんに連絡を入れてその流れで会話の一つや二つしたい所だが、連絡先を持ってないんだから仕方ない。

 

「さーて、今日は何しようか」

 

 今のところ動けないって訳じゃないからなー。家の掃除でもするか。休むのはこれ以上体調が悪化したらでも大丈夫だろ。危なくなったら寝る。ヒットアンドアウェイ的な精神で行こうじゃないか。

 

 そうと決まれば行動に移すのは容易い。

 ご飯を煮ておかゆを作り、梅干しをのせて食べる。ふっ、日頃から料理してて良かったぜ……! 

 

 食べ終わった俺は食器を片付け、着替えてから掃除に取り掛かった。

 

 今日も1日頑張るぞい! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──とか言って調子に乗っていた時期が俺にもありました。どうすんのこれ! 完全に悪化したんですけど! 

 ヒットアンドアウェイどころかオールヒットだよ。会心の一撃を食らったまである。

 

「あ、あ。あーあー。……ぁぁぁぁあ゛!!」

 

 駄目だ、声も死んでいる。

 今朝の活発さとは打って変わって、俺はゾンビのような声を上げながらベットで横たわっていた。

 まさに絵に描いたような病人の図である。

 

 結局、掃除以外にも洗濯、風呂掃除までこなしてしまった……。己が身に染み付いた家事根性が憎い。

 

「……あ、リサからの返信まだ見てなかった……」

 

 こんな状況なのに独り言を言ってしまうあたり、相当癖になっているらしい。

 

 ……まぁ、後で見ればいいか。

 節々が痛む程ではないが、正直かなり体がだるい。まさか病人を練習に駆り出すような文句を言うような奴じゃないだろう。

 

 一瞬不安が脳裏をよぎったが、気にしないように俺はそっと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ● ○ ●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝の教室。

 

 クラスメイトが自主勉強や談笑などに勤しむ中、私はただ1人でバンドの事を考えていた。

 

 修哉のおかげで細かい音の修正が可能になって、確実にRoseliaのレベルは上がった。

 でも、まだまだ足りない。私たちの信じる音を極める為には、まだ何かが足りていなかった。

 

「おーう、席につけー」

 

 ガラガラッ、と豪快な音を上げて私たちのクラスの担任が教室に入って来る。

 教卓の前に立つと、挨拶をしてから出席を取り始めた。

 

「本街ー。あれ、本街はいないのか。誰か知ってる奴がいたら教えてくれ」

 

 そう問いかけられるも、答える人は誰もいない。いつもクラスで1人だから当然と言えば当然だった。

 

 声が上がらない事を確認した先生はそのままホームルームを進める。

 

(……何かあったのかしら)

 

 そう言えば彼が遅刻なんて珍しい。

 いや、彼を知ってからは今まで一度もなかったはずだ。

 このまま学校に来なければ、恐らくバンドの練習にも参加しないという事になる。

 

 ホームルームが終わってすぐに連絡を取ろうと思い携帯を取り出すが、彼の連絡先を持っていない事に気がついた。

 

「……交換しておくべきだったわね」

 

 つい独り言を呟いてしまう。練習中や帰り道によく独り言を零している誰かさんの癖が移ってしまったのかもしれない。

 そう思うと少し頰が緩んだ気がした。

 

 通知を見ると、リサから連絡が来ている。

 さっき考え事をしていたせいで気付かなかったらしい。

 

『修哉、体調悪いから学校休むってさ〜』

『分かったわ。練習はいつも通りにやるから、そのつもりでいて』

『了解〜!』

 

 そう返すと、リサからもすぐに返信が来た。

 紗夜と燐子には放課後に伝えよう。例え修哉がいなくても、実質やる事は変わらない。

 

 そこで一度思考を切り上げ、再び『どうすればRoseliaはさらに成長できるか』について考え始める。

 

 ──やっぱり新曲かしら……。

 

 この前ファミレスで意見交換はしたが、どれも抽象的すぎてあまり参考にはならなかった。

 あこ、意見を言ってくれるのは良いけどもう少し具体的に言えないのかしら……。

 

 しかし、新曲をやるにしてもその前にまずはライブだ。いつも通りCiRCLEのステージで行うそれは、既に3週間を切っていた。

 

(……終わったら本格的に煮詰めてみようかしら)

 

 そのためにも、次のライブはいつも以上に手を抜く事は許されない。

 そう思った途端、放課後が待ち遠しくなり頭の中が音楽のことで埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──それで、今日は本街さんは来れないんですか」

「うん。でも送られてきた文のテンション的にそこまで酷くはないと思う」

「修哉さんなら大丈夫そうですよねー」

「……そう、かな?」

「どんなテンションで送ったんですかあの人は……」

 

 放課後になり、紗夜と燐子に修哉の事を話す。燐子は心配そうにしているが、紗夜は軽く溜息をついて呆れていた。だがそこに嫌悪感はなく、表情は柔らかい。

 

 ……紗夜、修哉には甘い気がするのは気のせいかしら。今のも、いつもなら『自己管理がなっていない』と言い出しそうな所だ。そしてそれに対して修哉は屁理屈を言い返すのだろう。

 今、ここには無い景色だ。

 

「無駄話はそこまでにして。練習を始めるわよ」

 

 盛り上がる会話を中断させ、マイクスタンドの前に立つ。それぞれも自分の楽器を持って配置につき、流れを決めてから練習を始めた。

 

 各パートを十数回確認してから通しに入る。だが、歌う私の視線の先には誰もいない。あるのは無機質な防音壁のみ。

 いつもはそこに居るはずの人の影はなく、前までは当たり前のように見慣れていたスタジオが妙に広く感じられた。

 

「……さん、湊さん」

「っ……。何かしら? 紗夜」

「いえ、今日は調子が悪いなと思いまして」

「……大丈夫よ、続けましょう。もうライブまであまり時間はないもの」

「それなんだけどさ〜……」

「なにかしら、リサ」

 

 紗夜やあこ、燐子もみんなリサを見て続きを待つ。

 

「なんか今日はみんな調子出ないっぽいし、練習は終わりにして修哉のお見舞い行かない……?」

「今井さん……。 先程湊さんも言いましたが、ライブまで時間がないんです。一回一回の練習を大切にしないと技術は上達しません!」

「でも今の状態で練習を続けても効率悪いじゃん……? こうなってる原因って、修哉が居ない事が関係してると思うんだよねー……」

「今井さん……。あの、わたしもそう思います……」

「あ、あこもです! あそこに修哉さんがいないと、なんか寂しくなっちゃうっていうか……」

「白金さん……。宇田川さんまで……」

 

 リサだけじゃなく燐子やあこも同じ意見を出す。私も練習を続けるとは言ったが、効率が悪くなるのは何となく予測できた。

 

「……紗夜。確かにリサ達の言う事も間違ってない。だから、今日はここまでにして修哉が戻ってきたら倍の量練習すればいいわ」

「友希那!」

「友希那さん!」

「友希那さん……」

「……はぁ。分かりました。湊さんがそう言うなら……」

 

 紗夜が納得した事で、スタジオに笑顔が戻る。

 

「よーし! ならアタシはキャンセルの手続きしてくるね!」

「私達は片付けをしましょう」

「分かりました」

「はいっ!」

「……はい」

 

 リサを始めメンバー全員が動き出す。それぞれ手早く自分の楽器を片付け終え、スタジオを出た。

 

「……あの、修哉さんの家って……どこにあるんですか……?」

「……あ」

「……」

「えぇっ!?」

「知らないでお見舞いに行こうとしてたんですか!?」

 

 言われてみれば修哉の家の場所を知らなかった。リサもそこまで考えていなかったのか、慌てたような様子だ。

 

「ほ、方向は分かるから表札に注意して行けば着くんじゃないかなー……、なんて……」

「……ここまで来たんだもの、探しながら行くわよ」

「えーと……が、がんばろー!」

「うん……そうだね、あこちゃん……」

「計画性がなさ過ぎます……」

 

 そう言ってリサはいつもの帰り道を歩いて行く。私も別れ道までは分かるから、先頭の方を歩く。

 

 やがて、いつも修哉が曲がっている住宅街に着いた。私とリサに追従するように皆がついて来ている中、表札を探し始めた。

 

「えーと……本街、本街……っと。……あ、あった!」

 

 そこには確かに本街と書かれた表札に、ごく普通の一軒家が建っていた。

 

(……そもそも起きてるのかしら……)

 

 そう思ったのも束の間。

 次の瞬間にはリサがインターホンを押していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





こんなぐだぐだしたRoseliaもあっていいと思うんです。

新しく評価してくださったベースマンさん、リュウさん、ありがとうございます!


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