彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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どうも、バンドリ1周年のガチャキャラに星4友希那がいて狂喜乱舞した作者です。




夢か否か

 

 

 

 

 

 

「お、おじゃましまーす……」

 

 インターホンを鳴らしても反応がなかった為、リサを先頭に恐る恐る家に入る。

 何故か鍵が開いていたため、侵入は容易だった。

 ……不用心ね。

 

 内装もやはり普通の一軒家のそれだったが、気になる箇所があった。

 

「靴が一足しかないわね」

「本当だー。家の人いないのかな?」

「いないみたいですね」

「……これって不法侵入なんじゃ……」

「だ、大丈夫だよりんりん! ……多分」

 

 細かいことは気にしない。

 私自身、彼の生活に興味がないと言えば嘘になる。

 家に人がいないことが分かると遠慮がなくなり、みんな自然体で行動し始めた。

 

「おー、ここが修哉の家のリビングか〜」

「……キレイですね……」

「でも、あまり生活感がありませんね」

 

 入って右側にはテレビ、机、ソファーが配置され、左側にはキッチン、テーブルなどがある。

 しかし、丁寧に掃除されていて物も散らかっていないリビングには紗夜の言う通り生活感が感じられなかった。

 

「……修哉の所へ行くわよ。私達は家の見学会に来たわけじゃないの」

「はーい。行こ? りんりん」

「……うん」

 

 リビングを出て二階へ続く階段を上る。

 そこで不意に妙な既視感に襲われる。デジャヴというやつだろうか。

 私はこの景色を見たことがある。夢か過去か、それとも全く別のどこかと重ねているだけかも知れない。けれど不思議と見覚えがあった。

 

「……ここね」

 

 ドアノブの脇にひらがなで大きく『しゅうや』と書かれた部屋の前で立ち止まる。

 文字は上から擦ったような跡が付いていて所々掠れていた。

 

 ……油性ペンで書いて消えなくなったのかしら……。

 

「修哉〜? お見舞いに来たよ〜……」

 

 リサが小声で呼びかける。

 控えめにノックをするが返事はない。

 音を立てないように気をつけながらドアを開けて部屋に入る。

 

「寝てますね」

「起こした方がいいかな……?」

「あこちゃん……病人にそれは酷……」

「……そっとしてあげた方がいいわね」

 

 なにも無理に起こすことはない。体力を回復させるためにも、今は寝かせてあげるべきだ。

 会話が途絶えると、思いついたようにあこが声を上げあげた。

 

「あ、あこ、濡れタオルとか持ってきます!」

「あ、ならアタシも手伝うよ」

「……わたしも行きます……」

「ちょっと紗夜も来てくれない?」

「? えぇ、分かりました」

 

 そう言って私以外のみんなが立ち上がって部屋を出て行く。

 

「友希那は修哉のそばにいてあげて。もしかしたら目を覚ますかもしれないし」

「わかったわ」

 

 ドアが閉まり、部屋には再び沈黙が訪れた。特にすることもない私は部屋の中を見渡す。

 そういえば、男子の部屋に入ったのはこれが初めてだ。それからくる緊張のせいか、妙に動悸が早い気がする。

 緊張を振り切るように軽く首を振って、立ち膝になり修哉の近くに寄る。

 

「……こうして見るとあどけない顔ね」

 

 寝ているからだろうか。

 普段見かける怠そうな顔や、ぶっきらぼうな顔も鳴りを潜めていた。

 

「……っ」

 

 無意識のうちに距離が近づいていることに気付いてはっとなる。込み上げてくるのは恥ずかしさと形容し難いむず痒さ。

 けれど、どこか温かいそれについ頰が緩む。

 あこ達が戻る気配はまだない。

 

(……もうちょっとだけいいかしら)

 

 そう思った私は再度修哉の顔を眺め始める。

 静かな部屋には響いているのは規則正しい時計の秒針の音と寝息。背後と正面から聞こえてくるそれ以外にももう一つ、私自身の内側から聞こえる音があった。

 

 しかし、いつだって気づいた時にはもう遅い。

 次の瞬間、私はこの行為を後悔することになる。

 

 

 

 

「……あ? ……湊さん……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ● ○ ●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が覚醒する感覚を覚え目を開ける。

 だが、妙に意識が朦朧としてはっきりと状況を把握できない。

 

 現在、ベッドで横たわる俺の目の前には湊さんの顔がある。

 普段の凛とした双眸は見開かれていて、浮かべる表情も驚きに溢れている。

 妙に現実じみていて、それでいて実際はあり得ないような、そんな妄想。あるいは願望。

 

 ……つーか最近夢見すぎだろ俺。現実で見てない分、こっちに割りが回ってきてるんじゃねーの。

 

「幸せな光景だ……」

 

 

 湊さんよ、永遠なれ──

 

 

 というか俺さっきまで何してたんだっけ。

 あぁ、急に体調悪くなって寝たのか。ならばこの夢にも納得がいくと言うものだ。

 

 瀕死状態の俺にあまりにも湊さん成分……いや、夢の中くらい友希那って呼ぼう。友希那成分が足りていなかった為、脳が生命の危機を感知。しかし実際に補充することなど不可能な現状をどうにかするべく、こういう形で対処したんだろう。

 所謂プラシーボ効果に近いかもしれない。

 

 俺の脳、グッジョブ……! 

 

「……起きたのね。体調はどう?」

「看病シチュとか最高かよ……」

「……問題なさそうね」

 

 だんだん意識もはっきりしてきた。ゆっくり体を起こしてみるが、寝る前の怠さも今はない。

 視界も良好、本街修哉に異常なし。まさに元気100倍ア○パ○マ○。

 

「無理しないで。ゆっくり休んで」

「いや、大丈夫。なんか友希那見たら回復してきた」

「っ……」

 

 名前呼びに対して言葉を詰まらせる友希那。すげぇな、反応超リアルじゃん。今度不意打ちで呼んでみようかしら。

 

「……熱は何度くらい?」

「……あー、測ってなかった」

「全く……体温計の場所はわかる?」

「そこの机の一番上にあるはず……」

 

 場所を伝えると、友希那は立ち上がって体温計を取りに行く。その後ろ姿をただ眺めていると、『そういえば……』と小さい呟きが聞こえて来た。

 

「リビングもそうだったけど、意外と片付いてるのね」

「リビング……? あぁ、いつも掃除してるからな。てか意外ってなに? まるで俺が汚いみたいな言い方しないでね? 傷ついちゃうから」

「ふふ……冗談よ。……あったわ」

 

 微笑みながら体温計を差し出される。……正直かなりきた。今の笑顔、ぼく絶対に忘れない。

 あまりに素晴らしいものを見てしまったため一瞬体が硬直するも、なんとか抜け出して体温計を受け取る。

 

「…………」

「…………」

 

 体温を測っている間、俺たちの間に会話はない。それでも俺は確かな幸せを感じていた。

 たとえ夢の中だとしても、こうして2人だけでいられる時間は今まで一度だってなかった。

 だから、俺はこの瞬間を噛みしめるように過ごす。

 

「……友希那」

「……なにかしら」

「……ありがとう」

 

 気が付けば、そんな言葉が口から出てきていた。この『ありがとう』は一体何に対して言った言葉なんだろうか。

 あの放課後の会話のこと? 

 Roseliaの練習に参加を許されたこと? 

 練習の役に立てたこと? 

 帰り道を一緒に歩いていること? 

 今、こうして過ごせていること……? 

 

 

 ───全部だ。

 全て、出会ってから今に至るまでの全ての過程に対して、この言葉は自然に溢れていた。

 きっと夢じゃなければ言えていなかったであろう、そんな台詞。

 普段の俺なら絶対に照れて、尻込みして、どうしようもなく臆病になっていた筈だ。

 今だから、このシチュエーションだからこそ俺は踏み出せたのだろう。例えそれが幻想で、目が覚めてしまえば俺の中だけで完結してしまう出来事だとしても。

 

 でもまぁ、これを伝えられたなら案外風邪もいいかもしれない。柄にもなくそんな事を思ってしまう自分につい笑みが漏れる。

 

「──修哉」

「ん? 」

「……その……私こそ───」

「いたっ……!」

「ちょっ、あこ! しーっ! 静かに……!」

「宇田川さん……!」

 

 ………………うん。聞こえなかった。むしろ聞きたくないものが聞こえてきた。なんだろう、幸せな夢から一転して悪夢になるこの感じ。

 許 さ な い。

 

 お互いに黙り込んでドアを凝視していると、ドアノブがゆっくりと動き始める。

 少しづつ開いていく隙間からはリサの顔が見えていた。

 やがて完全に開ききると、体勢を崩した状態のRoseliaメンバーの姿がそこにあった。

 そして、それを真顔で見つめる友希那。

 怖っ、目がマジだよ友希那さん。

 

「あ、あははー……。えっと、その……わざとじゃないっていうか……。ねぇ紗夜……? 」

「わ、私ですか!? ち、違うんです湊さん。これは……そう、元はと言えば宇田川さんが……」

「え──っ! 紗夜さんずるい!! みんなで聞き耳立ててたじゃないですかー!」

 

 お互いがお互いに責任を押し付け合う、醜い争いがそこにはあった。ただ、それを許さない存在が1人。

 

「……言い訳は良いわ。それで、いつからそこに居たのかしら」

「え、え〜っと……修哉が起きたところかな……? 」

「一番最初じゃねーか……」

「え……? 」

 

 え? って何だよ、え? って。

 それよりこいつらどうしてくれるんだ。俺の一生に2度見れるかどうか分からない幸せな夢をぶち壊しやがって……。

 心なしか体温が上がってきたかもしれない。なんなら怠さもぶり返してきた。

 すると、ちょうど体温計が熱を測り終えた音が鳴り響く。

 

「……えーと……38.6……? あぁ、幻覚か」

「38.6!? すぐに横になって! あこ、タオル貸して! 」

「は、はいっ! 」

 

 リサに促され再びベッドに横になる。頭に濡れたタオルが乗せられ、伝わってくる冷たい感覚が心地いい。

 

「ゆっくり休んで」

「さー、いえっさー……」

 

 急に瞼が重くなる。閉じていく視界の中で、最後に友希那の優しい顔が映った。

 

 ──あぁ、楽しい夢だったなぁ。

 

 なんだかんだ言いつつも俺はRoseliaが大好きなんだろう。

 暗闇に落ちていくような意識の中、俺は妙に安心していた。

 

 

 

 





自分で書いといて思うんだけど、主人公が友希那を名前呼びする事に若干の違和感あるんだよね。いつかは自然に友希那呼びが出来るような主人公に育て上げたい。頑張れ、自分。

新たに評価してくださったccwさん、負け犬の近吠え・ハルさん、女騎士さん、jishakuさん、ありがとうごさいます!
感想をくれた方やお気に入りをしてくださる方もありがとうございます!


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