どうも、ドリフェスで80連した結果友希那どころか限定を1人も抜けず、財布の中身が頂点へ狂い咲き更新が遅れた作者です。
唐突ですがポピパのオリジナル曲ならB.O.Fがトップで好きだったりします。
「ん〜、いいお湯だった〜! 次友希那だよ〜♪ 」
「今行くわ。じゃあ修哉、お風呂借りるわね」
「ごゆっくり〜」
夕食の片付けも終わり、ある程度のんびりした俺たちは順番に風呂に入っていた。もちろん俺が一番最初。最後でいいと言った所、リサと湊さんに最初に入ってくれと頼まれた。だがここは家主の意地がある(家主では無いけど)。客をもてなす義務の為に遠慮したが、有無を言わさぬ口調で入れと言われた。解せぬ。やっぱ女子ってそういうの気にするんだろうか。
そんなこんなでリサが上がり、次は湊さんの番になった。ソファーから立ち上がると、持って来た宿泊道具を手に下げリビングを出て行った。
リサがいない間、俺と湊さんは2人でのんびりテレビを見ていた。いや、のんびりではないな。会話以外に特にすることもなかった俺は、毎週この時間帯に放送されている動物系の番組にチャンネルを回した。すると偶然にも猫の紹介コーナーが。後はもう言わなくても分かるだろう。そう、天国だ。
「はぁ〜〜〜」
妙に色っぽい息を吐きながらリサがソファーに腰を下ろす。俺も座っているため、隣が沈み込むのが分かった。
「ちょ、近い近い」
「あははー、初心だな〜」
「お前も経験ないって言ってただろ」
風呂上がりで熱を持ち、上気した横顔は僅かに汗ばんでいる。普段の肌が白い分、仄かに赤く染まった頰が色めかしい。
ダメだ、見るな本街修哉! これは毒だ、蝕まれるぞ!
大体、なんでこんなにのぼせかけるまで風呂に入って居たんだろうか。女子って基本長風呂なの? 男子の俺はよく分からん。でもその辺はしっかり自己管理して欲しい。風呂場で倒れられても困るしな。
テレビのスピーカー越しに聞こえてくるバラエティ番組の笑い声はどこか遠く、時間の流れがゆっくりになった気さえする。しばらくお互い無言でソファーに体を預け、安定する体勢を探す。
「でさ、最近どう? 」
「どうって……また雑な振り方だな。まぁこうやって家に泊まりに来る位には進展したんじゃないかな? 」
話を切り出したのはリサだった。どんな策略を巡らせていたのか俺には予想もできないが、最初からこの話はするつもりでいたのだろう。
「でも、正直今はまだ脈は無いと思う」
「今は、ってことは〜?」
「そういうのじゃねーよ。なんて言うんだろう……こう、そういう風に見られてないって感じかな」
「そうかなー? アタシは順調だと思うけど」
「どこ見て順調とか言ってんだよ……。湊さんからしたらこの泊まりだってリサが居るから来たようなもんだろ。それに結局教室でもあんまり話せてないし」
断言できる。確実に湊さんは俺に好意を向けていない。逆に悪感情を向けられているかと聞かれればそれは勿論ノーで、恐らく認識としてはRoseliaのサポートメンバー。良くて友達止まりだろう。うーん、どうなんだろうそれ。
「でもまぁ、関係者って時点で前より進歩した方か」
「そっか。機会があったらアタシからさりげなく友希那に聞いてみるよ」
「……マジ? さすが先生! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ。そこに痺れる憧れるゥ! 」
「大げさだな〜……もう」
人生に一度は言ってみたかったセリフトップ10を言うことが出来て満足感に浸る。だが、一度我に返って考える。
これで良いんだろうか。リサは俺を手伝おうと思って厚意でやってくれてるんだろう。だが、そもそもこれは俺の恋愛だ。だから、本来なら俺が一人でやるべきこと。人に頼ってどうする。
悩んでいると、リサがテレビを見ながら口を開いた。
「友希那ね、前は全然笑わなかったの。ある事が原因で」
「笑わなかった? 湊さんが?」
「うん。微笑んだりすることはあったんだけど、それもたまにでね。でも修哉が来てからちょっと変わったんだ〜。少しづつだけどまた笑うようになったの」
「……そうなのか」
「あー、信じて無いでしょ〜」
あえてその『原因』とやらに触れず、微妙そうな口調で返す。
俺が来てから変わった? 疑いの視線を向けてみるが、変わった反応はない。俺は俺が来る前の湊さんを知らない。せいぜい教室でしか見たことがなかったからだ。Roseliaのライブにも行った事がないし、校外で合うこともない。だから俺には真偽を確かめる術がない。
思い出してみるとクラスの女子と話してる時に微笑んでいた気がするが、まぁ幼馴染のリサが言うんだから本当なんだろう。
「……そうだったら嬉しいけどな」
「修哉からして友希那の印象は? 最初と比べて変わった? 」
「勿論変わったわ。なにあれ、可愛すぎない? 猫好きすぎでしょ。羨ましい。むしろ猫になりたい」
「それはやりすぎでしょ……。でも分かるな〜。友希那ってば猫の事となると性格劇的に変わるからね〜」
「でもそれ以外の湊さんもいいけどな。普段のクールな湊さんも、歌ってる時の楽しそうな湊さんも、それこそさっきのポンコツな湊さんも。……全部好きだよ」
そこまで言うと、急にリサが黙り込む。連鎖的に俺も黙り込むと、たった今自分の口から出てきた言葉に恥ずかしさを覚えた。
なに? 何でそんな自然に出てきたの今の言葉! やめてよ恥ずかしい!
ちら、と横を見るとリサも少し顔が赤くなっている。
「あはは〜……。なんかこっちまで恥ずかしくなってきた……」
「初心なやつめ」
「修哉も顔赤いよ? 」
「……ほっとけ」
それから俺たちは取り留めもない会話を広げていった。前の名前呼びのことを弄られたり、昔の湊さんの話を聞いたり。普段は静寂に包まれた寂しいリビングに、明るい声が響いていた。
○ ● ○ ●
湯気が立つ浴室にシャワーの水音が反響する。流れるお湯に体を温められながら、私は胸にある違和感の正体を探っていた。気になるのはさっきのこと。
「私、なんで料理なんて……」
あの言葉は自然に口から溢れていた。家での家事は分担制で、料理はおか……母が担当している。小さい時からこれは変わっていないため、私は料理をほとんどした事がない。そのせいでさっきもミスを重ね、野菜達を無残な姿に変えてしまった。
修哉に見てもらっていたお陰で怪我はせずに済んだが、私一人だったなら確実に指を切っていたはず。
「これを毎日やってるなんて、修哉もリサもすごいわね……」
私も毎日練習すれば出来るようになるかしら……なんて考えて、小さくかぶりを振る。きっと駄目だ。唯一時間を費やして来た歌でさえ、一人じゃ出来ないのだ。一人じゃ出来ないからRoseliaを結成した。だからきっと料理も同じ。仲間の、周囲の、誰かの存在と協力があって、やっと成し得ることができる。
シャワーを止めて、タオルで体の水気を取っていく。改めて考えてみるとこの状況は普段の自分なら考えられないようなものだ。リサが泊まると言い出した時、つい私も名乗り出てしまったが、私は今も何故自分があんな行動に出たのか分からないでいた。ただ、やけにリサが挑発的だったのを覚えている。あれは一体……?
服を着て廊下に出ると、リビングから2人の話し声がかすかに漏れて聞こえる。扉の前まで近づくと、はっきりと内容が聞き取れた。
「それよりどうだった? 今日友希那と料理してみて」
「ハラハラして怖いと同時にすげー楽しかった。心臓やばかったけど。二重の意味で」
「あははー、そっかそっかー♪ 」
2人の声は明るく楽しそうだ。リサと修哉は仲がいい。最初はバイトで知り合ったらしいが、私が知った時にはもうかなり打ち解けていた。練習中も修哉は特にリサに対して口調や態度が砕けている。リサも当たり前のようにしているから、それだけお互い受け入れ合っているんだと思う。
仲がいいのは良い事だ。そのはずなのに、私の心にまた得体の知れない靄がかかる。この正体が何なのか、私にはわからない。
「でも……もし湊さんが料理をしたら、俺が一番最初にそれを食べたいな」
「お、言うね〜。でも残念、一番はアタシだよ〜? 小さい時から一緒なんだら、それだけは譲れないなー」
「……湊さんに決めてもらおう」
「なら勝負だね♪ 」
話の区切りがついたところで、リビングのドアを開ける。部屋の中のソファーに見える二つの肩がビクッと揺れた気がした。
「おかえり友希那〜」
リサは顔をこちらに向けて声をかけて来るが、修哉の顔は前向きに固定されたままだ。
……今の話、聞かなかった事にしておこう。
「……さて、湊さんも上がった事だし……何かする? 大したもの無いけど」
「あっ! じゃあ修哉の部屋行かない? 友希那も行きたいよね? 」
「私はどちらでも構わないわ。修哉がいいなら行くけれど」
「俺は別にいいけど、何も無いぞ? 」
「いいのいいの♪ 」
じゃあ行くかー、と言う掛け声とともに修哉が立ち上がる。テレビと電気を消し、私たちは修哉について部屋に向かった。
「んー、昨日ぶりだねぇ」
「あーそっか。現実だったんだもんな」
まだ夢の印象が強いのかそんな事をつぶやく。確かに目が覚めたら自室に私達がいるなんて、普通は思いもしないだろう。私だって、目が覚めて部屋にRoseliaメンバーがいたら夢かどうかをまず疑う。
「これ、卒業アルバムね」
「え! 見たい見たい! ねぇ修哉、見てもいい? 」
本棚に立て掛けられていたアルバムに手を伸ばし、視線を修哉に移す。急に大きな声を出したリサに少し驚きながらも、見てもいいと許可を貰う。
「おー、修哉全然変わって無いね〜」
「そう簡単に変わらないだろ。ただ身長は伸びたけどな」
「一人でいるのも変わってないのね……」
「真に強い動物ほど群れをなさないんだよ……ちょっとやめて、沈黙が痛い」
「……でも不思議よね。修哉の性格なら自然と人が寄って来そうだけど」
「あ、アタシもそれ思ってた。なんでいつも一人なの? 」
途端、沈黙が訪れる。リサの問いに答える声はない。どしたのかと思い修哉を見てみると、何か思い出しているような、懐かしむような表情をしていた。
「ほら、俺ってこんな家庭環境じゃん? それで中学の時少なからず周りから色々言われてたんだよね。俺はこれが当たり前だから特に気にしてなかったんだけど、まぁそんな流れで今もこんな感じな訳ですよ」
修哉は見た目が悪いわけではない。世間でいう『イケメン』の区別は私には付かないが、これだけは言うことができた。それに、性格だってたまにふざけるが、明るく接しやすい。
普段から自然にしていればいいと思うのだが、問題は修哉自身が他人との壁を作っている事だった。本来外へ向くべきそれが、内側にしか向いていない。向いたとしても一定以上の距離にいる人たちだけで、主にRoseliaメンバーがこれに当たるだろう。
「……そうだったんだ。あ、これっていつの写真? 」
「あー、それ中三の時の遠足のやつだわ。なっつ! すげぇ懐かしいなぁ……相変わらずぼっちだけど」
「あははー、もう見慣れたもんだよ」
一度思考を切り替えて会話に戻る。リサも少し気を使ったらしく、別の話題に持っていった。だが、修哉の様子からしてその事を気にしている訳では無いらしい。
それから私達はアルバムの写真を眺めたり中学時代の面白エピソード(修哉主催)を聞いたり、リサの無茶振りに私が乗る形で校歌を歌わせたりした。
気がつくと壁掛け時計の短針は午前0時を指していて、随分話し込んでいた事が分かった。
「さて、そろそろ寝るか。ちょっと待ってて。隣の部屋に布団敷いてくるから。2人とも同じ部屋で良いよね?」
「ええ、問題ないわ」
「アタシ達も手伝おうか?」
「いや、いいよ。パパッと敷いちゃうからここにいてくれ」
「了解〜♪」
それだけ言って修哉は部屋から出て行く。主が居なくなった部屋には私とリサだけが残っていた。時間を意識した途端、眠気に襲われてつい欠伸が出そうになるのをかみ殺す。そんな私にリサが声をかけてきた。
「友希那はさ……修哉の事どう思ってる?」
「? ……どういうこと? 」
「ほ、ほら、修哉もRoseliaの練習に参加してからもう結構経つじゃん? 修哉に対する友希那の印象が聞きたいって思ってさ」
「……そうね。イメージしてた性格とは全く別だったわ。いつも一人でいるから、もっと暗いのかと思ってた」
「それはアタシも分かるな〜。他には? 」
「他には────」
シャワーを浴びている時に感じた違和感を話そうか悩む。けれどそれも一瞬。リサなら答えを知っているかも知れないと思い、口を開いた。
が、その続きは発せられる事はなく、主の帰還によって遮られたのだった。
○ ● ○ ●
テキパキとした動きで布団を敷き終えた俺は、全く使われていない空き部屋をみてさっきの事を思い出していた。
「いやー、ウケてくれてよかったな〜。黙られたらどうしようかと思ったわ……」
面白い話して、と言われたときの動揺と緊張ほど精神をすり減らせるものは無いと思うんだ。まぁ自信があったから自ら話し始めたんだけど。体育祭の話も良かったが、文化祭の時にやった王様ゲームもなかなか良かったと思う。いいよね、絶対命令権。俺もそういう権利が欲しい。
──令呪を以って命ずる。自害しろ、ランサー。とか言って見たい。……なにかと自害するよねあいつら。報われない。
と、そんな事を考えてる場合じゃなかった。湊さん達を呼ぶために廊下に出て、自室のドアを開いた。
「準備できたぞー。……ってあれ、なに? 取り込み中だった? 」
「そんなことないわ」
「うん、全然大丈夫だよ」
「ならいいんだけど」
俺が入った瞬間静かになったからな。つい悪い事をした気分になってしまう。2人は荷物を持って立ち上がると、部屋の外へ向かう。逆に俺は中へと進み、2人を見送る形でベッドに腰を下ろした。
「じゃあおやすみ〜♪ 寝込み襲っちゃダメだぞ? 」
「誰がお前なんぞ襲うか馬鹿」
「そうだよねー、修哉が襲うのはアタシじゃないもんねー? 」
「おぉおい!? ストップ! ちょっと待て! 」
それだけ言い残してリサが部屋から出て行った。……我慢だ我慢。リサに感謝を。リサに祈りを。リサに信仰を……。……うん、もう末期だわ俺。
「……急に騒がしいわね」
「ごめん湊さん、眠いのに」
「もう慣れたわ。この空気にも、あなたにも」
そう言って微笑む湊さんから、俺は視線を離すことができないでいた。ただなんとか言葉を返そうとして、慌てて口を開く。
「そ、そっか。疲れただろうしゆっくり休んで。明日は休みなんだし」
「えぇ、そうするわ」
踵を返し、湊さんは廊下へ向かう。だが部屋のドアを閉める直前で立ち止まり、再び顔をこちらに向けた。肩から流れる銀髪に目を奪われそうになるが、平静を装って目線を固定する。
「それと修哉。私こそ、ありがとう。……おやすみなさい」
パタン、と静かにドアが閉まる音だけが部屋に響く。だが次第に別の音も鳴り始め、今ではむしろその方が大きいんじゃないかと思う程だ。
音の発信源は俺の内側。激しく振動を繰り返すそれの影響で徐々に顔も熱を帯び始め、居ても立っても居られなくなった体はベッドにダイブし始めた。
「……なんだよあれッ! 反則だろ……」
顔の熱が引く様子はない。また風邪がぶり返すかもしれないな……なんて思いながら、俺は冴えてしまった目と共に眠れない夜を過ごしたのだった。
文字数が今までの話の中でトップクラスに躍り出ました。話が進むのが遅いですが、今後も楽しみにしてくれると嬉しいです。
更新が遅れた理由としては前書きに書いたのもあるんですが、書きたい描写が多すぎて時系列ごとにまとめていたら妄想が膨らみ、つい本編を書くのを忘れていたんです。すいませんでしたぁ!
という謝罪をしたところで、新しく評価してくださったタニヤンさん、ありがとうございます!
ではまた次回。