彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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どうも、ちゃんと早めに投稿することができました、作者です。

そういえば紗夜日菜の誕生日について言い忘れたのを思い出した。
遅れたけど誕生日おめでとう! ツイッターで多くの人にさよひなが祝われてて嬉しかった。


そして── は な し が す す ま な い 。(前書き2回目)





神の悪戯

 

 

「へー、それで友希那をおぶって逃げたのか〜。大変だったね」

「あれは本気で死ぬかと思った」

 

 午前の授業を消化し終えた昼休み。定期的に行われている報告会の声が空に溶ける。文字通り刺すような初夏の日差しが降り注ぐ中、俺とリサは屋上で弁当を食べていた。ちなみに俺たちはそこまで広くない日陰に座っている。一歩でも出れば干からびることは間違いない。それくらいに今日は暑いし、太陽もハッスルしている。

 

「で、後は電話で言った通りだな。それから湊さんを家まで送って帰った」

「そっか。どう? 実感とかは」

「……分からん。あの時は余裕なかったからな」

 

 吊り橋効果とやらを期待したんだろうか、リサが玉子焼きに手を伸ばしながら問いかけてくる。

 人間は事実さえあればいくらでも過去を捏造出来てしまう生き物だ。きっと何度戒めてもそれは変わらない。今だって、俺は『助かった』という結果だけをもとに過程を改変し、どうすれば進展できたか、なんて考えている。あんなに恐れていたのに、あんなに必死だったのに、後になってしまえば全てが嘘のように感じられた。

 

 だって家帰ってから思ったからね。なんでお前もっと背中の柔らかさを感じなかったんだ……! って。それと逃げるのに必死こきすぎ。もうちょっと「お前は俺が守る!」みたいな台詞言えなかったのかよ、とか。言えないけども。

 

「あ、そうそう。この前友希那に修哉の事聞いてみるって言ってたじゃん? あれ聞いてみたんだけど」

「まじ? やっぱアウトオブ眼中だった?」

「どんな答え期待してるのさ……。でも、確かにそういう目線で話してなかったかな〜。それも話の途中で誰かさんが来たせいなんだけど……」

 

 はぁ〜、とため息をつくリサ。誰かさん、とは誰だろうか。人が来るという事はそういう場所で話していたという事だ。しかも言い方的にリサの知り合い、もしくは俺も知っている。

 ……待て、心当たりがあるかもしれない。リサに視線を移すと、『やっと気づいたか』とでも言いたそうな目で俺を見ていた。

 

「ねぇ、誰かって俺……? 泊まりの時に部屋が妙な空気だったのってそれだったのん?」

「正解! よく分かったね〜、偉い偉い♪ 」

「いや、タイミング悪かったのは謝るけど、お前今どの立場なの?」

 

 馬鹿にされてる気がする。冗談交じりにじっとリサを睨んでみると、すぐにあははと笑って表情を戻した。

 

「アタシも続き聞きたかったんだけどね〜。友希那、その時真剣そうな顔してたから、踏み込んだ事聞けると思ったのに」

「……いや、本当ごめんなさい」

「でも前も言った通り、アタシは修哉が言うほどの距離じゃないと思うけどなー。むしろゴールは近いよ?」

「また乙女の勘ってやつか? 俺も絶望的……って程じゃないとは思うけど。まぁ結局は今後も特に今とやる事は変わんないんだろうな」

 

 正直精一杯ですはい。これ以上何すればいいの? 手を繋ぐ? まず無理だろう。2人で帰ろうとか言ってみるか? 練習帰りならリサに頼めば2人になるかも知れないが、なった所でそれも無理だ。湊さんに真顔で「なんで?」とか言われたらメンタル砕け散って死ぬまである。

 

「……ああ、そうだ。俺もRoseliaの合宿に行く事になった。というか行きたい」

「本当に? いいね〜♪ 友希那に言われたの?」

「俺から聞いたら出来れば参加してほしいって言われた」

「やったじゃん! 今から楽しみだな〜♪ あ、そうだ海とか行こうよ! みんなで行ったら絶対楽しいよ」

「うっわ超行きたい。でも湊さんと氷川さんが拒否する未来が見えた」

「うわー、アタシも想像できちゃったよ……」

 

 太陽、砂浜、海、水着。やばい、もう既にやばい。何がとは言わないけど。そうなった場合、目先の目標は湊さんの説得だな。これさえクリア出来ればあとはチョロい。湊さんがそう言うなら……で全て解決である。宇田川さんと白金さんは言うまでもなく賛成だろうからな。

 確か2泊だったっけ。改めてすごいな。その資金ってどこから出てるんだろうか。まさか自腹……? 

 

「そろそろ戻ろっか」

「そうだな。時間的にもちょうどいいし」

 

 お互い空になった弁当箱を片付け終えると、立ち上がり屋上から出て行く。校内に入っただけで、日陰とは違う冷たさが感じられた。階段を下り終えると、避暑地を求めたのか多くの男子生徒がコンクリートの壁に張り付いているのが目に入る。……何こいつら。気持ちは分かるけどやり過ぎだろ。なんで二列で整列してんだよ。握手会じゃねーんだから。

 これがうちの男子のノリなんだよなぁ……。本当、どうにかならないものだろうか。2人して顔を引きつらせていると、意識を逸らすためかリサが話を振ってきた。

 

「そ、そういえば友希那、筋肉痛になったって言ってたよ」

「俺も今体すごい痛いんだよね。あれだけ走れば仕方ないけどさ」

「あはは、友希那もそうだけど、修哉もあんまり運動しないタイプだからね〜」

「……鍛えようかな」

 

 肘を曲げて力を入れてみるも、悲しい事に全くと言っていいほど盛り上がりが見られない。俺よくこんな腕で湊さん支えられたな。怖ぇえよ。

 

「じゃあ、また放課後ね」

「おっけー、じゃ」

 

 気付けばクラスの前に着いており、リサと別れて教室に入る。窓側に並ぶ我が席は日差しで熱され、ただでさえ暑い気温に拍車をかけていた。

 そんな席に着いて思うことはただ一つ。暑い……そして熱い。これで湿度高かったら強制サウナだろ。拷問レベルでキツイ。

 

 授業までの数分間だけでも退避しようと考え、閃いた。そうじゃん、こういう何気ない時間に喋りに行けばいいんじゃん。ふっ、見てろよ。

 立ち上がると、俺は右斜め二つ後ろにある湊さんの席に視線を滑らせる。が、そこにはヘッドフォンを着けながら携帯に指を滑らせる本人の姿があった。夏の日差しを受けて尚、その銀髪は輝いていて、俯きがちな顔から覗くまつ毛は長い。美しい絵画を見ているような感覚を覚え、静かに目を奪われる。

 どれくらい見つめていただろうか。急にはっとなり、慌てて視線を外へずらす。

 

(……バレては……ないな。よし)

 

 一応チラッと確認してみるも、気づかれた様子はない。やましいことをした気持ちに襲われ、なんとなく俺は教室内に目線を泳がせてから席に着く。

 まぁ、作詞中なら仕方ないですよね。うん。邪魔、ダメ。ゼッタイ。

 

 頭の中を切り替え、合宿について思考を巡らせる。楽しみだなぁ……なんて考えている内に教師が来て、午後の授業が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりにこんな場所来たな……」

 

 自宅から歩いて数十分後。いつも買い出しに行くスーパーとは真逆の方向にある大型ショッピングモールに俺は来ていた。なんかオフ会0人事件が起きそうな場所だなぁ、なんて思う。オィィィィィィィィッス! (自己規制)でぇぇぇぇす!! あの大物YouTuber、復活してくれないかな。

 急に脳内に『これ以上は危険だ』という警告を受けたため、思考を切り替える。

 腕を軽く伸ばすと、噛みしめる様に言葉を吐き出した

 

「あー、疲れたなー……」

 

 近づくに連れて多くなる人混みもそうだが、なんと今日は珍しくバイトが忙しかったのだ。どのくらい忙しいかと言うと、あの青葉の喋るスピードが2割り増しになるくらい。青葉単位すげぇな。これだけで大抵の比較ができる。

 

 リサは休みだったらしく、今日は来ることはなかった。ちっ、運のいいやつめ。いつかあの忙しさを味あわせてやる。

 

 さて、そんな疲れの中、何故バイト終わりにこんな所に来たのかと言うと、合宿に向けて準備をするためだ。『いや、お前楽しみにしすぎだろ』と思ったそこの君。言うな。俺も分かってる。

 だが分かっていても来てしまったのだ。考えても見てくれ。特に意識したことはないが、今の俺の状況は『実力派ガールズバンドの中にただ一人存在が許された男子』。そう、つまり客観的に見ればハーレムなのだ。それだけでもすごいのに、さらに水着イベントだぞ? これが丸腰でいられるか。

 湊さんの水着姿を拝むまで俺は死ねない。

 

 

 とか考えてたら人混みに流されてました、本街修哉です。くっそ、失敗した。まさか夏に向けてのガチ勢がこんなに居るとは……。先にこの前発売したラノベから買うべきだったか。

 なんとか流れから脱すると、丁度目の前にモール内の案内図が描かれていた。現在地が東側の一階。目的の水着を売っている店は二階の南側か。運が良いことにここから近いな。近場のエスカレーターに乗り上を目指す。位置が高くなり開けたモール内を見渡せるが、どこもかしこも人だらけ。これは儲けてるな、なんてつい景気のいい事を思う。この規模で6階まであるんだもんなぁ。もうこんなのショッピングモールじゃなくて軽いビルだビル。

 

 この巨大な施設全体にはよく冷房が効いていて、外気とは隔絶された温度に心地よさを感じる。最近では完全に夏物の服が増え、ここに来るまででも露出の多い薄い服がよく見かけられた。学校でも夏服に移行する期間に入り、灰色の制服を着用せずにワイシャツのみで過ごすようになった。……全く、素晴らしい文化だ。夏服万歳。

 

「っと、ここか」

 

 目的地に到着すると、前面的に売り出されているのは女性用の水着だった。立ち止まってマネキンに着せられたそれを見る人もいるため、若干流れが妨げられている。中も広いらしく、壁側には確かに男物の水着も売られていた。

 ただ、入り口からもう女性水着オーラ全開のため、なんとなく店に入り辛い。少し離れた場所から、なんとか店内に男を見つけて安心しようと覗き込む。

 しかし、そこには男の姿はない。代わりと言ってはなんだが、俺と同じように店内を覗いている奴らが周りに増えた。男ォ! お前らもっと頑張れよ! 人の事言えないけど。

 

 そんな中、店内に見慣れた影が一瞬見える。ウェーブのかかった茶髪に、やはりと言うべきか露出が多めの服。高い位置に結ばれたポニーテール。

 ……まじ? 偶然とかそういうレベルじゃない気がして来た。もはや恐怖。草むら歩いてたら伝説のポケモンしか出ないくらい怖い。

 

 ──本当、なんでこんな馬鹿でかい場所で遭遇するんだろうな……。

 

 ラノベとか二次元じゃないんだからさ。ご都合展開とかマジでいらないから。これ超入り辛いじゃん。むしろ入れないじゃん。

 

 理論や概念、確率など全てを吹っ飛ばしてただ目の前に広がる現実から目を背ける様に、俺はそっと手で顔を覆ったのだった。

 

 

 




大物YouTuberの復活、心から願っています(白目)
ハッピーシンセサイザのカバー決まった時に真っ先に思い浮かんだからね。

それはいいとして。話が進まないと言いましたが、着実に物語は終わりに近づいています。前にあと30話で完結と言ったな、あれは嘘だ(土下座)
やっぱグダグダしてくると思ったんで、もう完結までの流れを決めました。それまで楽しんで貰えると嬉しいです。

新たに評価してくださった菘亜杞さん、トム岡さん、悠久の時間さん、有栖川さん、ありがとうございます!

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