彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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はい、最近これ前書きで書きたいな…と思ってもいざ書こうとすると途端にその内容が思い出せずこんな文を書いてしまう作者です。

結局りんりんと紗夜をお迎えできなかった…チクショウ!



日差しと瞳

 

 

 

 

「────────」

 

 揺らぐ景色が目に映る。

 何かを絞り出すように発した後、俺は何故か頭を下げていた。

 唐突に耳と視界に飛び込んで来た情報に困惑する中、ただ体だけは未だ同じ姿勢を維持している。

 

(……え、なにこれバグった?)

 

 無意識に発動している平身低頭精神が全く理解できず、ふとそんな事を思う。

 少しでも情報を集めようと集中する耳に届くのは波の音。そして僅かに鈴虫の羽音が辺りに響いている。固定された視界に映るのは俺のものと思われる足と、それに向かうように存在している誰かの足。海であろう砂浜の上に立つ俺たちを攫うかのように波が寄せては引いていく。

 

「────────」

 

 まただ。なにも聞き取れない、声なのかどうかすら怪しい奇妙な感覚。脳に直接送られているような、形のないそれを俺は浴びていた。

 動こうとしても動けない自分の体がもどかしい。まるで決められたシナリオをただなぞっているみたいに、淡々と時間だけが過ぎていく。

 

「───!」

 

 急に地面が揺れたと思ったその途端、闇に包まれていた世界が傾いていく。いや、違う。俺だけが傾いている。

 不安を煽るような黒の中、先ほどの足場を置き去りに俺はひたすらに落ちていく。

 

 

 やがて強い衝撃に襲われたと思った次の瞬間、強い光が視界を満たしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってぇ!」

 

 ゴッ! という鈍い音と同時に意識が覚醒する。目を開けると、そこに映るのは立ち上がっている湊さんの後ろ姿。その脇には俺を見て笑っているRoseliaメンバーがいた。

 

「やーっと起きた。ほら、もう着いたよ」

「……おぉ、着いたか……。って着いたの!?」

「寝ぼけてないで早く起きてください。降りないと出発してしまいます」

「友希那さんも早くー!」

 

 どうやら完全に眠っていたらしく、すでに駅に着いていた。うわまじか。俺寝る前に『ちょっと』とか言っちゃってたんですけど? 男に二言は許されないんですけど? ハーラッキリ! ハーラッキリ!

 

 体勢を整え席を立つと、やや赤面している湊さんの横顔が見える。……な、何? なんかあったの?

 未だ眠気を訴える思考を抑え込み、荷物を持って電車から降りる。時計の針は10と8を指しており、1時間半をまるまる寝てしまったことを改めて理解した。

 

 やっべぇぇぇ……! これ湊さん完璧に暇だったパターンじゃん……! 何がレディーファーストだ馬鹿野郎! 俺が寝てたら湊さん出れねぇじゃねぇか! さながら窓側に孤立させるための壁だ壁。巨人に蹴られてマリアからシーナまで散ってしまえ本街修哉。

 ……考えたら結構やってるなこれ。後ろからリサ達の楽しげな声が聞こえる中、1人だけ横に爆睡する男がいる席で1時間半座ってるだけって……。許してヒヤシンス、後で謝っておこう。

 

「宇宙きた────!!」

「宇宙……? 宇田川さん、あまりはしゃぎ過ぎないでください! 私たちはあくまで合宿に来ているんです。もっとその自覚を持ってもらわないと」

「その通りよ。あこ、もっと落ち着いた行動をして」

「まぁまぁ、ちょっとくらいイイじゃん? こんな所滅多に来れないんだからさ♪ 」

「人……少ない……ふふ」

 

 それぞれがそれぞれらしい反応を見せる。1人だけ宇宙来てるけどみんな安定のスルー。つーか白金さん大丈夫か……? どんだけ人混み苦手なんだろう。(そして俺もスルー)

 

「さてと、そのコテージってどこにあんの?」

「ここから15分くらい歩いた所にあるわ。私たちが場所を知っているから、修哉はついて来て」

「りょうかーい」

「なら早速行きましょう。こうしている時間が惜しいわ」

 

 とか言ってるけど、ちょっと口角上がってますよ。分かりやすいなー本当。

 

 ついて来い、とは言われたが俺はバッチリ湊さんの横につく。気づいた時にはもう遅い。いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌モトマチ☆ホテプ。

 

「なにしてるの……?」

「気にしないでくれ」

 

 心底疑問の色が篭った視線を向けられるも、左から右へと流す。やめて! そんな目で俺を見ないで! ただでさえ太陽から暑い視線が注がれているというのに横から銀色の太陽の視線まで浴びさせられるなんて! 溶けるゥ! 次回、「本街、死す」。デュエルスタンバイ!

 

 

 …………なんだろこのテンション(賢者タイム)

 

 

「にしても長閑(のどか)な所だなぁ」

「そうね。私達の町に比べたらかなり田舎の方だから」

「確かに空気は澄んでる気がするよね〜っ!」

「お前さ、宿泊道具だけじゃなくてベースまで背負ってんのに暑くないの? 同じ10代なのに元気すぎ」

「暑いよ? でも楽しみ♪ って思いが強くてあんまり気にならないかな。それに風も涼しいし」

「確かに……」

 

 俺もそう考えたら涼しくなってきた気がする。なるほど、これがリサの強さの原動力なのか。感情1つで己の感覚、精神さえもコントロール出来てしまう。バトル漫画かよ。

 

「よし、俺もなんか涼しくなってきた……! 後で森行ってカブトムシ捕まえてくるべ!」

「いいね〜♪ ならアタシは川で水遊びでも……」

「2人とも、いい加減にして。さっきも言ったけどこれは合宿なの。ふざけるようなら帰って貰うわ」

「Oh.」

「ごめんごめん☆ 冗談だよ」

「……もう、子供なんだから」

 

 呆れたように、でも少し楽しそうに小さく微笑む。それを見ただけで、さっきの太陽という例えが間違っていない事を実感した。風になびき輝く銀髪、吸い込まれるような黄金の瞳、静かに並ぶ頬や鼻筋。その全てが確かな存在感を放っていて、俺の中で欠けてはいけないものになっている。

 

「これ宿泊費とか大丈夫なの? すげぇ自然にここまで来てるけど」

「気にしたら負けよ」

「えっ」

「気にしたら負けよ」

「でも」

「気にしたら──」

「分かった! もう気にしてません!」

 

 ……うん、色々ありそうだけどそう言うならあえて負けに行く必要性はないだろう。大体、それを言ったら毎日のように貸し切っているスタジオのレンタル代なんてどうしているんだ、という話になってくる。

 だから、その全貌が全くと言っていいほど闇に包まれているRoseliaの経済力にはあえて触れない。それこそ宇田川さんに闇の力が〜とか言われてしまう。

 

「見えてきたわ」

「お、どれ?」

「ほら、あそこあそこ。あの二階建ての」

「全部二階建てでさっぱり分からん」

 

 曖昧すぎる説明にツッコミを入れつつ近付いて行くと、次第に全貌が明らかになってきた。

 

「おぉ……これがコテージ……合宿イベの開催地か……」

 

 感動する俺を置き去りに……いや、宇田川さんもか、俺たちを置き去りにみんなコテージへと入って行く。事前に鍵を持っていたらしく湊さんが解錠していた。

 

「修哉さん! あこすっごくワクワクしてます!」

「俺もだ……!」

 

 ひとしきり外観を楽しむと、後に続いて中へと進む。いやー、こういう新しい家とか場所に来るのっていいよね。間取りとか広さとか壁紙の色とか本当に見てて楽しい。

 ソファーとテーブルが置かれているリビングに到着すると、全員が立ち止まって荷物を降ろした。

 

「今日から3日間、強化合宿を始めるわ。いつも通り……いや、いつも以上に集中して質の良い練習をするわよ」

「「「「はい!」」」」

 

 一斉に揃い大きさを増した声がリビングを満たす。バンドの合宿に使う事がメインなのか、壁は防音仕様のものになっている。二階への吹き抜けになっているお陰で開放感があり、白い壁紙もそれを助長するかのような明るい雰囲気を作り上げていた。

 

「じゃあ、とりあえず荷物を置きに行きましょう。部屋は大きいのがあるからそこを使うわ」

「はーい! 行こっ、りんりん!」

「ふふ、引っ張らないで……」

「アタシ達も行こっか♪」

「そうですね」

「ええ」

 

 宇田川さんと白金さんペアが先陣を切り二階へ続く階段を駆け上がって行く。既に部屋にたどり着いたのか、宇田川さんの声がここまで聞こえてきていた。

 ……ん? これ俺の部屋ってどうしまするのん? 大きい部屋って言ったよね? ビッグルームって言ってたよね?

 

「……ねぇ、俺ってどうすんの?」

「あ」

「あっ」

「えっ」

 

 声と共に逸らされる視線。輝かしい俺の合宿ライフが、リビングのソファーで寝て過ごす事が確定した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うーん、果たして現在ここに俺がいる意味とは」

 

 正午を過ぎて時刻は午後3時20分。あれから休憩を挟みつつ音を全体で合わせる練習を数時間し、今は湊さんが作曲作業に移ったため各自のパートを練習していた。

 

 最近では楽譜通りに演奏するだけでなく、僅かに動きを付けながらやってみたり、小さなアレンジを加える工夫を取り入れるといった少しライブを意識した練習をするようになってきている。

 とは言っても基礎や楽譜通りに弾けずにそんな事をしても意味がない。だが、今のRoseliaは既存の曲ならほぼ完璧といって良いほどの演奏をできる技術が身についていた。

 

 まだやり始めたばかりで手探りの段階だが、それでも確かな真剣さと楽しさがあった。

 

「ね、このBメロの音の出し方変えてみたんだけどどうかな?」

「そうだなぁ。変える前は力強さがあったけど、なんて言うんだろう……滑らかさ? が出て聞きやすいと思う。でもそれが他の音と重なった時にどう聞こえるかも重要だしな」

「うーん、そっかぁ。オッケー♪ 」

 

 特に、最近は氷川さんに少し変化が見える。前までは『譜面通りの演奏命!』というかどこか決められた教科書のような硬さがあった。その正確な演奏が氷川さんらしいものではあったと思うが、近頃は少しづつその硬さも良い方向に解れてきて演奏中の笑顔も増えてきたように思う。俺は前よりもこっちの方がいいな……なんて密かに思っていたりする。

 

 ちょっと意外に思っただろ。ところがどっこい、俺だってメンバーの事は見てるつもりだ。本来の役割は演奏についてのアドバイスだけだが、毎日ステージに立つみんなを見ていれば多少の変化にはすぐ気付く。自分で言うのもなんだが、鈍感な人間ではないと自負しているのだ。

 

「ちょっとごめん、席外す」

「はいよ〜」

「分かりました」

「すぐ戻るよ」

 

 許可を取りその場を離れる。ソファーでパソコンとにらめっこしている湊さんの横を通り過ぎて、俺はキッチンへ向かう。そう、下調べだ。なんだかんだ言ってここに来てからまだ一度もしっかりキッチンを見えていない。対面式のそれに立つと、練習風景がよく見える。

 とりあえず、俺は調理器具や食器の確認をする事にした。

 

「お、この鍋でかいな。しかもちゃんとガスコンロ。いいね、IHも便利だけどやっぱガスだろ」

 

 夕飯はどうしようか。野菜が多くて食べやすいのがいいだろうな。メンバー全員の好みは全く把握してないが、まぁ無難な料理なら残す事は無いはずだ。

 

「ならやっぱ……カレーか」

 

 ここで登場、万能料理カレー。こいつマジですげぇよな。確実にみんな好きだし、調理過程もそれほど複雑じゃ無い。凝ったものを作るなら別だが、料理を経験したことがない人でも手順通りにやればある程度美味しいものが簡単にできてしまう。

 

 だが、俺は今回野菜をふんだんに使った夏カレーを作るつもりだ。それならバランスも良いし満足してくれるだろう。デザートに何かフルーツがあればもっと良いかもしれない。

 

 一度考えてしまうともう抑えることが出来ない。既に脳内は一刻も早く買い出しに出て食材を確保することでいっぱいになっていた。

 

「ただいま〜……」

「案外遅かったね。何してたの?」

「ちょっとキッチン見てた」

「キッチン? 本街さん、料理をするんですか?」

「まぁね。ほぼ一人暮らしみたいなもんだし」

「すごーい!」

「大変そう……ですね……」

「慣れればそうでもないよ」

 

 それぞれが反応を返す中、やはり俺の中には先ほどの衝動が湧き出ている。

 

「それでですね、買い物行ってきていいっすか? ちょっとテンション上がってて」

「うんうん、分かるよ〜その気持ち」

「そういうものなんでしょうか……? 私は別に構いませんよ」

「氷川さんの許可があれば百人力だ! って事でちょっと行ってくるわ。夕飯、楽しみにしててくれ」

「楽しみ──!」

「楽しみ……です」

 

 練習中にも関わらず許しを得て、俺は財布を手に取ると飛び出すようにコテージの玄関を開け放つ。感謝! 圧倒的感謝……!

 

 

 昼間よりやや落ち着いたものの、未だ確かな熱を持つ日差しを全身に浴びながら、俺はその場で伸びをする。

 その暑ささえ今は無性に心地よくて、つい笑みが溢れてしまう。潮風を感じながら、俺は蝉の声が木霊する道を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 





可愛い友希那を書きたい……ッ!!(願望)

あと、先日初めて活動報告を更新してみました。内容はこの物語が完結した後についての話なんですけど、暇で時間があって興味がある、そんな方は良ければ目を通してみてください。作者が何かを語っています。

新たに評価してくださった 蛇にゃんさん、Pad2さん、暉儚さん、泉奈さん、桜月さん、ありがとうございます!
最近再び日間ランキングにも乗り始め、なんとUAも4万人を突破しました。この作品を読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

ではまた次回!
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