はい、クールタイプガチャではぐみ星4を引き喜ぶと同時に「お前かよ…ッ!」と心が叫んだ作者です。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでしたーっ!」
「ごちそうさま」
「ごちそうさまー」
「ごちそうさまでした……」
「ごちそうさま。じゃあ洗い物するから食器だけ運んでくれない? リサも後は俺やるから休んでていいよ」
若干ゲシュタルト崩壊を迎えそうなごちそうさまを耳に受け、食器を持って立ち上がる。はーい、と緩い返事をした一同はその場で満足そうなため息を吐いた。
よし、満足してもらえたようだ。後でネタバラシしてやろう(笑顔)
それぞれが食器を運び終わると、食器同士がぶつかる音と水音がキッチンに響く。
そこで初めて炒め物に使ったフライパンが放置されている事に気付いた。あー、油だけでも先に拭いとくべきだったかな。
油が溜まったフライパンを取りに行き再びシンクに戻ると、先程まで俺がいた場所に湊さんが立っていた。
「休んでていいんだよ? このくらいの量なら1人でも大丈夫だし」
「水気を拭くくらなら私でも出来るわ。……それに、頼りっぱなしっていうのも嫌なの」
「……りょーかい。なら俺が洗うから拭いてしまってくれ」
「ええ、任せてちょうだい」
それ以上の会話は2人にない。なのに穏やかな空気が流れ、言葉などいらない暖かいものを感じていた。俺だけなのかもしれないが、そんな事も今は気にならない。俺が洗い、それを湊さんが片付ける。流れるような共同作業をお互い自然にこなしている事が心地よかった。
やがて全ての食器を洗い終えると俺たちも遅れてソファーへ合流する。一応フルーツもあるが今は出さないでいいだろう。
「お風呂とかどうする? こういうのって個人によって入る時間に差とかあると思うんだけど」
「いえ、別に特にこだわりはありませんし、時間が空いたなら入ろうと思ってます」
「アタシさっき見てきたけどかなり広かったよ。みんなで入れるんじゃないかな? 」
「温泉かよここ」
何気に設備充実してるよなこのコテージ。
今なら裏に露天風呂があるとか言われても驚かない自信がある。嘘、やっぱ驚くわ。
「ならもう入ろうよ! ねっ、りんりん!」
「わたしはいいけど……みなさんは……」
「私も別に構わないわ。紗夜はどうかしら?」
「全員で入るんですか……? ま、まぁバンド内の結束を強めるという意味でもいいんじゃないでしょうか」
「ぷぷっ、素直に入りたいって言えばいいのに紗夜ってば〜♪ 」
「今井さん!」
え、マジで? 百合展開キタ? 宇田川さんありがとう。その行動力と発言力は本当に凄いと思う。まず最初に白金さんを引き込む辺りとかもう洗練されすぎてお見事としか言えない。
「ちなみにその全員に俺は含まれて……」
「「「「「ないです(ないわ)」」」」」
「ですよね〜」
分かってた。分かってたから。常識的にそんな事有り得ないってちゃんと分かってたから! だからそんな本気で引いたような目で俺を見ないで!
「では、行きましょうか」
「わーい!」
「覗いちゃダメだからね〜?」
「覗かねーよ」
馬鹿め、俺を何だと思ってるんだ。一対多数が負けるなど火を見るよりも明らかじゃないか。俺が動く時、即ちそれは一対一。マンツーマンにこそ価値があると信じているのだ。理由があれば別だけど。
とは言うものの結局覗く勇気も度胸もないから何もしないんだが。くっ、男が足りねぇ。
「……ふぅ〜」
みんなが立ち去ったリビングに俺のため息が溶けていく。暗くなった外を遮る窓は室内の光を反射し、その端にくたびれた様子の俺が映っていた。
あー、今頃キャッキャウフフしてんだろうなぁ……。
「──見に行けない分、想像で補うか」
…………天才かっ! その手があるじゃないか。俺ならいける、俺ならできる。よし目を瞑れ、そして風呂場の壁になるんだ。さすれば必ず見えてくる──ッ!
『あこいちばーん! ほらー、りんりんもー!』
『え、えいっ……! 2番……!』
『宇田川さん! 白金さんも飛び込みはマナー違反です!』
『やっぱ広いね〜。友希那、背中流してあげよっか?』
『遠慮するわ。……リサ、もう子供じゃないんだから』
『えへへ、懐かしいよね〜♪ それにしても……ゆきな〜、ちょっと胸大きくなった?』
『キャッ! ちょっ、リサ! やめ、やめて……っ』
……みたいな!? みたいな事あるのか!? くそっ! この目で見てぇ……(想像です)
あー、めっちゃやばい。言葉に出来ない何かが湧き上がってきてるのを感じる。鎮まれエクスカリバー! 素数だ、素数を数えろ。1、2、3、4……もうダメだ。
「……顔でも洗おう」
煩悩を完全に俺の脳内、ひいては世界から抹消するべく洗面台へ向かう。しかし、当然のようにそれは脱衣所と同じ場所に設置されているため、どの道侵入しなければならない。
今『普通にキッチンで洗えばいいだろ』って思っただろ。ふっ、ここまで来たらもう遅い。顔を洗うという大義名分を得た以上、ただ突貫あるのみ。そう、これは覗きじゃない、覗きじゃないんだ。怯えることは何もないさ本街修哉。自分を信じろ。
そーっと扉を開けると滑らせるように足を進め、音を立てないようにゆっくりと水を捻る。顔にかけると冷たく心地よい感覚が広がり、沸き上がる衝動もスッと引いていく気がした。
『ゆ〜き〜な〜、正直に言ってごら〜ん?』
『リサ……ッ! 本当にやめっ……んっ……』
「…………」
聞こえて来た声に俺は顔を拭くことすら忘れ、顎から水滴が静かに滴る。そっと、肩についた埃を払うような動作で回れ右をし、そのまま脱衣所を後にした。
● ○ ● ○
「ん〜! いいお湯だった〜!」
「…………」
廊下から聞こえて来た声に振り返る。扉を開けて入って来たのは髪にタオルを当てるリサで、その後ろでは他のみんなも同じようなポーズをとっている。
しかも湊さんちょっと不機嫌そう。心なしか頬も上気してるし。まさかあの後…………やめ、もう考えるのやめよう。
「……修哉、何か聞こえなかった……?」
「何も聞いてないです」
「……? そう、ならいいんだけど」
「ど」、と同時に黄金の瞳がリサを睨む。その視線を受けたリサは苦笑いを浮かべて両手を合わせた。そして俺も両手を合わせる。ありがとう。
一部を聞いてしまっているせいで、湊さんが恥ずかしがると俺まで赤くなってしまいそうになる。しかも水気を含んだ嫋やかな髪からはシャンプーの匂いが漂い、それとは別に女子特有の甘い香りまでする。
「じゃあ俺風呂行ってくるわ」
「ごゆっくり〜♪ 」
「ゆっくりするといいわ」
自覚できるほど赤くなった顔を隠すように立ち上がり、そのままリビングを出る。
タオルや着替え一式を取りに行き俺は先程の脱衣所へと向かった。
はいそして現在9:30分! 野郎の入浴シーンなどバッサリカットしていこう。1つ感想を言うなら落ち着けるのが大変だった()
「あれ、宇田川さんどうした?」
ソファーへと近づくと、腕をだらりとさせながら倒れているのが見える。うつ伏せのせいで背中しか見えないがピクリとも動く様子はない。
「疲れちゃったらしいです……」
「あれだけ叩けば無理ないか……」
その時は勢いでなんとか出来てしまう事も、後になって気をぬくと一気に疲れに出るものだ。俺もバイトとかで経験するから今まさにゾンビ状態になっているのも分かる。
「あこちゃん……寝るなら上いこ……?」
「うーん……りんりんも一緒に……」
「……うん、行こっか……。みなさん、おやすみなさい……」
おやすみ〜と返事を返すと、ゆらゆら揺れながら歩く宇田川さんを連れて二階へと向かって行った。
「アタシたちも上行こっか。ガールズトークとかしようよ☆」
「やらないわ」
「やりません」
「えぇ〜? そんなこと言わずに〜!」
こう言う時に相手にされないリサ。まぁこの2人相手なら仕方ないよな、ガールズトークとか興味なさそうだし。
「私はもう少しここにいます」
「そっか、オッケー♪ じゃあ友希那、行こ?」
「はぁ……分かったわ」
「おやすみー」
「おやすみなさい」
白金さん達に続いて2人もリビングから出て行く。なんだかんだ言いつつやっぱ仲良いなぁ……なんて思いながらそっと微笑む。
2人分ほど離れた所に座る氷川さんが小さく動くと、一呼吸置いてから口を開いた。
「本街さん、湊さんとはもう大丈夫なんですね」
「……はい? なんのことでおじゃるか?」
「気づいてないと思ってたんですか? 前の練習中、かなり放心していました。ほんの2日間でしたが」
……え、まじ? 気づいてたの? ダメじゃん『ジャンクフード』作戦。ちょろかったのは俺の方だったか。
「な、なんでそれが湊さんに関係してると……?」
「……はぁ。これも既にメンバー全員が気づいてると思いますが、好きなんですよね? 湊さんのこと」
「えぇ……?」
なんで知ってんの? 俺そんなに分かりやすい……? って思ったけど違ったわ。確かこの人たち全員ファミレスでニヤニヤしてたよな。完璧それじゃん。
周りが気づいても意味ないんだよなぁ。
「まぁ、その……好きなんですけど」
「なら私は伝えた方がいいと思います。私にも最近、想いを伝えてくれた人がいたので」
「……うん、伝えるつもり」
この合宿は俺にとってその為のものでもあるのだ。いつだってそれは忘れていない。恐怖心は多少あるが、それでもこれだけは覆せない。
それに──
「そっか、あいつも伝えたのか」
氷川日菜が言っていた言葉。小さく呟かれたあの一言が向いていた方向は姉の氷川さんだったんだろう。その末が、目の前の表情を見ると良い方向へ進んだ事を理解した。
なら、俺もまだ頑張れるだろう。
「だいたい、湊さんも鈍感なのよ。私ならとっくに気づいてるのに」
「そんなに!? ……って、なんか氷川さんとこんな話するの新鮮だな」
「そうですね。私もまさかこんな日が来るとは思ってませんでした」
練習中とは違う楽しそうな笑みを浮かべそんな事を話し合う。その後もしばらくそんな会話を楽しむと、氷川さんが立ち上がった。
「では、私もそろそろ部屋に行きます」
「そっか。おやすみ」
「おやすみなさい。……応援してます」
「……おう」
ガチャ、とドアが閉まる音を聞き届けるとその場に静かに横になる。
静かに天井を眺めていると、テーブルに置いてあった携帯が震える音がした。
○ ● ○ ●
「……深淵なる闇の力が〜……すぅ……」
「あこ……ちゃん……すぅ」
「ふふっ、燐子も寝ちゃってるね」
「ええ、静かにした方がいいわね」
「それじゃあ、静かなガールズトーク開催〜!」
「…………」
「ちょっと、ノリ悪いよ〜?」
「普通に喋るだけじゃダメなのかしら?」
「それでもいいけど、雰囲気とかあるじゃん?」
照明を点けっぱなしで寝ている2人を置いて、私とリサは布団に座る。自宅ではベッドで寝ているため敷布団が新鮮に感じられた。
──大事な話って何なのかしら……
夏休みに入る前、あの公園で言われた言葉が未だに頭の中を回っている。その意味、内容、目的を考えない日は無かったと言っても過言ではないだろう。良い話か悪い話か、なんて想像を膨らませては萎ませる。そんな事を繰り返しているうちに気づけば当日を迎えていた。
(でも、今日は何も無かったわね)
まさか修哉が忘れている……?
いや、自分で言い出したんだからそれはないだろう。タイミングを逃した……? それとももう既に──
「ゆーきなっ、難しい顔してるよ? 修哉のこと?」
「っ……違うわ」
「うそー、アタシが何年一緒にいると思ってるのさ。それくらい簡単に見抜けるもんね〜♪」
反論虚しくいつもの笑顔で看破される。
「あの時言っていた『大事な話』が気になっただけよ」
「あぁ〜、あの友希那が泣いた日の」
「……寝るわ」
「待って待ってゴメン、もうからかわないから寝ないで!」
からかわれるのは今回が初じゃない。私自身思い出すだけで恥ずかしいのに言葉にされてしまうと悶えそうになる。
抱きしめられた腕の力は強く無かったが、それでも胸は広く優しい匂いに包まれたのだ。……それに情けなくも泣いてしまった。だが、あの日以降さらに距離が縮まったのは確かだろう。実際、私もかなり意識してしまっている。
──料理の時、不自然じゃなかったかしら……?
「あ、また赤くなった」
「……リサ、いちいち言わないで」
「可愛いなーもう。あ、そうだ。いいものあげるよ♪」
「いいもの……?」
リサは携帯を取り出すと、その画面を私に見せないように操作し始めた。何故かしら、良くない予感がする。
「あっ……。送ったよ〜☆」
「あっ、って何かしらあっ、って」
同時に私の携帯が震え一通のメールが届いた。恐る恐るそれに添付されている画像を開くと、顔が一気に熱くなった。
「ふっふーん、よく撮れてるでしょ? ……あと先に謝っとくね。ゴメン、一斉送信しちゃった♪ 」
「わざとね……!」
「わ、わざとじゃないよ! 本当に!」
緩んだ表情のまま問い詰めると、下からゴンッ! という鈍い音が聞こえてきた。しばらく待つと、横に置かれているリサの携帯が震える。有無を言わさずそれを開くと、先程の一斉送信メールに返信が来ていた。
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先生、ありがとうございます……本当にありがとうございます。
一生の宝物にします
ps.もし今の音で宇田川さん達起きちゃったら地震とでも言っておいてくれ
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「〜〜〜っ」
「良かったね〜友希那?」
「良くない!」
良くない、全くもって良くなんてない。今まで以上に膨れ上がったこの気持ちは一体どうすればいいんだ。
「皆さん、まだ起きていたんですか」
「紗夜……!」
「紗夜おかえり〜」
「ガールズトーク、盛り上がってますね……」
少し呆れた様子の紗夜が部屋に入ると、私とリサの横を通り越して布団の上に座る。違う、詳しい定義は知らないがこれはガールズトークなんかじゃない。
呼吸を乱しながら柄にもなく取り乱す私に追い打ちをかけるように、今度は私の携帯に一通のメールが届いた。
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湊さん、まだ起きてる?
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瞬間、心臓が大きく脈打った。
確実に完結に近づいて来ましたね。一回でもいいから友希那と混浴したい(死ぬ)
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もう物語も終盤ですが最後まで楽しんで貰えると嬉しいです。
ではまた次回。