彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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はなしが、すすまない。






エンカウント

 

 

「……仲がいいのは良いことだけど、会計をして貰えるかしら」

 

 

 聞こえてきた声にビクッと肩が震えた。顔だけを動かして湊さんの方を向くと、呆れたような、どこか微笑ましいものを見たかのような表情でこちらを見ていた。

 ん? これなんか勘違いされてね? しかも最悪の方向じゃね? 俺の思い違いであってくれ。

 

「とりあえずリサ、頼んだ」

「オッケー、約束は守ってよね♪」

 

 小声で耳打ちすると、ここは任せとろ言わんばかりのサムズアップをしてレジへ向かって行った。

 

 現在リサは「ごめんごめん、お待たせ〜」と、謝罪をしながらレジを打っている。

 対して俺は特にすることもないので取り敢えず態勢を元に戻し、2人の様子を眺めていた。

 

 つーか落ち着いて見れば湊さん今私服じゃん。……これはやばいな。すげー可愛い。

 普段学校で見かける凛とした格好良さではなく、休日っぽい少しお洒落をした服装に目を奪われる。それに柔らかい笑顔が相俟って、抜群の破壊力を誇っていた。主に俺に対して。多分、幼馴染のリサが居るせいもあるんだろう。

 

「そーだ友希那! もうバイト終わるから一緒に帰ろうよ!」

「ええ、いいわよ」

「ついでに買い物してかない? 最近できたアクセサリーショップ行ってみたいんだよね〜♪」

「構わないわ。なら私は外で待ってるから」

「オッケー!」

 

 トントン拍子で話を進めこれからの約束をする二人。一段落ついたリサは俺の方を向くと、「じゃああがろっか!」と勤務時間の終了を宣言した。

 了解、と短く返すと、店の出口へ向かう湊さんと目が合う。が、すぐに逸らされた。ですよねー……。俺は眼中にないですもんねー……。実際忘れられてたもんなぁ……。

 自分で思ってる以上に俺は女々しいらしい。

 

 そのまま立ち尽くしていると、帰り支度を終えたリサが店から出ようとする。

 

「じゃあね〜修哉。また明日〜」

「おー、じゃ」

 

 自動ドアが閉まると、何度目かになる静寂が再び訪れた。外に見える二人は既に歩き出している。

 

「さて、俺も帰るか」

 

 独り言を呟きながら裏に行き、帰り支度をする。あれ、俺帰ったら今この店誰もいなくなるんじゃね? 本当に大丈夫なんだろうかこの店。客どころか従業員もいねーじゃねーか。

 一瞬もう少しここに残ろうかとも考えたが、家に帰ってする事があるので帰宅することを選んだ。

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 

「ただいま〜〜……。あ゛あ゛ぁ〜、特に忙しく無かったけど疲れたよぉ゛ぉぉ……」

 

 誰もいない自宅の玄関に俺の魂からの叫びが轟く。いやそんな轟いてないな。なんて表現すればいいんだろうか。日本語って難しいわ〜(結論)。

 

 自分で出した声なのに無性に恥ずかしくなり、やや急ぎ足で階段を登り自室を目指す。家に一人だとよくあるよね、独り言。むしろここ最近ずっと話す相手も居なかったから俺が口に出す言葉は全て独り言ばかりだった気がする。

 

 さて、家に誰もいないと言ったが、まず俺には母親がいない。覚えてはないが俺が小さい頃に病気で死んだのだ。だから俺は写真でしか母親というものを見た事がなかった。

 次に父親。父はしょっちゅう長期出張に出ているため基本的家にはいない。兄弟もいない俺を家に一人にする事に最初は抵抗の色を見せていたが、俺にとってはそれが普通だったし特に気にしていなかったのでそれを伝えると、渋々納得して現在もどこかで頑張って仕事をしている。

 

 これが俺の家庭環境だ。普通の人は家に母親がいて、父親がいて、それが当たり前の生活だという。過去にも何回か「お前の家って変わってるな」と言われた事がある。だが、俺にとってはこれが普通で日常だった。

 仮に母親が生きていて、父親が家にいる生活があったとしてもそれを想像することは無意味でくだらないことでしかない。『if』も『もしも』もこの世界には存在しないのだ。

 

 一旦思考を中断し荷物を部屋に置き終えると、夕食の準備をするために一階のリビングへ降りる。手慣れた動作で腕を捲ると、無駄に大きなフレンチドアタイプの冷蔵庫を開けた。

 …………。

 

 

「やっば食材切れてんじゃん」

 

 

 そういえば昨日夕飯食べてないから確認してなかった……。ふざけんな昨日の俺。ちゃんとご飯は食えっていつもテレビで言われてるだろうが。ちなみにダイエットとかも一食抜いたりするよりしっかり三食食べてた方が痩せるらしい。ソースは不明。

 

 取り敢えず食料を調達するために買い物に行かねば。自室から財布を取り、今日の夕飯何にしようかなーなどと考えながら家を出た。

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 

 

 イヤホンを耳につっ込んで歩いていると、家から一番近いスーパーに着いた。一番近いと言っても割と距離はあり、歩いて20分程だ。

 

 店内に入るとエアコンが効いていて寒くないちょうどいい気温に調整されていた。

 さて、結局何を作るかがまだ決まってない。本来ならこの時間にはもう作り始めてるからな。帰って調理してもすぐ完成するような物がいい。

 ……カレーか。カレーだな今日は。うん、そうしよう。

 こういう時のカレーの便利さな。本格的に作ることも簡単に作ることもできる。それでいて美味しいんだからもう最強の料理なんじゃないだろうか。男の胃袋を掴むには肉じゃがとはよく言うが、俺はカレーの方が掴みやすい気がする。

 

 いくら楽に作れると言ってもここであまり時間を使うわけには行かないと思い、パパッとカゴの中に野菜を突っ込んで行く。あとはルーを入れてミッションクリア。空いているレジで会計を済ませる。この時レジ打ちの手を見るのを忘れない。まぁ見てるだけで俺のレジ打ちが上達したらそれはそれなんだけど。

 

 レシートをゴミ箱にシュゥゥゥゥウ! 超! エキサイティン!! して外に出る。そこそこの量が入ったレジ袋を片手に下げ、来た時と同じようにイヤホンを装着しようとしたその時だった。

 

「あれ、修哉じゃん。奇遇だね〜」

「……なんでお前ここにいるの?」

「さっき友希那と別れたんだよ。今帰ってるところ」

 

 これはまたなんと言う偶然だ。神よ、なぜリサなんだ……。ここにいたのが湊さんなら俺は1000倍は幸せだったと言うのに……。

 まぁどうせ緊張して逃げるように帰ると思うけど。我がチキンぶりにはほとほと呆れ果てる。乙女かお前は。

 

「そうだ! 修哉この後時間ある?」

「俺の手みて分からない? 買い物帰りなの」

「少しでいいから! そこの公園でちょっと話すだけでいいの!」

 

 そう言ってリサは路地の曲がり角を指差した。その角を曲がったところにある公園のことを言っているんだろう。

 

 というか話って何? 夕方の公園で女子が男子に話すこととは。一瞬頭に浮かんだ答えは消えていった。ないな。まずない。なんでもそっち方向に持って行くのは恋愛脳の一番悪いところだ。勘違いダメ、ゼッタイ。

 なかなか返答をしない俺を見て旗色が悪いと感じ取ったのか、苦し紛れながらにリサは口を開く。

 

「じゃあバイトの時に言ったお願い使う! 本当にすぐ終わるから!」

「分かった。10分以内にしてくれよ?」

 

 そんな簡単な事にお願い使っていいのかリサ。まぁ本人の自由だから俺は文句言わないけど。

 俺が了承すると、リサはバイトの時のニヤッとした表情になった。本人は気付かれてないと思っているのか、「じゃあ行こっか」と言って俺の二歩先くらいを歩き出す。

 なに企んでるんだこいつ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 公園に着くとまず最初にリサがベンチに腰を下ろした。流れ的に俺も腰を下ろした方がいいのだが、隣に座るのも変な気がしたため隣のベンチに座った。公園に人はおらず、コンビニ同様俺とリサの二人だけだった。

 

「で、話ってなんだ?」

「ちょっと聞きたいことがあってね〜」

 

 そこでリサは言葉を区切った。え、なにこの空気。

 俺は黙って言葉の続きを待つ。横に目を向けるとニヤニヤしながらもなんとか真顔を保とうとするリサの姿が。本当になにしてんだろう……。さっきまでの俺の緊張を返せ。

 

 表情の制御に成功したのか、しばらくの沈黙の後にリサが言葉を放った。否、爆弾を投下した。

 

 

「修哉っていつから友希那のこと好きなの?」

 

 

 

 

 はっ? 

 

 

 

 

 





今日から始まったイベントの星三友希那を1発で引けてテンションとモチベが上がった作者でした。

ではまた次回。

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