彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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どうも、Neo-Aspectイベの順位が2300位台で力尽きた作者です。
それより六兆年カバーだよ! やばくない!? しかも難易度29とか言われてるし! 超超楽しみです!

一度20分前にミスで投稿してしまいすいませんでした。だれも見てない事を祈る()

では本文どうぞ



引き金、若しくは要因

 

 

 

 

 轟音が轟く。

 

 四方の壁に囲まれた空間の底面には蠢く様に伸びるコードやケーブル。

 無機質な防音壁の箱の中には楽器を手にした5人の少女がそれぞれ音を奏でている。そことは別の壁寄りの場所。演奏を見つめる1人の男子は、一音たりとも聴き逃すまいと鼓膜を震わせていた。

 

 普段は走りがちなドラムは僅かにペースを抑えて叩く。だがすぐに熱くなってしまい、つい力のこもった音が響いた。

 それを諌め落ち着かせるかのようなギターの旋律は、正確さを極めた芸術作品。合わせて重低音を響かせるベースの後ろで、弾けるようなメロディーを奏でるキーボード。それら全ての音を背に受けながら、ヴォーカルが美しく喉を震わせる。

 

 

 ──すごい。

 

 

 映る光景に息を飲む。飲み込んだ唾すら何処かへ消えて、他ものなど目に入らない。

 時間を忘れるほどステージに目を奪われていた俺は、演奏を終えたみんなが近づいてきてようやく意識を取り戻した。

 

「すごい……すごいです!! すごくまとまってて、それでいてバーン! って感じで!」

「わたしも……そう思ったよ……」

「同意見です…。いつもより遥かにまとまっていましたし、指が勝手に動いたようでした」

「そうね。音が一つになった気がしたわ」

「アタシも! いやー、みんな同じこと思ったんだねぇ♪」

 

 達成感溢れるみんなの表情に、俺は安堵のため息を溢す。

 床に置かれたノートの開かれた1ページ。そっと撫でるような視線を向けていると、きめ細やかな手がそれを拾い上げた。

 

「修哉、よくこんなに書いたわね。前回との比較……確かに今まではっきりと分けていなかったから、とても参考になるわ。ありがとう」

「……まあ、暇だったから」

「嘘ね」

「嘘ですね」

「嘘……」

「照れてるな〜♪」

「ちょっと外野うるさい!」

 

 ほ、本当に暇だっただけだからね! とは叫んでみても、妙に嬉しさがこみ上げて来る。みんなもそれ以上は突っ込まずに手応えを確かめ合っていた。

 

「それにしても本当にすごいね、これ。いつの間にこんなに書いたの?」

「普通に授業中」

「授業中が暇なんですか…」

 

 はぁ…と呆れたようにため息をつく氷川さん。よく見るとリサや白金さんも苦笑いを浮かべていた。え、なに? みんな暇じゃないの? おいおいまじかよ。

 

 そんな中、氷川さん同様に俺への呆れを露わにしている人が横に1人。友希那はこめかみに右手を当てながら、小さく髪を揺らして俯いた。

 落ち着いた雰囲気と冷静さが相まって、その仕草はとても様になっている。

 

「……だから集中しているように見えたのね。いつもは外ばかり見ているのに、珍しくノートを取っていたようだから」

「いつもは……?」

「……! なんでもないわ、忘れて」

 

 ふと思った疑問の一声に、友希那は一気に顔を背けた。急に揺れた銀髪に視界の多くを埋め尽くされる。

 

「はは〜ん……友希那、『いつも』修哉のこと見てるんだ〜?」

「み、みてないわ」

「嘘、顔赤くなってるよ♪」

「わー、友希那さん真っ赤です」

 「赤くないっ……」

 

 ぽしょりと、呟くような言葉が聞こえた。

 というかいつも見てたのか……見てたのか!? やばいすごい嬉しい。だめだ抑えろ、ニヤけるな俺!

 

 途端、緩む頬を隠すように右手で咄嗟に顔を覆い、自然な動作で明後日の方を向いた。ここはいっそ吐く振りでもしてみようか。空気が入れ替わること間違いなし。主に悪い方向に。

 

「……ホント似てるね〜、2人とも」

「そっくりです……」

「……それはいいから片付けしようそうしよう。結構いい時間だし」

「んんっ、そうね。あなたたち、片付けるわよ」

「はーい」

 

 返事が聞こえると、そそくさとその場を離れて行く。

 数分経ってスタジオがもと通りになると、軽く手を払って息を吐いた。うん、中々いいペースだ。これならもっとゆっくり出来るかもしれない。

 

 ちょっとした達成感に浸っていると、視界の先で手が挙がる。

 

「ねぇ、今日はちょっと早く終わったし、外のカフェに寄ってかない?」

「さんせー!」

「私は別に構わないわ」

「俺も賛成。リサ、ゴチになります」

「奢らないからね!?」

 

 チッ、と舌打ちを溢すも、すぐに柔らかい空気に溶けた。氷川さんも白金さんも賛成意見を挙げたため、荷物をまとめて外へ向かう。

 スタジオの重苦しいドアを開けると、そのまま自動ドアを通り外へ出る。夕刻をとうに過ぎた茜色の空の下、人がまばらなカフェテリアには開放的な空気が広がっていた。

 

 毎回思うんだけどこのカフェ人少なくない? 時間帯が悪いだけで昼が賑わってるんだろうか。

 

「ん〜、涼しー! 今日はいい練習だったね〜」

「あこも超楽しかった!」

「修哉のノートのお陰ね」

「いやぁそれほどでも」

 

 軽く頭を掻きながら小さく笑う。白金さん達もノートを褒めているが、俺は内心微妙に感じていた。

 

 俺が凄いわけじゃない。そう、別に俺は凄くないのだ。凄いのは、褒められるべきはみんなであって俺じゃない。俺が書いたことと言えばいつもと変わらないような事ばっかりだ。ただそれを見やすく纏めて、自身の考えを混ぜただけ。

 何かしたい、新しい事をしたいと手を伸ばし試行錯誤を繰り返した結果なのだ。

 

 でも褒められて嬉しくない訳じゃないから頬は緩むんだけど。実は今もかなり喜んでたりする。

 

「幅広く書かれていて凄いと思うわ。()()()()()()

「っ……そ、そうだ、みんな何か注文する? 俺買ってくるよ」

「あ、じゃあ抹茶アイスお願い♪」

「では私も今井さんと同じもので」

「あこはバニラがいいです!」

「わたしはココアで……」

「……私はアイスコーヒーでお願い」

 

 注文を聞くと席を立って歩き出す。やせいの しゅうやは にげだした! いや仕方ないだろ。あのタイミングであれはずるい。

 気が付けばさっきの思考などどこへやら、俺は心の底から歓喜していた。やはりどこまでも俺は単純らしい。

 

「いらっしゃーい」

 

 笑顔の女性店員に5人の希望と自分の飲み物を注文する。出来上がり次第席まで持ってきてくれると言うので、そのまま踵を返して輪に戻る。

 

「ありがと。いやー、まさか修哉が奢ってくれるなんてね〜。ラッキー♪」

「我ながら盛大なフラグ回収だとは思う」

 

 だがそんな事は気にしない! 今の俺は機嫌が良いのだ。全員分奢ってもお釣りが来るだろう。

 

「そう言えば紗夜、来週一緒にクッキー作るって話してたけんだけどさ……」

「えっ、紗夜さんとリサ姉、一緒にクッキー作るの!?」

「なにそれ初耳。ってかちょっと意外かもしれない。氷川さんもそういうのするんだね」

「い、今井さん……! その話はあまり大きな声でしてほしくないと言ったはずです……!」

「オーケー、なら小さい声でしようじゃないか。氷川さんクッキー作るってマジ?

「本街さんっ!!」

 

 おぉう、相変わらずいいキレだ。Roselia内でツッコミ選手権やったら優勝する事間違いなし。ちなみに予想だとリサが2位で宇田川さんが3位。白金さんは困ったように笑うのが目に浮かぶし、友希那に関してはジト目で睨んできそう。地味にそれが一番嬉しい。

 

「あれ、そうだっけ……ごめんごめん。でも、もうバレちゃったしいーじゃん?」

「お前中々最低な事言ってるぞ」

 

 リサの黒さを垣間見た気がした。怖い、リサめっちゃ怖い。

 

「紗夜さん、クッキーできたらあこ食べたいです!」

「あ、じゃあ俺も食べたい」

「べ、別に構いませんが……」

「やったーっ!」

 

 許可を貰いガッツポーズで喜ぶ宇田川さんを見て、氷川さんが恥ずかしそうな目を向けていた。

 

 でも、氷川さんがクッキーか。茶化してはいたが楽しみではある。なんせあの氷川さんが作るんだ。しかもリサも一緒に……ってちょっと待て、もしかしたら氷川さんも料理オンチなんじゃ……? Roseliaメンバーのことだ、なにがあっても不思議じゃない。

 クッキー作ろうとして炭を作る可能性だって0じゃないんだ。

 

 「リサ、私にも今度クッキーの作り方を教えて貰えないかしら」

 「ふふっ、オッケ〜。とびっきりおいしいの作ろうね♪」

 「ええ、負けないわ」

 

 隣で繰り広げられるヒソヒソ話を耳に受け、俺はぼやーっと空を眺める。肝心の中身が全く聞き取れないのがもどかしい。

 談笑が繰り広げられるテーブルを染める夕日が、遠くの空に浮かんでいた。

 

 ──あ、あの雲数字みたいだなー……1()3()か。

 

 ゆったりとした動きで流れるそれを見て、心で静かに呟いた。やっぱやっちゃうよねこれ。雲に形を当てはめるやつ。

 しばらく視線を漂わせていると、つい先ほど聞いた声が耳に届いた。

 

「おまたせしましたー。みんなの分の飲み物とアイスねー」

「まりなさん! ありがとうございます!」

「ありがとうございます」

「うん、練習お疲れ様ー。ゆっくりしていってね」

「はーい!」

 

 お盆に乗ったそれをテーブルにそっと置くと、ひらひらと手を振ってカウンターへと帰って行った。

 

「まりなさん……?」

「あれ、修哉知らないの? CiLCREの店員さんだよ」

「あー、そういえば見たことあるかもしれない。みんなは知り合いなの?」

「ええ、たまにカウンターで少し話す程度ですが」

「なるほど」

 

 確かによくCiLCRL内のカウンターにいるかもしれない。

 飲み物を飲みながら話を聞いていると、遠くからスーツ姿の男の人が近づいてくるのが見えた。普段ならば決して気には掛けないが、何故だかその時はこの人がこっちに来るという確信があった。

 

 やがて予想通りスーツの男性がテーブル付近まで来ると、ハキハキした口調で声を掛けた。

 

 

「すみません、Roseliaの皆さんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごいお話を……いただきましたね……」

「SMS、だっけ? 今調べてみたけどなんかすごいイベントらしいよ。俺にはどんなのかはさっぱりなんだけど」

「FUTURE WORLD FES.に出たことがあるバンドも多く出演しているイベントよ」

「そ……そんなすごいイベントに直接声を掛けていただけるなんて……」

 

 スーツの男が帰った直後。静けさが訪れたカフェテリアで、俺たちは話し合っていた。

 先ほどの男は SWEET MUSIC SHOWER という音楽関係のイベントの関係者で、話の内容はそのイベントにRoseliaが出演して欲しい、というものだった。突然の事に全員が驚いている。俺も驚いてはいるが、そのベクトルは若干違っていた。

 

「やっぱすごいなRoselia……!」

「ですよねっ! Roseliaは超超超カッコいいもん!」

「修哉、あなたもRoseliaのメンバーなのよ。あなたのお陰で今の私たちがいるの。その事を忘れないで」

「うんうん、修哉も立派なRoseliaの一員だよ」

 

 優しく告げられた言葉が胸に染み込んでいく。心が温かくなるような感覚。俺もRoseliaの一員なのだと、ゆっくり飲み込んでいく。

 

「……っ、了解!」

 

 なんとか言葉を返すと、来るであろうビッグイベントに向けて気を引き締めた。

 それからしばらく話し合っていると、外が暗くなり始めた。カフェテリアにも俺たち以外の人が消え、閑散とした闇が広がる。

 

「さて、そろそろ帰りましょうか」

「だいぶ話し込んでしまったわね。じゃあ、帰りましょうか」

「今井さん、申し訳ないけれど、クッキー作りは SMS が終わってからにしましょう」

「まー、しょうがないよね。りょーかいっ! 終わったらゆっくりやろ♪」

「そうしてくれると助かるわ。終わった後のクッキー、楽しみにしてるわね」

「じゃあそのイベントに向けてセットリストとか考えてみるよ」

「ええ、各自で考えてきてちょうだい」

「「「「はいっ!」」」」

 

 気合いを入れたところで席を立つ。荷物を持って道に出ると、それぞれが帰路につく。

 

「じゃあ3人とも、また明日〜♪」

「また明日〜!!」

「ええ、また明日」

「はい、また……」

 

 大きな声とともに手を振る宇田川さんを、氷川さんが注意する。いつか見た光景だなぁ、と懐かしんでいると、隣から軽く肩を叩かれた。

 

「私たちも帰るわよ」

「うん、帰ろう」

「じゃあ行こ〜♪」

 

 リサが先陣を切って歩き出すと、それに続いて俺たちも足を進める。

 すっかり顔を出した月が照らす夜道の中、小さな談笑が響いていた。

 

 

 

 

 





という事でイベストでいう一話が終わりました。
大まかな流れはイベストと同じですが、所々違います。修哉がいる影響でもあり、作者の個人的な都合でもあります。
会話とか全部そのまんま持ってきても面白くないよね、みたいな。オリジナリティーを発揮してくぜ…!

完結から新たに評価して下さった、並びに評価を上げてくださった 櫛菜さん、アクアランスさん、ジュンさん、ジョイン@にのまえさん、Clear2世さん、零落氏さん、ENABLEさん、書記長は同士さん、白い稲妻さん、クロムスさん、BELLCATさん、9-3さん、shimotukitanさん、大和兎さん、アイリPさん、イノセントさん、悠久の時間さん、Luna_さん、新圧雄太郎さん、風見なぎとさん、c c w さん、タカノリさん、本当にありがとうございます! 今まで何も言わずにすいませんでした!

って事でみんなもっと評価してもええんやで!?(急な評価乞い)

ではまた次回!
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