彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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どうも、本日星4日菜が被った作者です()

この頃更新遅れてほんっとうにすいませんでしたぁぁぁ!!!
飽きたとかじゃないから安心して! むしろモチベは前よりあるから! めっちゃ書きたいって思ってるから!

あまりこういうのを言い訳にしたくないんですが、最近割と忙しめで時間がないんですごめんなさい!お兄さん許して()

そんな中なんとか書き上げた話です。銅像。


幸福、または一抹の憂虞

 

 

「これだと……違う。ならここにこの曲を……」

 

 A4サイズの紙にシャーペンで文字を綴る。現在の時間は午後10時。練習から帰った私は、迫り来るSMSに向けてセットリストを考えていた。

 

「ふぅ……」

 

 付けていたヘッドフォンを外し机に置く。未だシャカシャカと流れる自分たちのバンドの曲を、繋がっている携帯の停止ボタンをタップして止めた。

 セットリストの構成は、考え出すと奥が深い。曲の選定もそうだが、順番、曲調、さらに演奏するメンバーの体力的な面など様々な要因が影響してくる。

 もちろん普段の練習から鍛えてはいるが、観客がたくさんいる大きなステージとあの小さなスタジオでは訳が違う。緊張で生じた僅かな綻びから全体の演奏が崩れる、なんてことはあってはならない。

 だから、私はこの一見単純に見える作業に時間を割いていた。

 

「スタジオの場合、観客は修哉一人になるのかしら?」

 

 正面の壁際で一人、私たちの演奏を見つめる修哉の姿が脳裏に浮かび、ふふっと小さな笑みが溢れた。

 それはあながち間違っていないのかもしれない。いつだって修哉には、彼にはRoseliaを好きでいて欲しいし、ああやって一緒の時間を過ごしていたい。

 個人的な感情が含まれているのは否定できないが、事実なのだから仕方がない。

 

「……?」

 

 ベッドに腰を下ろし伸びをしていると、脇に置いた携帯が震える。練習中からマナーモードにしたままだった事を思い出しながら、連絡の主について思いを巡らせる。

 

 

 ──リサかしら?

 

 

 そういえばさっきカフェテリアでクッキー作りの話をしたばかりだった。でもSMSが終わってからとも言ったはず……。

 小さく疑問を浮かべながら携帯を手に取る。そして、そこに表示されている文字に目を向けた。

 

 

 

 着信 : 修哉

 

 

「っ!?」

 

 

 しゅ、修哉?

 ど、どうすれば。予想外過ぎて心の準備がままならない。

 本人が見ているわけでもないのに軽く前髪を整えると、携帯同様に震える右手で通話ボタンをタップした。

 

「んんっ、も、もしもし?」

『も、もしもし……?どうしたの声裏返ってたけど』

「……裏返ってないわ」

『いや、でも今』

「裏返ってないわ」

『分かった! 聞き間違いです裏返ってません!』

 

 半ば強制的にそう言わせると、電話越しでも変わらぬ様子に安心する。それと同時に笑みも溢れて、気づけば緊張など消えていた。

 

「それで、どうしたの?」

『あー、いや……今何してるかなー、って思いまして……」

「っ、そう」

 

 ……こういう所が修哉はずるい。その一言でどうしようもなく嬉しくなって、満たされて、舞い上がってしまう。まるで狙っているかのような一言に、つい言葉が詰まった。

 

『あ、もしかして忙しかった?』

「別に忙しくはないわ。さっきまでセットリストについて考えていたけど、今はちょうど休憩中」

『あ、俺もさっきまで考えてた。その事なんだけどさ──』

 

 画面越しに聞こえてくる声を耳に受け、私は考えを巡らせる。修哉の意見としては「全部盛り上がる曲でいいんじゃね?」とのことだった。それについては私も同意見。やれる曲数が限られているイベントにおいて、一気に駆け抜けるような演奏をした方が確実に盛り上がるだろう。

 

「それなら曲順は──」

 

 修哉の考えを聞き、私が自分の意見を伝える。そのやり取りの繰り返しで、気づけば1時間が経過しようとしていた。

 

『結構時間経ってるな。すごい早く感じたわ』

「私も。楽しいと時間の経過は早いっていうものね」

『……じゃ、じゃあセットリストはさっき話した感じでいいな』

「……逃げたわね」

 

 露骨すぎる話題転換に苦笑いが浮かぶ。携帯越しにノートを閉じる音が聞こえたことから、修哉なりに今の会話をメモしていた事が分かった。

 

「そういえば修哉、最近のやけに詳しいノート、紗夜と協力してたのね」

『ファッ!? なんで知ってんの?』

「やっぱり……今日の練習で私にノートを見せた時、紗夜とアイコンタクトをしていたでしょ。気のせいかとも思ったけど、本当のようね」

『まじか……って、ノート見ながらよくそこまで見えたな』

「ふふ、私はいつも修哉を見てるもの」

『!』

 

 優しい声音でそう零す。

 正直、紗夜と協力してノートを作っていたというのは確信はなかった。偶然、なんとなく気になったから聞いてみただけのこと。その結果、見事に予想は的中していた。

 瞬間、私の中に一つの感情が湧き出る。

 

 ──なんで紗夜なのかしら……私でもいいじゃない。

 

 多分、これは嫉妬というのだろう。私は同じバンドメンバーの紗夜に嫉妬の感情を向けていた。何をしているんだと自己を客観する自分もいるが、同時にやはり私に何も言わなかったことが悔しくなって、気がつけば普段は決して言わないようなセリフが口から溢れていた。

 

『……そういうの、ずるいと思いまーす』

「お返しよ。……それで、何故紗夜なのかしら?」

『えーと、それはですね……』

「私に言えない事なのかしら?」

 

 ちくり、と胸が痛んだ気がした。

 聞きたい。私じゃなくて紗夜を頼ったその訳を、修哉の口から教えて欲しい。そんな願望が湧き出る中、追求するなと訴えかける自分もいる。

 誰にだって隠しておきたいことはある。頭では分かっているのに、心は思考をやめない。

 

『いやいや! 全然そんな訳じゃないんだけど……カッコイイところを見せたかっただけと言いますか、褒めて欲しかったといいますか』

「──え?」

 

 聞こえた言葉に、つい素っ頓狂な声が漏れる。

 

 ──私に良いところを見せるため……? カッコイイところを見せたくてあのノートを……?

 

 少しずつ意味を理解し始め、気づけば口元が緩んでいた。

 

「ふふっ、カッコいいわよ」

『あーやめやめ! 恥ずか死ぬからもう終わり!』

「ええ、そうね。じゃあ、そろそろ寝るわ」

『もういい時間だもんな。オッケー、俺も寝るよ』

「おやすみなさい。また明日」

『うん、また明日』

 

 

 

「…………」

『…………ちょっと、通話切らないのん?』

「……修哉こそ、寝なくて良いのかしら?」

『よし分かった。じゃあいっせーのーせで切ろう」

「分かったわ。それじゃあ……いっせーのーせっ」

『………………』

「………………ふふっ」

『切らないのかよ!』

 

 やや大きめなツッコミが入る。そんな状況が面白くて、さらに笑みが零れてくる。

 

「何してるのかしらね、私たち」

『本当だよ。今度こそ切るからね? じゃあ、改めておやすみ』

「ええ、おやすみ」

 

 今度こそ耳から携帯を話し、通話終了ボタンをタップする。そのままベッドに倒れ込むと、枕に口元を埋めた。

 

 楽しい。時間を忘れてしまうほど、私は修哉との通話に夢中になっていた。ただ夜に彼氏と電話をする。たったそれだけのことで、私の心はどうしようもなく満たされていた。今だって、抱いた枕に隠した口元はだらしなく緩んでいる。

 

 ──単純ね、私って。

 

 それもこれも全て修哉が悪い。そう頭で結論付け、部屋の電気を消した。途端に部屋には暗闇が訪れ、カーテン越しに僅かに差し込む月明かりが美しく映る。

 今頃、修哉も同じようにしているのかしら。そんな事を考えるだけで心が踊った。今の幸せがずっと続けばいいのにと、そう考えずにはいられない。

 

「おやすみ、修哉」

 

 ぼそっと小さく呟く。熱くなる顔をそのままに、私は静寂に目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ● ○ ●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、SMS用のセットリストの案よ。これを見て」

 

 そう言って、友希那はきめ細やかな銀の髪を揺らしながら一枚の紙を見せた。髪だけに。…………くっ、なんてセンスの無いギャグを思いついてしまったんだ……!

 

「演奏できるのは3曲だけ。昨日修哉と一緒に考えて、緩急をつけずに一気に駆け抜けるような構成にしてみたわ。どうかしら?」

「はいっ! あこ、すっごくいいと思います! 超カッコいいRoselia、見せちゃいたいです!」

「私も問題ないセットリストだと思います。宇田川さんの体力が心配ですが、そこはなんとかしましょう」

「ハードな演奏が続くけど……あこちゃん、大丈夫……?」

「が、頑張るっ!」

 

 ああ、確かに宇田川さんには少しキツいセットリストかもしれない。考えている最中にも思ってはいたが、改めて見るとこの三曲は中々だ。

 だが、本人が頑張ると言っているんだ。それをいちいち言わないでもいいだろう。Roseliaのドラムをなめてはいけない。

 

「アタシも超いいセットリストだと思う! 3曲の中に、アタシたちが詰まってるって感じ!」

「当然俺も賛成。じゃあ今日の練習はこの3曲の確認かな? 俺も頑張って改善点探してみるよ」

「そうね。では、始めましょうか」

 

 言外に「時間がもったいない」という意味を込めて、友希那はマイクスタンドに向かい歩いていく。続いて他のメンバーも楽器を持ち、ステージ側へと足を進めていった。

 

「よし、集中」

 

 ノートの準備はできた。耳も研ぎ澄んでいる。あとは僅かな音の差を拾い、彼女たちに伝えるだけだ。

 

 広がる光景ははいつ眺めても美しく、俺の瞳を通して脳に伝わる。

 シンバルのリズムと共に始まった演奏が、今日もスタジオに響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の練習疲れた〜っ! もう腕が動かないよ〜」

「あこちゃん……お疲れ様」

「よく叩けていたと思います。この調子でお願いしますね、宇田川さん」

「紗夜さん……はいっ! 最高にかっこよくやっちゃいます!」

 

 街灯が照らす帰り道。雲が月を隠している所為で部分的ではあるが、街は灯りで溢れていた。

 練習からファミレスに向かういつもの流れを終えて、今は別れ道までみんなで歩いていた。

 

「いやー、アタシも今日の練習、最近で一番ハードと思うなぁ」

「これくらいで根を上げていてはダメよ。本番まではこのペース……いや、これ以上のペースで練習をしていかないと」

「だよね〜、ゴメンゴメン!」

 

 胸の前で両手を合わせ、リサが友希那に軽く謝る。だがその表情は柔らかく、照らされた口元は笑みを浮かべていた。

 

「なんで笑ってんの? ファミレスで変なもんでも食ったか」

 

 今日何食べたっけ。確か友希那がサラダ、宇田川さんがいつものハンバーグプレート、白金さんがチーズグラタンで、氷川さんとリサがポテトだけだっけか。

 うっわ原因ポテトじゃん。でも氷川さんには特に変わった様子はない。

 ……なるほど、もう末期なのか。

 

「……本街さん、今すごく失礼な事を考えませんでしたか?」

「かっ、考えてません!」

 

 怖っ、氷川さん怖っ! なんでみんなさらっと心の中読んでくるんだよ。俺も読みたい。

 

「あはは……そういうわけじゃなくてさ、なんていうかアタシ、嬉しくって」

「嬉しい? ハードな練習が……?」

「えっ……? ちょっとそういう話は他所でしてくださいよ奥さん」

「じゃなくて! SMSみたいな大きいライブに出られるってこと。アタシ達も、だいぶいい感じになってきたのかなーって」

「おぉう、ハードが好きって話の後だとSMSすらそういう意味に聞こえちゃうんだけど」

「ちょっと修哉、そろそろ怒るよ?」

「ゴメンナサイ」

 

 いや仕方ないじゃん、多感な高校2年なんだもの。SとかMとかSMSとか聞いた日にはそっち方向に持って行ってしまうものだ。そう考えるとヤバいイベントだなSMS。挟まれてる感が特にヤバい。

 

 くだらない思考を浮かべていると、リサが再び口を開いた。

 

「FUTURE WORLD FES.のコンテストに出た時、アタシ達Roseliaは伸びしろがあるって言ってくれたじゃん? やっぱ、審査員の目は伊達じゃないんだなーって」

「FUTURE WORLD FES……? なにそれ」

「あー、修哉は知らないのか。修哉がRoseliaに参加する前、そのフェスのコンテストに参加したんだよね。結果は落選だったんだけど」

「審査員はもっと成長した姿を見せて欲しい、と言っていたわ」

「へぇー、そんな事あったんだ」

 

 FWF……か。つくづく音楽関係のイベントは2文字のアルファベットで真ん中を挟むのが好きらしい。

 

「演奏技術もそうだけど、最近バンドの雰囲気もすごくいいし、このままいけばきっと……」

「……まだ先のことは分からないわ」

 

 その声は、夜によく通る声だった。心なしかトーンが落ちたその音が、やけに素直に耳に響く。なにがそれを誘ったのかは測りかねるが、彼女達に何か思わせるものがあるということは理解した。

 

 それに、さっきリサが言った言葉もそうだ。『最近バンドの雰囲気もすごくいい』。特に深い意味はない一言なのかもしれない。

 俺自身も、参加したての頃よりバンドの雰囲気は良くなったと思っている。それは主観的なことで、主な理由は俺という存在がRoseliaに溶け込めたという事が大きかった。

 

 でも、さっきのリサの言葉はまるで過去に仲が良くなかったとでも言っているかのように聞こえる。俺の知らない事だけに、Roseliaの過去が無性に気になってしまった。

 

「あ、はは……ゴメン。アタシつい浮かれちゃって」

「SMSから直接声がかかったのは私もとても嬉しいと思っているわ。それに、以前のりバンドの雰囲気がいいのは私や他のメンバーも感じていることよ。原因は……」

「お、俺?」

「ええ、修哉の影響が大きいわ。いつも言っているでしょう? あなたはRoseliaにとって必要な存在、って」

「うんうん、アタシもそう思う。やっぱ修哉が来てから賑やかになったよね♪」

「ちょっと照れるんでやめてもらっていいですかね」

 

 そんな会話をしながら道を行く。俺は照れながらも、続けて話に耳を傾けた。

 

「だから、こういう時こそ油断をしてはいけないってこと。明日は今日以上にいい練習にするわよ」

「おうよ!」

「だよね。よーっし、頑張ろうっ!」

 

 気が付けば別れ道についていて、俺、リサ、友希那以外の3人が手を振って別の道へと進んで行く。

 それを見送ると、俺たちも家を目指して歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 胸に残る僅かなしこりに気付かずに。

 

 

 

 

 

 





という事で癒しの投下でした。可愛く書けていたら嬉しいです。

徐々に不穏な気配が漂って来てますが、多分2話ほど後になればシリアスが訪れていると思います。

新たに評価してくださった&評価をあげてくださった
うたたね。さん、巌窟王蒼魔オルタさん、ソウソウさん、悠久の時間さん、パスタおにいそんさん、Luna_さん、ツモられさん、神山涼さん、ユマサアさん、黒き太刀風の二刀流霧夜さん、黒麒麟さん、ヨルノテイオウさん、Syo5638さん、Solanum lycopersicumさん、神代さときさん、ありがとうございます!
お気に入りをしてくださった方もありがとうございます!

総合評価が2000を超え、お気に入り件数も700を超えました。本当にありがとうございます!

そんなことより前話の評価乞いの後にめっちゃ評価上がった事に驚いたんだけど()
めっちゃ嬉しかったです。今後も評価や感想お待ちしてるんで、よければどんどんお願いします。

次回はいつになるか分かりませんが、必ず投稿するので失踪の心配はしないでくださいな。ではまた!
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