どうも、毎回更新するといって更新しない詐欺をしている作者です。(悪気はない)
そんな事より聞いてよ! ドリフェスで友希那出なかったんだよ!! まただね! ゔわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛あ゛ん(号哭)
本文どうぞ……。
タッタッタッと、焦りを孕んだ足音が通路に響く。静かな空間に響くその音が、俺を余計に焦らせていた。
「やっべぇ……! なに余裕ぶってんだ馬鹿野郎!」
これは某慢心王もビックリするレベルの慢心さ。いや、違うか。別に慢心してねーわ。焦りすぎて思考が意味不明な方向へ向かっていく。意味不明すぎて図にのるなよ雑種! とか言われそう。
今さっきまで俺がいた控え室から客席までは建物の構造上僅かに距離がある。そのせいで俺が客席に着くまでにRoseliaの演奏が始まってしまう可能性があった。
人目がない通路を陸上選手もビックリのスピードで全力疾走で駆け抜ける。ふっ、舐めるな。かつて友希那を背負って逃げ回った時に比べればこの程度なんとでもないのだよワトソン君。
「はぁっ、はぁっ……間に合った」
時間にして数十秒ほど。一分もかからない内に客席までたどり着く。全身の筋肉やら内臓やらからどっと押し寄せる疲労に、俺は膝に手を当てて荒く呼吸を繰り返した。
も……もう無理……。いや仕方ないじゃん、最近全然運動してなかったんだから! つーか最近どころかもともと運動なんかしてなかった。くそっ、もういっそのこと空港にある歩くエスカレーター的なの全国に実装してくれないかな。いろいろ進むぞ。運動能力の退化とか。
ある程度整った呼吸を続けステージを見やると、ちょうどみんなが出てきたところだった。
「ワァァァァァァァァァア゛ア゛」
腹の底から響くようなたたましい歓声と共に会場が騒めき出し、極彩色のサイリウムが闇を飾る。
うぉお!? お前らガチ勢か!? Roseliaファンか!? よかろう、俺も加わろうじゃないか。
「おっ、Roseliaじゃん」
「へー、今日ってRoseliaも出演するんだ」
「Roselia?」
「えっ、お前知らないの? 最近流行ってるだろ、ほら、ガールズバンドってやつ。その中でもずば抜けて上手いのがこのRoseliaなんだよ。なんでもプロ並みだとか」
「へー、凄いんだなー」
「あ〜燐子ちゃんバブみ〜」
あらゆる所からRoseliaの話が聞こえてくる。だよね! 凄いよねRoselia! わかるよ。ただ俺がRoseliaの関係者だなんて事は誰も思いもしないんだろうな、なんて事を考えて、少し自慢げに息を吸った。僅かに熱気が籠った会場のぬるい空気が肺を満たす。最後のは……聞こえなかったことにしておこう。
『Roseliaです』
友希那の声がマイク越しに響き、会場を震わせる。数秒前までの騒めきがしんと静まり返り、暗い会場に鮮やかなサイリウムが輝く。
そして、演奏が始まった。
静寂を打ち破る一曲目は『BLACK SHOUT』。特徴的なイントロから透き通るような声が踊り、ドラムを始めとする楽器が音を轟かせる。
やや顔が強張りながらもドラムを叩く宇田川さんも、緊張からか必死に鍵盤だけを見つめる白金さんも、反対に緊張が解けたのか体を揺らしながらベースの弦を弾くリサも、冷静に見えて僅かに口角が上がっている氷川さんも、そのセンターで一際華麗に目を瞑り、喉を震わせる友希那の姿も。俺からは、全てがはっきり見えていた。
「すげぇ! やっぱみんなすげぇ!!」
柄にもなく声を張り上げてサイリウムを振り回す。届かなくても、楽器の音にかき消されても構わない。みんなが大きなステージで演奏している。いつものように間近でそれを見る事はできないけれど、どうしようもなく興奮して、口角が上がって、飛び跳ねたくなるこの気持ちを今は叫ばずにいられなかった。
だが、そこでふと気が付く。
──あれ、どこ行くんだろ。
あちらこちらの客席から人がいなくなっていく。気になり出したら止まらない性格上、一度演奏音から意識を外し人の声を聞き取るために耳を集中させた。
「今のうちにトイレ行こうぜ」
「あっ、じゃあついでにコンビニ行かね? 小腹空いたんだよね」
「まあ、高校生ならこんなもんか」
「自販機で飲み物買ってこようかな」
「あ〜燐子ちゃんバブ」
「……は?」
……はっ? What? Why? 何言ってんだこいつら。
トイレ? トイレだと……? そんなもん先に済ませとけよ時間あっただろ! コンビニも同じ! あ、でも歩いて数分だからわりと近いよ! あとお前、残念だったな自販機の飲み物は売り切れだ。コンビニまで行ってこい。最後のは……もう、いいだろ。
ふぅ……少し荒ぶったが、心の中くらいなら許して欲しい。こんなの実際口に出したら即連れ出されて集☆団リンチされて、ついでに金まで巻き上げられてしまうかも知れない。つまり死ぬ。暴力反対、平和的に行こうじゃないか。
そうこう考えているうちにもどんどん曲は進み、同時に人の数も少しづつ減っていく。俺は視界の端に見える出口から意図的に視線を逸らし、食い入るように光を集めるステージに目を向けた。が、どうしても動く人が目に映る。複数ある出口に吸われるまばらな人。徐々に寂しさを漂わせる始めた客席が、悲しく音を跳ね返していた。
「高校生ならこんなもん……か」
この場を後にする人たちもこう思っているのだろうか。確かに今日演奏をしてきたアーティスト達はプロだった。知名度も実力も経験も、どれもが圧倒的に上の存在。確かに『高校生なら』と感じるのは無理もないのかも知れない。
でも、それでも俺はそう思わない。なぜ『高校生でこの舞台に立つなんて凄いな』という思考が出来ないのか。どうして彼女達の演奏を軽んじるのだろうか。なぜ、純粋に応援ができないのだろうか。
「──なんて、詭弁だな」
勝手がすぎる思考回路に、一つ冷静に意見を投げる。
逆の立場なんていくらでもある。自分の興味のないものを見たって仕方がないのだ。いつだって取捨選択の連続で、去る去らないも己の意地で、それは誰かが決めたものじゃないから。
だから、俺はここに居よう。そう思って目を開き、再びサイリウムを振り回す。
後でみんなに会う時にはばっちり感想を言おう。俺らしく変に飾らずに、それこそドン引きされるくらいの表現で伝えてみてもいいかも知れない。そんな事を考えながら、轟く音を耳に反響させる。
俺たちが考えたセットリストは一曲目にRoseliaの代表曲である『BLACK SHOUT』、二曲目にさらに盛り上げ会場を沸かせる『熱色スターマイン』、そしてトドメの『LOUDER』である。あの時話し合った『最後まで駆け抜ける』という構成上、必然的にこうなった。熱色スターマインを『Re:birth day』にして緩急をつけるか、『Determination Symphony』に変えるかは悩みどころだったが、狙いどおりオーディエンスが頂点に狂い咲いてくれたようで何よりだった。
宇田川さんも絶好調らしく、いつにも増した迫力でドラムを叩いている。
三曲目も終盤に差し掛かり、ラストスパートが掛かってくる。そしてそのまま演奏が終わり、再び会場に歓声が上がった。
『ありがとうございました。Roseliaでした』
凛々しい声で軽く礼をすると、みんなは舞台袖に戻って行く。
会場は熱気をとどめたまま、彼女達の出番は終わりを迎えた。
● ○ ● ○
「お疲れ様」
「あ、修哉」
「修哉さん」
控え室のドアを開く。タオルで汗を拭きながら水分補給をしているみんなの姿が目に映るが、その瞳はどこか曇って見えた。
「え、なになにどうしたの。みんなすごかったじゃん! もうずっと鳥肌立ちっぱなしだったからね俺。このまま死んでもいいってくらい最高の演奏だったよ」
「……」
「……ありがとう」
重苦しい空気に気まずさが充満していく。俺が出した明るい声も飲み込まれ、伏せた視線の先に消えていった。
「……悪くない演奏だったと思います」
それは、誰に向けて放たれた言葉だったのだろうか。
「そんなことないって」、「全く、向上心高いなぁ氷川さんは」なんて、かける言葉はいくらでも思いつく。
それでも、呟くように言葉を零す氷川さんに俺は言葉を返せなかった。納得できないような、不満を感じているような瞳の奥に居心地の悪さを感じる。
なになになんなの、なんでこんなシリアスっぽくなってんの? 俺こういうのあんまり得意じゃないんだけど? どのくらいか数値化すると『シリアス耐性たったの5か、ゴミめ』みたいになっちゃうんですけど?
全員がこうも暗いと流石に調子が狂ってしまう。数瞬悩んだ末の結論は、空気を読むということだった。
「どうしてお客さんがどんどんいなくなっちゃったんですか? あこ、何回も間違えてたところも、今日はちゃんとできました。なのに……」
無言。誰も言葉を返さない。沈黙が辛くなって、耐えきれず俺は宇田川さんに同意するべく口を開いた。
その瞬間、控え室のドアが開く。
「Roseliaさん、お疲れ様でした」
「あっ……お疲れ様でした!」
「えっと、あなたは?」
「え……? あー、俺です俺、ほら」
「そんな詐欺じゃないんだからさ」
突然の振りに混乱し、電話越しに聞こえて来たら即切断か通報もの、下手すれば動画を撮られてネット上にネタとしてあげられそうな言葉が飛び出した。陰キャ兼コミュ障ぼっち舐めんなよ。他人との意思疎通レベルの低さにおいて俺の右に出るやつはいないのだ。
「えっと、俺はRoseliaの友達といいますか、関係者といいますか……」
俺はRoseliaのなんなのだろうか。そんな素朴な疑問が頭に湧いた。協力者というには響きが固いし、知り合いというにはあまりに遠い。先日俺もRoseliaの一員だ、とは言われたものの、こういった第三者への客観的な説明には適していなかった。
「彼は私たちの友人です。それで、何か話しがあるんじゃないですか?」
「ああ、そうでした。すいません」
友人、という説明に一応納得したのか、目の前のスタッフは話を戻す。
「皆さん緊張してましたか? 以前聴いた時と印象が違ったような……音が変わったように感じました」
そう言いながら、僅かに視線を俺に向けたのを俺は見逃さなかった。
「あ、あはは〜! すみません、緊張しちゃってたかもしれません……」
「それは──っ」
嘘だ、と言いかけて口をつぐむ。
あの場で誰よりも自然体だったのは間違いなくリサだった。この場合の緊張とは、悪い意味でのものではなく良い意味でのものを指す。このスタッフの口調から察するに、今回の演奏に何か腑に落ちない部分を感じたのかもしれない。
「ま、まあ高校生ですからね。まだまだこれからですよ。よければ、このあとの演奏も自由に聴いていってください。それでは、今日はありがとうございました。お疲れ様でした」
一礼とともに、スタッフは部屋から出ていった。ドアの閉まる固い音は宙を漂い、再び顔を出した静寂に飲み込まれていく。
なんとなく雰囲気に耐えかねた俺は、先ほどと同じ口調で口を開いた。
「さーて、この後どうする?」
どうする? とは聞いたものの、ぶっちゃけ家に帰りたい。元から人混みは得意ではないのだ。多少なりとも疲労はある。
「……今日はここで解散にしましょう」
「了解。じゃあ帰ろっか」
「ごめんなさい、少し一人にして欲しいの」
「友希那……」
心配そうなリサの声が小さく響く。一緒に帰る提案を断られた俺は、ただその場で小さく笑った。
「そっか、じゃあ今日はお疲れ」
「ええ、お疲れ様。……それじゃあ、私はここで」
荷物をまとめ、友希那は控え室から出ていく。
えっと……この後どうすんだろ。一人にして欲しいなら今すぐここをでるのもアレだし、かと言って留まり続けるのも良くはないだろう。
「あー、そういえば反省会だけど……どうする?」
「そうですね……今井さんはどう思いますか?」
「えぇっ、アタシ? うーん、そうだなぁ……あこはどうしたい?」
「あ、あこですか? えっと、あこはりんりんが行くなら……」
「ええっ……? あ、あの……わたし……」
「ねぇなにコントやってんの」
自分の意思を持てって親に教わらなかったのか。因みに俺は教わってない。自分しかいなかったからね! ……おいそこ、鼻で笑うな。
とはいえ、今ので幾分か空気が解れたのも事実。重かった表情は、やや晴れやかに見えた。
「じゃあ今日は無しにしとこう。また後日にすればいいよ。友希那抜きでやるのもなんか嫌だし。とりあえず帰って休もうぜ」
「そうですね」
「はいっ……!」
「はーい!」
「賛成〜。じゃあアタシたちも帰る準備しよっか」
ふぅ……こんな感じでいいのだろうか。全く、メンタルケアなんて専門外だっつーの。でもまぁ、今回は仕方ないのかもしれない。客席にいた俺以上に、ステージからは全て見えていた筈だ。一人先に帰った友希那もそのことについて整理したかったんだろう。
やがてリサ達が荷物を整え終えると、俺たちは会場を後にした。
緩やかに風が流れる空には西に傾いた陽が浮かび、その前を薄い雲が流れていく。俺はみんなの数歩後ろを歩きながら、ただその景色を眺めていた。
やっとイベストでいう三話が終わった……チカレタ。このペースで行ったらこのネオアス編終わるまでに20話くらい行くんじゃないかって若干不安なんだけど。そこは頑張ろうと思います。
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ではまた次回! (今度こそ)