彼女に出会った高校生活   作:ビタミンB

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あれ……?
評価の色が………。




……ん??




森と山道と氷川日菜

 

 

 

 

 春の遠足当日。

 毎年恒例のこの行事に参加するべく俺は通学路を歩いていた。

 いやぁ、危なかった。いつも通りの時間に起きてたら確実に弁当抜きコース確定だっただろう。湊さんに感謝を。

 

 空に浮かぶ雲の形を他の何かに連想しながらのそのそ歩く。昔はよくポケモンだのデジモンだのキャラに似た雲を探したものだ。上を向いて歩こう選手権があったら一位を狙えたんじゃないだろうか。

 

 

 しばらくすると校門が見えてきた。玄関前には、クラスごとに別れたバスが横並びに停車されている。そのまま足を進めて、丁寧に『Cクラス』と書かれた紙を持っている先生の横を通り過ぎてバスに乗り込む。

 中で出席を取っているらしく、運転手の真後ろ、一番先頭の席に担任が座っていた。

 

「おー、来たな本街。おはよう」

「おはようございます」

「もうほとんど来てるから空いてる席座れ」

 

 そう言って担任は後ろを指差す。それに習って視線を移すと、そこには奥から詰めるというマナーを知らないのか、バラバラに座るクラスメイトの顔が見えた。

 でたー、でたよこれ。2つ空いてる席が無いから必然的に誰かの隣になっちゃうやつ。くっ、気軽に話ができる人を1人くらい作っておくべきだった……。しかもお前ら窓側好きすぎだろ。俺も窓側が良かったのに……。

 

 そこで俺ははっとなり、最後の頼みの綱である湊さんを探す。が、その隣には名前も知らない女子が既に座っていた。ですよねー。

 諦めた俺は適当な席に腰を下ろした。それと同時に耳にイヤホンを突っ込む。これにより社交辞令的な会話を遮断。ついでに周囲の雑音も全てカットできる。さらに俺は通路側の席のため到着まで爆睡できる。俺がどかないと窓側の奴は出れないからな。

 何? この作戦完璧すぎない? 我、超策士。

 

 流す音楽をシャッフルに設定して、静かに目を閉じる。しばらくすると、全員が揃ったのかバスが動き始めた。

 ガタガタと体が揺れるが、そんな事は関係ないと言わんばかりの睡魔に襲われ、俺は意識を刈り取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「名簿順に整列しろー。室長は点呼を取り次第報告してくれ」

 

 場面は変わってバスの外。今は学年全体が登山道の入り口付近に集合している。

 

 到着と同時に起こしてもらうはずだった俺の作戦は失敗に終わった。まさか俺の隣にいた奴が気が弱いタイプだったとは……。見事に爆睡している俺を起こすに起こせなかったそいつを見て、担任が直々に俺を叩き起こしに来た。その後、流れでそのまま軽い説教をされた。

 策士、策に溺れるとはまさにこれ。

 

 点呼を取り終え、各クラスごとに登山を始める。とは言ってもそこまで整列に厳しくないのか、すぐに他クラスと混ざっていた。実際、俺の斜め約3メートル程前にはリサと湊さんがいる。あれ? 流石に早すぎない? Aクラスは先頭にいるはずなんですけど? どんだけ湊さん好きなんだよ。負けられない戦いが此処にある。

 

 本来は静かな山道の中に、青春真っ最中な集団の声が響く。談笑をしながら歩く奴らを横目に、俺は1人で黙々と山登りを楽しんでいた。流石にここでイヤホンするのはNGだしな。

 

 ふと、視界に湊さんが入る。

 バスの時はつい助けを求めようとしてしまったが、今回はそういう訳には行かない。

 元より湊さんには湊さんの、リサにはリサの日常があるのだ。そこについ最近関わり始めた程度の俺が図々しく突っ込んで行っていい筈がない。

 進むとは決めたがここは譲らない。言わば戦略的撤退、押してダメなら引いてみろ理論だ。まぁ前よりは確実に押せてると思うけど。多分俺に足りないものは、それはぁぁぁあ! 情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりもォォォオ! 

 

 

 速 さ が 足 り な い !! 

 

 

 遠足を楽しむと言っても、ただ足を進めるしかする事がないので、俺は後ろから彼女を見ることにした。見るだけなら悪くないだろ。

 体操着、いいよね。

 

 現在湊さんはリサを含む女子達と会話を弾ませている。時折見せる微笑みの効果で俺の頬も緩んでいた。あぁ、山頂から見る景色なんかよりこっちの方が絶景なんじゃないかな。これを見放題とかやばいだろ。

 でもこれだけガン見してる事気付かれたら殺され────

 

「わっ!」

「ルウッ!?」

「!?」

 

 急に真横から声が聞こえてつい奇声を発してしまう。

 おい、誰か知らないけどお前。自分から驚かせといて何でお前が驚いてんだよ。しかもドン引きしてるし。流石に怒るぞ。

 

「きゅ、急に驚かせてごめんね? 聞きたい事があって話かけたんだー!」

「は、はぁ」

「キミ、この前の昼休みにリサちーを呼び出してたでしょ?」

「あー、うん」

「キミはもしかして……リサちーの彼氏とか?!」

「はい?」

 

 まーたこの質問か。あの時のモカ以来だからこの人で2人目になる。なに? そんなに俺ってリサの彼氏に見えるの? 嫌ではないけどちょっと凹む。湊さんともっと学校で話してみようかなぁ……。

 

「勘違いしないでくれ、違うから。マジで」

「えぇー! 嘘ー! だって今もリサちーのこと見てたじゃん!」

 

 そこで、ふと周りの視線が俺達に向いていることに気づく。ギギギ、と音がしそうなくらいぎこちない動きで首を動かすと、やっぱり湊さん達もこちらを見ていた。

 お互いに目が合う。ただ、一刻も早くこの視線の雨から逃げ出したかった俺は、横でこの状況を面白がっている女子を連れてその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 元々Cクラスがいた場所から少し後退した所で俺は立ち止まる。それに習うように、さっきの女子も立ち止まった。

 

「ちょっと? 何してくれてんの? みんなこっち見てたんですけど?」

「面白かったよね〜っ! 今のはかなりるんってきたよ!」

「いやこないから」

 

 よく考えたら逃げてきたのまずかったんじゃね? あの声のボリューム的に絶対本人に聞こえてただろ。やらかした。逃げるにしても誤解を解いてからにするべきだった。

 

「まぁいいけど……。とりあえず俺はリサの彼氏でもなんでもないから。この前のはちょっとバイトの事で話があったんだよ。同じ場所で働いてるし」

「えぇ〜、でも〜……」

「デモもストライキもありません」

 

 努めて真剣な顔でそう言うと、分かってくれたのか、『そっかー』と言って残念そうな顔をした。嘘の中に真実を混ぜる。これが嘘のコツなんですよワトソン君。

 

「なーんだ、本当にリサちーの彼氏じゃないのかー……。あんまりるんってしないなー」

「あー、うんうん分かるわー。全然るんってしないよなー。で? なにそれ」

 

 擬音なの? それ。超感覚言語すぎて何一つ伝わらないんですけど。

 

「えー? 分からない? こう……るんっ! ってしたりビビッ! ってするやつ!」

「ごめん分からない」

 

 あれだろうか、スカウトマンでもしてるんだろうか。渋谷とかでそんな感じで声かけてそう。

 

 会話が一区切り着く。改めてこの女子を見ると、誰かに似ている事に気が付いた。誰だっけな……。

 

「あー、氷川さんか」

「そうそう! あたし氷川日菜。パスパレでギターやってるんだ〜!」

「俺は本街修哉な。氷川紗夜って人知ってる?」

「知ってるよ。なんたってあたしのおねーちゃんだからね!」

「まじか」

 

 こいつと氷川さん姉妹だったのか……。通りで似てる訳だ。ギターやってるらしいし。性格は真逆だけど。氷川さんが理性的で冷静な性格だとすれば、こっちは感覚的で破天荒な性格だろう。我ながら的確な表現だ。

 

「もういいかな。俺さっきの場所まで戻りたいんだけど」

「うん、もういいよー! じゃあねー!」

 

 許しを得たので先に行く事にする。ふと振り返ると氷川はいなくなっていた。他の友人の所へでも行ったんだろう。

 人の隙間を華麗に通り抜け、さっきと同様に湊さんグループの数メートル後ろのポジションを勝ち取る。

 スマホを取り出し時間を確認すると、11時30分を過ぎていた。はやっ。時間の経過早すぎだろ。

 

 

 

 山頂まであと少し。

 

 

 

 

 





気が付いたら急に評価が増えてて喜んだ作者です。

新しく評価してくださったアホの子ジャックさん、ヒャーラさん、クロムスさん、steelwoolさん、夜桜さんさん、雨宮 遥さん、しまらくださん、そんだいさん、ありがとうございます!

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