七罪の悪魔使い   作:葉龍ジン

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プロローグ 出会いの思い出

夜の森を一台の馬車が走っていた。

馬車は、一人の豚のような身体の男の奴隷商人と男の商品である()()()()の5~10歳ぐらいの数十人の少女と珍しい色の髪と目を持った少年、御者兼護衛として雇った傭兵数人を乗せていた。

奴隷商人や傭兵達は暇潰しに少女達や少年を死なない程度に虐め、痛みで泣き叫ぶ姿を楽しんでいた。今は馬を休ませている間、退屈しのぎに傭兵達が少年を虐めている。

度重なる暴力に絶望していた少年は、ふと何かを感じ痣だらけでで所々血を流し、骨が折れているのか激痛が走る身体を無理矢理起こし暗闇が広がる森の奥を見た。

傭兵達も少年の視線の先を見る。

そこには、可愛らしい少女の姿をした悪魔が立っていた。悪魔だとは、初めは気がつかなかった。しかし、少女が放つ魔物に近い魔力で悪魔だと断定できた。

傭兵達は慌てて武器を構えるが、遅すぎた。彼らの視界から一瞬で消えると、その瞬間少年の周りにいた傭兵の首が空を飛んでいた。その場にいた全員が何が起こったかわからず唖然としていた。その隙をついて、さらに殺されていく。

そして、少年が我に帰ったときには、すでに少年以外の人間はただの肉塊へと成り果ててしまった。ただ目の前に在るのは、もう誰が誰なのか分からないぐらいグチャグチャに丸められた元人間だった肉塊の山と、その横で肉塊を一口大に千切り口に運ぶ少女の悪魔だった。

ブチグチュグチャ、肉を千切り噛む音が静かな夜の森に響く。胃の中身を吐き出したくなるほど気持ち悪く見るも(おぞ)ましい光景から、少年は目を逸らさなかった。むしろ、少年は木々の隙間から零れる月明かりに照らされた美しい少女の悪魔が、腰まで伸びた夜空のような黒髪を真っ赤な血で濡らす姿に見とれていた。

 

「綺麗だ………」

 

無意識にその言葉が、少年の口から零れた。閉まったという表情をして慌てて口を閉じるが、時すでに遅くその言葉が聞こえていた少女の悪魔は、肉塊を喰うのをピタッと止めると、焦っている少年に近付いてきた。

 

「ねぇ、貴方。 今、私を綺麗って言った?」

 

少女の悪魔はそう言い、少年の白い頬に優しく触れた。少年は、触れられた驚きで混乱して石のように硬直してしまっていた。

返事をしない少年に、少女の悪魔は少し不機嫌そうな声音で言う。

 

「ねぇ、早く答えて」

「え? あ、はい! 言いました!!」

 

少女の悪魔の不機嫌そうな声で我に帰った少年が、慌てて返事をする。

少女の悪魔は少し機嫌が直してまた聞く。

 

「どうして?」

 

少女の悪魔は返事を待つ間、何が面白いのか少年の頬をつねったり、指先でつついたりしている。少年は抵抗せずなされるがまま頬を弄られていた。

 

「え、えっと、何となく、ですかね?」

 

少年は、どうして自分も分からず曖昧な答えを言った。

 

「そう」

 

少年の答えを聞いた少女の悪魔は小さく呟き、今度は少年の雪のように真っ白な髪を撫で始めた。少年は、優しく頭を撫でるので照れて少し赤くなっていた。

少女の悪魔は少年の血のように赤い瞳を見つめ言う。

 

「ねぇ貴方、気に入った。 私と一緒に暮らそ?」

「………え? 今、一緒に暮らそうって言った?」

 

突然の誘いに驚いた少年は敬語を使うのも忘れて素の口調で聞き返してしまった。

少女の悪魔は首を傾げる。

 

「うん、そうだよ?」

「いやいや、俺人間なんだが!?」

「大丈夫、そんな事姉様も妹たちも気にしない。むしろ、喜ばれると思う」

「………それは大丈夫なのだろうか?」

 

少年が困惑した表情をしていた。

少女の悪魔は、少年の様子を不思議そうに見る。

 

「大丈夫だよ?」

「はぁ、嫌な予感するから行きたくねぇ………」

 

そう呟いて少年は聞こえないよう小さな声で呟きため息をついた。

しかし、人間より遥かに性能の良い耳を持つ少女の悪魔は、その呟きが聞こえてしまい沈んだ表情になる。

 

「嫌?」

「嫌じゃないです。 だから、そんな顔しないで下さい」

「本当に?」

 

少女の悪魔が潤んだ目を向け、か細い声で聞く。少年は少女の悪魔の黒色の瞳を見つめて頷いた。

 

「そう、良かった…」

 

少女の悪魔は、ほっとしたように微笑んだ。少年はその表情を見て顔を赤くなり心臓の動悸が早くなる。そして心の中で、断らなくて良かったなぁ、と思った。

ふと少年が思い出したように言う。

 

「あ、そうだ、名前教えて下さい」

「…どうして?」

「お互い名前を知らないと、不便だと思いますよ?」

 

少年がそう答えると、少女の悪魔は納得してない表情をしつつ言う。

 

「ベルゼブブ、皆はベルゼと呼んでる」

「ベルゼブブさ「ベルゼ」あの、さすがに愛称で呼び捨ては………」

 

少年がそう言って少女の悪魔もといベルゼブブを見ると、不機嫌な顔をしていた。

少年は慌てて言い直す。

 

「わ、分かりました。 ベルゼ、さん」

「本当は敬語も止めて欲しい」

「それはもう少し先でお願いします」

「う〜、わかった」

 

ベルゼブブは不満そうな表情をしつつも了承した。生まれてから一度も誰かを呼び捨てにしたことがなかったマクスウェルは、内心でほっとしていた。

 

「次は俺ですね。 マクスウェル=シルファー、って言います」

「じゃあ、マー君ね」

「………いや、あの、もうそれで良いです」

 

満足そうにしている様子のベルゼブブを見てマクスウェルは、呼び方を変えるか止めてもらうの諦めた。

 

「それじゃあ、マー君行こう」

「………そうですね」

 

そう言ってベルゼブブが楽しそうに笑みを浮かべながら歩き出し、マクスウェルは呼び方に納得してなさそうにしていたが、ベルゼブブがペース良く先を歩いていくので慌ててその後を追いかけていった。




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