我、無限の欲望の蒐集家也   作:121.622km/h

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副題:如月さんちの今日のごはん


008

晩御飯のメインを何にするか、そんな事を考えながら藤見町商店街を練り歩く。

 

少女と幼女を引き連れて。

 

 

「・・・む。魚屋か」

 

「商店街をあそこから歩くと一番に当たるのは魚屋なんです」

 

「町を知り尽くしてるなぁ・・・」

 

「ええ。私は歩くことだけが仕事ですから」

 

「迷うことの間違いじゃろ」

 

「そうとも言います!」

 

 

八九寺の案内にもならない海鳴市把握術を聞きながら、魚屋に近づくと、見たことある男がエプロンを着て立っていた。

 

 

「なんだ。坊主じゃねえか。何か用か」

 

「何って・・・。買い物しに来てるんだよ。アンタはえー・・・バイトか」

 

「おう、見ての通り。坊主が飯作んのか」

 

「そうだけど、何だよ。悪いか」

 

「悪かねぇけど」

 

 

本当に、どこにでもいる英雄だなあと、改めて思う。魚屋で働くクー・フーリンを見てそんな事を考えた。

 

 

「ねえ、ちょっと。そこのお兄さん。今日は何がいいの」

 

「今日はキンメが良いよ。お嬢さん」

 

「やだ、お嬢さんだなんてお上手ね。いいわ、それちょうだい」

 

「おっ、まいど~」

 

 

目の前の手慣れた調子で魚を売るケルトの大英雄という珍しい光景を前にしながら、ふと平穏な日常に違和感を抱く。

 

元々、聖杯戦争のために呼ばれていた英霊が、こんな風に争うことなく生活しているというのは、やはり不思議な感覚に陥らせてくれる。

 

 

「・・・・・・」

 

 

夕飯は魚も良いかもしれない。

 

ふむ。キンメか・・・。

 

和食には肉というよりかは魚という印象が深い。理由として日本が海に面した島国だからと言うのもあるのだろう。安定して調達できる食料は広大な海に生息する魚、くらいだっただろうから。

 

しかし、一切れ400円はお手頃ではない。

 

10は余裕で行くだろう買い物に、400円は高すぎる。

 

 

「・・・クー・フーリン。手頃なやつでひとつ」

 

「あー? そうだな。鮭はどうよ。安いしそして美味い」

 

「いいね。焼きも蒸しも旨いけど、鮭と言えば蒸しだな。夕飯はホイル焼きにしよう」

 

「なんだ? そりゃ、美味いのか」

 

「不味いものを作るわけがないだろ。三切れくれ」

 

 

忍と八九寺の分に自分の分を含めた三切れ買うことにした。他の皆からは頼まれていないので、今日は良いだろう。

 

 

「よし。それ、オレにも食わせろ」

 

「はあ?」

 

「安心しな。自分の分は自分で払う。四切れ入れといた」

 

「いや、そういう事じゃなくて」

 

「んじゃ、あとで行くから、用意しとけよ」

 

「えー」

 

 

とりあえず、帰ったら早めに食事の用意をしなくちゃいけないか。

 

 

クー・フーリンの務める魚屋で、メインの食材となる鮭を購入したあと、同じ商店街内に存在する八百屋によって彩り野菜などを購入して、帰路についた。

 

 

買ったものを手に持って歩く人気の無い道。商店街から一本外れただけでこれだけ人気が無くなるのだから、防犯意識はしっかりしていて欲しい。

 

 

「・・・あの、如月さん」

 

「どうした八九寺。かまって欲しいのか?」

 

「そのくだりはもうやりました。真剣な話です」

 

「なんだ?」

 

 

スッと八九寺が指差す先を辿れば、少し遠く私立聖祥大附属小学校の制服を着た少女達が黒いボックスカーに連れ込まれるのを目撃した。

 

 

「・・・誘拐?」

 

「まさか、如月のそれも当主の目の前で行うとは奴らも運が無い」

 

「如月の管理する土地で犯罪を犯そうとするなんて、新参者かな」

 

 

そうでもなければ、この町で犯罪に人に危害を加えればどうなるか、よくご存じのはずだから。

 

忍と八九寺に買ったもの──荷物を預けて先に家に帰っていてもらうことにする。

 

 

「忍、八九寺」

 

「ほどほどにな」

 

「殺さないでくださいよ?」

 

「それは保障する」

 

 

──さあ、お仕置きの時間だ。

 

 

 

 

???side

 

今日はなのはちゃんが「用事がある」と言ったので、友達親友のアリサちゃんと二人で帰る事になって、お話しながら帰っていた。

 

アリサちゃんの提案に乗って、混雑する商店街から一つ外れた人通りの少ない道を通って翠屋に行くことになった。

 

あまりにも人気がないので、わたしは行くのをやめようとアリサちゃんに提案したのだが・・・。

 

 

「暴れんなよ・・・暴れんなよ・・・」

 

「ちょっと! 何よあんた達! すずかを離しなさい!」

 

「アリサちゃん!」

 

「静かにしろ! おい! お前等、サッサと車に詰め込め!」

 

 

予想通り──こんなこと、予想もしたくなかったけれど、何かあると思っていたとおり、大人の男達に車の中に押し込まれ、車で十数分ほどにある廃ビルの中に連れてこられた。

 

わたし達、月村は“特別”だから、今よりも小さい頃から誘拐未遂なんかは良くあったことだけど、ここまで白昼堂々連れ去られたのは初めての事だったので、わたしも恐怖で震えてしまっていた。

 

 

「なんなのよ、アイツ等」

 

「わかんないよ・・・」

 

「お金が目当てなのかしら?」

 

「だとおもうよ」

 

「解放してもらえるのよね?」

 

「だといいね」

 

「・・・・・・あぁもうっ! すずか! 元気出しなさいよ! こんな時こそ前向いて笑顔でいなきゃ! こ、怖いけど・・・ね?」

 

「ふふ・・・。うん。そうだね」

 

 

アリサちゃんのおかげで少し元気が出てきた。助かる保証はそれでもないけど、でも暗い気持ちで沈んでたって何もできないよね。

 

と、ふと扉の向こうで足音がした。

 

誰か来たのかな? そう思って目を向けると、そこには黒いロングコートに目に白い仮面──ドミノマスクっていうのをあとで知った、をつけた男の人が立っていた。

 

 

「──誰?」

 

「死んでないな?」

 

「死ぬわけ無いでしょ!」

 

 

だ、誰なんだろう・・・。

 

sideout.

 

 

 

海鳴市郊外。海に面した海鳴にある、埠頭が目と鼻の先に見える少し古めのビルが建ち並ぶその一角。

 

その、黒いワンボックスカーの持ち主達が根城、というよりは仮の拠点として使用する廃ビルはあった。

 

気配を消して、ビルの中に潜入する。中枢部とみられる場所に辿り着くまでに居た見張りは、音も無く倒しておく。もしも気付かれて焦った犯人に人質が殺されでもしたら、色々と面倒なことにもなりかねないからだ。

 

人一人がようやく通ることが出来そうなダクトに潜り込むと同時に、中枢部に通じていたのだろう、男達の声が漏れ聞こえてきた。

 

 

「──予定通り、月村のガキ、捕まえたか?」

 

「はい。ですが、友人らしきガキもいまして・・・」

 

「見逃しては無いだろうな?」

 

「はい。しかし、どうやらソイツ、「バニングス」らしくて」

 

「バニングス? ハッ。コイツァ運が良い。良家のお嬢様まで人質に出来るとは」

 

 

二人居た内の片方を連れ去ったのは偶然だったようだ。それにしても、月村とバニングスか。聞いたことがあるような、ないような。

 

しかし、外から来た権力者を黙っている理由が分からない。報告するほど大きな影響を与えるもので無いとしたか、もしくは()()()()()()()()()()()()()があると思わせる迷家だったか。

 

 

「さて。いくら絞れるかな?」

 

「当初の予定に無かったバニングスの一人娘ですから、そりゃもうたっぷりと」

 

「自分の娘に継がせたいだろうしなァ」

 

 

ああ。それは、分かる気がする。

 

 

「だが、残念だ。その未来は永劫訪れないんだからな」

 

「いつ、やりますか」

 

「向こうも頭が回るかもしれんからな・・・」

 

 

どうやら、コイツ等は少女達を元から生かして渡すつもりは無いらしい。

 

そうか。誘拐だけでは無く、殺しまでやるつもりか。救いようのない屑で良かった。くずかごに捨てることが出来るからな。

 

 

「Its Showtime」

 

 

ダクトから飛び出して近場にいた一人を倒す。そのまま近くに居る相手をノータイムで倒していく。

 

 

「な、何なんだお前は!」

 

「海鳴の町で犯罪を犯すことの愚かさを、その身でよく知るといい」

 

 

モデルガンから放たれる、認知の銃弾であるはずの無い、受けたはずの無い銃創を押さえて苦しみ始めるリーダーらしき男。

 

 

「ラヴェンツァ。単身ギロチン(いつもの)頼んだ」

 

「はい。お任せください」

 

 

そして、その場を冷徹な少女──仕事となれば何でもしっかりとこなしてくれる、彼女に任せて囚われの身である少女達の元へ向かう。

 

 

「──死んでないな?」

 

「死ぬわけ無いでしょ!!」

 

 

元気そうで何よりである。

 

よほど慎重な犯人でない限り、人質は拘束だけはしっかりされ、放置されることが多いため衰弱していることも少なくないと聞くが、ほえるだけの元気はあるようだ。

 

 

「アンタ、なんなの?」

 

「通りすがりの怪盗だ」

 

 

見張りはいないようだが、こんな拙い誘拐で、何が出来ると思ったのだろうか。

 

 

「怪盗・・・? 怪盗が何の用よ。怪盗は盗むのが仕事でしょ。今更何」

 

「確かに、怪盗は盗むのが仕事。しかし、盗むまでの地道な準備を買われて、組織に所属している場合もあるんだよ」

 

 

凄腕のハッカーが出所後会社のセキュリティ部門に着くのと似たような理屈である。実際はどうなのかは分からないけれど、もっともらしい理由を立てておけば怪しまれないだろう。

 

 

「特にこういった、潜入工作が必要な場面ではな」

 

「ハァ? つまりアンタはどういう理由でここに居るわけ?」

 

「あ、アリサちゃん・・・」

 

「“如月”の管理下で犯罪行為は地獄を意味する」

 

「え?」

 

「それって・・・」

 

 

知っている人間の反応が返ってきて、少し吃驚すると同時に安堵した。小学校の頃からそうやって教わっていれば、この星で人を害する行為、ひいてはそれに準ずる行為を働くことはまさに地獄を意味するからだ。

 

 

「貴方は、如月の人・・・?」

 

「外注先だ」

 

「・・・なるほど。そーゆーことね。あの連中、地獄を見たのね」

 

「今も見てるさ」

 

 

そうでなければ意味がない。誰かさんの理想に後押しされたわけじゃあないが、誰でも一度は願うものだろう。誰もが他人に優しくあれる世界なんて。

 

 

「というわけで、君の質問の答えは、助かる道を整備しに来たってところだろう」

 

「助けてくれるの?」

 

「助けない。君が勝手に助かるだけだ」

 

「・・・詐欺師じゃ無いわよね」

 

「この状況で、如月の名を騙るという罪を犯すことに何の意味がある。損得でいえば損しかしていないだろう」

 

「・・・信用していいのね?」

 

「そこはしてもらうしかないな。長居して、君たちの保護者と鉢合わせしてもまずい」

 

 

暗殺部隊の説明役。そうとってもらうしかない。全員倒れていて、仕立人が何者か探られでもしたら困るから、如月の名を伝えて、これは土地に住む上で当たり前のことであると認知してもらうしかないのである。

 

 

「・・・いいわ。その代わり、いつか絶対。この借りは返すわよ」

 

「気にするな。人の生は一期一会。もう会うこともない」

 

 

というか、存在しないジョーカーという名の怪盗のことは忘れていい。覚えていないほうがいいに決まっている。

 

 

「知識があるならなおさら俺達の詮索はやめておけ。俺達を探ろうとすれば、必ず犯罪に手を初める事になる。だから、関わるな」

 

 

この忠言は必ず聞き入れてほしい。如月は当主の意思とあまり関係なく、下部組織が自由に行動することが多いから、ご両親にもしっかり伝えてほしい。

 

まあ、子を持つ歳になると、知っていて当然だろうし、如月に居を構えている時点で、土地の管理人に対する対応とかも知り尽くしているはずである。なので、特にこれ以上話すこともないかもしれない。

 

 

『ご主人。そこのお二人の保護者様が接近中です』

 

「・・・どのくらいで着く?」

 

『・・・・・・数分もないと思います』

 

「正確に測るくらいやってみせろよ」

 

『面倒です』

 

 

肝心な所で役に立たない──よくサボるサポーターである。全く、情報というものはいち早く正確に伝えることが重要で、蒐集書の中には惑星で起きる事象を、一寸の狂い無く記録する観測機だって存在するというのに、それを活用しないという手を打つ意味がわからない。

 

まあ、人間らしくていいのかもしれない。

 

 

「お迎えも来るようだ。じゃ」

 

「ちょっ!」

 

 

カエレールを用いて潜入に使った入り口。この場合、このビルの屋上に転移する。転移といっても、本当に消えたのでは無く、移動の際に消費する時間と体力・精神力を使わずに、移動した結果だけを世界に認識させる道具のため、少し体に違和感を覚える。

 

慣れてしまえば、なんてことはないのだが。

 

 

「ジョーカーの時にどこかへ潜入した場合でしか使えないからほぼゴミだけど」

 

『それを言ったらおしまいですよ、ご主人』

 

 

さて、じゃあ帰ろうか。

 

異常なほど身軽なジョーカーの体を使ってビルの上を走り、途中で元の姿に戻る。姿形、貌が意味を持たないこの体は、変装を必要とする際にとても便利である。

 

そのまま海鳴市の中心街から外れた、昔ながらの住宅街にある上空から見れば違和感を覚えるほど巨大な邸宅(モデルは六条院)に帰宅する。

 

 

「おっ。八九寺が出迎えか?」

 

「おかえりなさい、如月さん。こんな事を言う機会なんて、向こうではありませんでしたから、新鮮です」

 

「結局お前は一度も俺の家に上がっていかなかったしな」

 

 

そんな事を玄関口で話したあと、巨大な屋敷の中でも、LDKの三つが揃っている一室に腰を下ろして、ランサーを待つ。

 

 

「よお、坊主。これ土産な」

 

「え。ああ、わざわざどうも・・・ってこれ、酒じゃないか!」

 

「なんだ? 飲めんのか?」

 

「いや、飲めるけど・・・日本酒と缶ビール・・・」

 

「嫌いか」

 

「まぁ、ちょっと・・・」

 

 

飯まで自由に過ごすというクー・フーリンの言葉を背にしながら、今に隣接するように造られた台所に立つ。

 

最近は台所という言い方もせずに、キッチンとか言うのが普通なのかもしれないが、一応昔ながらの邸宅にあうように造られたその模様は、台所の方が正しい。

 

 

「さてと」

 

 

そういえば、クー・フーリンの生まれた土地、アイルランドは鮭が有名だったか。フィン・マックールの知恵の鮭とか。

 

魚の脂がしみこんだ親指とか、普通に気分が悪くなりそうなんだが。

 

身体が覚えてくれていたとおりに、調理を進めて行く。

 

酒を少しと、両面に塩を少しふって、5~10分放置する。

 

 

切り身から水分が出てきたらよく拭き取る。

 

玉ねぎ、人参は薄めにスライス。しめじはほぐしておく。

 

酒に塩こしょうで味付け。

 

ここでホイル。

 

玉ねぎ人参をしいて、細かく砕いた固形コンソメをふりかけ、鮭としめじをのせたら最後に5~10gのバターをのせる。

 

ホイルは両端を包んでフライパンに並べ、蓋をして弱火で15~20分蒸し焼きに。

 

あとは、そうだな。副菜二種と汁物を。

 

 

「ん?」

 

 

鮭をホイルに包み、フライパンで蒸し始め、待ち時間に副菜と汁物に手を付けようとしたそのとき、ふと居間の方から聞こえる話し声が耳についた。

 

 

「して、クー・フーリンよ。気になっておったのじゃが、我が主様に何用じゃ?」

 

「用ってほどじゃねぇよ。さっきも言ったが飯だよ飯。マスター達が坊主の飯は美味いのなんのと言っていたのを思いだしたんで」

 

「む。確かに我が主様の料理は絶品じゃ。暇潰しに習得しておったからな」

 

「暇潰しの時間が長すぎますけどね。数百年単位で暇を潰していましたから」

 

「まあ、そういうことであれば仕方あるまい。ゆっくり味わっていくが良い」

 

「何? 坊主の飯は吸血鬼さまの許可が要るって?」

 

 

いや、そんなことはないんだけれど。

 

あと、主様とか言って従者っぽく振る舞ってはいるが、その辺の関係は小難しいので、突っ込まないでいただけるとありがたい。

 

 

少しして、仕上げにパセリを加えて、メインディッシュである鮭のホイル焼きの完成である。

 

 

「はーい。お待たせしました」

 

「ほお、なるほどね」

 

「いただくのじゃ」

 

「いただきまーす」

 

「んじゃまあ、さっそく」

 

 

クー・フーリンがいの一番に食べ始めたが、周りもそれに続いて黙々と食事を開始する。

 

 

「おお! うめえ! この味付け良いじゃねえか」

 

「それにただ醤油を垂らすだけでも美味いけど、バター醤油・・・は定番だから、今回はわさびマヨを作ってみた」

 

「・・・・・・いやこれ、うめえなあおい!」

 

「そりゃ、よかった」

 

 

黙々とほのぼのと食べ進め、全てを完食し終えたあと、食後の団欒となっていた。

 

 

「ごっそーさん。美味かったぞ、やるな! 坊主!」

 

「いいっでっ!」

 

「いやぁ、言峰の料理に比べりゃ何でも美味いとは思っていたが、ここまでとは思わなかった! 美味い飯はやっぱりいい! また頼むかもしれんからよろしく!」

 

「お、おう」

 

 

言峰の料理とな。アイツも料理をするんだな。麻婆ラーメンとか訳分らない映像が見えた気がしたが、気のせいだろう。麻婆豆腐が好きだからといっていくらなんでもラーメンの麺を申し訳程度に入れただけのラーメンを作るわけが。

 

あったな。作ってたな。どこだったっけ。確か美遊が生まれた世界の言峰だったっけ。

 

 

「よっし。食後は酒盛りと行こーかね!?」

 

「かか。よかろう! 鬼の儂と飲み比べるか?!」

 

「いや、その為の酒かよ!!」

 

 

呆れながらも、食器の片付けを済ませてから居間へ戻ると、酒盛りは更に混沌とした様子へと変貌していた。

 

 

「おお、お前様よ。見よ。英雄といっても所詮は人の身。儂に勝てるはずがなかろう!」

 

「・・・・・・」

 

 

八九寺が助けを求めるような目で見てくるが、どのように対応するかは絶賛検討中のため、とりあえず待っていて欲しい。

 

秘蔵の酒──飲むなと言っておいたはずの鬼殺酒まで持ち出して、一体何をやっているのか。幼女から妖女へと変貌を遂げた吸血鬼。忍野忍が瓶を片手に胸を張っていた。

 

その格好で胸を張ると色々零れそうだからやめて欲しい。

 

 

その後、デロデロに酔っ払ったクー・フーリンを引き取りに来た言峰に預けて、その日は終わった。

 

何事もなく、平和に終わった。

 

何かある気がする。

 

先の話だろうから、今は関係がないだろうけれど。少しは気にしておいた方が良いかもしれない。


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