我、無限の欲望の蒐集家也   作:軍曹(K-6)
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後日カルデア仮想空間戦闘訓練場にて。


「これからお前達に叩き込むのは戦略や戦術を立てる上で一番重要となる思考加速訓練だ。またの名を分割思考」

「マルチタスク?」

「一度にたくさんの事を考えることが出来るようになるって事よね?」

「そうだ」


貴族服のようなゼロ衣装を着用したルルーシュが並んだなのは達に向かってそう説明する。仮想空間であるため、ディスプレイを空間に表示することも現実世界よりは容易く、説明のためにわざわざ板を用意する必要はない。


「一度により多くの事を処理することが出来るようになれば、それだけ戦略の幅は広がる上に戦術を組み立てる上でも役に立つ。勝負事だけでなく日常生活でも役に立つ場面はあるだろうな。何かをしながら何かをする。一度に手足が足りる限りの事ができるようになれば、それだけで戦局は大きく変わる。ちなみにイリヤは以前確認した時点で2400の分割思考を生み出せていたはずだ」

「にせっ!?」

「今現在もあのペースで増えている、もしくはマスターとの特訓で急激に増えると仮定すれば余裕で3000程まで分割可能になるかもしれない」

「それだけ分割して制御できるんですか・・・?」

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという少女はその存在自体が特別だ。魔術を行使するためだけに生まれた肉体、魔術回路を持っている。少々荒っぽいことをしても平気。それが家族(サーヴァント)内における暗黙の了解だ」

「そんな・・・・・・」

「まぁ、まともな生まれじゃないことは確かだが、だからこそマスターの元で幸せに笑っていられるんだ。悪いことばかりじゃない。さて、本題に入ろう。これからお前達にはこのスフィア・・・まあようするに魔力弾だな。それを一つ一つを別々に操作してもらう。最低で10コ。今日中に10コは操作してもらう」

「「「はい」」」


プリズマデート

主人公side

 

精一杯のオシャレ、と言うか自らを良く魅せるコーディネートをすませて海鳴駅前にて俺はイリヤを待っている。の、だが・・・・・・。

 

 

「あのっ、もしかしてお一人ですか?」

 

「人を待っているので」

 

「もしよければ私達とお茶でも」

 

「している間に待ち人が来たらマズいので」

 

 

かれこれ十数回は若作りしてそうな女性とか、高校生とかに声をかけられまくっている。もちろん全て断ってはいるが、少々ウザったくて仕方が無い。

 

この辺り一帯を吹き飛ばそうかと思考が危ない方へ飛びかけた時、丁度イリヤが到着したのが見えた。

 

 

「よっ、イリヤ」

 

「ごめん。お兄ちゃん! 待った?」

 

「いや、今来たところだ」

 

「そ、そう? 良かった」(クロ達のせいで遅刻したから、お兄ちゃんは絶対待ってるはずなのに・・・。優しいなぁ、お兄ちゃんは)

 

 

イリヤのおかげでこの辺を一掃するまえに正気に戻れた。大人っぽいオシャレな洋服(ドレス)を着てきたイリヤは小学生とは思えない大人の色気を何故か醸し出しており、予想と違うお出かけの始まりに少しばかり緊張が走る。

 

 

「さて、と」

 

「な、何? お兄ちゃん」

 

「イリヤと俺とでこうして出かけるのは初めてなわけだけれども」

 

「そ、そうだね!」(邪魔ばっかりしてくる人達も今日はいない! 勝った!)

 

「どこへいく? 最近女子の行き場は俺には分からん」

 

「えっと、それじゃあ!」

 

 

イリヤに連れられ、まずは腹ごしらえとのこと。お昼前に集合の醍醐味らしい。良く分からないが、イリヤが楽しそうならそれでいいだろう。そもこれはそういう目的だからだ。ご褒美というかお礼の気持ちというか。

 

 

「お兄ちゃん?」

 

「ん。ああ悪い。どうだ? 美味しいか?」

 

「んー」

 

「士郎の方が美味いか」

 

「ん」

 

 

世界中の料理人から知識をトレースしたシロウの腕前と、そんじょそこらのファミレスの味を比べちゃあいけない。というか、せっかくのお出かけなのにファミレスで良いのだろうかと思ったのだが、イリヤ曰く。

 

 

「学生という身分の懐事情から考えて、デ・・・お出かけ先でのご飯はファミレスが一番なの」

 

 

らしい。俺はよく知らない。高校生や大学生などはそうらしい。小、中学生にいたっては、食事は各々の家で取り、遊ぶ時は互いの家などに集まってお菓子などを食べながら好きなことをしたり、それこそ大きな施設に遊びに行って軽食をそこでとるのが理想らしい。

まあ、普通だよな。

とりあえず、何したら良いか分からん。『男女 お出かけ』でググろうかな。

 

 

「えーっと。お兄ちゃん」

 

「んー?」

 

「何かネットで検索してるよね?」

 

 

良く分かったな。スマホなんて弄ってないし、脳から出る信号をそのまま回線に繋いで検索していたというのに。

 

 

「分かるよ。・・・だって、お兄ちゃんのことだもん」

 

「・・・・・・」

 

 

頬を赤く染めてそう言うイリヤが、俺に向けてくれている好意。正直に言おう気付いているよ。イリヤだけじゃない。俺に好意を寄せてくれている全員の気持ちは分かっている。

 

好意に気付かないほど鈍感じゃないし、蒐集のためとはいえ一度は恋心を抱いてもらい、好意を持ってもらうためにヒロインのように攻略もしたことある相手だ。と言うかそもそも俺はヒロインの好意に気付かない主人公は大嫌いだ。ライトノベルなんかを読んでいてそう考える。

 

だが、だからといって、俺が彼女達の気持ちを受け止めて何か良いことがあるかと言えばない。どちらかと言えば彼女達も現状で満足はしているようだし、何かが進んだその瞬間。また全てを失う可能性があるとしたら。俺はもう戻れなくなるかもしれない。

 

・・・・・・戻れなく、戻れば良い? 死んでしまう人間を死なせないように過去に戻れば良い? 簡単に言ってくれる。もし家族が死ぬようなことになっても俺は戻らない。より正確に言うと戻れない。一度あのスキルを手に入れた当初。もしかしたら戻れるんじゃないかと何度も何度も繰り返して戻った最初のセーブポイント。

 

俺の手の中に収まる彼女達との思い出を眺めていたあの場所。俺は身内が死んだ後、その死を回避しようとするとあの場所に戻る気がしてならないのだ。戻りたくても戻れない人もいる。この世で失われていった数多の命のことは無視してるくせに、自分の家族が失われた場合のみ過去に戻って工作するなんて、そんな都合の良いこと。

 

俺には出来ない。まだ答えが見つかっていないんだから。

 

 

(きゃーっ。言っちゃった言っちゃった! キャッハー!)

 

 

まるでふ○っしーのようだ。元気でよろしい。こっちの苦悩も知らないで。・・・・・・おっと。

 

 

(でも邪魔だなあ。まるでストーカーみたい)

 

 

どうやらイリヤも気付いているようだ。彼女と同じように、俺が一度落とした攻略相手達が現在俺達を尾行していると言うことに。というか、イリヤはヤンデレの素質があるのか? 頼むからその無用な才能は開花させるなよ? 俺はバッグの中に詰められたくないんだ。中に誰もいないけど! 誰かだったものはあるんだよ!

 

 

(そうだ! 見せつけてやれば良いのよ! 私とお兄ちゃんがラブラブだって事を・・・・・・。待て待て。これはお兄ちゃんから私へのご褒美、変なことをしたらお兄ちゃんに嫌われる・・・もしくは変な子だと思われる可能性が!?)

 

 

十分にあるな。

 

 

(マズい。でも、着いてきてるクロ達がちょっと邪魔だし・・・)

 

 

確かにな。いつまでも追跡されるのも面倒だ。仕方が無い。

 

 

「・・・イリヤ。ルビーはいるか?」

 

「え?」

 

『はいはい呼ばれて飛び出てルビーちゃん参上です! 何かご用ですか?』

 

「俺達の後を付けてるあいつ等を、今日一日行動不能にしておいてくれ」

 

『報酬は?』

 

「コスプレイリヤ撮影会」

 

『おっしゃ任せておきなさーいっ!!』

 

 

よし。行ったか。

 

 

「・・・・・・お、お兄ちゃん・・・!?」

 

「ん?」

 

(こっ、コスプレイリヤ撮影会って何!? お兄ちゃん私にどんな衣装を着せる気!? 待って着せるのはルビー!? 私どんな衣装をお兄ちゃんに見られるの!? うあぁあぁあぁあ・・・・・・・・・)

 

 

崩れ落ちかけてるイリヤを連れて次の目的地に向かう。ご褒美なのだからもっと楽しんで欲しい。

 

 

(お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん)

 

 

・・・・・・ふもっふ。ちょっと待て。変な声出たぞ? 一体どれだけ妄想が進んだらそうなるんだ? 過程を見ていないからなんとも言えない。そこまで美化しなくて良い。オイ、それ誰だ。止めろ。それ以上進むな。戻ってこい。俺はそんな奴じゃないぞ。いや、必要に迫られればどのようなキャラクターで演じてみせるが。

 

 

(はっ! お兄ちゃんとのお出かけ(デート)を楽しまなきゃ!)

 

 

ああ。楽しんでくれ。そのためのご褒美だ。そうじゃなかったら何のためにご褒美をイリヤ自身に決めさせたか分からなくなる。イリヤに楽しんでもらわないと、ご褒美の意味なんか全くなくなってしまうからな。

 

 

「おっ、お兄ちゃん」

 

「何だ?」

 

「次アレ行こっ!」

 

「映画か」

 

 

そう言えば今なにやってるんだ? なになに・・・?

 

『それいけ!アンポンタン』・・・世界線を越えるにしてももう少しマシな越え方があっただろ。何故こうなった。

『そちの名は』・・・これもまた、世界線の越え方を間違った作品だ。古風だぞ。

『野原のしんちゃん』・・・誰が見るんだ。普通で当たり前の自己紹介に近いタイトルじゃないか。

『野良えもん』・・・猫か。これではあの猫型ロボットがただの野良猫のようだぞ。

『真夏の戦争』・・・・・・サ○ーウォーズか。一瞬どんな映画か気になったぞ。良い世界線越えをしたじゃないか。

『輪』・・・WHAT()? リングか。これもまた、ホラーだが意外と人気のあるタイトルだな。

『それ』・・・どれ? それ、それ・・・ITか!

 

内容はほとんど一緒なんだろうが、世界線の越え方を間違ったせいで見る気も起きないな。オリジナルの映画はないのか? それか制作会社が一緒でそこまで世界線を乗り越える必要が無い映画・・・・・・。

 

 

「お兄ちゃんは何が見たい?」

 

「・・・・・・あー」

 

 

俺に選べと? このパチモンだらけの映画達の中から。ほら、これなんか見てみろ『名探偵コ○ン 水平線上の陰謀(ストラレジー)』だと・・・よ・・・・・・? あれ? パクりじゃない? 何で? あのアンパン○ンやドラ○もんですらパロディ作品だったのに、なぜ。まあ当たりだ当たりだろう。これにしようぜ。

 

 

「○ナン?」

 

「おう」

 

 

 

・・・・・・映画視聴中・・・・・・

 

 

 

「面白かったね!」

 

「ああ」

 

 

予想外におっちゃんがかっこよかったな。いつもはおちゃらけた迷探偵なのに。こういう時にしか活躍できないのか、こういう時でも活躍できるのかは疑問だが、とにかく印象に残っているのがおっちゃんのシーンなので語彙力も消えるってもんで。

 

 

「お兄ちゃん。次どこ行こうか」

 

「どこでも。まだ二時過ぎぐらいだから、意外とどこにでもいけるぞ」

 

「うーん。じゃあ・・・」

 

 

その後、イリヤと一緒に東都スカイタワーや電門(いなずまもん)何かを観光して帰ってきた。途中蒐集物をふんだんに使った行動方法もとったため、普通の人間では不可能なスケジュールでのお出かけとなった。

 

 

 

これはその後、兄妹仲の良いお出かけの次の日の話だ。カルデアの訓練施設、内装は市営の体育館とあまり大差ないその空間で、俺はイリヤと向かい合って座っていた。ペタリとお尻をつけて座るイリヤの前に胡座をかいて俺は座っている。

 

 

『お兄さんお兄さん。本日これから何をなさるんですか?』

 

「互いに互いの訓練内容は基本開示しないように暗黙の了解にはなっているが、おそらくなのは達はマルチタスクの訓練に入っていると思う」

 

「初歩の初歩だね」

 

「ああ。魔術を使う者はまず覚えなくてはならない最初の課題だからな。もちろんイリヤはそんな訓練はしなくて良い。だが、なのははそんな訓練をしていない状態で、イリヤにアルトリアのカードを切らせた」

 

「あ、あれは早く終わらせようと思っただけで!」

 

「別にイリヤが弱いなんて言ってない。なのははあの戦闘中に成長してたんだ。それを基礎を固めた上でさらに伸びる可能性があるとしたら、イリヤも本気を出さざるおえないだろ?」

 

「まあ・・・。あの子魔力弾の誘導が正確だったもん。マルチタスクを習得していないのならなおさら驚きだよ」

 

「確かに。そこで、だ。イリヤには俺のカードを使うにあたっての注意をもう一度しっかりやっておこうと思ってな」

 

「えっと・・・選別と精密だっけ」

 

「そう。相手にあった。もしくは過剰とも言える武器を持ち出し、精密な照準によって圧倒的な蹂躙を生む。英雄王とはこれまた違った圧倒の仕方が俺の戦い方の基本だ。そして近くに潜り込まれた場合は?」

 

「絶対的防御と圧倒的火力で持って距離を離す」

 

「せいかーい。相手の攻撃を一切通さない。聖なるご加護でも人類の叡智でもなんでも使って己が身を守り、爆発なんかでもって相手を突き飛ばし懐に飛び込ませない。俺の場合はエネの補助もあるから近接も割といけるんだけどイリヤの場合はルビーだからな・・・・・・」

 

「ルビーだからね・・・・・・」

 

『しっつれいな! 私の何が不満なんですか! イリヤさんの肢体には傷一つつけさせない援護をするに決まっているでしょう!!』

 

『日頃の行いのせいだと思いますけどねぇ』

 

『ムッキー!! そこに直りなさい青髮ツインテールゥ!!』

 

『何ですと?! この不気味ファンシーグッズが!』

 

『不気味とは何ですか不気味とは!?』

 

『硬そうな外見をした柄が柔軟に稼働する時点で不気味なのは確定でしょう!』

 

「・・・・・・あいつ等のことは放っておいて、実戦と行きますか」

 

「うん」

 

「近距離と遠距離。一応どちらも強化1の俺ぐらいは出来ないとな」

 

「はいっ」

 

 

二人同時に素早く距離をとり、双方の武器を構える。俺は本。イリヤは杖だ。

 

 

『では行きますよ! イリヤさん!』

 

『生きましょうご主人!』

 

「うんっ」

 

「いくの字が違わねぇか?」

 

『コンパクトフルオープン! 鏡界回廊最大展開!』

 

「【世界を内に秘めし書よ。我が呼び声に答えよ。契約の元、奏音が命じる】」

 

「転身!」

 

「【封印解除(レリーズ)】」

 

 

カレイドステッキも無制限の蒐集書もどちらも莫大な魔力供給源であることは変わりない。俺はその魔力供給を複製品の維持ぐらいにしか使用しないのだが。

 

 

「クラスカード“コレクター”夢幻召喚(インストール)!」

 

 

イリヤの姿が変身バンクを経て変化する。俺の戦闘服・・・と言って良いのか、彼女にとっての一番動きやすい私服に替わる。

 

 

「あれ? まえと違う!?」

 

「そりゃ違うだろ。俺は動きやすい服で戦ってる。イリヤがその時一番動きやすいと思う服に替わるに決まってるだろ」

 

『魔法少女の変身の夢を消しますねぇ』

 

「んな、つまらねぇ夢なら捨てっちまえ」

 

 

さて、はじめるぞ。と、そう声をかけて戦闘態勢に移る。イリヤも白銀の波紋を展開し、数多ある宝具の射出体制に入った。

 

 

「エネ。瞬発力上昇(eins)攻撃力上昇(zwei)防御力上昇(drei)・・・・・」

 

 

こっちは近接主体の二刀流スタイルで攻めさせてもらおう。

 

 

演算力上昇(vier)思考力上昇(fünf)身体力上昇(sechs)想像力上昇(sieben)・・・」

 

「え? 待って待って。七つもあったの!?」

 

戦闘力上昇(acht)・・・付与」

 

「八コも!?」

 

『甘く見てましたね。基本の三つだけではなく、他の力も上がっているとみて間違いないと思いますよ』

 

「・・・絶対勝つ!」

 

「行くぞ」

 

 

白銀の波紋を多重展開し、俺に照準を合わせるイリヤ。だが───

 

 

「射出までが遅いっ!」

 

 

射出召喚された宝具を難なくかわし、後方から射出召喚した黒い聖剣をひっつかむ。素早く避ければ余裕でかわすことも出来るが、それではイリヤの成長に繋がらない。少しずつ回避速度を上げることを目標に、今は聖剣を湯水のように使い捨て、射出される宝具をはたき落としていく。

 

 

「一点集中で撃つのもいいが、それだと全部捌ききれるぞ?」

 

「だったら!」

 

 

半球状に展開される白銀の波紋。UBWで英雄王が士郎相手に取った手だ。この間の士郎白野立香の三兄妹の時に俺が士郎相手にとった行動でもある。全方位を囲まれたこの状況では士郎がとったように、着弾点から跳躍して爆発の勢いを盾で受け止め利用し、空中に躍り出るのも一つの手だ。重力加速で一撃に重みが出る。

 

だが。対英雄王と、前回の俺がやった戦い方の場合はそれでも良かったが、今回はAUORPをしていないイリヤ。下手に空中に躍り出ると空中に拘束されることになる。実際前回自分がAUORPをしていることに気付いた俺が土壇場でエルキドゥを使ったのが良い例だ。

 

なのでこの場は。

 

全てをかわした上で、爆破まえに破壊する(この手に限る)

 

 

「・・・・・・え。今の何?」

 

『力技のごり押しですねぇ。お兄さんこんな戦法もとるんですか、私初めて知りました』

 

「私も初めて知ったよ・・・」

 

『いつもいつも「俺は普通の高校生だから奇襲しか出来ないんだ」なんて言っていましたが、やはり正面からの正攻法もできるんじゃあないですか』

 

「お喋りはそこまでだっ」

 

 

何を話していたか。なんて細かい部分は聞いてすらもいなかったが、恐らく先の俺の行動についてだろう。確かに俺は相手に隙を作りその隙をついたりするような奇襲策を基本的にとってきた。先ほどのような正面突破の正攻策はとってこなかったからだろう。奇襲策の例で言えば、士郎のように空中に飛んだと見せかけるためにデコイを飛ばして、自分は地を駆ける。とかだろう。

 

だが今の俺は士郎に対するアルトリアのように、ギルガメッシュに対するヘラクレスのように。無限の財を持つイリヤに立ち向かう究極の一を持った一人の戦士だ。正攻法と奇襲を織り交ぜて使うに決まっているじゃないか。

 

そんな事を考えながら、飛び上がるようにして切り上げた聖剣に手応えはなく、バク宙と側転の組み合わせで距離を取るイリヤを視界の端に見つけ、地面スレスレを飛ぶようにして追撃を仕掛ける。

 

 

「ルビーっ!」

 

『照準よーし! 射出!』

 

 

ルビーもイリヤを勝たせるためには努力を惜しまないのか、いつものおちゃらけた部分はどこへ行ったのか全力で俺に宝具を射出してきた。いつか教えた通りに圧倒的物量で俺を仕留めようとしてくる。確かに俺はその蒐集書の中に入っている宝具が何か正確に理解している(何しろ適当に放り込んだのではなく欲しいものを放り込んだ)ため、俺に有効な宝具は一つもない。だったら圧倒的物量で押しつぶすしかないのだ。

 

しかしこちらは聖剣一本。破損した場合は取り出すため問題はないのだが、なんとなく一度縛ったためもう一本とは簡単にいかないのが俺の性分だ。だが、まあやりようはあるよな。

 

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。今、常勝の王は高らかに手に執る奇跡の真名を謳う。其は───」

 

「ルビー防御!」

 

『はいなっ!』

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 

いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)

 

 

魔力を放出し、維持するだけの魔力がなくなった聖剣を破棄し、新たな聖剣を取り出して地を駆ける。宙を駆ける必要はない。跳べばそこまでたどり着く。

 

 

「速っ!?」

 

『状況判断が早すぎます! 思考力も増してますね!?』

 

「良く分かったな」

 

『お兄さんはゲームのようにステータスを上昇させるのが得意ですからね。そこから考えれば他にも色々と・・・』

 

「まさかオールステータスアップとか!?」

 

『いえ、それなら八つも上昇させる必要はないかと』

 

「あながち間違いじゃあねーぞ。何故なら、八番目は戦闘能力の上昇魔法だからな」

 

「『な、なんですとーっ!?』」

 

 

この驚き具合。知らなかったとはいえ戦闘中に余裕そうなこって。んじゃあ遠慮なく、その隙をぶった切らせてもらいましょうかね。固有時制御(Time alter)()四倍速(square accel)

 

 

「・・・・・・ガッ・・・・・・!?」

 

 

瞬足で距離を縮めた俺は容赦無くイリヤの腹部に強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

 

「どうした? 俺の全てをコピーしておいて、その程度か?」

 

「ゲホッ! ゲホゲホッ。・・・ハッ!」

 

『イリヤさん!? おのれっ、魔法少女に蹴り攻撃とは!! お兄さんあなた、初代プリキュア世代ですね!?』

 

「良く分かったな! あの容赦のなさよ帰ってこいっ!」

 

『今の幼女が泣きますよっ!』

 

 

魔法は強化のみに使う。これ常識。魔法系(ファンタジー)など花拳繍腿!!(華やかだけど見かけだけの技の事)

 

 

肉弾戦(マーシャルアーツ)こそ王者の技よ! (個人の見解です)

 

 

『イリヤさん! 大丈夫ですか!?』

 

「・・・大丈夫」

 

『まさか物理保護を突き破るような蹴りだとは・・・』

 

「お兄ちゃんは、ね。色んな意味で規格外なんだよ」

 

『いえ。まぁ、それはそうですが・・・』

 

「無制限の蒐集書よ! 今は私に力を貸しなさい! eins,zwei,drei,vier,fünf,sechs,sieben,achtを付与!」

 

『イリヤさん!?』

 

 

へぇ・・・。蒐集書を味方に付けるか。まぁルビーじゃ正確に取り出すのに時間がかかるだろうしな。正しい判断だ。

 

 

「・・・とぉぉりゃぁぁぁ!!」

 

「来い」

 

「はぁっ!」

 

「・・・」

 

「せりゃぁっ!!」

 

「・・・フ」

 

「おんどりゃぁぁっ!!」

 

「甘い。ヌルい。・・・そして、軽い」

 

 

その瞬間勝負はついた。

 

 

 

 

 

イリヤside

 

お兄ちゃんとのデートの次の日。カルデア体育館で、私とお兄ちゃんは向き合って座っていた。

 

 

『お兄さんお兄さん』

 

 

ルビーが今日お兄ちゃんが私に何をさせるのかを聞いている。

 

 

「互いに互いの訓練内容は基本開示しないように暗黙の了解にはなっているが、おそらくなのは達はマルチタスクの訓練に入っていると思う」

 

「初歩の初歩だね」

 

「ああ。魔術を使う者はまず覚えなくてはならない最初の課題だからな。もちろんイリヤはそんな訓練はしなくて良い。だが、なのははそんな訓練をしていない状態で、イリヤにアルトリアのカードを切らせた」

 

「あ、あれは早く終わらせようと思っただけで!」

 

 

別にアルトリアのカードを使わなくても勝てたんだよ!?

 

 

「別にイリヤが弱いなんて言ってない。なのははあの戦闘中に成長してたんだ。それを基礎を固めた上でさらに伸びる可能性があるとしたら、イリヤも本気を出さざるおえないだろ?」

 

「まあ・・・。あの子魔力弾の誘導が正確だったもん。マルチタスクを習得していないのならなおさら驚きだよ」

 

 

私でもマルチタスクがないとあんな動かし方は出来なかったし・・・・・・。

 

 

「確かに。そこで、だ。イリヤには俺のカードを使うにあたっての注意をもう一度しっかりやっておこうと思ってな」

 

「えっと・・・選別と精密だっけ」

 

「そう。相手にあった。もしくは過剰とも言える武器を持ち出し、精密な照準によって圧倒的な蹂躙を生む。英雄王とはこれまた違った圧倒の仕方が俺の戦い方の基本だ。そして近くに潜り込まれた場合は?」

 

「絶対的防御と圧倒的火力で持って距離を離す」

 

「せいかーい。相手の攻撃を一切通さない。聖なるご加護でも人類の叡智でもなんでも使って己が身を守り、爆発なんかでもって相手を突き飛ばし懐に飛び込ませない。俺の場合はエネの補助もあるから近接も割といけるんだけどイリヤの場合はルビーだからな・・・・・・」

 

「ルビーだからね・・・・・・」

 

『しっつれいな! 私の何が不満なんですか! イリヤさんの肢体には傷一つつけさせない援護をするに決まっているでしょう!!』

 

 

それが嬉しいような嫌なような・・・良く分からない状態なんだけどなぁ・・・。

 

 

『日頃の行いのせいだと思いますけどねぇ』

 

『ムッキー!! そこに直りなさい青髮ツインテールゥ!!』

 

『何ですと?! この不気味ファンシーグッズが!』

 

『不気味とは何ですか不気味とは!?』

 

『硬そうな外見をした柄が柔軟に稼働する時点で不気味なのは確定でしょう!』

 

「・・・・・・あいつ等のことは放っておいて、実戦と行きますか」

 

「うん」

 

「近距離と遠距離。一応どちらも強化1の俺ぐらいは出来ないとな」

 

「はいっ」

 

 

強化1って何だっけ。化け物って意味だっけ? お兄ちゃん、それぐらい強いし。

 

 

『では行きますよ! イリヤさん!』

 

『生きましょうご主人!』

 

「うんっ」

 

「いくの字が違わねぇか?」

 

『コンパクトフルオープン! 鏡界回廊最大展開!』

 

「【世界を内に秘めし書よ。我が呼び声に答えよ。契約の元、奏音が命じる】」

 

「転身!」

 

「【封印解除(レリーズ)】」

 

 

あれ? お兄ちゃんの詠唱ちょっと違う? ・・・気分で変えてるって言ってたし、あんまり気にしない方が良いのかも。っと、カードカード。

 

 

「クラスカード“コレクター”夢幻召喚(インストール)!」

 

 

よし。インストールも成功! さぁ、戦闘準備・・・って、

 

 

「あれ? まえと違う!?」

 

「そりゃ違うだろ。俺は動きやすい服で戦ってる。イリヤがその時一番動きやすいと思う服に替わるに決まってるだろ」

 

『魔法少女の変身の夢を消しますねぇ』

 

「んな、つまらねぇ夢なら捨てっちまえ」

 

 

お兄ちゃんは始めるぞ、とだけ言い戦闘態勢に移った。私も慌てて波紋を展開し、照準をお兄ちゃんに向ける。と、お兄ちゃんはそこでポツリと

 

 

「エネ。瞬発力上昇(eins)攻撃力上昇(zwei)防御力上昇(drei)・・・演算力上昇(vier)思考力上昇(fünf)身体力上昇(sechs)想像力上昇(sieben)・・・」

 

「え? 待って待って。七つもあったの!?」

 

戦闘力上昇(acht)・・・付与」

 

「八コも!?」

 

『甘く見てましたね。基本の三つだけではなく、他の力も上がっているとみて間違いないと思いますよ』

 

「・・・絶対勝つ!」

 

「行くぞ」

 

 

いっぱい強化してるんだったら増やさないと! 全門斉射! フォイアー!

 

 

「射出までが遅いっ!」

 

 

ふぇ!? だ、だったらもっと速くもっと鋭く・・・お兄ちゃんを狙って・・・!

 

 

「一点集中で撃つのもいいが、それだと全部捌ききれるぞ?」

 

 

えぇえ!? だ・・・

 

 

「だったら!」

 

 

この間お兄ちゃんが士郎さん相手に使ってた全方位一斉射撃!

 

でもお兄ちゃんは撃ち出されたその全てを切り払い、無力化していった。鋭く、乱暴で、暴力的なその剣技はお兄ちゃんがとるとは思えないような行動だった。

 

 

「・・・・・・え。今の何?」

 

『力技のごり押しですねぇ。お兄さんこんな戦法もとるんですか、私初めて知りました』

 

「私も初めて知ったよ・・・」

 

『いつもいつも「俺は普通の高校生だから奇襲しか出来ないんだ」なんて言っていましたが、やはり正面からの正攻法もできるんじゃあないですか』

 

「お喋りはそこまでだっ」

 

 

ッ! やっぱり速いっ!

 

 

「ルビーっ!」

 

『照準よーし! 射出!』

 

 

ルビーが圧倒的な量で撃ち出す宝具の数々は、ギルさんや士郎お兄ちゃんでは絶対的に持ちうることの不可能な、異世界の異次元の精霊や科学者が作り上げ、英雄や戦士が振るった武器の数々。

でも、元々それを集めて使うお兄ちゃんは的確にかわし、破壊する。

そして、お兄ちゃんの持つ聖剣が輝きを放った。

 

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。今、常勝の王は高らかに手に執る奇跡の真名を謳う。其は───」

 

「ルビー防御!」

 

『はいなっ!』

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 

いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)

 

 

よしっ。防いだ!

と思った後の一呼吸でお兄ちゃんは私達の方へ向かって飛び出していた。多分宝具を放ったあの聖剣は破棄したんだと思う。

頭の回転速くない?

 

 

「速っ!?」

 

『状況判断が早すぎます! 思考力も増してますね!?』

 

「良く分かったな」

 

『お兄さんはゲームのようにステータスを上昇させるのが得意ですからね。そこから考えれば他にも色々と・・・』

 

「まさかオールステータスアップとか!?」

 

『いえ、それなら八つも上昇させる必要はないかと』

 

「あながち間違いじゃあねーぞ。何故なら、八番目は戦闘能力の上昇魔法だからな」

 

「『な、なんですとーっ!?』」

 

 

お兄ちゃんってばチート!? チートだチーターだ!!

と、思ったその一瞬。お兄ちゃんは超加速で私のお腹に蹴りを叩き込んできた。

 

 

「・・・・・・ガッ・・・・・・!?」

 

 

意識が飛びそうになり、頭が真っ白になる。

 

 

「ゲホッ! ゲホゲホッ。ガハッ!」

 

 

お兄ちゃんのルビーが何か言っているけど、聞いている余裕がない。

 

 

『イリヤさん! 大丈夫ですか!?』

 

「・・・大丈夫」

 

『まさか物理保護を突き破るような蹴りだとは・・・』

 

「お兄ちゃんは、ね。色んな意味で規格外なんだよ」

 

『いえ。まぁ、それはそうですが・・・』

 

 

もう、なりふり構ってられない。お兄ちゃんと同じ武器を使って同じ戦法をとるしかない! 力を貸して!

 

 

「無制限の蒐集書よ! 今は私に力を貸しなさい! eins,zwei,drei,vier,fünf,sechs,sieben,achtを付与!」

 

『イリヤさん!?』

 

 

すごい・・・! 力がわき上がってくる! これが強化・・・! いけるかも!

 

 

「・・・とぉぉりゃぁぁぁ!!」

 

「来い」

 

「はぁっ!」

 

「・・・」

 

「せりゃぁっ!!」

 

「・・・フ」

 

「おんどりゃぁぁっ!!」

 

「甘い。ヌルい。・・・そして、軽い」

 

 

今・・・。何が起こったの・・・?

 

 

 

 

───暫くして、体育館の中心付近で転がっていたイリヤは目を覚ました。

 

 

「・・・・・・体育館だ」

 

「眼、覚めたか」

 

「・・・うん。

 

(・・・頭の下硬くない。お兄ちゃんが枕置いてくれたのかな?)」

 

 

そう思ったイリヤは奏音にお礼を言おうとして、体ごと動かして・・・・・・自分の頭の下にあるのが奏音の腕だと気付いた。

 

 

(うっ!? 腕枕ァァァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア!?)

 

「大丈夫か?」

 

「ご馳走様ですっ!」

 

「んん? 大丈夫かって聞いてんだけど」

 

「ご褒美以外の何でもないよ!」

 

「何の話してんだ?」

 

 

内心が狂喜乱舞で暴走し始めたイリヤは、冷静な判断が出来ないまま奏音の問いに直感のまま、思いついたままで答えていた。

 

 

少しして。

落ち着いたイリヤと、状況は何となく理解した奏音は体育館の床の上に座布団を敷き、その上に座っていた。

 

 

「・・・体は大丈夫か?」

 

「え、多分・・・」

 

『治癒魔法はかけてますけど、何をされたかを分かりやすくするために会えて痕は残してますので!』

 

「あと?」

 

 

それを聞いたイリヤは、服を脱ぎ上下肌着になって自らの体を見る。一応男子である奏音の前なのだが、イリヤも奏音も今更肌着でどうこう言うわけがない。

 

 

「何これっ!?」

 

 

イリヤの体にはあちこちに青痣が出来ていた。両肩、両肘、両手首、両膝、両脛、両足首。脇腹や背中の方にまで痣はある。

 

 

『いやー。この私でも何が起きたかは分かりませんでした。一体何をしたんで?』

 

「見せるのは初めてだっけか?」

 

『ええ。恐らく。体術の類いですから、お兄さんの使う“愛気”に関連する技だとは思うんですが』

 

「・・・一度だけ見たことがあるかも。確か・・・居合い払い」

 

「そ。居合い払い・・・・・・奈惰嶺だ」

 

 

一発の払いからドミノ倒しのように各部を崩し、一瞬にして相手を倒す。とある武道家の決め技。奏音も愛用する合気道を主流としたごった煮武道の一つだ。

 

 

「奈惰嶺・・・」

 

『一応イリヤさんがやられた時の衝撃を現実に存在するものに換算して考えると・・・。車にはねられたのと同じくらいですね』

 

「はねられたことないから分かんないよ!?」

 

 

イリヤは思わずといった調子でルビーに詰め寄る。ルビーは表情こそ変わらないがヘラヘラと笑っているようだ。

 

 

『お兄さんって生まれる時代が違っていれば正しい形で英霊に昇華されていたかもしれませんね』

 

「・・・・・・強さだけが英雄の証じゃないだろう? それに、俺は戦略も戦術も武器も武術も全部が他人の物だ。何一つ自分の力で手に入れた物じゃ「そんな事無い!!」・・・イリヤ?」

 

「お兄ちゃんは、お兄ちゃんはお兄ちゃんの力で宝具を手に入れたんだよ!? 英雄の持ってる武器を集めたんだよ!? どうして自分の力で手に入れた物じゃないなんて言うの!?」

 

「・・・・・・イリヤ。俺は確かに、あいつ等の持ってる宝具を集めたよ」

 

「・・・! だったら・・・!」

 

「でも、アレはあいつ等の武器だ。彼等が使ったから強く美しく戦場を駆け抜け、伝説に残ってるんだ。俺はそれを自分の力で手に入れたとは言いたくない」

 

「・・・ッ! お兄ちゃんの・・・おおばかものぉぉぉおおお!

 

「・・・い・・・?」

 

「バカ! お兄ちゃんのバカ! ばかばかばかばか!! 誇れ! 誇りなさいよっ! 俺はすごい。って! 英雄達の武器を手に入れたのに! 誰にも出来ないことを成し遂げたのに! 誰も真似できないことをやってのけたのに! どうして誇らないのよ!! どうして認めないの!! どうして! どうして・・・!どうして・・・!

 

 

イリヤは今まで溜め込んでいた物がここに来て爆発したように、決壊したように涙を流して奏音を怒鳴り、睨みつける。そんなイリヤに優しく、いつもの自信満々の笑みはどこに行ったのかまるで少女のように儚げに。

 

 

「僕は弱いから」

 

「え・・・?」

 

「弱いから、今も逃げてる。向き合いたくない現実から、これはゲームのような物だって割り切って」

 

「・・・」

 

「ただただ己を満たす何かを探しているだけなんだ。だから、僕に誇れる物なんて無い。空っぽ(ゼロ)の僕には道理も誇りも、信念も願いもない。ただ、渇く喉を。■■()を欲しがる無限の欲望(渇いた喉)満たそう(潤そう)と必死になっているだけなんだよ」

 

「お兄ちゃんは、空っぽなんかじゃ・・・!」

 

「ありがとう。でも、(それ)の境界は一体どこにあるんだろうな。他人から見た自分なのか、自分がみている自分なのか」

 

「分かんない・・・分かんないよ・・・! お兄ちゃん幸せそうに笑ってるじゃん! それじゃあ満足できないって言うの? 私達と一緒じゃ・・・ダメなの?」

 

「だから何度も逃げてる。幸せなはずなのに、満たされない欲が腹立たしくて。諦めきれない何かを掴むことも出来なくて。けど安心してくれ。今回のなのは達の件で、何かが掴めそうなんだ」

 

「・・・・・・。・・・じゃあ、待つ」

 

「ああ。頼んだ」








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