我、無限の欲望の蒐集家也 作:121.622km/h
リクside
結局、実力が伴う伴わない以前の問題で、戦闘能力で如月の伝説に勝てる可能性は、海の底のように低いことが分かっていた。英霊達に人間が勝てるはずがない。
本気モードの英雄王ギルガメッシュが、大人しく従っている時点で察するべきなのだ。如月さんは、ザビーズやぐだーずのように英霊達に好かれる何かがある。俺達では勝てない相手なんだと。
だとして、それでも。この場合、万に一つの可能性を疑わず、挑まなくちゃあならない。
ユーノにも、あの金色の男がどのような存在なのか伝えた上で、勝率の話や相手の話へと移り、最終的にこちらから出る対戦者は誰かという話になった。
「・・・・・・誰が戦うんだ?」
「私じゃ無理」
「僕も無理ですよ・・・。・・・やっぱり、大人しくジュエルシードを渡した方が・・・」
「私が行くよ」
「なのはが!? 無茶よ!」
確かに無茶だ。俺達と違って特典すら無いなのはが、魔法を知ったばかりのなのはが、勝てるはずがない。それどころか、相手が悪ければ即死の可能性もある。
・・・・・・まぁ、小学生相手にそんな容赦のない相手をけしかける程、大人げない奴だと思わない。が、万が一と言う事もあるのだ。
「私が、やりたいの。・・・ごめんね、ユーノくん。本当は、ユーノくんの手伝いの為に戦うべきなんだと思う。でも、私は挑戦したいの」
「・・・すごいわね」
「なにが?」
「如月さんに挑もうとする貴女がよ。だって、あの人ヤバいくらいに強いもの」
転生者の俺達にしか分からない強さではあるものの、その強さは分からないものではない。
「・・・例えだとしても。お兄さんの家族には勝ちたい」
「どうしてよ」
「何かズルいから」
「は?」
「へ?」
「え?」
「私はお兄さんの事何でも分かってます見たいな顔した。あの子達がズルいから!!」
「一応、年上だぞ・・・?」
「関係ないもん!」
・・・・・・ははは。流石未来の魔王様。負け戦に挑むのも悪くはねーのかもしれないな。
土曜日。
俺達は彼が待つと言った、先日も訪れた喫茶店。アーネンエルベを訪れていた。
「・・・彼は居る?」
「居ないわ」
「待ってるんじゃねぇのかよ」
約束も守れない人だったのか、それとも何か事情があるのか。
どちらにせよ、これから先どうすれば良いのか。
「だからこうして待ってるだろう。お前達の目は節穴か?」
「え・・・? え、な、えぇ!?」
思わず声のした方に振り向けば、この喫茶店の席に本を片手に座っていた、コードギアスの主人公ルルーシュ・ランペルージが、今まで読んでいた本を閉じ、飲み終えた珈琲カップを机に置いて立ち上がるところだった。
「イケメンさんだぁ」
「えっと、如月さんは・・・?」
「ヤツなら来ない。今日俺がここにいるのは、ただお前達を戦場に連れて行くためだ」
さあ行くぞ。と言って歩き出したルルーシュに、若菜が声をかける。
「ちょちょ、ちょっと待ってちょうだい。どうして、本人が来れないの?」
「着いてくればその理由も見ることができる。良いから行くぞ」
それ以上話すことはないと言わんばかりに、彼は俺達の隣を通ってから喫茶店の外に出る。
遅れてはならないと、扉が閉まる前に慌てて続けば、そこは今さっき通った見慣れた藤見町商店街ではなく、前世のソーシャルゲームの背景で見た景色が広がっていた。
「アーネンエルベ・・・」
「え!? なんで!? 私達さっきまで商店街にいたのに!」
「まさか! 転移魔法!?」
「不思議な喫茶店ね」
若菜が全てを察した上で驚くのでも絶句するのでもなく、納得した声を出すのが少し面白くて、笑いそうになったが何とか堪え、不思議そうに辺りを見渡してみる。
「あ。今日いらっしゃったんですね? ルルーシュさん、お疲れ様です」
「ありがとう。マシュ、彼等を今あいつがいる場所まで案内してやってくれ」
「はい! ・・・あれ? ルルーシュさんが案内を任されたのでは?」
「俺はアイツから、『ヒマなら俺の代わりにあいつらの事待っててやってくれぇえぇぇ』と悲鳴のような頼み事しか言われていない。これ以上はやらん」
そう言ってルルーシュは、人類最後のマスター達の癒し、マシュ・キリエライトに全てを託して去って行ってしまった。
「行ってしまいました・・・。・・・コホン。では、僭越ながらここから先は私、マシュ・キリエライトが皆さんを案内させていただきます」
丁寧にお辞儀をして廊下を歩いてくマシュ。その後を俺達は慌てて追いかけた。
sideout.
──彼等が案内され、着いた先。一つの扉をくぐって、ガラスの向こうに大きな空間が広がっている、ように見えるようにディスプレイが設置された一室に、なのは、ユーノ、若菜、陸の四人が入室し、そのディスプレイに映し出された光景に目を奪われていた。
そこに映し出されていたのは、完全仮想現実型戦闘技術習得室にて、これから行われようとしている戦闘の準備だった。
恐らく戦うのは奏音と士郎、白野、立香の四人。その四人がいつでも戦闘ができように準備した状態で向かい合っていた。
その様子を恐らく観客室であろう一室から見ることになった陸は、真っ先に言葉を漏らした。
「・・・何これ」
「これはですね。戦闘訓練のようなものです。皆さんを彼本人が迎えに行けなかった理由です。先ほどまで英雄王に捕まっていたのですが、今は彼等に捕まっているようですね」
「・・・・・あの三人はどういう関係なんですか?」
型月作品の主人公ではあるが、直接的な関わりを持つ事はなかったはずの彼等が、なぜあのように手を取り合って奏音へ挑むのか、それが陸には疑問だった。
「彼等は・・・先輩達は兄妹だと聞いています」
「兄妹? あんなに似てないのに?」
「その辺は突っ込んではいけません。子どもですから仕方ありませんけど、そういう事情を聞かれて怒る人もいるので気を付けましょう!」
「は、はぁ~い」
マシュの子どもを叱るような口調に、思わず言葉遣いが子どもっぽくなってしまう若菜。それを見て陸がニヨニヨするのを必死で隠そうとしているが、隠せていない。
『さて、奏音くん。準備は良いかな?』
ディスプレイに備え付けられたスピーカーから、女性の声がする。思わずスピーカーに顔を向けても、そこからは誰の顔も見えはしない。
『ああ。オールクリアだ。それにまだまだ子どもに負けるわけにはいかないしな』
『その軽口がいつまで続くか楽しみだな、兄さん』
『三対一が卑怯とか言わないよね? お兄ちゃん』
『言うわけないだろ? さっさとかかってこいガキ共。ハンデもつけてやるよ。俺はここから動かず、射撃しかしない。英雄王スタイルだ。余裕だろ?』
奏音や士郎にとって相性抜群の相手、英雄王のような戦い方をするといわれれば、舐められていると言っても過言ではなく、言われた士郎達も額に青筋を浮かべた。
『その言葉、後悔させてやる』
『倒そう、皆で!』
『『『変身!!』』』
『Makeup』
士郎達三人は、サーヴァントカードと呼ばれる礼装を用いて、それぞれの姿への変身を完遂する。士郎は某ウィザードのような、白野と立香はプリキュアのようなモーションを挟んだうえで、その姿を、対応した英霊と同様の霊基へと置換する。
『
『さぁ、行くぞ、兄さん!』
銃身の下に刃が着いた銃剣形の干将莫耶を握る士郎。
地上に於けるあらゆる存在を破壊する三色の光剣を握る白野。
最強の護りとまでいわれた雪花の盾を構える立香。
前衛と後衛、そして壁を用意した、完璧な布陣と言っても過言ではない。
しかし、それが奏音にも通用するかどうかは別問題だが。
「あの。今の変身は、何ですか?」
「魔法少女とはまた違う感じなの」
「あれはサーヴァントカードという礼装です。えっと確か・・・」
『英霊の座に直接干渉して、英霊の力の一端を自らの身体に擬似召喚する、魔術礼装だよん』
部屋に響く女性の声。先程スピーカーから聞こえてきた声と全く同質で、今はビデオ通信が開いているらしく、互いの顔が見える状態なので、説明を開始した女性の姿もしっかりと確認できていた。
『そもそも英霊召喚って言うのは遠坂、マキリ、アインツベルンが手がけた英雄降霊システムが大きな元となっていて、英霊そのものを現界させるシステムなんだけど。
『これと一線を画するのが、エインズワース家が作ったサーヴァントカード。降霊とかけて、英雄憑霊システムと呼んでいるんだ。
『それだけでも十分だというのに、強欲などこかの誰かさんは改造を施し、狙った英霊を召喚する英雄確定チケットにしてしまったというわけだ。
『まあ今回の場合は、ただただ憑霊システムを利用して自らを強化しただけだけどね!』
「も、モナ・リザ・・・!?」
そして、その画面に映った女性の姿に、若菜が思わず声を漏らす。
『やあ。君達が彼のお客様だね? 私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。万能の天才芸術家にして発明家だ!』
『美を追究しすぎて自ら作品になっている変人なんだけどねぇ』
『ロイドさん!』
『あはは・・・僕はロマニ・アーキマン。皆からはロマンって呼ばれてる』
そう言って、ゆるゆるふわふわとした男が画面に映り自己紹介をした。
『・・・・・・まだか? 突然始めるのだけは止めてくれよ?』
『ああ! ごめんごめん! それじゃあ行くよー』
ロマニと名乗った男が、何かをすれば、機械的な音声でカウントダウンが開始された。
カウンタが零になった途端、大きなブザーが鳴り開始を知らせる。そのブザーと同時に挑戦者である三人は後方に飛び退き、飛び退きながら立香は盾を斜めに構えた。
直後。
彼等が居た場所を吹き飛ばす程の、莫大な質量が降注ぎ、追いかけるように追尾してきた剣や矢を立香が盾で弾き飛ばした。
『──ッ!』
『──フ』
容赦がないとも言えるその惨状を作り上げた奏音は、宣言通りギルガメッシュのように腕を組み、余裕そうな表情で王の財宝のような白銀に輝く砲門を、その背後の空中に展開していた。
「本当に・・・英雄王みたいな戦い方だな・・・」
「であろう?」
「!?」
声に驚き振り向けば、いつの間にか陸達が座る椅子とは別の、豪奢な装飾が施された椅子に座った英雄王が、同じようにディスプレイに目を向けていた。
「ヤツの戦い方は、我を参考にしたようだからな。・・・だがまあ、その全てが我と同じかどうかは別の話である」
「どういう・・・?」
「貴様は、我の宝物庫についてもある程度の知識は持っておるのだろう? では、我と同じ戦い方を可能とするヤツのそれをどう見る?」
「・・・・・・」
英雄王から問いを投げられ、陸は慎重に、そして真剣に言葉を選ぶ。
「やっぱり、劣化版・・・なんじゃ」
「ふはは。まあ確かにそうであろうな。ヤツの持つ宝物庫は神秘ではない。
「ヤツのそれは人の欲望そのものだ。我の宝物庫と比べるまでもない。
「しかし、集めることに関してはヤツの方に軍配が上がる。所有者が欲しいと思えば惑星でさえその身に収める性能など、王の財宝にあってたまるものか」
「惑星!?」
王の財宝という存在を知る陸や若菜だけでなく、そのスケールの大きさになのはやユーノも驚きをあらわにする。
「まあ見ておけ。我が雑種がどれほど常識外れの存在か、その眼でとくと見るが良い」
そう言われて、彼等は今一度ディスプレイの向こうで行われる戦闘に目を向けた。
『どうした? かかってこいガキ共』
『ああ、そうさせて貰う。
士郎の魔術行使のかけ声に合わせて、白野と立香の二人はかけ出した。先頭をきって走る立香が、撃ち出されて迫る宝具の雨を雪花の盾で防ぎながら進み、白野はその後ろを走りながら宝具の剣に力を溜めていた。
そんな彼女達を援護するように、士郎の全投影連続層写で宝具が飛び、銃剣から放たれる銃弾が、単体で攻撃を飛ばす。
少女達を近づかせまいとする砲撃と、士郎の射撃を相殺する砲撃と、だんだんと手数が足りなくなってきた奏音に、士郎の放った固有銃弾が着弾し、無限の財宝を周囲にばらまいた上で、広範囲の爆発を起こした。
『勝負ありかな?』
『どうだろうねぇ。彼のことだから、何かしらの方法で回避してると思うけど』
噴煙が晴れればそこには、三角錐状の桃色バリアに囲まれた奏音がいた。その発生源を辿れば、ステープラーのような形状をした遠隔操作型の小型兵器がある。
『フィン・ファンネル・・・!?』
『頭おかしいでしょ。サイコミュ兵器を造り出すなんて』
『世の中には、いるんだね・・・。そんなイッちゃってる研究者が・・・』
『そんなもの、誰が使ってもカッコイイに決まってる! くっそー! 俺も使いたいなー!』
羨ましそうに、何故か悔しそうにそういう士郎に、白野と立香の冷たい目が向く。
が、そんな事も気にせずに、奏音は行動を開始した。
彼の手元で、辞書程の厚さはあるであろう本が勝手に開く。そして見開きページ上で、波紋が液体の如く広がって、
乖離剣と呼ばれる無銘の剣の柄が顔を出していた。
「嘘だろ!? あれは英雄王の!」
「何、驚くことでもあるまい。言ったであろう。我が雑種の蒐集癖は留まることを知らぬ。
「世界さえもその身に呑み込む大食らいが、我の宝物庫ごとき食えずにどうするというものよ!」
ギルガメッシュは陸達の反応が面白いと言わんばかりに笑う。その声色には、顔には怒りの感情は全くなく、ただただ楽しそうに、笑っていた。
「は? 宝物庫を食った・・・?」
「強欲な蒐集家が、我が集めた宝物に目をつけぬとでも思ったか? ヤツは我との戦闘中に全てを奪って見せたぞ。まあ代わりにヤツの宝物庫に傷をつけてやったがな」
「英雄王の宝具で傷しかつかない宝物庫ってなんだよ・・・」
陸はギルガメッシュの懐古を聞いて戦慄する。彼等にとって英雄王とは絶対的な覇者であり、慢心さえしなければ誰にも負けることはないといっても良い存在なのだ。
「乖離剣エア!」
「ほう、ナノハよ。覚えておったか」
「凄い武器なんだよね!」
「うむ。あれをこの場で使用する意味が分からぬが、おおよそ見当はつく。
「面倒になったのであろう。この時間を早々に終わらせたくなったから抜いたのであろう。
「最も、あの場で使うのはヤツの腹の中で記録された、原典から複製された贋作であろうがな」
乖離剣を抜かれる前にと、攻めようとする士郎達だったが、容赦のない追撃がそれを阻む。
奏音は一寸の躊躇いもなくその柄を握り、一息に引き抜いた。所有者本人も滅多に抜くことのない最強の神造兵器が、その姿を見せる。
それと同時に、乖離剣の疾く量である刀身についた三つの円筒が、ゆっくりと回転を始めた。
『もう、間に合わない! 立香ァ!』
『任せて!』
その言葉と共に、士郎と白野の前に飛び出した立香が、盾を上段に振りかざす、それと同時に乖離剣が風を生み出し、力場が生まれ始めた。
『原初を語る。元素は混ざり、固まり、万象織り成す星を生む』
『真名、開帳───私は、災厄の席に立つ・・・それは全ての疵、全ての怨恨を癒す、我らが故郷』
「最強の矛と、最強の盾・・・」
『顕現せよ! 「
『その身でとくと味わえ! 「
瞬間。ディスプレイが閲覧不能になった──カメラを設置するような観測機ではないので、壊れたわけではないが、衝撃で一時的に機能不全に陥っただけだった。
見えてはいないが、立香の宝具はしっかりとその役目を果し、後方にて待機する士郎と白野の二人を完璧に守護していた。
『ぁぁぁあぁあぁあぁああああああ!!!』
───
『良く防いだな。全開ではないにしろ、対界宝具をよくぞ』
そう言った奏音の手にあった乖離剣は、ガラスのように砕け散った。
『防がないとダメだったんだよ。お兄ちゃん』
『はぁ?』
『
『まさか!』
奏音が気付き、砲門を新たに開いたときには遅く、士郎の最大宝具。固有結界が発動した。
『───
世界を塗り潰して広がる衛宮士郎の心象風景。それは緑豊かな草原に、無数に突き刺さった剣や銃などの武器だった。そして、なにより目立つのが宙に浮かぶ巨大な本。開かれたページに描かれていたのはカルデアスとムーンセルだった。
そして、その本を守護するように、二十八枚の花弁を持つ
妹達を守り、兄の隣に立ちたいという“衛宮士郎”の理想が体現されたこの空間は、まさに彼の心の在り方だった。
「あれは・・・・・・」
転生者であり、前世の記憶を持つ陸は、本に描かれた二つの物体に見覚えがあったし、それを守ろうとする宝具にも見覚えがあったのだが、本自体には見覚えがなかった。
しかし、その本はつい先程見たものだった。
乖離剣エアを呼び出した本。それが、あの本だったはずだ。
『なるほどな。盾で守護しておきながら、周りへの被害をある程度出させたのは、その音で詠唱をかき消すためか』
『うん。そうだよ』
『だが、固有結界を形成したところでどうする? それだけでは俺に勝てない』
『確かに、ここに在るものは兄さんから受け継いだものがほとんどだ。だけど、そこからの成長は俺だけのもの』
士郎はゆっくりと首を振る。が、彼一人でモンスターに挑むわけではない。
『奏兄に挑むのは、無限に財宝が存在する世界だけじゃない。私達もいることを忘れないで』
『月の王と人理のマスター。私達の対処に手数は足りる?』
『さぁ、行くぞ、蒐集家』
『『『武器の貯蔵は十分か!!』』』
『・・・それが言いたかっただけか? 言っても言わなくても結末は変わらねえぞ』
互いが互いに持つ武器を、奏音に向けてほえる三人。それを聞いた奏音は呆れながらも、表情は真剣そのものに変わっていた。
それ以上何も言う事はないとばかりに展開された白銀の砲門は、五十に届きそうなほど。そこから毎秒数百もの宝具が撃ち出されるが、士郎が地面に刺さった宝具を抜いて握り、遠くから呼び寄せたりして迎撃、順調に捌いていった。
その内に白野が接近。軍神の剣を奏音に振るうが、身体に当たる直前で、六角形の形をした桃色のシールドが剣を阻んだ。
『絶対守護領域・・・!』
『・・・あれの計算を人間の脳一つでやるとか、どんな脳味噌してるんだい!』
コンピュータを使え、コンピュータを。と、悲鳴のような文句が観測室の方から聞こえてくる。
『とどかない・・・!』
『吹き飛べ』
『ッ!? まず!』
真横に現れた砲門から放たれた一撃を躱しきれず、大きく吹き飛ばされる白野。吹き飛んだ時点でそんな白野には一瞥もくれない奏音は、懐に飛び込まんとする士郎に宝具で牽制を行っていく。
『クソッ!』
『俺を英雄王と同じだと思うな? あいつがテキトーなら、俺は適当だ。攻撃の質が違うんだよ』
奏音は容赦なく、砲門の数を増やす。そのためか、絶え間なく聞こえる射出音がエンジンのように聞こえ始めた。
「・・・でも、やっぱりエミヤさんと士郎さんは違うんですね。色々と」
「固有結界か? それもそのはずであろう。衛宮士郎だけではない、ハクノもリツカも我が雑種によって肉体改造を受けておるからな。言ってなかったか? マシュよ」
「あ、はい。それは初耳でした。特殊な訓練を受けているとしか、聞いていませんでした」
「ふはは。奴らの肉体改造は尋常ではない。体の筋、血管、リンパ、神経、その全てを完全なる魔術回路として起動させるという、魔術師としては命に関わる改造である故な」
「だ、大丈夫なんですか。それ」
「知らぬ。だが、それを含めて当たり前のこととして受け止めるのが、奴らの起源であろう」
とある聖杯戦争の際、奏音によって救われた彼等が一様にその体に埋め込まれた無制限の蒐集書の写本。それが彼等の起源を変化させ、森羅万象を『記録』し、受け入れ、容易に『共有』することが出来る【本】とした。
このお陰で如月の名を持つ士郎は、この起源が投影魔術と解析魔術を主とする自分に対して極めて高い親和性を持つことで、解析・記録したものを何でも、投影品として世界に共有させる。故に、衛宮の名を持つ士郎よりもその負担は大きく減っている。
士郎の近接攻撃の連打を絶対守護領域で弾いていた奏音は、ふと口を開いた。
『そろそろ終わりにするか? 士郎』
『ハァ?!』
『いや、お前はよく頑張った。だけど、アーチャーが前に出た時点で不合格だ』
そして奏音はゆっくりと唱えだした。
【かつてに在りし究極の一刀。
其は、肉を断ち骨を断ち命を絶つ鋼の刃にあらず。
この刃が求めるは魑魅魍魎。
神を切り、事象を斬り、影を斬る。
──即ち。妖退治の刀なり】
そう言った奏音の手元に出現したのは、六尺程の長さを持つ大型の太刀。
『長っ?!』
『うわっ。あれ、恐ろしいくらいの対魔宝具だぞぅ!』
『魔術的な計測器が無を吐き出してるくらいだからねぇ』
それは、英雄王にとっての乖離剣のように、奏音にとって最も大切と言える最強の刀。
英霊や魔術師にとって天敵とも言える。魔を斬る刀。
その銘は──
『絶対ヤバい!』
『
奏音から逃げるように、士郎は近接攻撃範囲から離れ、立香が盾を構えている辺りまで後退すると同時、ギルガメッシュの霊衣に換装した白野が、王の財宝から莫大な質量を放つが、全く同じ宝具で相殺された。
『無駄だ。もう、遅い』
軽く握られている刀が、重さを全く感じない動きで上段に振りかざされた。
『これぞ、妖刀。
上段から振り下ろされたそれは、固有結界を切り裂いただけでなく、魔術的に構成された仮想現実そのものを切り裂いて、強制的に戦闘は終了した。
陸side
俺達の目の前で、シミュレーションではあるものの、魔術的な固有結界が切り裂かれた。
原作よりも大きく強化され、並の魔術師では相手にすらならないほど強くなっている衛宮士郎が展開した固有結界を、英雄王の宝具でも傷がつかないように設計されているシミュレーションルームを。
彼が放った一振りはいとも簡単に切り裂いた。
「・・・・・・どうする?」
「普通に考えて、あの人と関わったなら、どんな人が相手でも不可能に近いと思う」
「・・・だよなぁ」
勝てる気はしない。あの人が特別なんだとしても、あの理不尽と関わって育ってきたのだったら、ひっくり返っても勝てる気はしない。
「・・・やっぱり、転生者なのかな?」
「それは、そうだ。そうじゃなけりゃ可笑しな話だ」
「そっか」
「それよりも、管理局の動きに気を付けなきゃダメだ」
「・・・なんで?」
首を傾げる若菜も可愛いが、今はそれどころではない。
「如月はこの町を、この星を守る現人神だ。そしてこのロストロギア以上の戦闘能力」
「・・・ミッドチルダ、終わったわね」
「管理局だけなら良いんだが」
管理局は自分達の実力を過信せず、触れるな危険のスタンスをとってもらいたい、そう願う。
sideout.