我、無限の欲望の蒐集家也 作:121.622km/h
世界は、個人の意志とは関係なく動き続ける。
そう、誰かが言った──至極当然のことだが、見逃しがちなことだと思う。
しかし、自らが世界を動かしていると信じて疑わず、自分の思い通りにならない現実に迷惑な癇癪を起こす者──例えに出すまでもなく彼等が"そう"なのだが、観測世界と呼ぶ次元、現実世界とも言い換えてもいい。つまりは様々な創作物が生み出される三次元から、自らDを一つ消すことで、この次元に降り立った特異的な人物。
我々は彼等のことを表現する時、仏教の言葉を借りて、こう呼んでいる。
"転生者"
と。
彼等はまるで自分が世界の中心であるかのごとく振る舞い、秩序や規律を破り、子どものように駄々をこねる──ある意味で、人という存在が最も恥ずべき存在である──元々はこんな考え方もしていなかったのだが、いつの間にか移ってしまったか。
それとも、初めて自分以外の転生者にあったことで、自己嫌悪的な感情──これも、仏教の言葉を借りて表現するならば、"慚愧"が生まれているのだろう。だからといって否定するわけではない。むしろ肯定的に迎え入れるべき感情だ。
"慚愧"は俺が俺であるための、大事な大事な、欠けてはならない
むしろして当然──抱いて当然の嫌悪感だろう。
さて、何故こんな話になったのかといえば、「世界は、個人の意思とは~」といった言葉が原因であることは間違いがない。そもそも何故、そんな言葉を表に出したのか、といえば──高町なのはが受けている修行の内容を、全く知らされていないという事情からである。
もしも、俺が糞野郎だったとしたら、自ら設けた規則を堂々と破り、修行内容を聞き出していた。なんて事があったかもしれないが、生憎そんな事ができるくらい豪胆ではない。そこも掘り下げるのであれば、それは俺が小心者だからである。
さて。
そんな感じで、彼女達がどんな修行をしているのかよく知らないので、俺は近い内にちょっかいを出してみようと考えている。何も知らないのはやっぱりちょっと寂しいのである。それもまあ近い内に。ということで具体的な日付は決まっていないのである。
日付と言えば、今日の日付は四月二十二日。
前々から決まっていた──というわけでもないのだが、今日は衛宮家と如月家。合同で温泉旅行に行く日なのであった。
目的地は海鳴市郊外。そこに目的地である温泉街がある。
参加するメンバーは全部で十三人。
俺・いーちゃん・士郎・白野・立香の"如月"家と、切嗣・アイリ・舞弥・イリヤ・美遊・クロエ・セラ・リズの"衛宮"家である。
用意したのはエルグランドのジャンボタクシー仕様──しかし、それでも十三人は流石に乗らない──定員オーバーである。それに、イリヤのお願いで、友達を連れて行くことになっているから、余計に席は足りていないだろう。
「連れて行く友達はどんな子なんだい?」
「えっとね。はやてちゃんって言って、図書館で知り合ったんだ。車椅子に乗ってるんだよ」
車椅子に乗っている、なんていう情報は今初めて聞いた気がするぞ。そういった情報は、前もって伝えておいてくれないと、社会の歯車として生きている俺としては、とても困る。
どんなタイプの車椅子なのかにもよるけれど、普通に考えて車──エルグランドに今よりも人以外のものを乗せるスペースが余っているのかという点が問題になってくる。
「その辺りは問題ないよ。僕が娘のことに妥協すると思うのかい?」
「・・・・・・いや、思ってはないけど──ってことは車は二台出した方がいいな」
ジャンボタクシーに普通に乗って、車椅子も乗せるとなれば普通に四人ほど乗れないことになる。それが悪いというわけではないが、皆で行くのならば必要な処置だろう。
そもそも、そういった点でも切嗣が妥協しているわけがなかったのだが。
というわけで、舞弥さんの車──レガシィに運転手である舞弥さん、俺、リズ、士郎の四人が乗ることになった。人選理由は、運転手切嗣と、面倒見の良いセラと、同年代と、誰とでも仲良くなる天才。あと、士郎は男子一人が嫌だったから無理矢理引っ張ってきた。
すまんな切嗣。
形だけの謝罪を心の切嗣相手にすませ、自分の荷物を乗る車に積み込む。本人に向かっては絶対──何があろうと言ってやらん。
「・・・・・・よし。荷物の積み込みは完了だ。いつでもいけるぞ」
「こっちも終わったよ」
それぞれ車に乗り込んで、エルグランド組はイリヤの友達をお迎えに、俺達──レガシィ組は先に温泉旅館に向かうことになった。
「俺こっちで良かったのか?」
「士郎がこっちにいなかったら、俺は一対三の四面楚歌だぜ?」
「一対三なのに四面楚歌なのか・・・?」
周りが敵だらけという状況の表現なので間違ってはいない。
周りが女性だけの空間に男一人というのは案外辛い──切嗣の場合娘もいるから大丈夫だろう。と、勝手に考えた結果の編成である。
「イリヤの友達とは向こうで合流なんだよな?」
「ああ。あくまで俺達は、だけどな」
数十分ほど車に揺られて温泉旅館にたどり着いた──が、切嗣達の到着を待つことになった。理由としては如月と衛宮でとっている部屋が違う上に、部屋割りは到着してから決めた方がいい。
というわけで、エルグランド到着を待っているのである。
「まあ、そろそろくるだろうけど」
「途中でコンビニに寄ったもんな・・・・・・」
仕方ないだろう途中で無性に青看板の旨辛チキンが食べたくなったんだから。
その後、暫く待ってやってきたエルグランド組と合流し、それぞれ──如月家と衛宮家に分かれてチェックインを済ませて、部屋に入った。
荷物を置いて、大きい方の部屋──人数の多い衛宮家が案内された、藤の間だったか床の間だったか忘れたが、そんな名前をした部屋に向かう。
内側から開けて貰って中に入れば、かなり大きめの部屋だった。宿泊客に子どもがいたからなのか偶然なのか判別はできないが、それなりに快適そうな空間だった。
「君がはやてちゃんかな?」
「は、はい」
車椅子に乗ってはいなかったが、ぺたりと畳の上に座っていたその少女──はやてちゃんは、俺の質問に対してそう返事を返してくれた。
「八神はやてって言います。えっと・・・・・・」
「奏音、如月奏音だ」
「きさらぎ!? え、マジモンの如月ですか?」
「逆に本物じゃない如月って何だよ・・・」
どうやらはやては如月を知っていたようだ──知らない方がおかしいほど有名な名前ではあるのだが、中には興味のない奴もいるので知らなくてもあまり気にしていない。
自己紹介も軽い内に済ませて、醍醐味と言っても過言ではない温泉に向かった。
とても楽しみにしていたのか、鼻歌を歌いながらスキップをしていたイリヤが、つんのめりそうになるくらい勢い良く停止した。
その理由というのが、
「お兄さん!」
「ゲッ。高町なんとか・・・・・・」
「なのはだよっ!」
なんとかの方が字数が多いじゃん!と、イリヤに向かって文句を言うなのは。
確かに。と口にすればイリヤから睨まれた。
お前はどっちの味方なんだとでも言いたげだった。
女子組と別れ、男湯の方に向かう──脱衣所で神名陸にエンカウントした。少し周りを見回して、他に男性陣がいないこと──そしてユーノが棚にいる事を確認して、少し安心もした。
「・・・・・・良かったな」
「キュ!《何でそんな顔で僕を見るんですか!》」
「そりゃ、神名がいなきゃ。お前──なのはと女子風呂行きだぞ」
「・・・ゔあ゙あ゙あ゙」
決してフェレットの鳴き声ではない──フェレットである彼がしてはならない悶え方をしたユーノを横目に、入浴準備を進めておく。恐らく、女湯に連れて行かれた自分を想像でもしたのだろう。
引き戸特有の音を立てて温泉の熱気で満たされた浴室に入る。
露天風呂ではなかったようだが──野外に通じる扉があるということは、おそらく今は露天風呂の入浴時間ではないのだろう。だから、通用口が閉じているのだ。
覗く必要もないが──人生のうちで一度はやってみたいことではあったな。結局した事ないけど。
士郎と一緒に湯船に浸かる。
そう言えば、あの高町父と兄はいないのかなとかそんな事を考えながらのんびり温泉を楽しむ。
「・・・・・・なぁ、如月さん」
「ん? どうしたカミナ」
「如月家の地下に温泉ってあったきがするけど、どうしてここに?」
「・・・あー。そのへんはもう、感覚的な話になるんだけどな」
さて、どう説明したものか──一番わかりやすい説明をしてやろうと、無駄に張り切って頭を回転させる。
「いつもと違う気分を味わうため、っていうのも勿論ある──しかしだ。近くの銭湯と少し遠くの温泉だったら、カミナ。お前はどっちを選ぶ」
「そりゃ、温泉・・・・・・」
「町の銭湯より旅行の温泉だろ? そんな気分なんだよ」
「あぁー・・・・・・んん?」
微妙に納得ができていなさそうだったが、温泉に浸かって頭が溶け始めている俺にまともな説明が出来るとは思わないでもらいたい。
そんなこんなでどこまでも緩い会話をしながら温泉を楽しんで、それはもう存分に飽く飽きるまで堪能してから男湯を出れば、そこには良い笑顔をした高町士郎が立っていた。
「・・・・・・なんか、用ですか?」
「私では、ないんだけどね」
こんな会話があったらしい。
「む・・・? ふむ。儂も長いこと生きておるが、同族に出会うとは思わなかったのう」
「同族・・・?」
「夜の住人たるお主が知らぬはずがなかろう? 儂の名を──キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードをな」
「ハートアンダーブレード・・・!?」
「この姿に関してはあまり言及せんでくれると嬉しい。儂は今、十全ではないからのう」
「それは・・・構いませんが・・・。怪異の王とも呼ばれる伝説の存在・・・、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼たる貴女が、なぜこんな所に・・・」
「ただの旅行じゃ。我が主様が妹分に懇願され、家族揃ってこうして温泉に。宿泊しに来たというわけじゃ。怯えずとも良い。別に取って食おうというわけではないのじゃから」
「・・・・・・家族?」
「儂にではなく我が主様にじゃがの。海鳴に住んでおるのなら知っておろう。如月の名前くらい」
「如月!? 貴女の主って如月なの!?」
「信用ならんか? 如月を騙ることの恐ろしさを知らんわけではあるまい?」
「そういうことではないの。わたし達にとってその名前は聞き流していい名前じゃないの。ねえ、貴女の主様に会わせて貰うことってできるのかしら?」
「まあ、構わんじゃろう。我が主様は年がら年中暇しておるようじゃしの」
・・・・・・・・・。
というわけで月村と関わることになってしまった。
高町家が予約した部屋──桐の間にて、俺達は座卓を挟んで向かい合っていた。机の上に当たり前のように置いてあった緑茶を淹れてもらう──少しだけ熱かった。
いつもは気にならない温度が気になるのは、現状のせいだろうか。
「・・・・・・それで? わざわざ俺と顔を合わせてしたい、如月との話──ってのは一体なんだ?」
「そうね。本来なら、言わなくてもいいことなんでしょうけれど。私達がどうしても言いたいだけなの。・・・妹を、助けてくれてありがとうございます」
「また、そういう案件か・・・」
そういえば、そんなこともあったような気がする。直接は関わりがないことにするために、詳細は知らない振りを貫こう。
「また、とは?」
「たまにいるんだよ。如月に助けられたからお礼を言いたいってやつが。でも、如月も大きな組織だから、俺のような名持ちまで案件が上がってくることもほとんどない。今自分がしたような身に覚えのない謝礼をよくされている。ってことだ」
「・・・・・・そ、うですか」
「まあ、一応そのお礼は受け取っておくよ。大丈夫、もう慣れたから。ああ、あと忠告というか、これからのこと」
「何でしょう・・・?」
「海鳴に住む以上、如月と関わらない──なんて選択肢はとれないと言ってもいい。だから、例え助命されても、また如月か。なんて聞き流すくらいの肝っ玉を持つことをオススメするよ」
「はい」
なぜ敬語を使われているのか気になったが、よくよく思い返してみれば如月奏音は大学生だった。目の前の彼女達より年上なのだから敬語でもおかしくないのかもしれない。
その後は、本当にしょうもない話をしてから別れを告げ、自分たちで取った部屋に戻ってようやく腰を落ち着けた。
──そんなことがあったその日の夜である。
宿をとった旅館の近くにある森の中で、俺はとある道具を持って準備をしていた。その道具というのが、宝石の形をした願望器と呼ばれる今回の事件の中心物──ジュエルシードである。
我が妖精に蒐集済みだと言われて、ジュエルシードという名前に縛られずにありとあらゆる可能性を潰していった結果、見つかったのがこいつだ。
その正式名称を、「The ether compression type linker core crystal」
──魔力圧縮型連結核結晶という。
その内に秘めた膨大なエネルギーをデバイス(Device)──正式名称を「Dream embody veritable industrial calculate equipment」という特殊な専用機械に格納することでその真価を発揮する。半永久的に使える電池のようなものである。
因みに格納する数が増えるごとに出力は増し、相互作用によって使用可能期間は莫大に増加する。そもそもこれが開発された目的が「デバイス」を使うため──ひいては、デバイスを使用した魔法と呼ばれる超科学現象の行使にある。
「──ようするに、こいつは俺の地元産・・・ってことになるんだな」
『大昔にご主人が配ったそれが、回り回って今ここにあるってことですね』
そんな俺の手元にあるのは、特にナンバーが振られているわけではない、ジュエルシードの原型。
「コアクリスタル」である。
世は巡る、とは言ったものの。こんなものまで巡らなくても良いような気がする。
「さて・・・と」
まさか旅行の日程が被るとは思っていなかったが、丁度いい──なのはの腕試しを今日行おう。
その内容はいたってシンプルである。サーヴァントカード「saber」を使い、理性無きアーサー王と戦ってもらおうと思う。以前イリヤも通った道。このくらいの壁、乗り越えて見せろ魔導師。
「──告げる」
森の中にある、少しばかり開けた空間にて、自らの手と地面に置いたカードの間にコアクリスタルを置き、俺ではなくそれを媒介にして召喚する。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」
どのくらいの強さになるのか、それは俺自身も予想できない。
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
何故なら、聖杯戦争やカルデアで使われている魔力とは、コアクリスタルが内包しているそれ、が全くの別だからである。
「誓いを此処に。」
格好つけておいて、無様に失敗する可能性がある──そんな事になりたくもないが、あるのだ。
「我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。」
正しい召喚呪文を綴る中で、ふと思う。このままでは普通にアルトリアが召喚されてしまうのではないだろうかと。それはそれである意味失敗なのだから、どこかで間違えなければならない。
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手──!」
途中で詠唱を無限召喚用のものに変更する。するとどうなるか、結果は見ればすぐにわかった。サーヴァントとして召喚されるほどの魔力を消費しながら、力だけを借り受ける。そんな非常識を可能とするのがコアクリスタルである。それを文字通りの核として、魔力が編まれて召喚の儀式は完了した。
セイバー・オルタナティブとも呼ばれる黒衣の騎士は反転した聖剣を握り、静かに佇む。
『ジュエルシード反応と95パーセント類似。この様子だとあの金髪魔導師も釣れますね』
「あちゃー。吉と出るか凶と出るかだな」
それはともかくとして、ようやく──といってもそれほど時間がかかったわけでもないが、準備ができたので少し離れた場所でハデスの隠れ兜を被り、身を隠した。
その瞬間。
「入れ替わりに」と言っていいほどのタイミングで、なのは達が森の中へ駆け込んできた。
「この辺りだ!」
「あっ!! アルトリアさん!?」
「マジかッ!!」
発動したジュエルシードを見つける事のできる探知魔法が存在する、と考えれば、駆けつける早さも納得できる。コアクリスタルの複製品が劣化して、ジュエルシードになったということは、現在の魔法発動条件にそれが必要ないことはすぐにわかる。
それ以前に、目の前でデバイスを操り、魔法を行使する彼女達を見れば、そんなことは一瞬にして理解できる。魔法におけるコアクリスタルの必要性は地に落ちたのだろう。
そういえば、彼女達は一体どうやって魔法を行使しているのだったか──思い出せない。
「どうしてサーヴァントからジュエルシード反応が!?」
「わからない・・・。でも、こいつは俺達の敵だ!」
話は少しばかり変わるが、アルトリア・オルタナティブと如月奏音──二人の間には、少しばかり因縁のようなものが存在しているのである。しかし、目の前に在る獣の如き彼女に関しては、何の因縁も存在していない。
つまるところ、今の話は余談に過ぎないのである──そんな全くつまらない話はさておいて、今は目の前の惨状の観察──観測といってもいいかもしれない──の続きをするとしよう。
「アクセルシューター!」
なのはが形成したスフィアから放たれた魔力弾は、しっかりとしたコントロールで真っ直ぐ飛び、アルトリアに直撃するかと思われたが、高密度の魔力結界。「
対魔力がデバイス魔法にも通じるのか気になるところではあったが、また今度にしよう。
「通らない!?」
「風王結界だ・・・」
「えっ!? じゃあ・・・宝具も使ってくるってこと!?」
使うよ。
戦闘音が激しすぎるから聞こえるわけはないだろうけど、少し離れた場所でポツリと呟いた。
暴龍のごとき斬擊の雨──斬った軌道がそのまま空間を滑るのは物理に喧嘩を売っている気がする──を躱しながら、時折射撃魔法で牽制をするなのは達。
このまま続けていても、状況が好転しないのは判るのだろう。焦りが顔に現れ始めていた。
「くっ・・・このままじゃ!」
「・・・なのは! 俺達が時間を稼ぐから、砲撃魔法を!」
「──! ・・・わかった」
少し後方に下がり、レイジングハートを水平に構えるなのは。恐らくだが、砲撃魔法の射撃準備に入ったのだろう。目敏く──もしくは本能的に、この場においてなのはのそれが自らにとって最も危険であることを気づいたのか、アルトリアは陸達の攻撃を無視するように飛び出した。
「不味いッ!」
「なのはぁっ!!」
その瞬間。
アルトリアの進路を塞ぐように、金色の魔法が撃ち込まれた。驚愕に眼を見開くなのはの前に、金髪の少女──フェイトが降りてきた。
「あっ!」
「──! 無傷・・・!?」
「ウォリャァッ!!」
無理矢理。そう表現するしかないほど見事な一本釣りで、陸はアルトリアとなのは達を離した。
「おいアンタ! アイツに射撃魔法は効きそうにないんだ」
「私たちが時間を稼ぐから、なのはと砲撃魔法を!」
「お願い!」
「・・・・・・わかった」
そう言って、二人の魔法少女はアルトリアに矛先を向けた。
どうなるのか楽しみである。
「いくよ、レイジングハート!」
『All,Right.Ready』
「バルディッシュ」
『Yes,Sir』
「ディバイーン」
『Divine』
「撃ち抜け、轟雷」
『Thunder Smasher』
「バスター!」
『Buster』
「サンダースマッシャー!」
二人の現状最大攻撃。
それは、図らずとも息の合った魔法少女同士が起こす奇蹟の一撃。もし結界を張っていなかったらと思うと、冷や汗が流れる大規模な破壊力だった。
流石タイトルロールとそのライバルである。
だが。
すぐに彼等は思い知ることになるだろう。
どれほど知略を巡らせようと、
「うっそだろ! 非殺傷だからか!?」
「アレを受けてまだ・・・」
どれほど力で圧倒しようと、
すべてをひっくり返す、絶対的な力があるということを。
彼等が一体どんな怪物と戦っているのか、その宝具の真名と共に知ることになる。
「
黒い極光の暴力は、彼等の使う魔法を難なく凌駕し、結界を両断し外界へと被害をもたらせた。
衝撃波で肉が削れ、血が飛び散った。少女の顔に、服に、紅い液体が付着した。白かった少女は、友人から流れ出たそれに驚き、現実が受け入れられず、目の焦点すらも合わなくなった。
その絶望的な局面を前に、俺はカチリとどこからか何かが外れる音を聞いた。
──如月邸、地下。
中央管制室。
「奏音君がなのはちゃん達にちょっかいだしたね」
「・・・そうか。で? 今回奴は何をやらかしたんだ」
「カードを使って理性無き騎士王を召喚したようだ」
「それは流石にやり過ぎじゃあないか?」
「ゲロ・・・。別に構わないのでは? 上には上が居ると教えないと、成長できないであります」
「・・・彼がそこまで考えて行動してくれてたらいいんだけどねぇ・・・。ほら、何かやらかした」
「どれどれ?」