我、無限の欲望の蒐集家也   作:121.622km/h

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副題:リリカルファイト


011

四月二十二日から二十四日までの週末三日間を使った温泉旅行も終わり、既に数日が経っていた。数日、といっても現在は四月二十六日のため、一昨日温泉旅行に行ったばかりである。

 

それは突発的に──衝動的に開催された。

 

もしかしたら、随分前から火蓋は切られていたのかもしれない。しかし、そんな事を当時知るわけもなく、今日この日に引き金を引いたのは全くの偶然だった。キッカケが何だったのかといえば、つい先程のことである。

 

今日日週間となりつつある、朝食を食べて学校へ行き、アーネンエルベを経由地にして訓練をしにやってくるなのはと、拉致してきたおかげで、昼夜問わず──アルタースクエアも使用して訓練に挑むフェイト。

 

暦で計る修行日数は当てにならないとしても、時間差もそろそろ埋まる頃ではあるし、二人の実力も並んできたのではないか。何とはなしにそう思い、どちらが強いのか気になるといった旨の発言をしたために、今回の事態は起きたといっても良い。

 

つまるところ、結果として。現在進行形で起きている事象とは。

 

なのはとフェイトの模擬戦であった。

 

四月も終わらんとする二十六日。高町なのはとフェイト・テスタロッサは、お互いの全力をもって今一度ぶつかり合うこととなった。

 

 

『──鏡面界、形成率九十二パーセント。順調です』

 

『イリヤスフィール、美遊両名、カレイドステッキと共に待機場所にて準備完了』

 

『高町なのは、バイタル正常。軽度の緊張は確認されていますが、概ね問題ありません』

 

『フェイト・テスタロッサ、同じくバイタル正常。場慣れしているのか、リラックスしています』

 

『了解。各員、そのまま作業を続行してください』

 

『『『『はい』』』』

 

 

といったように、如月邸の地下。中央管制室にて着々と準備が進められていた。それもこれも全て朝の俺の発言から始まる、なのはVSフェイトのためにである。

 

ノリノリでやってくれているから、思いつきでした発言を早くも後悔し始めている。何であんな事言ってしまったのだろうか。やはり、自己嫌悪とは切っても切れない縁で繋がれているようだ。

 

 

『鏡面界、形成完了しました』

 

『バイタルサインのチェックも完了です』

 

『その他確認事項、全て完了確認しました』

 

『よし。イリヤスフィール、美遊。高町なのは、フェイト・テスタロッサ両名を鏡面界へ』

 

『『はい』』

 

『『半径二メートルで反射路形成。鏡界回廊、一部反転します』』

 

『『接界(ジャンプ)』』

 

 

いつだったか、冬木市に散らばったサーヴァントカード回収の際に、何度か訪れたあの小さな箱庭がモニターに表示される。しかし、場所は冬木ではなく海鳴市上空。周囲に被害を出さないためにと聞いたが、いささか過剰な気もする。

 

以前から稼働したいと言っていた鏡面回廊模索構成システムを、ただ使いたかっただけ。なのかもしれないが、それにしたって提案から実現までのタイムラグがなさすぎる。

 

 

『イリヤスフィール含む少女四名の鏡面界移動を確認。バイタルに異常は見られません』

 

『鏡面界維持にも何ら問題はありません』

 

『流石です。最終準備工程を完了してください』

 

『イリヤスフィール、美遊両名の鏡面界からの離脱を確認』

 

『高町なのは、フェイト・テスタロッサのみを残し、鏡面界に生体反応は存在しません』

 

『よし、安全策は十分だね。なのはちゃんフェイトちゃん。準備はいいかい?』

 

『『はい』』

 

 

どうやら準備は完了したようだ。

 

彼女達が戦うためだけに作られた鏡面界の大きさは、藤見町とほとんど変わらない大きさで、少々どころか絶対にやりすぎである──が、誰も指摘しないのだから口を閉ざすしかない。

 

 

『よろしい。では如月奏音、開始の合図を』

 

「・・・・・・えっ、俺?」

 

 

突然の指名に思わず飲もうとしていたお茶をこぼしかけた。

 

普段ではあまりない所長直々のご指名なので、比較的真面目にやるとしよう。これがレオナルドかロマニ相手だと、そこまでやる気も出ないために無理矢理昂らせた気持ちで挑むことになる。

 

 

「──さて、みなさんお待ちかね! リリカルファイトとは!

 

「魔法少女の矜持を懸けて、突発的に始まった己が力を試したい魔導士達が、世界をリングに戦う大乱闘スマッシュブラザーズ!

 

「そして、戦って。戦って! 戦い抜いて!

 

「最後に立っていたものが「リリカル・ザ・マジカル」の栄光を手にすることができるのだ!

 

「それでは! リリカルファイト・レディィィィゴォォォォォォォ!」

 

 

右手でフィンガースナップを響かせて、戦闘の開始を宣言する。思いもよらず気持ちが昂りすぎたのか、少しばかりふざけ過ぎた気がする。

 

 

『なんだったかしら』

 

『Gガンダム』

 

『・・・ああ』

 

 

 

──奏音の号令で少女達はぶつかった。

なのはは、以前と同じ槍のように変形したレイジングハートを持って。フェイトも同様に鎌のように変形したバルディッシュを構えて。

 

至近距離でぶつかり合ったデバイス達が火花を散らし、鍔迫り合いをしながら並列思考で構築したシューターを互いに向けて放つ。躱したり潰したりしながら互いに距離をとるなのはとフェイト。お互いの距離が相当離れたところで、ようやく勝負は始まったとも言える。

 

なのはは開始位置からさほど移動していない空中で、数十にもなる魔力スフィアを構築。迎撃可能な態勢をとった。一方でフェイトは物陰に澪隠し、一キロも離れてはいないなのはをサーチャーを使って確認しながら路地裏や物陰を駆使して距離を詰めていく。

 

互いの先方を確認したところで、何か気になる点があったのか奏音がポツリと呟いた。

 

 

「・・・なのははサーチャーを使わないのか?」

 

『なのはちゃんの動体視力と反応速度はずば抜けてるからね。探すより迎え撃った方が賢いのさ』

 

「・・・・・・ふーん」

 

 

さほど納得はしていない様子だったが、奏音は大まかな概要の把握はしたようで、彼の興味は既に別のものへと移っていた。

 

その会話に合わせたかのように、盤面が動いた。フェイトが移動しながらその途中に設置していたフォトンランサーが発動し、あらゆる方向からなのはに迫る──が、その攻撃全てを最小限の動きで対処した彼女は、またも同様の体勢を崩さない。

 

どうやら、フェイト本人を確認するまでは無駄な行動を極力避けるつもりのようだった。奏音からしてみれば猪突猛進気味だったなのはの急激な変化は、彼の戸惑いの原因にもなっていた。

 

 

『!』

 

 

その瞬間。

 

物陰から飛び出したフェイトが、なのはに向かって突撃する。対するなのははカウンターを狙っているのか、弾幕を張りながらレイジングハートを握りしめている。

 

だが、彼女は忘れていたのだった。なのはとフェイトを鍛えようと言いだしたのが、誰だったのか──どういった思考回路をした人物だったのかを。

 

 

『──っ!?』

 

 

その場で起こったことを正確に理解する前に、なのはの体は振るわれたバルディッシュによって、吹き飛ばされていた。

 

何が起きたのか正確に理解しているのは、それを行った本人と如月奏音と、この模擬戦を第三者の立場で観測していた中央管制室の面々だけだった。

 

 

『今のって・・・!! ロマン!』

 

『動きにオリジナリティーはあるけど、間違いない! 愛気道だ!』

 

『如月奏音ァ!!!』

 

「そう怒らないでくださいよ、所長。今回俺はなーんにも悪いことしてないんだから」

 

 

運動してたら盗まれたんだから。と、奏音は言うが周りは納得していない様子だった──それは、言い換えればそれだけ信用されてないとも考えられた。

 

 

『また大明神がなんかやらかしたのか?』

 

『所長の絶叫が合図みたいなもんだよなぁ』

 

『本当に教えてないんでしょうね!?』

 

「んな分けないでしょ? 磨ける原石があったら誰だって磨くでしょ」

 

 

奏音の意見に、近くにいた教導気質を持つ英雄が賛同の意を示す。それを見たオルガマリーは一度ため息をついて、周りの英雄達にも当たり散らした。

 

画面の向こうでは、なのはが範囲攻撃を用いて無理矢理距離をとった。自らの周囲すべてを対象に攻撃するのは、捉えられない相手に攻撃するのに役立つが、自らの視界を奪うことにもなった。

 

それに乗じて、フェイトはなのはから距離をとり、再度物陰に身を隠した。

 

 

『彼女達には不干渉。じゃなかったのかい?』

 

「宝石を放置するほど俺も馬鹿じゃねーのよ!」

 

 

まるでどこかの大泥棒のような笑い声をあげる奏音。どうやらその笑い声でオルガマリーは限界を迎えたようで、所長らしい覇気を纏って立ち上がった。

 

 

『手の空いている者! あの馬鹿の頭をひっぱたいてきなさい!!』

 

『おー』

 

『っつか、アイツ今どこにいるんだ?』

 

「ヴァカめ! こんなこともあろうかと、俺は貴様らが絶対に来ることのできない場所にいる!」

 

 

悪役のような高笑いをあげ、勝利を確信した魔王のような笑みを浮かべる奏音。その言葉に慌てたのは管制室にいる彼らだった。

 

自分達の主が如月奏音を信奉しているから、そんな理由で付き従っている者もいるが、誰がなんと言おうと奏音は彼等の頭である。毎度毎度、予想外の行動をとることを除いても、好感度は高い。そんな彼が自分達の手の届かない場所にいるというのは、必然的に混乱を招いた。

 

 

『なんだって!?』

 

『レオナルド! ロマン!』

 

『如月邸の敷地内にはいないね・・・』

 

『藤見町にも姿は見当たらないよ』

 

『飛行機や船の予約もした形跡はないぜぇ』

 

 

次第に混乱は伝播していき、どこまで響き、ねじまがったのか。奏音のことを如月中で最も慕っていると言っても過言ではない少女達が、慌てて管制室に飛び込んできた。

 

 

『お兄ちゃん消えちゃヤダ!』

 

『うぇ。・・・・・・奏兄、どこにいるの?』

 

 

訂正しよう。少女の内、片方──薄茶色の少女はオレンジ色の少女に無理矢理、引きずられるようにして、管制室へやってきたようだった。その証拠に、薄茶色の少女はそれほど動揺しておらず、比較的冷静に状況の把握を目的としていた。

 

 

「中央管制室」

 

『お兄ちゃん居ないじゃん!!』

 

『いや、それは最初から分かっていたことだ。嘘はよくないなぁ』

 

『待って。奏兄はこういうときに嘘はつかない。本当のことを言った上で見つからないことに自信を持ってるはずだから』

 

 

奏音を責めるような周囲と違い、冷静に彼に対する評価で状況を判断する薄茶色の少女──白野。そんな白野に奏音はにんまりと笑った。

 

 

「流石だぜ、白野。さぁ、見つけて御覧」

 

『・・・・・・こことは別の中央管制室があったりする?』

 

『あると思うの!? カルデア自体が如月奏音の独断でここに移設されているのよ!』

 

『お兄ちゃぁあああ』

 

『落ち着いて立香。慌てるのはまだ早いよ。まず奏兄が「中央管制室」と呼称するのはカルデアのものだけ?』

 

 

泣き叫ぶような立香を片手で慰めながら、白野は周囲に問いかける。それに対する答えはその場の全員が揃って「他は聞いたことがない」だった。

 

 

『じゃあ、もう一つカルデアがあったり・・・?』

 

『残念だけどそれは有り得ない。この世界線は魔術協会が存在しない──ひいてはカルデアも建設されていない。彼は今、この場所以外に存在しない部屋にいるということになる』

 

『流石の奏兄でもそれはできない。だから、皆何かしらの見過ごしをしてると思う』

 

『よく気付いたハクノ。貴様らも狼狽えずにその知性を絞って考えよ。奴があのカルデアを今の場所に移設する際用いた手段は何だったかをな』

 

『あっ、無制限の蒐集書(アンリミテッド・コレクション)!』

 

「辿り着いたか!」

 

 

自らの敗北を認めながら、豪快に笑う奏音。しかし、彼の居場所が分かったからといって得られるものが安心くらいしかないのだ。

無制限の蒐集書──Anlimited,correction.一体どんな原理なのか、使用者本人も分かっていない世界最高の魔道書にして倉庫。その中にいるとなれば、誰にも手出しはできない。

 

 

「・・・・・・っていうか、俺の捜索に機能を割いて大丈夫か?」

 

『その辺りは、悔しいけど貴方の改装によって問題なくなっているわ。って、そもそも貴方が余計な事をしなければ、こんな事には・・・!!』

 

 

そんな文句を言いつつ視点をモニターに戻せば、なのはとフェイトによる魔砲戦が始まっていた。先程までの魔力を最小限に抑えての戦いは何だったのかといわんばかりに、地形を破壊するほどの光の暴力が鏡面界を蹂躙していた。

 

 

「・・・・・・まさしく魔砲。これぞ醍醐味ってものだ」

 

「いや、まあ確かに。"これぞ"って感じはするがのう。やり過ぎでは無いか?」

 

「何を言っているんですか。魔法少女は元からこういうものですよ?」

 

「俺達の知ってる魔法少女が暗い過去を抱えすぎなんだよ」

 

「さくらは唯一純真な魔法少女とも言えるけど、厳密には魔法少女区分ではないからなぁ」

 

 

そんな何の関わりもなさそうな会話をしながら、一言で表わすのであれば雑談をしながら、奏音はなのはとフェイトの模擬戦を見学していた。

 

 

『でも、本当に強くなったね。二人とも』

 

『フェイトちゃんは既に基礎ができていたからね。力量がなのはちゃんに追いつくのも時間の問題だろう、って見越してたけど・・・』

 

『アルタースクエアの使用が許可されちゃったら、時間も関係なくなっちゃうからね!』

 

 

自分達が鍛え上げた"作品"と言ってもいい少女達の実力に、声色も弾むようになっている管制室の面々。そんな彼等を生暖かい目で見守りながら、奏音は一つ息をついた。

 

 

「・・・・・・さて、"これ"が今後にどう影響するか、だな・・・」

 

「今後? まだ何かするおつもりなんですか?」

 

「おいおい八九寺。その言い方じゃあ、まるで俺が既に何かやらかしているみたいじゃあないか」

 

「いえ、何も間違っていません。その解釈であっています」

 

「俺が何をした!」

 

 

何かしていても問題で、何もしていなくてもそれはそれで問題だ。と、八九寺は奏音を評価する。

 

 

「正しい評価じゃのう」

 

「ぐぅの根も出ねぇ」

 

「自業自得という奴でしょうね」

 

「まあ、その辺は諦めてるけどよ・・・」

 

 

もう少し愛を持って接してくれても良いんじゃねぇ? と、奏音は問いかけるが、八九寺は呆れたような目をして。

 

 

「この件に関しては掛ける情は一つもありはしませんよ」

 

「さいでっか」

 

「・・・む。我が主様、そういえばなんじゃが」

 

「この流れで何を聞く気だ・・・? たった今、思い出したor思いついたのだとしたら、そのどちらでもロクでもなさそうなんだが」

 

 

一応の覚悟をすませて問いかけの続きを聞こうとしていた奏音だったが、やはりというか予想通りというべきか、忍の質問は斜め上のものだった。

 

 

「では聞こうかの。愛だの情だのと言っておるが、今一番愛情を注ぎたい相手は誰なのじゃ?」

 

「ん?」

 

「言うなれば誰がタイプじゃ?」

 

「そんな修学旅行の夜みたいな質問を今!?」

 

 

驚愕する奏音だったが、そんな彼よりも驚き・動揺していたのが、管制室はもちろん──模擬戦を見ていた如月邸地下施設のメンバーだった。

 

ざわめきが広がり、女性陣のほとんどが動きを止めて、姿の見えない通信先に耳を傾けた。

 

 

「ほれ、あの蟹娘と死別してから時間は十分に過ぎた。それ故に、ふと気になったのじゃ」

 

「そんな理由かよ・・・・・・」

 

「会話の始まりなんて、大体が"そんな"ばかりじゃろ。まぁ、答えたくなければ答えなくとも儂は構わんが・・・これから先ずっと問いかけられ続けるのも面倒であろう? であれば・・・ここで答えておくのも一興だと儂が思うがのう」

 

「一興って・・・、もはやそれ、お前が楽しいだけじゃないか? まあ良いか」

 

 

奏音がそう言えば、通信先である如月邸地下施設は更に静まりかえった。

 

 

「・・・とはいえ、馬鹿正直に名指しするわけにもいけないんだよなぁ」

 

「何を躊躇っているんですか! パッと言っちゃいましょう!」

 

「・・・・・・分かったよ。えっと、今一番好みの異性・・・だっけ? うん──子リス」

 

「む?」

 

「ん?」

 

 

奏音の回答を聞いて、別の意味で時が止まる。その言葉が誰を指すのか、何を意味するのかを、舌で転がし、反芻して理解しようとしているのだろう。が、奏音はニヤリと笑う。

 

彼は知っている。こんな言い方をしても、真っ先に反応できる人物が居ることを。

 

 

『へ──? えっ、ええ!? 貴方、子リスのことが好きなの!? デジマ!? どこ? 子リスのどこに貴方は惚れたの!? 教えなさい───!!』

 

「いやだ。ベンベン」

 

『ベン・・・? ふざけてんじゃないわよ!』

 

『エリちゃん・・・? 子リス・・・?』

 

『ま、まさか・・・』

 

 

エリザベートの大声に再起動を果したメンバー達の視線が、ゆっくりと一人の少女に向いた。奏音が「子リス」と呼んでも、伝わることはほとんどないだろうが、言い出しっぺである彼女が呼べばほぼ確実に、光の速度で理解することができる。

 

 

『お兄ちゃんが好きなのって・・・』

 

『ハクノ!?』

 

「──ま、マジかお前様! 儂はてっきりのらりくらりと躱すものだと・・・!」

 

「おい。お前が言えって言ったんだろう──でも確かに、本音を言えば"可愛い子なら誰でも好きだよ"とか言って呆れさせようと思ったことは否定しない」

 

「やっぱり・・・」

 

「だけど、何となくの直感に従ってハッキリ言ってみた。もう少しハッキリ言おうか。俺は白野が好きだぜ」

 

 

通信の向こう側──奏音は雰囲気か千里眼か、白野が眼を見開き小刻みに震えているのを認識したのだろう、トドメを刺しにいった。

 

 

『・・・キュウ』

 

『あぁっ!! 白野ちゃんダウン!』

 

『やっぱり・・・直接的な言葉への態勢は低かったかぁ』

 

 

倒れた白野の介抱や、奏音の告白による混乱で慌ただしくなる通信先に、失笑する奏音。

 

そんな混乱をよそに、なのはとフェイトの戦いは最終局面に入っていた。つい先程、フェイトが放った攻撃──接近から一撃叩き込んでからの拘束、そしてデバイスによる連撃。それは、彼女と似たような武器を振るうメドゥーサから教わったものだった。

 

 

『くぅ・・・っ!』

 

『まだ、やりますか?』

 

『当たり前!』

 

 

もはや当然のように槍の形状をしたレイジングハートを握りしめて、なのはは叫ぶ。そんな彼女にフェイトもバルディッシュを握りしめた。

 

 

『いくよ、レイジングハート!』

 

『All right』

 

 

膨大な魔力が練り上げられ、レイジングハートを覆う。その姿は光で形作られた馬上槍──ランスのようだった。

 

 

『擬似真名解放──名前、お借りします!』

 

『Fabrication "Anti-Fortress,NP"』

 

 

輝くレイジングハートを構えて、フェイトに突撃するなのは。対するフェイトも、たとえ逃げようとも追い回されるだけだろうと考え、迎撃する態勢になる。

 

これが事実上最後の激突になるだろう。

 

 

『最果てより──光を放て!』

 

 

なのはの魔力が爆発的に高まり、それの発射態勢に入った。

 

 

偽・最果てにて(ロンゴ)・・・輝ける槍(ミニアド)──!!》』

 

 

魔力嵐とも言える光の暴力が、至近距離でフェイトを呑み込んだ。

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