我、無限の欲望の蒐集家也 作:121.622km/h
全てが繋がったような気がした。俺が何故、あの星に生まれたのか。何故、この世界だったのか。その全てが、今一つの大筋となって物語の根底を支える柱になっていることに気づいた。
さて、イリヤを取り戻しに行って、ついでにプレシアの努力を踏みにじってやろう。
「き、如月・・・さん」
正確な座標も分かっていることだからと、転移しようとしたとき。少しの雑音で掻き消えてしまいそうなほどか細い声で、フェイトに声をかけられた。
「・・・どうした?」
今のフェイトは、親に捨てられた子ども。なるべく優しい声を心がけて返事をする。元々、子どもは嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
「母さんを・・・アリシアを助けて・・・!」
「助ける? そりゃ無理だ」
「あ・・・」
救世主や英雄のような活動を、蒐集家に求めないでほしい。それに、人が人を「助けられない」のにはもう一つ理由がある。
「彼女達が、一人で勝手に助かるだけだよ」
「・・・詐欺師みたいな物言いだな」
「何もできない口先の魔術師と同じにしないでもらおうか。俺は手を貸すことに躊躇いはないぜ」
"ラストエリクサー"なんて異名を持ったRPG史上、最高の回復薬を取り出し、フェイトとなのはに頭からぶっかけながら、クロノの嫌みらしき言葉に言い返す。
エリクサーが入っていた瓶の中身がなくなった所で、プレシアの根城。大魔導師の目の前に座標を決めて、転移した。
「こんにちは。マドモワゼル」
科学と魔術が交差し混ざり合い、融合した技術体系における大魔導師の根城は、某「最終幻想」の世界観のいずれかに該当しそうだった。もっとも、そんなことを言い出してしまったらどんな作品のファンタジーも、すでに存在する何かと似たり寄ったりなのは間違いないだろう。
「・・・人を訪ねるときは、玄関からが常識じゃない?」
「手荒い歓迎を受けるのがわかっている以上、全て無視できるならそうするだろう?」
「それもそうね。貴方の目的は
そう聞いておきながら、プレシアは詳細はわからないが魔法を使ってイリヤを放り投げる。それに即座に反応して受け止めたところに、先程局員にも放っていた紫の雷光が襲いかかってきた。
さも当然のように防いでしまったけれど、少しばかり不自然に見えたかもしれない。
「忠告よ」
幸い。プレシアは気にしていないようで、こちらが聞いているかどうかは関係なく話してくる。
「これから私はアルハザードに行くの。
「"アルハザード"──意味は"我らが故郷”。そんな風に現代まで語り継がれるなんて、とても幸せな星だと思わないか」
「故郷・・・? 何を言っているのかしら。アルハザードは名称。その単語に意味なんて──」
「大昔に失われた超高度発達文明の遺産。そんな夢物語は信じるのに、言語の翻訳ミスは疑わないのか? 単語が伝えられても、意味が受け継がれなければ意味がないだろうに」
魔法文明には、地球におけるロゼッタストーンのような存在が無かったのだろう。もし、存在していたのならば、ここまで捻れ曲がって伝わることはなかっただろう。
「アルハ-ザードという単語が存在し、実際に使われていたのは、惑星レギオンのブリタニア語圏の人々のみだが、俺達日ノ本国民も外国語授業で習っているから、知らないと言う訳じゃあない。
「惑星レギオンで実際に使われていた科学技術は魔法とも呼ばれ、死者蘇生を可能にする神の星とまで自称するようになった。古来より自らを神と呼んだ人がどうなってきたか、知ってるか?」
「知らないわ」
「焼かれ──朽ち果てる」
「死者を蘇生する技術なんて神にも等しい業を犯した人間は焼かれて消えた。残ったのは、自然を捨てなかった村民と、人ならざる怪異だけ。我らの故郷に行くことは止めておけ。あそこは、夢も希望も全てが等しく燃え尽きた場所だ」
「いいえ。アルハザードの秘術は、私とアリシアの希望よ。いい加減なことを言わないで! 邪魔をするなら、あなたから消し飛ばすわよ」
「希望、いい加減か・・・。確かに、俺は大嘘憑きだからな。──勘違いしていた。俺の人生ってのは最悪なことばかりじゃない。俺の心は、いつでも白銀に輝いている!」
覚悟が決まると同時、今の今まで使用不可能だった。最大にして最強の技が使用可能になったのを感じた。さあ、見せてあげよう。蒐集家が始めに集めた「絶望」を。プレシアが「希望」と言った我らが故郷の姿を。
──本来の詠唱の方は楓に任せて、俺はエミヤシロウの詠唱を参考にさせてもらうとしよう。
「──体は、欲でできている」
「血潮は集め、心は求む」
「幾度も世界を渡り無敗」
「たった一度の敗北もなく、ただの一度も理解されない」
「集めてはまた一人、世界を越え欲を満たす」
「けれど、この魂・体は一つにあらず」
「共にあれど偽ることなく」
「その体は二つで一つ」
「無限の欲でできている」
「
「
───地響きのような轟音が鳴り響く。地面どころか空間そのものが振動するような感覚と共に、世界は一変した。奏音の手によって回復し、機械兵の歓迎を受けながら、ようやく彼に追い付いたなのは達の目の前で、プレシアの城は人の気配のしないコンクリートジャングルに変わっていた。
状況を確認しようと辺りを見渡しても、地球とは明らかに違う光景に、現実を疑い始めるなのは達だったが、上を見上げた時に空を覆う色が青ではなく白銀なのに気づいて、とある一つの可能性に辿り着いた。
「まさか、これって・・・!」
「固有・・・結界・・・!?」
『いや、魔力反応はほとんどない。発動時に少し観測されたくらいだ』
『その空間の維持に、魔力は少しも使用されていない』
状況を把握しようと躍起になる管制室の面々だったが、コンピュータや計測器は「
だが、それがとある結論を後押しすることになる。
『如月奏音は固有結界を発動できるほどの魔力は持っていないし、現にその空間からは魔術反応がない。しかし、固有結界のように世界は書き換えられている』
『以上の事から得られる結論は、ただひとつ』
『そこは如月奏音の持つ本。
状況の把握に苦労するなのは達がいる一方で、現象を起こした張本人は、敵と相対しておきながら尚、楽しそうに笑っていた。
「・・・貴方、何者?」
「俺は蒐集家。そしてここは
「そう、馬鹿馬鹿しい。貴方を倒せば、このくだらない幻術も解けるのかしら?」
そう言うが早いか、プレシアの持つ杖の近くから、奏音に向けて雷光が迸る。しかし、届く直前にメイド服を来た少女が割り込み、雷光は掻き消されてしまった。
「ご無事ですか?
「平気だよ」
「敵の使用武器は機械言語魔法の変質版と見ますが」
「時が経てば大抵のものは変化するものだ」
大馬鹿者達の生きていた星が、理想郷となってしまうようにな。そう言って奏音は笑う。
「惑星レギオン、この土地では儽球と呼ばれているこの星の技術をその目でよく見ておくといい、プレシア・テスタロッサ。全力で遊んでやれ、出来れば全てを見せるくらいの勢いで」
「
「遊ぶ? この私を・・・誰だと──!」
「舐めてるわけじゃあないんだ。だが、知っておくといい。何事にも源流があって、そこから派生するものがあるということを。それがレギオンの機械言語魔法と、君達魔導師の扱う魔法さ」
「オーミネータ」
『set on.』
メイド少女の呼び声に答えるように、彼女の手元に鍵のような形状をした魔導師のいうデバイスが出現する。
「・・・鍵?」
「俺はキーブレードって呼んでるそいつは、機械言語魔法の編集用デバイスだ。それ単体では何もできないけれど、彼女は演算処理を得意とするヒューマノイド。二つ合わせると厄介だぞ」
『Cracking mode.』
その電子音と共に、デバイスにおける鍵の軸と歯に当たる部分が薄く発光を始める。奏音はそれを一瞥すると、踵を反して歩き始める。
「ここは任せた。俺は彼女の大事な大事なアリシア・テスタロッサを探してくる」
「
「いくら魔法が優れていようと、科学が魔法と呼ばれるようになっても、"
「──っ。行かせないわ!」
そう言って、立ち去ろうとする奏音へ魔法を撃とうとしたプレシア。杖先に魔方陣が展開されたと思った矢先、突然魔方陣が書き換えられ魔法の発動が阻止された。
「・・・? まさか・・・」
「ご主人様の邪魔はさせません。その代わり、私が相手をお勤めいたします」
戦闘が始まったことを気にもせず、奏音は靴底から物理的な翼を生やし、空を蹴って飛び立った。
機械兵──ロボット兵とも呼ばれる、高度に発展した文明には当たり前のように配備されている、あれの事である──が、うろうろと日ノ本の田舎、直江津を闊歩していて、とてつもない違和感を五感全てが脳へと訴えてくる。
どうやら、プレシアの根城に配備されていたのが、取り込む際に一緒に来てしまったようだった。こいつらの相手も彼らに任せてしまっているが、逆に仕事をさせないことが彼らにとっての拷問に等しいので、特に罪悪感もない。
そもそも空中を歩いているので、空を飛ぶロボット兵でもいない限り、ちょっかいを出される可能性は極めて低いと考えていい。フラグかな?
アリシア・テスタロッサ(遺体)を探しだして何をするのかと言えば、質問が主になると思われる。フェイトにも言った通り、俺に人助けなどできやしない。俺に助けられるのは、俺個人くらいだ。
彼女達が、心の底から助かりたいと思わなければ助かるなんて有り得ないし、救われることなんてもっと有りもしない未来だろう。そもそも、還魂の霊薬のような死者蘇生用のアイテムがあれど、様々な制約がもちろんある。
RPGより手間はかからずとも、幸せな結末を迎えるには、それなりの代償が必要になるのである。先も言った通り、抜け道もいくつか存在する。
暫く空中散歩を楽しんだところで、地上──と言っても、道ではなく五階建てビルの屋上だ──にアリシア・テスタロッサの身体が入った水槽を発見した。すぐさま屋上へ降り立ち、特殊な器具を使って水槽を割り、アリシア・テスタロッサの身体を取り出した。
もしもこれが生命維持装置だったら、手順を踏んだ上で挑むべきだが、アリシア・テスタロッサは死亡していると、プレシア自身が言っていたので、恐らく肉体の腐敗を防ぐための装置だろう。
「オレガノ。この身体の診療を頼む」
「分かりました」
呼び掛けに答え舞い降りてきた医療用エンジェロイド"オレガノ"は、水槽から取りだしてベッドの上に寝かせたアリシアの身体に触れる。その瞬間、医療用と呼ばれる所以である全てが起動する。
「肉体的欠損なし。生命活動確認できず。人工的な血液循環と電気信号による擬似的な植物状態が数分前まで維持されていたようです」
「・・・なるほど。通常の意識不明と見るか、完全なる脳死と判断するか。それもこれも、心停止からどのくらいの時間でこの状態に持ってきたかが重要だな」
まさかとは思うが、この"アリシア"もクローン体じゃないだろうな。
普通に考えて、脳が死んでしまった人を生き返らせることは絶対にできない。還魂の霊薬でも肉体の欠損が存在すると、蘇生率が極端に下がる。
アリシアの肉体と思しき身体をオレガノに任せ、僕はあの学習塾跡に向かう。以前は直江津高校のグラウンドだったが、今回は学習塾跡にあるからである。
「この間ぶり」
【あ。やっと来た。待ってたよ。珍しいね、君がこんなに短いスパンでここを訪れるなんて】
今日の「彼女」はあの胡散臭い風来坊のように、学習机に腰かけて僕の事を待っていた。言ってもいないのに、まるで最初から僕が来ることをわかっていたかのように。
「嘘をつけ。こんなことになるのも、
【そりゃあね。君があの星に生まれたのも、君がこの世界の地球に住むのも。操っていたとまでは言わないけど、それなりにそうなるように仕向けたつもりではあったよ】
彼女は笑う。愉しそうに。
「・・・だったら、どうしてあの場で出てきたんだ。
【それにはもう答えが出ているだろう。あの時、私というシステムは磨耗し、限界を迎えていた。一刻も早く、理想や夢を壊さなければ救われないと思った。だから動いたんだよ。確実に、世界の全てを消し去れるあのタイミングで】
「・・・・・・・・・」
【だけど、君のお陰で気づかされた。私は私であることを許された! 今、こうしているように。昔の社蓄時代に比べれば、案外悪くないものだよ】
「・・・・・・そうか」
何も言えやしない。
僕は彼女から生まれたから、出自は違うとはいえ僕もあの世界を生きたもの。それなりに染まってしまってはいる。あの地獄は、何度も体験したいと思うような場所じゃない。
【そんなことより、この先に用事だろ? ロックなんかかかってないから、自由に通りなよ】
「ああ。じゃあ、そうさせてもらうぜ。アリシア・テスタロッサの肉体か魂、またはそのどちらも存在する場所に連れていけ」
その声に反応したのか──そもそもそんな機能が着いているとは到底思えないが、真理の扉は重厚な音を立てて、ゆっくりと招き入れるように開いた。
【まったく、君にはどんな世界の法則も通用せず、
「・・・お前はさ、バケツに浴槽の水が入りきると思うか?」
【君の場合、バケツと浴槽じゃなくて、コップと海くらいはあると私は思うんだけどなぁ】
そんな言葉を背中で聞きながら、僕は真理の扉の内側へと潜った。
アリシアside
私はだぁれ。
そんな自問自答を、一体何度繰り返したことだろう。もうずっと、ここで一人ぼっちな気がする。ご飯も食べてないし、トイレも行っていない。もしかしたら、ここが噂の天国なのか、そんな事を考えても、状況は何も変わらなかった。
唯一の救いは、こんな場所でも知識が得られることだ。正確な数字はわからないし、どのくらいの感覚なのかもすっかり麻痺してわからないけれど、不定期的に、生きている私なのか、全くの別人なのかはわからないが彼女が得た知識を私も得ることができた。
その彼女は、私よりお母さんにで魔法の才能に長けていて、そして死んでしまった私のせいで酷い目に遭っている。この子を可哀想だと思う権利は、私にはない。謝りながら、頑張ってと応援するしかないんだ。
本当は。私がお姉ちゃんだよって言ってあげたい。あのお馬鹿の頭を引っ叩いてやりたい。でも、私はもう死んでいるんだろうから、そんなことはできやしない。このまま、お母さんと私の妹が、バラバラになっていくのを結果で知るしかないのだろうか。
「──それじゃあ、一回生き返ってみるかい?」
「・・・・・・っ!?」
え。あっ、だ、誰!?
突然、私だけの空間だった場所に現れた年上のお兄さんは、妹の記憶には今のところ出てきてない人物だった。特徴をあげるのなら、青い目と跳ねた髪の毛だろうか。
「僕の名前は如月奏音。大学生だ」
大学・・・?
もしかして魔法学院と似たような場所なのだろうか。生憎、私には五歳までの記憶と知識、そして断片的な現代の知識しかないのだから、知らないことも多い。
そんなことより、こんなところに人がいる時点でどう考えても相当おかしい。今までここには誰も訪れず、これから先もずっと一人なのだろうと、漠然とではあるもののそう考えていた。なのに、突然の来訪者。しかも、意図して来たようである。
「まあ、確かに。普通の人ならこんなところには、どんなに頑張っても来ることができない。君に会おうと頑張っているお母さんもその普通の人の分類だよ」
お兄さんが説明してくれたこと、私には半分も理解できなかった。理由として挙げるのは癪だが、世の女性の殆どが嫉妬するより見惚れることしかできなさそうな、無垢な少女と妖艶な美女が同席している、お兄さんが浮かべた笑みのせいだ。
「あはは。うん。どうも僕には、あのおっさんの真似事は早かったみたいだ」
軽薄な笑みはどうやって浮かべるんだろうね。と、普段ならば決して使わないような笑顔の作り方を聞かれたが、その時の私は赤くなった顔を冷ますのに必死で、答えることができなかった。
原因は笑顔のせいだけでなく、久しぶりの人との対面で緊張しているのもあった。現に声の出し方を忘れているような気がしてしょうがない。
そもそも、どうしてこんなところにお兄さんは来たのだろう。
「こんなところ。なんて言わない方がいい。ここは君の場所だ。君だけの空間だ。まあ、幼くして息を引き取ったせいで、寂しい空間になってしまってはいるけれど。本来なら、もっと飾り付けがされててもいいはずだよ」
そうなのか。確かに、五歳の少女だった私が、自分の部屋の内装を覚えているはずもなく、生きていた頃の思い出も、「寂しい」や「つまらない」。「いい子でいる」なんて言葉で埋め尽くされている。
ところで、もしかしてお兄さんは心を読むことが出来るのだろうか。私は現在言葉が出ないのに、さっきから私の言いたいことを完璧に理解してくれている。
「惜しいな。僕が理解しているんじゃなくて、君が理解させているのさ。ここは君の場所だから、君の願いの大半は叶うと言ってもいい。ここから出たいなんていう願いは、叶うはずないけどね」
本当に心が読めるのならば、聞こえているはずの余分な思考が伝わっていないように見えるから、お兄さんの言うことは正しいのだろう。私が伝えたいと思った言葉だけがお兄さんに届いている。そう考えても間違いなんかじゃない。
でも、そうなると気になるのは、どうしてお兄さんが私だけの空間を訪れたのか。それだけだ。
「僕がいい加減なことを言っていると思ったりはしないのかい?」
ようやくこの空間に関しての、手がかりが得られる機会が与えられたのだ。まるごと全部鵜呑みにすることはないにしても、信じないと切って捨てることは決してない。
お兄さんの事、如月さんの言葉、信じてみようと思います。
「うんうん。素直で可愛い子だね。君みたいな子、僕は好きだよ」
え、今。なんと言った──!?
可愛いと言われたのか。
いや、照れているとかでは決してない。
可愛いくらいなら、お世辞かもしれないけど、お母さんが雇った家政婦さんにも言われていた。
男の人に言われるのは初めてかもしれないけど。
それよりも、好きって言われたんだよね。
お兄さんは私の事が好きだから、こんなところまでやって来たのだろうか。
「・・・あー、そういう意味じゃあないから。そろそろしっかりと本題に入ってもいいかい?」
あ、はい。
しまった。ちょっと考え込みすぎてしまった。この場合、私も好きですと返しても大丈夫だったのかな。とってもイケメンだし。
「僕はね、初めにも言った通り。君に生き返らないかい? と、問い掛けをしに来たんだよ」
え。
ええ?
えええ?
えぇえぇえええええええええええええええ!?
お、おぉ!?
うぇええ!?
「はっはー。お嬢ちゃん、随分と元気いいねえ。何かいいことでもあったのかい?」
うえ?
おお?
んんん?
「おっと。考えるのをやめる事は頭が良いとは言えないよ」
えっと。私、生き返れるの?
「ちゃんとした手順を踏めば、出来ないことはないよ。生命の神秘を汚すなだとか、自然の摂理に逆らうなだとか最近は色んな所が五月蝿いけど。まあ、抜け道も色々存在するしね」
生き返れるの?
「生き返れるとも。まあ、無理矢理生き返らせる、なんてことは僕にはできない。あくまで君が、君の意思で生き返りたいと願ったお手伝いを僕はするだけだ」
私は・・・生き返りたい。
生き返って、お母さんを殴って、妹を抱き締めるんだ!
「好きにするといい。君の人生だ」
お兄さんはそう言って笑う。
悔しいぐらいに綺麗で、格好いいお兄さんだ。
「まあ、目が覚めたらまた会おうじゃないか。一応、病院服は着せておくけど」
え?
私、裸だったの!?
──って、引っ張られる!?
「数十秒程の別れだ。またな。アリシア・テスタロッサ」
え、えと。またです、如月さん!