我、無限の欲望の蒐集家也 作:121.622km/h
あと、【お揚げ中毒者】様。初評価ありがとうございます。確かに一話の出来は私から見ても最悪です。あとで手直ししておきます。
副題:出会いは公園で
001
春麗らかな陽気の今日この頃。少年は地球の中でも大きな海に面する小さな島国の、海辺の町に在る公園に設置してあるベンチで黄昏れていた。
現在時刻は丁度お昼頃。日は真っ直ぐ天を指す頃だった。曜日は月曜日から金曜日の間。つまりところは平日で、夏でも何でもないこの時期に、高校生くらいの少年がベンチで黄昏れているというのは、少し異様な光景でもあった。
この様子を警察組織の人間に見つかれば、「非行の防止と少年の福祉を図るための警察活動の総称」つまりは補導といった処置を執られてしまうのだろうが、先程から警察の姿はこの公園周りでは見かけられていなかった。
公園付近を警察が巡回しないというのは、ある意味で問題なのだがそれよりもベンチに座るのではなく、寝転がって黄昏れている少年というのは、もっとも問題とすべき光景である。
しかし、そんなことを注意する人間は誰もおらず、公園には少年と、設置してある遊具に夢中になる子ども達と、少年が寝転がるベンチの前に立つ、小学生にもなっていないであろう幼児だけである。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
その幼児の存在に、気付いているであろう少年は、それでもなおまるで頑固親父の如くベンチに寝転がったまま席を譲ろうとはしなかった。
怖ず怖ずと、行き場のない手を彷徨わせていた幼児に、何かを思ったのか、少年は口を開いた。
「──んだよ。何か用か?」
「ふぇ・・・。あ。えと・・・」
幼児──女の子なので幼女と呼称すべきかもしれないが、そうするとどことなく犯罪臭がするので止めておく。を不機嫌そうに睨みつけ、返答を待つ少年。事案である。
それに対して、幼児はオロオロと困ったように、もしくは照れたように、言葉を濁していたが、それもほんの少しの間だった。
「にゃ、なのはも、すわっていい?」
「座りたきゃブランコにでも座れ」
幼児の精一杯のお願いはにべもなく断られてしまった。幼児に席を譲らない、大人げのない男子高校生の姿がそこにはあった。
「今このベンチは俺のベッドなんだよ」
「ベンチはベッドじゃないよ?」
「知ってる。だけど外にあるものの中で、比較的綺麗にあって、その上で寝転がっても、ほとんど問題ない。つまりベッドだ」
「?」
小学生以下の幼児相手に、訳が分からないほどの見苦しい言い訳をして、本気で勝ち誇った挙げ句、「理解されない自分は孤独だ」等と思ってみせる、痛い男子高校生がそこにはいた。
一方で、そんな言い訳を、言い訳と認識できず、難しいこと言っているけれど、座らせてくれなさそうだと思った幼児は、キョロキョロと、座る場所を探すためだろう、視線を彷徨わせ始めた。
「おい、お前ブラ──」
ブランコの方に行けよ。そう言うつもりだったのだろうか。だが、その視線の先の遊具は子ども達が占領していた。座るだけにあそこの一つを独占するのはかなりの勇気がいるだろう。
「うぅ・・・」
困りに困り果てたのか、それとも家からここまで歩いてきたから脚が疲れたのか、幼児はその場にしゃがみ込んでしまった。
少年は、他にもベンチはあるだろうと視線を動かしてみれば、少し離れたところのベンチに、脂ぎっていそうなタンクトップに短パン、丸眼鏡のTHEキモ男が幼児に自らの隣が空いていることを主張していた。
「・・・・・・。ENE」
その姿を視界に収めた少年は眉間にシワを寄せると、虚空に向かってそう呟いた。
『Ja』
すると、周囲に彼等以外の人は、影も見当たらないにも拘わらず、どこからともなく少女の声で、ドイツ語の返事が返ってきた。
その声と同時、少年の手元にペン状の道具と一枚の敷物が落ちてくる。
どこから落ちてきたのか、それは今は置いておこう。少年はそれを使ってベンチの背もたれと座する所をなぞった後、その部分を左右に広げるように押し、ベンチの座席部分を拡張した。
そして、その広げた部分の上に敷物を敷いて、少し叩いて、満足げに笑った。
「おい、ナノハとか言ったな。座りたきゃここ座れ。んで、膝貸せ」
「うん。・・・?」
少年は敷物をバシバシと叩いて、ここに座れと意思表示をする。首を傾げながらも素直に従ったナノハの太ももに、何の遠慮も無しに少年は頭を乗せた。
ナノハは少し驚いたように眼を見開いたが、それも一瞬のことで、不思議がりながら少年の頭に手を置いた。
「ねむいの?」
「俺は眠いから寝転がってる訳じゃあないんだ少女よ。人が力を抜くのに一番楽な態勢をとっているだけで、眠たいわけじゃない。そして、硬いベンチに寝転がるより、女の子の柔らかい脚を枕にした方が数億倍良いってもんだ」
「?」
同意を求めるような、そんな語尾を残して少年は屁理屈をこねた。恐らくこれだけの良く分からない理屈をこねた少年なら、屁理屈をいうな、といわれれば屁が理屈を言うのか、と更なる屁理屈をこねてくれることだろう。
そして少年は何を言っているのか分かっていないであろうナノハの膝枕を堪能しながら、ふとその顔に影が落ちるのを目撃した。
「──・・・」
その様子を見て、何を思ったのか、少年はナノハに膝枕されたまま、手を伸ばしてナノハの頭をなでる。
「にゃ・・・?」
「何が辛いのか、何が悲しいのか、俺には分からねえけどよ。お前くらいの歳の子は、ちょっと位ワガママでも許されるんだぜ? だからさ、全部外に吐き出して悩み事なんて一切ありませんよ。みたいな顔してりゃ良いんだ。んな辛気くさい顔してたら、でかくなっても一人ぼっちだぞ」
「・・・・・・? いや。それはいやっ!」
一人ぼっちという言葉に反応したのか、ナノハは強い拒絶を示す。その様子に、少年は少し安心したように顔をほころばせると、更に言葉を続けた。
「何があったかは知らんが、親に相談したらどうだ? あー、パパでもママでもさ。親の役目ってそういうもんじゃん」
「パパいないもん。ママはあそんでくれないし、おにぃもおねぇも・・・」
その言葉を聞いた瞬間。ヤバい、とでも言いたげな表情をした少年が、頬を引きつらせた。しかし、ここまで踏み込んでしまったのだからなのか、少年は臆せずにズケズケとナノハの悩みへ侵攻していく。
「パパ死んじまったのか?」
「しんでない! しんで・・・ない。おっきな、けが。しちゃってるだけだもん」
「怪我・・・ねェ」
なのはの父親は、何かしらの事故にでも遭ったのだろうか。少年はそう推測する。ナノハの置かれている状況を説明するならば、父親が意識不明の重体に陥ったことでナノハの家族はほとんどが今までとは違う生活にのめり込まざるをえなくなってしまったのだろう。
そしてその結果、恐らく末っ子であろうナノハに構っている暇もなくなった。
思わぬ相手から非情な現実、そうでなくとも近い内にそうなるのかもしれない今を突きつけられ、ポロポロと涙するナノハ。
少年はナノハの膝から起き上がると、ナノハを抱きしめるようにして自らの胸に迎え入れた。
ポンポンと優しくあやすようにしながら、少年は何かを思案するように目を瞑る。
数巡、考えを巡らせた後、少年はそっとナノハに声をかけた。
「なぁ、幼女」
「・・・? なのはのこと?」
「ああ、お前のことだなのは」
「なに?」
「パパの怪我。治してやろうか?」
「にゃ? おにいさん、おいしゃしゃんなの?」
「残念だけど俺は医者じゃない。俺はコレクターだよ」
少年はそう言うと、ベンチにナノハを座らせて、その真向かいに立った。
「コレク・・・。ってなに?」
「あー・・・コレクターってのはな。欲しいものを自分のものにしていくやつのことだ」
そんな風の解釈をしてしまえば、人は皆コレクターである。
「ほぇ」
「等価交換──じゃないな。交換条件──も難しいか。よし、譲り合いだ。お互いの妥協点で物事を譲歩し合う。俺がなのはに提供するのは父親の怪我の回復。なのはが俺に提供するのは心からの笑顔。どうだ? 悪い話じゃないだろ?」
「えー・・・。どういうことなの?」
「簡単に説明って意外と難しいな。・・・・・・よし。パパの怪我を治す代わりに、なのはの笑った顔をカメラで撮らせて貰う。これが今回の交換だ。どうだ?」
「うんっ!」
「よし、んじゃあ行くか」
なのはside
パパがおっきな
きょうもママ
「・・・・・・」
「・・・・・・」
どうしよ。すわりたいんだけど、すわれないや。
「・・・・・・」
「・・・・・・んだよ。なにかようか?」
「ふぇ・・・。あ。えと・・・」
なのはにきづいたおにいさんはなのはをジッとみつめてきた。ちょっとはずかしい。でも、おねがいしなきゃ。
「にゃ、なのはも、すわっていい?」
「座りたきゃブランコにでも座れ。今このベンチは俺のベッドなんだよ」
「ベンチはベッドじゃないよ?」
「知ってる。だが比較的綺麗で寝転がってもほとんど問題ないだろーが」
「?」
よくわかんないことをいわれた。なのはがすわりたいのとおんなじで、おにいさんはベンチでおひるねしたいんだとおもう。で、でも。なのはのいつもはみんながあそんでるし・・・。
「うぅ・・・」
「・・・ハァ。エネ」
『Ja』
おにいさんが
「座りたきゃ座れ。ついでに膝貸せ」
「うん。・・・?」
すわっていいっていわれたからおにいさんのあたまのほうにすわる。で、おにいさんはなのはのおひざのうえにあたまをのせた。
なのはしってる! こ、これひざまくらっていうんだよね! す、すきなひとどうしがするってきいたことがあるよ! おにいさんなのはのことすきなのかな・・・?
でも、まくらだからおにいさんねむいのかも・・・。
「ねむいの?」
「俺は眠いから寝転がってる訳じゃあないんだ少女よ。人が力を抜くのに一番楽な態勢をとっているだけで、眠たいわけじゃない。そして、硬いベンチに寝転がるより、女の子の柔らかい脚を枕にした方が数億倍良いってもんだ」
「?」
・・・あたまのなかがグチャグチャだよー。
おにいさんはおじいちゃんみたいな
「にゃ・・・?」
「何が辛いのか、何が悲しいのか、俺には分からねえけどよ。お前くらいの歳の子は、ちょっと位ワガママでも許されるんだぜ? だからさ、全部外に吐き出して悩み事なんて一切ありませんよ。みたいな顔してりゃ良いんだ。んな辛気くさい顔してたら、でかくなっても一人ぼっちだぞ」
「・・・・・・? いや。それはいやっ!」
「何があったかは知らんが、親に相談したらどうだ? あー、パパでもママでもさ。親の役目ってそういうもんじゃん」
「パパいないもん。ママはあそんでくれないし、おにぃもおねぇも・・・」
ひとりはいや・・・でも、ママたちのめいわくにはなりたくない。どうしたら・・・いいの?
「パパ死んじまったのか?」
「しんでない! しんで・・・ない。おっきな、けが。しちゃってるだけだもん」
「怪我・・・ねェ」
パパはしんでない。でも、もし
そうかんがえただけでなみだがとまらくなっちゃった。だめ、ないたらみんなにめいわくが・・・!
おにいさんはお
「なぁ、幼女」
「・・・? なのはのこと?」
「ああ、お前のことだなのは」
「なに?」
「パパの怪我。治してやろうか?」
「にゃ? おにいさん、おいしゃしゃんなの?」
「残念だけど俺は医者じゃない。俺はコレクターだよ」
おにいさんはベンチからたってやさしいえがおでそういった。いみはよくわかんないけど、パパがたすかったら、まえみたいにみんななかよく!
でもそのまえに、コレクってなんだろ。
「コレク・・・。ってなに?」
「コレクターってのはな。欲しいものを自分のものにしていくやつのことだ」
「ほぇ」
よくわかんない。
「等価交換──じゃないな。交換条件──も難しいか。よし、譲り合いだ。お互いの妥協点で物事を譲歩し合う。俺がなのはに提供するのは父親の怪我の回復。なのはが俺に提供するのは心からの笑顔。どうだ? 悪い話じゃないだろ?」
「ほえー・・・。どういうことなの?」
「簡単に説明って意外と難しいな。・・・・・・よし。パパの怪我を治す代わりに、なのはの笑った顔をカメラで撮らせて貰う。これが今回の交換だ。どうだ?」
「うんっ!」
パパがたすかるの!
──コレクターと名乗った少年は、どうやって知り得たのか知らないが、迷いなくなのはの父親が入院する病院へと向かっていた。
「・・・で、どうするのが一番最善だと思う?」
病院への道中で、唐突に少年は口を開いた。しかし、発せられた言語は日本語ではない。
「ふぇ・・・?」
『やっこさんの症状にもよりますけど。大抵エリクサーぶっかけておけば治りますよ』
少年の声に応答するように、恐らく同郷の言語が発せられる。
「お前は、相変わらずのゲーム脳だな」
『そういうご主人は相変わらずの収集癖ですね。いや、でもまさか、幼女の笑顔を集めたいと言い出すとは思いませんでした。ロリコンですか?』
「YESロリータNOタッチ。長い付き合いだろ? 俺の蒐集悪癖くらい知っておけ」
『事実、数億年を共にしてますが、ご主人には毎度驚かされてばかりです』
そんな、彼等しか通じないであろう地球上には存在しない言語での会話がちょうど途切れた頃、少年となのはは彼女の父親が入院する病院に辿りついた。
「とりあえず、面会の許しがもらえるか、だよな・・・」
「?」
「ま、いっか。いくぞ。なのは」
「うん!」
少年が危惧するのは病院窓口で、面会を希望する際に求められるであろう色々な制約。そして、感染症予防のために立入りが禁止されている小学生以下の幼児・・・つまりはなのはをどうするかであった。
しかし、少年は看護師と目を合わせて少々の会話をしただけで、面会を許可された。
許可を得て、堂々と病院内を歩き回り、無事なのはの父親の病室に立ち入ったのだが、正直生きているのが不思議な状態ではあった。
背の低いなのはには見えていない事を利用して、少年はそのままベッドの上で眠る父親をなのはに見せないように動いた。
「・・・ん」
「?」
「まぁ、大丈夫だろ」
少年はそう言うと、腰に吊り下げていた厚めの本を持って開く。そして開いた見開きのページに手を突っ込んで、一枚のカードのようなものを取り出した。
そのカードに描かれていたのは風のような絵柄と、英語の文で「H.E.A.L.I.N.G.」回復、とそう綴られていた。
カード自体に何かしらの力が既に込められているらしく、少年はカードに対して力を込めるなどの動作を一切行わず、ただ指で宙へと弾いただけだった。
そして、当たり前のように言葉を紡ぐ。
「“癒し”よ。彼の者の傷を治癒し、健康なあるべき姿に戻したまえ。『HEALING』」
「にゃぁあああああ!?」
少年が紡いだ呪文の直後。カードから溢れ、ベッドの上で眠っているであろう父親へと降り注いだ光の奔流に、なのはが驚愕の声を上げるが、少年は気にも留めなかった。
カードから溢れだした光が消えると同時、なのはの父親を危篤から救い上げた『
少年は、なのはの背中に何らかの文字を書くと、そのまま抱き上げて包帯が痛々しくはあるが、苦悶の表情ではなく穏やかな表情で眠るベッドの上の父親を見せる。
「怪我は回復させた。あとは意識の回復だけ、呼びかけは任せたぜ。娘さん」
「・・・・・・うんっ! パパ、パパ!」
枕元に置いた丸いすから身を乗り出して、ベッドにすがるように父親を呼ぶなのはの姿に、少年は朝が弱い親を起こす娘を幻視したらしく、微笑ましそうな顔をしながら傍らにあったもう一つの丸いすに腰かけた。
暫くそうしていれば、休みの日に叩き起こされる父親の如く、なのはの父は意識を回復させた。
「・・・ここは?」
「パパ!」
「ビョーインだよ。あんたは入院してたんだ。怪我したことは覚えてるか?」
少年は読んでいた文庫本を閉じて、目が覚めたなのは父の疑問に答えつつ、ベッドの枕元にあるナースコールを押して看護士を呼ぶ。
少年はそのままゆっくりと消えるようにして姿を消し、なのは父が起きたことに驚いた看護士に呼ばれた医者が慌てて飛んできて、連絡が行ったのか夕方にも拘わらずなのはの家族が飛ぶようにして駆けつけた。
小学生以下であるなのはが病室にいることに驚いていたり、そんな久しぶりに訪れたのであろう家族の時間の中で楽しそうに笑うなのはの顔を写真に収め、少年は姿を消したまま、病室から立ち去った。
なのはside
パパがおきてからは、あっというまにおひさまがしずんじゃうぐらいにいそがしかった。でも、とてもたのしかったし、うれしかったのはほんとだよ。
で、おもしだしたときにはすでに、おにいさんはいなくなってたの。
「・・・あれ? おにいさんがいない」
「お兄さん?」
「なのは、誰のこと?」
「パパのけがをなおしてくれたコレクタのおにいさん」
「コレクタ・・・?」
「なんにせよ、もう一度あえたらお礼を言わないとな」
「だね」
そうだ。おれいをいわなきゃ。ありがとって。それがだいじだって。
「要らねーよ。既に十分な謝礼はもらってるっていうのに。お礼なんか言われたら、更に何かしなくちゃいけなくなっちまう」
『素直に受け止めれば良いじゃないですか、うましか』
「おう、ケンカ売ってんのか」
拡張鉛筆
ベンチを拡張した道具。空間を切り取って複製・固定が可能。
二つの画像の間に三つ目の画像を入れるようなそんな方法。
THE HEALING
とあるカードを模して作り上げられた完全治療・半蘇生用魔道具。一度使うと本物とは違い不完全なために砕けてしまうが、複製品なので何度でも使用可能。