我、無限の欲望の蒐集家也   作:121.622km/h

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副題:ひとつの幕引き




これは、僕が使う一人称が俺に変わった──その話だ。


レギオン──日ノ本語で儽球が、僕の故郷が滅んだ、その当時の、その時の話だ。

時間もないので手短に語ることになるけれど、今回の話はこの事をさわりだけでも良い、理解しておかないと何のことを言っているのか。分からなくなくなってしまう。

今はまだ、僕はその当時のことを、一切語っていないから読み返せと言っても到底無理だろうし、もし語って済んでいたとしても、読み返すのも面倒だろうから、ここで語っておく事にしよう。


事の始まりは、僕の妹達。

大きい方と小さい方。

運動馬鹿の如月火憐と、ヤンデレの如月月火によるものだった。

彼女達の言葉がなければ、僕はこうしてここにいないし。

彼女達の存在がなければ、僕はあの時すぐにでも自殺していただろう。


さて、あれはいつだったか。


「僕だって、お前達の為なら死んでやるよ」


とかいった意味合いの発言をしたときだったと思う。

あの発言──失言をしたからこそ、僕はこうしてここにいる。

僕の言葉を聞いた妹達は、


「何度でも死んでやるだって? それは駄目だぜ兄ちゃん」

「そうだよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは私達より先に死んじゃ駄目なんだから」


いつも通り、偉そうに、ふんぞり返ってそう言った。


「おい待てお前等。どう考えても年上の僕の方が先に死ぬからな!? そうじゃなくても、妹より先に死ぬなって、お前等僕の寿命より早死にする気かよ」

「ああ。私は兄ちゃんに看取ってもらって死にたいからな!」

「私達はわがままなんだよ。お兄ちゃん」

「おいおい」

「じゃあお兄ちゃん。絶対約束守れるようにしてあげる」

「ん?」


小さい方の妹は、そう言ってお守りのようなものを渡してきた。

どういった類いのものなのか、僕は分からなかったが、妹のおふざけに付き合うのもまた一興だと、その時は思っていたんだ。


「兄ちゃんは」

「お兄ちゃんは」

「「私達の最期を看取るまで死なないこと! 絶対だぜ(よ)!」」

「・・・・・・はぁ。分かったよ」


お守りまで渡して、本気なんだな。と思った。先に死んでしまったら、棺桶の傍で泣かれるのかな。とか、吸血鬼なんだし、もしかしたら看取ってやれるかもしれないな。何て考えていた僕は、甘かった。


終末の日──火でも良い。

僕達がそう呼ぶ、レギオンの人理最期の日。

それは奇しくも、僕達の通っていた直江津高校の卒業式だった。僕は卒業式には参加していない。卒業式に参加せずに、怪異に憑かれた少女に手を貸していたのだった。

忘れもしない。丁度、その時だった。

強い一筋の風が吹いたと、そう思った矢先。風。いや、何かが僕らの体を消し飛ばしたのだ。

後から調べて分かったのだが、それが、終末の火。

昼夜問わず情報番組でも取り上げられていた「新型原動機」に使われていた、とあるエネルギーの粒子だったのだ。それは誰もが予期しない偶然の事故で、星に生きる生命体のみを焼き尽くした。人も、木も、動物も。全てが焼き尽くされ、何も残っていなかったレギオンだが、山中にて木々に覆われた村には人が残っていた。

それが後のベルカに繋がるのだが、今は置いておこう。

僕は、吸血鬼もどきの人間だ。忍は、人間もどきの吸血鬼。

回復能力が優れているだけの、ただの人間──だったはずなのだ。

──しかし。

結果として、僕は生き返ったのだ。

焼き尽くされて尚、僕は存在を許されていた。


考えられる原因は全て探した。

忍や、扇ちゃんと話し合って出た結論は、僕の妹達。

僕は学校にいたために、妹達が焼き尽くされる現場には、もちろん立ち会えなかった。

下の妹「如月月火」は、しでの鳥という怪異。所謂不死鳥だったため、死に際、というか消滅には僕と忍が深く関わっているため、看取りはしたと思う。

だが。

上の妹、如月火憐は看取れなかった。

だから半分。

僕は、妹達を看取るまで死ねないという呪いをかけられ、不老不死──看取るだけなら不死だけでいいのではないかと思うが、四字熟語として不老があった方が語呂が良いからだろう。

妹達は馬鹿だからな、上半分だけが適応されてしまったのだ。

火憐と月火。

不老と不死。

上の妹と上半分。

僕は、そこまで分かって初めて困惑した。


この先どうすれば良いのか。

おっきい方の妹を看取るまで、不老のままなのか。

それとも、もしもう一度死んだその時は、不死まで適応されるのではないか。


と、元吸血鬼ながら戦慄したものだ。

つまるところ。僕は妹達から受けた約束(呪い)で不老・不死(蘇生魔術)になったのだ。

だから、忍も、扇ちゃんも、八九寺も、斧乃木ちゃんも。

僕達の事情を知る人間は、僕に二人の妹を生き返らせればいいのではないかと助言した。

確かにそうすれば、僕は二人の妹を看取ることができ、不老不死の呪いも無くなるのではないか。

そう考えて、僕は錬金術に手を出して、禁忌を犯した。

元よりそのつもりで錬金術を使い出したのだから、真理に触れることに躊躇いはなかった。

だが、僕は妹達を錬成はしなかった。

とにかく怖くなったのだ。生き返らせた妹達の反応が。


だから俺は如月楓を作った。

レギオンでの記憶をほとんど切り離して。

だが、如月楓がいなくなった如月奏音では、妹達の魂は何故か錬成できなかった。

そういう顛末だ。

まあ、結論を言うと。

今回の話は僕の語る話にしては珍しく、誰も傷つかない、大団円だ。


009

なのはside

 

必死。という言葉が正しいかもしれないプレシアさんとは対照的に、アリシアちゃんは踊るようにプレシアさんと戦っていた。

 

アリシアちゃんはついさっきまで死んで(?)いたし、プレシアさんは魔導師として優秀らしいし、二人の力の差ははっきり言えば逆に考えていたけど、現実はアリシアちゃんがプレシアさんを圧倒しているように見えた。

 

 

「・・・・・・なんだろう」

 

「え?」

 

 

親子喧嘩──そう呼んで良いのかわからないプレシアさんとアリシアちゃん。二人の戦いを、隣で見ていたフェイトちゃんがぽつりと呟いた。

 

 

「なに? 何かあったの?」

 

 

クロノ君から現状維持、待機命令が出されているため、戦闘を見守りながら周囲の警戒を怠らずにいるものの、そんなに気になるものがあっただろうか。

 

 

「どうして・・・なんだろう」

 

「・・・お兄さんが手を貸してくれた理由?」

 

「・・・・・・」

 

 

フェイトちゃんは小さく首を横に振った。

 

ならば、アリシアちゃんがフェイトちゃんのことで怒っている理由だろうか。

 

そんなことを考えていた、その時だった。

 

 

「──っ!」

 

 

突然、私の頭の中に見たことのない景色と記憶が叩きつけられた。

 

 

「なんだ・・・これは・・・っ!」

 

「これ・・・(アリシア)の・・・」

 

 

戦いはどうなったのかと、目を向ければ初めと同じようにアリシアちゃんの傍らに、ドレスの女性が浮かんでいて、手に持った織機が続々と一本の長い布を作っていた──ように見えた。

 

 

「どうして・・・あなたが・・・!」

 

「私のペルソナ、"アラクネ"の固有能力は『伝えたいことを織り上げる』こと! 織糸がないから物理的には無理でも頭の中に直接織り上げることは出来る。見せてあげる、これが私の記憶!」

 

 

織り上げられているから痛むのか、それとも記憶の情報量で痛むのか。ハッキリとはしないけど、アリシアちゃんの記憶を見せられている私達の脳は痛みを訴えていた。

 

 

「なぜ・・・貴方がアリシアのことを知っているの! あの子の記憶を・・・どうして!」

 

「私がアリシア・テスタロッサだからだ!」

 

 

アリシアちゃんが吼える。

 

怒りと、少しの哀しみで震えながら。

 

 

「プレシア・テスタロッサが長子にして、フェイトの姉アリシア・テスタロッサ! それが私だ!

 

「例え(ママ)に否定されようと、この事実だけは変わらない!」

 

「だったらどうして! そんな人形のために──」

 

「──心にもないことを言わないで!

 

「でも・・・そうだね。ママの疑問に答えるのなら・・・」

 

 

アリシアちゃんはそこで区切って、

 

 

「・・・うん、私はお姉ちゃんだもん。だったらほら、妹を守らなくっちゃ。

 

「それに私の妹は、年齢よりも子供っぽいしね。

 

「姉の私がしっかりしないといけないから。だから──」

 

 

半透明の女性──ペルソナというらしい、を傍らに待機させたまま、アリシアちゃんは槍を握る。そのままくるりと槍を回すと、プレシアさんに向ける。

 

今気付いたけど、あれってもしかして槍じゃなくて長刀・・・?

 

 

「・・・だから私に刃を向けると? 愚かね。本当に私の娘なのか疑わざるを得ないわ」

 

「じゃあなんだ。ママは天才か? 違うでしょ!

 

「ママはただの大馬鹿者だよ! 愚か者だ!

 

「目的しか見ずに突っ走って・・・結果が大事か!?

 

「ママが、こんな方法じゃないと、アリシア(わたし)を救えないって思ってるなら──」

 

 

アリシアちゃんはシュバァッという効果音が似合う動きでポーズをとって、

 

 

「まずはその幻想をぶち殺す!!」

 

 

聞き分けのない子どもを叱るかのように、そう叫んだ。

 

そんなアリシアちゃんに対して、プレシアさんはため息をついて、

 

 

「もう・・・いいわ。私は、私の力だけで取り戻す。アリシアと私の過去と・・・未来を。こんなはずじゃなかった私達の世界を!」

 

 

まるで、目の前にいるアリシアちゃんを否定するかのように、そう告げたのだった。

 

 

「世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだよ!!」

 

 

その言葉に対して、クロノ君が吼える。

 

 

「ずっと昔から、いつだって、誰だってそうなんだ!

 

「こんなはずじゃない現実から逃げるか、それとも立ち向かうかは、個人の自由だ!

 

「だけど、自分の勝手な悲しみに無関係な人間を巻き込んでいい権利は、

 

「どこの誰にもありはしない!!」

 

 

まるで主人公みたいな科白を、啖呵を切った。しかし、それに対する誰かの気持ちや、続く言葉が発せられることは無かった。

 

 

「──っ!?」

 

 

私達の声を遮るように、身の丈を越えるような大剣が文字通り間に突き刺さったために。

 

そして、その直後。

 

爆音とともに一台のバイクがグラウンドに飛び込んで、横滑りをしながら急停車した。

 

バイクに跨がった人影は、地面の大剣をバイクの側面に付いた特殊な機構に納め、顔を隠すようにつけていたゴーグルを額へと持ち上げて素顔を晒す。

 

 

「・・・・・・全く、熱い少年漫画じゃあないんだから、もう少し気楽に行こうぜ?」

 

「アンタは・・・!」

 

「まぁ、そこのガキンチョの言う通り、世界は不条理で溢れてはいる。ただ、その不条理を何とかできる──誰もが望む最っ高に最っ高な幸福な結末(ハッピーエンド)ってやつを迎えることが出来る。

 

「そんな方法があるって言ったら、お前はどうする?」

 

 

お兄さんのそんな問いかけに対して、プレシアさんは胡乱な目でお兄さんを見る。

 

そんなプレシアさんの反応に、お兄さんは満足そうに笑って、

 

 

「・・・結局あんたは、自分の手で目的を完遂しないと納得しないってわけだ。

 

「神や奇跡に縋らなくても、何とかできる方法があったとしても。

 

「誰かの手を借りずに、ちっぽけな人間一人で事を成さないと納得できないんだろう?」

 

「貴方・・・!」

 

「人様風情に出来る事なんざ、限られているって言うのにさ」

 

 

お兄さんはそう言って、笑った。

 

 

「・・・さて、いい加減に認めたらどうだプレシア。アンタも薄々気付いてるんだろう? そこにいるアリシアが生き返った自分の娘だって事」

 

「・・・・・・認められると思う?」

 

「娘が己を否定した事を? それとも、自分の手で成し遂げたかったことを奪われた事か?」

 

「違うわ。でも、貴方。分かって言ってるでしょう」

 

「いいや。僕は何も知らないぜ」

 

 

でも、一つだけ知っていることがある。

 

お兄さんは依然バイクに跨がったまま、意味深にそう言って。

 

 

「そこにいるアリシア・テスタロッサは、俺が煉獄から連れ戻してきた正真正銘の本人だ」

 

「・・・そう、そうなのね」

 

 

お兄さんのその言葉でプレシアさんは全身の力を抜いた。

 

今回の事件は首謀者の投降で幕を閉じるのだろう──そう思った瞬間。

 

 

「せりゃぁぁあああああ」

 

 

スパーンッ!

 

という軽快な音が響く。

 

それは、プレシアさんに急接近したアリシアちゃんが振るった左手が、その頬を捉えた音だった。

 

・・・・・・投降ではなく、気絶からの捕縛で幕を閉じた。

 

sideout.

 

 

母親を殴るという宣言通り、プレシアに鋭い一撃を入れたアリシア。

 

そこで彼女の反逆の意思も小さくなったのだろう。纏っていた怪盗服も小さくなった意思とともに青く燃えて消えた。そしてそのまま使い切った力で自重を支えられず、地面に倒れ込んだ。

 

 

「あ・・・」

 

「アリシアちゃん!?」

 

 

フェイトはどうして良いか分からず動かなかったが、なのはは「目の前で倒れたから」という理由だけで、すぐさま倒れたアリシアに駆け寄った。

 

 

「大丈夫!?」

 

「つ、疲れた・・・・・・」

 

「蘇生直後に激しい運動──加えてペルソナ覚醒と続いたからな。暫くは満足に動けない状態が続くんじゃないか」

 

 

無制限の蒐集書に指示を出し、世界を文字通り閉じる事で周囲の景色は直江津高校グラウンドからプレシアの時の庭園に変わった。要するに帰ってきたのだ。本の内側の世界から、外側へと。

 

取り込まれていたものが全て弾き出されたので、リクとワカナの二人とも合流できた。

 

 

「さて。一つ区切りも着いたところで君達の前線基地へ戻ろうか。案内頼めるかな? 魔導師君」

 

「・・・・・・ああ」

 

 

気絶したプレシアを抱えたアルフと、そんな彼女に怒りを収めるよう言い聞かせていたクロノが、僕の呼びかけに対して若干不満そうに返事を返してきた。しかしまあ、向こうのシマにも関わらず大分好き勝手した自覚はあるので、これ以上の自由行動は禁止しておこう。

 

 

「ああ、そうだ。この庭園はどうする? あの戦艦で何とかできるのか?」

 

「放置することも出来ない。が、すでに半壊しているようなものだ。このまま放置して崩壊を待つことにする。それが一番だ」

 

「・・・・・・ふーん」

 

 

促されるまま、三度目のアースラへと搭乗する。

 

前回足を運んだ戦艦の司令塔──艦橋へと案内される。

 

入室早々に敵意に似た感情を向けられたが、自らがやったことを考えれば当然と言えば当然の反応なので、さわやか風な笑顔を浮かべておく。後からよく考えれば、この状況での笑顔は胡散臭さがMAXだった気もする。

 

 

「まずは約束を反故にしたことを謝っておくよ。悪かったね。御詫びと言えるかどうか分からないけど、君たちの疑問になるべく正確に答えようじゃないか。僕にも分からないことはあるからさ。確実じゃなく、なるべくになってしまうけどね」

 

「・・・では、先程のあの現象は一体何なのか、説明してもらえますか?」

 

「もちろん。あれは、僕の持つ蒐集書の中に対象を取り込んだだけだよ。まぁ、空想を具現化することと似て非なるものと言える。システムの根本は固有結界を参考にしたけど・・・理解できてる?」

 

「固有結界とは?」

 

「固有結界は別名リアリティ・マーブル。個と世界、空想と現実、内と外を入れ替え、現実世界を心の在り方で塗りつぶす魔術と呼ばれる技術の最奥。術者の心象風景で現実世界を塗り潰し、内部の世界そのものを変えてしまう結界さ」

 

「そんな技術が・・・!?」

 

「ただの術師には使用できないけれど、人の身で扱おうとするなら一部の、それこそ英雄と呼べるような術者くらいにしか行使できない宝具に分類される稀有な能力だよ」

 

「宝具?」

 

「宝具って言うのは人間の幻想を骨子に作り上げられた武装。貴い幻想(ノウブル・ファンタズム)とも呼ばれている、過去に逸話を持つ英雄の亡霊・・・英霊(サーヴァント)が持つ切り札だ。英霊が生前に愛用した武具、或いは逸話を奇蹟として再現したもの。全ての英霊は、その出自となる伝承を己の武器として扱える。いずれも強力なスキルであり、他人が同じものを持つことのない、唯一無二の伝説だよ」

 

 

質問を許可したことで、疑問を投げ掛けてくるのはアースラ艦長のハラオウンと執務官のクロノ。なのは達は本人達から既に聞いているのだろう。というか、教えているのが容易く想像できる。

 

模倣するほど観察している、もしくは教わっている魔法少女組は大した疑問も湧かないから説明を聞き流しているのかもしれない。

 

 

「生前の・・・? まさか、あなた達は死人だと?」

 

「僕がもし過去に死んだことがあったとして、キミ達に何か損害があるかい? 確かに、如月には過去の偉人や神話の英雄が所属しているけれど、それがどうかした?」

 

「・・・・・・いえ、ただ気になっただけです」

 

「そうか。・・・・・・他にはない? それなら僕の解決したいことも解決したし、仕事の邪魔をしないうちに退散させて貰うよ」

 

「──ま、待って! 如月さん!」

 

「ん? どうした、フェイトちゃん」

 

「助けてくれてありがとうございました!」

 

「別に助けてないよ。君が勝手に助かっただけだフェイトちゃん」

 

 

正直、あの怪異と人とのバランサー忍野メメの真似をするのも限界が近いと思う。ノリでここまで突き進んできたけど、一般人感性が戻ったこの思考にはきついものがあった。

 

 

「お兄さん・・・」

 

「ん?」

 

「また、会える?」

 

「さて、ね。それは僕にも分からないよ。君達がもし地球に住むのなら、会えるんじゃないかな」

 

 

人の出会いは一期一会というからもしかしたら会えない可能性もあるけど、僕の名前はこの地球で最も有名な名前だから調べれば会いに来ることが出来ると思う。

 

まあ、今度会うだろうその時は、うるさい二人の妹が増えているから、よろしくね。

 

 

 

フェイトside

 

如月さんはアリシアにそう言って、魔法とは違う方法で転移して私達の前から消えた。

 

カルデアで、瞬間移動や空間移動についての知識は一通り教わったつもりだったけど、実際に見ても何をしているのかは全く分からなかった。

 

私は、母さんとアリシアを──頼んだとおりに助けてくれた。でも、やっぱりというか。如月さんの信条なのか、私達は勝手に助かったらしい。

 

でも、如月さんが何と言おうと、私達は彼に助けられた。例え何年経っても返しきれないであろう恩ができたので、いつの日か全ての恩を返したいな。それとまた、友達に会いにきたいな。

 

賑やかな仲間や、無茶苦茶な先生がたくさんいる・・・私のもう一つの故郷。

 

 

──地球に。

 

 

「あー!!」

 

「!?」

 

 

な、なになに!?

 

 

「フェイトちゃん、顔!」

 

「か、顔? なに?」

 

「ゆるゆるだよ! 駄目だよ!」

 

「な、なにが!?」

 

「お兄さんはかっこいいけど、好きになっちゃ駄目なんだから!」

 

 

す、好き!? ち、違っ

 

 

「違わないもん! 鏡で見る顔だもん!」

 

「恋? フェイト、お兄さんに恋してるの?」

 

「駄目だって!」

 

 

ち、違う! あ、アリシアも変なこと言わないで!

 

 

「へっへーん。お姉ちゃんって呼んでくれないと何度でも言っちゃう〜」

 

 

えぇ!? え、お、お姉・・・ちゃん・・・やめて・・・!

 

 

「ヒュ〜! うちの妹超かわいい」

 

sideout.

 

 

アースラから如月の屋敷、その自室に直接転移した僕は、その足で如月邸の地下──カルデアとは別位置に造り上げた儀式場へ向かう。そこには龍脈が通っていて、以前から用意していた人体錬成用の特殊な錬成陣が敷かれている。

 

というか、如月の屋敷自体が龍脈の真上に建造されており、その地下に移設されているカルデアは龍脈の流れに呑まれているような気がしなくもないが、それでも一際魔力が強いこの場所に、僕は儀式場を造り上げていた。

 

 

「・・・・・・お前様よ」

 

 

ズルリと影から出てきた忍が、声をかけてくる。

 

 

「なんだ、忍。止めに来たのか?」

 

「そうではない。ただ、訊きに来たのじゃ」

 

「何を?」

 

「私達にとって長年の疑問に、漸くの決着が着けられそうなんですから」

 

 

儀式場の入り口からヒョッコリと八九寺が顔を出す。

 

 

「八九寺まで・・・。一体全体、お前達にとって何が疑問だって言うんだ?」

 

「彼女達を生き返らせた後、それが知りたかったんだよ鬼いちゃん」

 

「万が一にもあり得ないとは思いますが、生き返らせたあと、自死のために彼女達に手をかける。なんてこと、如月先輩がしては困りますから」

 

「いや、まあ・・・。しないけど。で、生き返らせた後に何をするか、だな」

 

 

そんなこと、別に話す必要はないと思うし、これからの行動で示すことはそう難しくはないと思うが、気になるというのであれば、前もってどうするかを説明しても特に支障はないと思う。

 

だけどまあ、この予定はあくまで僕の希望でしかないから、確定した未来という訳じゃあないし、こうなったら良いなっていう、ただの願望でしかないのだけれど。

 

──それでも聞きたいというのであれば、教えてやろうじゃないか。

 

 

「・・・僕は、また兄妹三人で仲良く暮らしたいなって考えてる。死ぬとか生きるとか、あいつ等は多分・・・微塵も、これっぽっちだってどうでも良いはずだ。いつだって僕を慕って、誰よりも僕を愛してくれたのは、妹達だろう?」

 

「・・・・・・なるほど。アスパラギン酸のいう通りです」

 

「そうそう・・・って、ちょっと待った八九寺。僕は今、結構感動的な言葉を言ったばかりだったというのに、それに水を差すように、僕の名前を"多くのタンパク質に含まれている生体内の代謝に重要な役割を果たす、アミノ酸の一"のように言い間違えるな。僕の名前は如月だ」

 

 

っていうかお前、名前だけじゃなくてさん部分も一緒に嚙んだだろう。誤魔化されないぞ。

 

 

「失礼、噛みました」

 

「違う、わざとだ」

 

「かみまみた!」

 

「わざとじゃない!?」

 

「神MA見た?」

 

「そんな唐突にオススメのMAD作品を尋ねられても!」

 

 

見てないよ。最近動画投稿サイトを訪問すること自体していない。そもそもこの時代にはネットはそこまで発展していない。つべもニコも存在すらしていない。

 

 

「よく分かりましたね。イントネーションの違いくらいしか見分けつかないと思うんですけど」

 

「我が主様のことじゃ。メタフィクション的な力でも使ったのじゃろう」

 

「・・・・・・あー」

 

「いや、納得されても困るんだけど・・・」

 

 

確かに僕の生みの親は「第四の壁」を容易く破る力を持ってはいるけど、せめてデップーの周囲のように狂人の妄言と流してくれて良いんだぞ。普通は第四の壁の認識など出来はしないから。

 

 

「・・・・・・よし。会話の準備運動は終わりだ」

 

「いや、私との一連の流れを準備運動にしないでください」

 

「僕はレギオン時代、八九寺以上に話しやすい人間に会ったことがない」

 

「私、当時既に幽霊でした」

 

「・・・・・・人以外も含めるよ。というか八九寺は元人だろうに」

 

「そういえばそうでした。ほら、私今神様ですから!」

 

 

まさか人の記憶を失ったのか・・・? 神様になって傲慢になったとでも言うのだろうか。

 

 

「まあ、八九寺との弾む会話はウォーミングアップになるのさ。記憶の中の彼らは会話に癖がありすぎる。その中でも妹達はマシな方だろう? 僕に従順だった」

 

「うむ。待てと言われて素直に待っておった」

 

「いや、あれは流石にやり過ぎだ。素直すぎるのも駄目だな」

 

 

と言うわけで、以前から準備を進めていた儀式を開始しようと思う。

 

蒐集書に保管していた、人体を構成する素材を取り出して配置し、錬成陣に己の魔力を通す。

 

 

「よし、ここからは忍達にも協力して貰うぞ」

 

「・・・? 何を手伝えと言うんじゃ?」

 

「錬成が終わるまで指定の位置に立ってて貰うだけだよ。忍は羽根、八九寺は殻、斧乃木ちゃんは御札、扇ちゃんは扇子の描かれた輪の中に立ってくれ」

 

「座っても良いですか?」

 

「・・・ご自由に」

 

 

僕自身も本の描かれた陣の中に入って更に準備を進めていく。

 

 

「何をするんですか?」

 

「人体錬成を・・・・・・って、そんなこと聞いてるわけじゃないのは分かってるよ。ここにいる全員、あいつ等と少なからず面識があるだろう? 忍は僕の影の中にいたし、斧乃木ちゃんに至っては、妹達の部屋でほとんどの時間を過ごしたんだから」

 

「なるほど」

 

「私、面識ありましたっけ?」

 

「土地神様には居てもらわないと困るんだけど。僕はここに居る全員と妹達の縁を辿って、火憐と月火の魂を錬成する」

 

「そんなことせずとも()()妹御達なら飛び出してきそうなものじゃがのう」

 

「ですね。私もそう思います」

 

「なら器は早めに作っておいた方が良いね」

 

「じゃあ、やるか」

 

敷いた陣に触れ、ゆっくりと魔力を流していく。元々如月邸の地下を流れる龍脈から膨大な魔力が流れ込んでいるけれど、そこに己の意思(魔力)入れ(流し)て志向性を持たせなくては目的は果たせない。

 

そもそも魔力とは何か。呼び方として「龍脈」つまり自然界にある魔力「マナ」と、術者の体内にある魔力「オド」があるようだが、その違いはさほどないらしい。魔術を行使する際に必要なのは詠唱や陣の正確さで、魔力そのものは誰の物でも良い・・・・・・、ええい! 錬成には必要なんだよ。きっとそうだ、そうに違いない。

 

気を取り直して、大切だという詠唱をしていこう。

 

 

「届けるは我の祈り、手向けるはこの命。

 

 契約の文言に従い、呼びかけるは扉也。

 

 命は循環を開始し、大器は呼応し覚醒。

 

 行うは魔術の禁忌、蘇生魔術の大禁呪。

 

 我は真理に到達し、根元接続した愚者。

 

 その権能を以って、全てを持ち去る者。

 

 我は無限の蒐集家、手数だけなら無限。

 

 如何なる阻害をも、ものともせず実行。

 

 蓄積し記憶を辿り、行うは妹達の錬成。

 

 全魔術回路を解放、禁忌の錬成を開始」

 

 

自らの内側に潜るように、錬成陣を通して真理の扉を開く。己にできうる限りの全てを注ぎ込み、ただひとつ──大切な結果を導くために全力を尽くす。

 

錬成陣が光を放つ。錬成は順調に進んでいるようだ。

 

忍野忍、八九寺真宵、斧乃木余接、忍野扇の順に、彼女達の位置する特殊な陣から、妹達に関する記憶の転写が中央陣に流れ込んでいく。

 

いよいよ錬成も本番に入っていく。

 

 

「眩しいのう」

 

 

錬成陣の中央付近に設置していた人体錬成の素材が二つに分離され、それぞれの肉体を構築する。見慣れた妹達の体だ。当時すでに十八歳になっていたのに、中学生の妹の全裸を記憶しているのは一般的にどうかとは思うが、僕達兄妹間ではこの程度は普通のことだった。

 

さて、錬成が進む中で一番の重要事項、誤ってはならないことは、火憐の体に月火の魂を入れてはならないということだ。火憐の身体能力で月火の残虐性とか、目も当てられない。

 

慎重に、針の穴に糸を通すように慎重に、二つの魂を誘導する。還魂の霊薬を錬成陣に流し込み、それぞれ肉体と魂が引き合う力を強くして、より正確な誘導と蘇生を開始した。

 

・・・しかし、目が覚めて自分が全裸だったら、僕が妹に襲われかねない。特に小さい方の妹、月火なんかは「これは合意と見るよお兄ちゃん」などと勘違い発言をして、そのまま襲ってきそうだ。

 

──というわけで、妹達の目が覚めてしまう前に、彼女達のいつもの服装を、レギオンに存在する如月の家から取り出して、錬成陣の外に畳んで置いておく。そうやって別事が出来るぐらいには、錬成も安定してきている。

 

 

「いつまでこうしていればいいんです?」

 

「あともうちょっとじゃないかな」

 

「いや、もう出ても良いよ・・・?」

 

「あ、そうなんですか?」

 

 

あとはもう、最後の仕上げをするだけだし。

 

その仕上げというのは、還魂の霊薬を惜しみなく、ふんだんに使って、彼女達の魂と肉体を固く、強固に結びつける。ついでに、問答無用で妹達を僕と同じ存在にしてやった。これはいわゆる意趣返しのようなものだ。

 

彼女達から貰った"お願い"のせいで、僕は数えるのが億劫になるほどの時間を過ごすことになったのだから。これからの数万、数億年を共に暮らすぐらい。妹達も許してくれるだろう。

 

錬成が終わり、錬成光が収まった陣の上に寝転がる二人の妹に、着せ替え人形が如く服を着せて、担いだ。とは言っても、二人同時に担ぐなんて芸当、僕には出来ないので僕が火憐を、扇ちゃんと斧乃木ちゃんが月火を運んでくれた。

 

そして、これまた以前から用意していた当時の妹達の部屋を再現した部屋の、二段ベッドに彼女達を寝かせ、僕はその足で自室に戻ってベッドに転がった。

 

すると、またもやズルリと影から忍が出てきた。いつの間に影の中に潜んだんだこいつは。

 

 

「・・・ふむ。これでお前様のあれやそれやも一段落かのう」

 

「あぁ。とりあえずこれで、僕はやりたい事も語りたい事も、出来るだけやったし、あまり未練はないんだけれど」

 

「だが?」

 

「だけどさぁ、この先紡がれる物語は絶対面白いものになるだろう?」

 

「まぁ、それもそうじゃのう。だからお前様は」

 

「僕は」

 

「「生きることをやめられない」」

 

 

それだけを聞くと、少しどころかなんか普通にやばい奴かもしれないけれど。

 

でもやっぱり、僕は生きることが大好きなんだよなぁ。

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