我、無限の欲望の蒐集家也   作:121.622km/h

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キャラ崩壊注意。オリ主入ってるんだから、ま、多少はね?

副題:喫茶店の再会


002

それは、とある日のこと。

 

以前なのはにコレクターと名乗った少年は、海鳴市の名物の一つと言っても過言ではない、翠屋という喫茶店のシュークリームを食べに訪れていた。

 

何故か、男三人で。

 

 

「ちょっと待てよ。そんなに嫌そうな顔するなら、女子の一人でも連れてくれば良かっただろ?」

 

「誘えば良かったのに、そうしなかったのは君じゃないか」

 

「俺が誘って誰がついてきてくれるんだよぉ~」

 

 

ふて腐れたように、少年はグデッとテーブルに突っ伏して空のグラスを口先で弄ぶ。

 

そんな少年を、彼に誘われたという少年二人は、何言ってんだこいつ──とでも言いたげな目で見つめていた。

 

 

「・・・何?」

 

「いや」

 

「何でもないよ」

 

 

理由を尋ねられた二人は誤魔化すように言葉を濁し、話題を先に進めることにした。

 

 

「──で、そもそもなんで俺達をチョイスしたんだよ」

 

「ん? それはな・・・。まず、見た目年齢が近いだろ?」

 

「あ、あぁ」

 

「そんで、士郎も志貴も誘ったら、まず断らないだろうなぁ──ってことで」

 

「「・・・・・・他にもいただろ!?」」

 

 

少年のその理由に、士郎と志貴と呼ばれた少年二人は、机を叩くようにして抗議を申し立てる。

 

その抗議を受けて、少年は自らが知る見た目の年齢が近い知り合いを思い浮かべていく。

 

 

「・・・他って、例えばルルーシュとかか? 

 

「いや、絶対ダメだって。まず誘うこと自体難しい。

 

「──もし、誘うタイミングを間違えてみろ、呆れたような目で「行くわけないだろ? 馬鹿か?」とか言う。

 

「その系統で言ったら八幡もそうだ。

 

「アイツだって「メンドくさいからパス」とか言うぜ? そんな事言われたら俺死ぬ」

 

 

思い浮かべた二人が悪かったのか、少年は想像上の拒絶で打ちのめされかけていた。

 

 

「もっとマシなやついただろ・・・」

 

「死因は何だよ」

 

「──寂死因」

 

「なんでさ」

 

 

赤髪の少年は少年のくだらない洒落に、そんな言葉を漏らす。一方で黒い短髪の少年は、その洒落をまともに受け取ったらしく。

 

 

「つまらない洒落で死ぬなよ。もっとマシな死因で死にな?」

 

「じゃあ──自殺」

 

「なら、よし」

 

「・・・なんでさ」

 

 

寂しい等という死因が存在するはずもなく、そう考えれば自殺という死因はまともなものなのかもしれないが、如何せんそんな話を喫茶店でするのもどうかと言える。

 

しかし、若干一名。腑に落ちてなさそうだったが、彼等なりに一つの話題が終了したらしく、飲み物の追加注文をして話題は区切られた。

 

 

「──そういや、もうノリで聞いておくけど。二人はさ、どうなの? 

 

「なし崩し的に俺みたいなやつと知り合って、こうやって、くっそくだらない男子高校生のノリに付き合ってくれるようになったけど。

 

「ぶっちゃけて、面倒じゃない?」

 

「「・・・・・・」」

 

 

少年の何にも考えてなさそうな。

 

本当に、何を言われても構わないとでも言いたげな、器の大きさを考えさせられるその質問に、士郎と志貴は二人とも顔を見合わせて。

 

 

「毎日が楽しいよ」

 

「幸せだと思う」

 

「お、おう。そっかー・・・」

 

 

数秒見つめ合った後、少年に向かってそう言った。

 

小年は照れくさそうに笑ったが、どこか安堵したような表情で息をつく。

 

何かしら不安な事があったのかもしれない。

 

そんな中、少年が二個目のシュークリームに手を付けたときだった。

 

 

「・・・なあ」

 

「ん?」

 

「俺の気のせい、もしくは見間違い、もしくは幽霊だっていうなら、それでいいんだけど」

 

「・・・なんで勿体ぶってんの?」

 

 

訳が分からないとでも言うように、少年は怪訝そうな表情でシュークリームから口を離す。

 

 

「・・・女の子が隣に座ってる。知り合い?」

 

「・・・はぁ? ──マジだ。アンタ誰?」

 

「なのはなの!」

 

 

自らが座るソファの隣を確認した少年は、そこにいつの間にか座っていた幼児を見て、そう口にした。

 

対する幼児は、自らの名前であろう単語を高々と口にした。

 

 

 

なのはside

 

なのはにはいま、まいにちやっていることがあります。

 

それは、あのこうえんにかよってコレクタのおにいさんにもういちどあってありがとうっていうことです。

 

でも、あのときからまいにちいっても、コレクタのおにいさんにはあえませんでした。そのかわりにヘンなヒトとあいました。わたしのことをかってにおよめさんにしてくるおとこのこ。

 

なのははおよめさんになったきはないの。

 

きょうもまたあのおとこのこにあうのはいやだけど、コレクタのおにいさんがいるかもしれないからこうえんにいかなきゃ。でもそのまえにわたしのぱぱとままのおみせ、みどりやのおてつだいをしにいくの。

 

でも、もうこうえんにいくひつようはなくなったの。おとうさんとおかあさんのおみせにおにいさんがいたから。おともだちといっしょに。

 

おにいさんにおはようってあいさつして、おとなりにすわる。そのままおにいさんたちのおはなしをきいてみる。「たのしい」とか「しあわせ」ってきこえてくる。おにいさんのおともだち、おにいさんのことだいすきなんだね。

 

 

「・・・なあ」

 

「ん?」

 

「俺の気のせい、もしくは見間違い、もしくは幽霊だっていうなら、それでいいんだけど」

 

「・・・なんで勿体ぶってんの?」

 

「・・・女の子が隣に座ってる。知り合い?」

 

「・・・はぁ?」

 

 

やっときづいてもらえたの。おれいをいわなくちゃ。

 

 

「──マジだ。アンタ誰?」

 

「なのはなの!」

 

 

おぼえてもらえてなかった!? 

 

 

 

 

──少年は、士郎と志貴の二人に対してなのはと知り合った経緯を話していた。

 

 

「と、いう事で知り合ったのでして、俺もすっかり忘れてたんだけど」

 

「・・・何で覚えてないんだ」

 

「そこまで興味がなかったからだろ」

 

「まあ、その通りなんだけど」

 

 

なのはには理解できないだろうからと、随分酷い内容の会話をする三人。

 

その予想通り、何を言っているのかさっぱり分かっていないなのはは首をかしげていた。

 

 

「・・・それで、周辺調査もろくにやっていなかったものだから、小さな幼児の活動範囲に思いっきり突っ込んでしまったって訳か」

 

「タブンネ」

 

「うっかりは遠坂だけにしてくれよ・・・!」

 

「士郎も人の事言えないぞ」

 

 

そう零した赤髪の少年は士郎というらしく、消去法で黒い短髪は志貴というらしい。

 

なのはは母親らしき人──どう見ても姉くらいの歳にしか見えないのだが、に呼ばれてこの店の手伝いをしに走って行った。

 

 

「活動範囲っていうかこの子の親の店かよ・・・」

 

「あぁ、面倒事の予感がする・・・」

 

「なんで助けたわけ?」

 

 

志貴にそう聞かれて、少年は居住まいを正してから口を開いた。

 

 

「あの子がな。色々悟った目をしてたから」

 

「・・・まさか」

 

「どうにもならないって、自分が一人になれば良いって、そんな目をしてた」

 

「──マジか」

 

「あのくらいの子ってワガママを言うもんだろ? 自分から一人になる子なんているわけがない。いて良いはずがない」

 

「・・・それは、手を差し伸べるべきだな。大人として」

 

「家族以外はどうでもいい、とか言っていられる状況じゃなかったんでね」

 

「兄さんにも、そんな時期があったんだっけ?」

 

「黒歴史?」

 

「止めなさい。そう言う言い方されるとイタいことしてたみたいでしょ」

 

「なんでちょっとオネエちっくなのさ?」

 

 

どうやら少年にも知られたくない過去はあるらしく、大分濁して伝えているようだった。

 

そして、そんな真面目な話をしている最中でも、ふざける辺り、少年はそういう下らないノリを愛しているようだった。

 

 

 

「──あの、ちょっといいかな?」

 

 

そう声をかけられたのは、少年がおかわりの珈琲を半分ほど呑んだ辺りだった。

 

ふと、顔を上げれば少年にとっても見覚えがある顔で、あの日と違って痛々しい姿をしていない上に、どこか武士のような雰囲気を纏っている、なのはの父親だった。

 

 

「はい。なんですか?」

 

 

少年が珈琲を飲んでいるからだろうか、声をかけてきたなのはの父親に対して、士郎がそう返事をした。

 

すると、なのはの父は訪ねるのではなくて、核心があるように、つまりは確認をとるといった調子で質問をする。

 

 

「そちらの少年がコレクタくんであっているかな?」

 

「自称で良ければ兄は時折そう名乗ってますが。それでその、コレクタさんに何かご用ですか?」

 

「ああ。コレクタくんにお願いがあってね。話がしたいんだ」

 

 

我関せず。

 

そういう風な態度をとる少年に、士郎は問いを投げるように目線を向ける。

 

その視線に、少年は一つ目配せをする。

 

 

「・・・こちらは、貴方達と話すことは何もありません」

 

「そうはいかない。私は彼に助けて貰ったんだ。お礼の一つくらいは、言わせて貰ってもいいだろう?」

 

「お礼、ねぇ。要らないでしょう、そんなもの。なぁ、兄さん」

 

 

士郎はそう言って、少年に話を振った。

 

少年は裏切ったのか。というような目をしていたが、それも一瞬のことで、すぐに先程までと同様の目をして、テーブルに珈琲のカップを置いた。

 

 

「ああ。助けた? それはおかしい、貴方が勝手に助かった、それだけだ。

 

「確かに、力は貸したかもしれないさ。しかし、結果として助かったのであれば。

 

「それはやっぱり、貴方が一人で勝手に助かっただけだ。

 

「それに、十分な報酬は既にもらってあるっていうのに、これ以上、そちらから何かを頂くわけにはいかない。

 

「だから、いっそ開き直って、『Lucky♪』とでも思っていればそれで結構。

 

「今まで通りの生活に戻ってくれて良いんだよ」

 

 

少年はそう言って、テーブルの上の珈琲を手に取って飲む。

 

 

「残念だけどね、コレクタくん。命を救われておいて、ラッキーで済ませられる心はあいにく持ってないんだ」

 

 

なのはの父は暫く目線を移動させてから、思いついたようにこう言った。

 

 

「じゃあ、こういうのはどうだろう。君が私達と話をするならば、今君達が食べているシュークリームの作り方を教えてあげよう。我が店オリジナルの味だ」

 

「何・・・・・・だと・・・・・・?」

 

 

その提案を聞いた三人の中で、一番強く反応したのは士郎だった。雷でも受けたかのように驚愕を顔に表わし、目を光らせて少年に目配せをする。

 

少年はその様子を見て降参したように、息を一つ吐いた。

 

 

「な、なぁ兄さ──」

 

「はいはい。分かった。条件を飲もうじゃないか。その代わり、今日中に事を終わらせてくれよ? 後日に引き延ばされたらたまったものじゃない」

 

「よし、それならたった今から臨時休業だ」

 

「・・・・・・!?」

 

時間は十五時半、確かにのんびり終業を待っていれば話す時間はなくなりそうだが、そこまでするとは思いもよらなかったのか、少年は驚きを極端に顔に出していた。

 

 

彼等にとってこれからの話はよほど大切なものなのか、喫茶翠屋は異例の速さで店じまいが行われていった。丁度おやつ時で、これから来店するだろうお客様もいるはずだが、何が彼等をそこまでさせるのか。

 

 

「──待たせてしまったかな?」

 

「生憎、この短時間を待つと表現できるほど、せっかちな性格はしていないんだ」

 

「そうか、それはよかった。よし、じゃあ本題に入らせてもらおう」

 

 

ワクワクというか、この時が訪れるのを待っていたと言わんばかりの大人の姿を見て、少年はため息をついた。

 

もちろん、そんな状態の人が一人であるはずもなく、彼の娘。高町なのはもワクワクというか、キラキラと待ち焦がれているようにそこにいた。

 

少年の隣には志貴が座り、その真向かいになのはとその父が座る。厨房の方にいる士郎は、高町なのはの母親桃子にシュークリームを学びに行っている。

 

 

「さて、じゃあ改めてお礼を言わせてほしい。私を、そしてなのはを、助けてくれてありがとう」

 

「別に助けてないよ。アンタが、あんた等が勝手に助かっただけだ」

 

「・・・っと。そう言えばお互い自己紹介もしていなかったね。私は高町士郎。この喫茶店の店主だ」

 

「なのはなの」

 

 

少年の言葉を流すように、自己紹介を始めたなのはの父。

 

少年は何もかもを諦めたようなそんな目で、流れるこの場を見つめていた。

 

 

「・・・・・・俺は、カナタ。キサラギカナタだ」

 

「俺は志貴、遠野志貴。あっちの赤髪は士郎、衛宮士郎」

 

「キサラギ・・・?」

 

 

少年、カナタが名乗ったその苗字に聞き覚えがあるらしく、高町士郎は脳裏をよぎったその存在を、確かめるように口にした。

 

 

「この海鳴でキサラギというと、まさか」

 

「その通り。月が如くと書いてキサラギだ。この国に、そしてこの町に住んでいて知らぬ通りはないだろう。如月一門、海鳴に居を構える日本の公家。その一人が俺だ」

 

「にゃ?」

 

 

なのはには難しい話だったのか、首を傾げるだけだったが、父親である高町士郎はその存在をよく知っているらしかった。

 

 

「君が・・・如月家の人間だと?」

 

「信じられるとは思ってはいないが、これでも始めに烙印を押された立派な当主だ。

 

「何故、当主がこんな所に? ・・・確かに本来自由に出歩けるような立場ではない。

 

「しかし、これでも集めた部下が優秀な者で、その彼等を信頼しているのでね」

 

 

カナタはそう言って、珈琲を口にする。

 

 

「君が、当主・・・。だが、如月は聞いただけでも400年は続いているという。

 

「そしてその当主は、一切代替わりしていないと聞いた。故に現人神とも。

 

「信じないわけじゃあないが、本当に?」

 

 

海鳴に住む者にとって“如月”とは長い歴史を持つ名家であり、また初代当主であった若人が、幾年経とうと老いることないのを知り、勝手に神格化し始めたのが公家としての始まりだった。

 

その初代当主が立ったのは西暦で一五〇〇年頃。丁度戦乱の世の中であったという。その当時としては異例で、城を持つのではなく大きな屋敷をあっという間に建て上げた。自らの領地で権力を示された武将や、土地を狙う近くの武将達から合戦を仕掛けられた際は、周りに一切の被害を出すことなく少数の軍で討ち取り、追い払ったと言われている。

 

その後、様々な戦乱に巻き込まれるはずだったのだが、国の建築物である軍事施設等を除いて──民間人の住居や職場などは、海鳴の町は如月によって守護され、発展してきたと言っても過言ではない。

 

そのお陰か、いつの間にかその加護を求めて、世界中から様々な手が伸び、結果的に日本の地方に存在する全体的に見れば小さな公家が、世界を守護する現人神として君臨することになった。というのが現状である。

 

 

「嘘偽りのない現実だよ。・・・さて、お礼は済んだか? そろそろ帰って良いか?」

 

「まぁ、待ってくれ。私達に何か返せるものはないか?」

 

「・・・・・・特に不自由しているわけでもないのでね。してほしいことなどないんだよ」

 

「させてくれ、と言っているつもりだけど」

 

 

にらみ合うように、二人は見つめ合う。

 

 

「・・・と言ってもねぇ。本当にないんだよ。しいて言うなれば、海鳴で面倒事を起こすな。くらいだろうか」

 

「・・・それは、君に迷惑をかけるなって事かい? もちろんそんな事をする気──」

 

「ああ、それは重々承知しているさ。だけどそれくらいしかあなた方にしてもらうことはないんで。

 

「しかしまたそれと同様に、こんな事であなた方が納得するとも思ってはいない。

 

「故に、こうしよう。“貸し一つ”と」

 

 

そう言うと、カナタはどこからともなく一枚の紙を取り出した。

 

 

「それは・・・」

 

「いつか、どこかのタイミングでこの貸しが使われるときが来るかもしれない。

 

「つまり、今すぐにと焦らないでもらいたいと、そう言う意味だ。

 

「これはその契約書のようなものだ。いつか使われるときが来る。

 

「その日まで、まあ乱暴にすることはないとは思うけど、大切にとっておいてくれ」

 

 

カナタはそう言って紙と代金をテーブルの上に置くと、そのまま店の入り口へと歩いていく。

 

 

「士郎、帰るぞー」

 

「おう」

 

「──まっ」

 

「では、くれぐれもこの町で厄介ごとを起こさぬように」

 

 

カナタがそう言って店から出ると、三人の少年の姿は瞬間移動でもしたかのように、その場から消えていた。




───如月邸


「「「ただいまー」」」

「おかえり、奏音くん、士郎くん、志貴くん」

「ういー」


偶然玄関にいたのだろう、出迎えてくれた家族の一人に挨拶をして、長い廊下を抜けた後、居間に入る。

そこには何と言うか予想通り──というのも予想できるほど今に入り浸っているというのが正しい、ロリっ子組がいた。


「あ、お兄ちゃん! おかえりなさーい」

「ただいま。何してんだ?」

「アニメ見てるの」

「アニメ? またなんの・・・・・・」


そこまで聞いてテレビの画面を見る前に、ふと、視界の端で目と耳を塞いで必死で不見(見ざる)不聞(聞かざる)状態の少女を発見した。

彼女が主役のアニメのようだ。


「魔法少」

「ああ、もう分かったから言わなくて良い」

「え? そう?」

「うん」


厳密には魔法少女ではないのだが、楽しそうに見てるんだ。邪魔をするのは無粋というものだろう。

と、いうより。あんな状態の娘を放って、彼女の相棒はどこに行ったんだろうか。

百パーセントキッチンだろうけど。


キッチンに移動してみると予想通り、お菓子を頬張っているぬいぐるみを発見した。


「お、なんや奏音やないか。どないしたん?」

「いや、特に用事はねぇけど。強いて言うなら何してるんだろうな。って感じ」

「エミアーチャー君がな。お菓子の試食をして欲しいっちゅうたもんで、わいはこうしてお菓子を食うとるんよ」

「ふむ。エミヤのお菓子か。さぞ美味いんだろうな」

「当たり前やで」

「じゃあ俺も一口」

「お兄ちゃ~ん!!」

「グフッ」

「カスタムや」


腹部に強烈な一撃を加えてくれたのは、先程不見不聞状態だった少女だ。


「ど、どうした?」

「どないしたんや、さくら!」

「イリヤちゃん達が酷いのっ」

「イリヤが?」

「経緯を説明せなわからんで?」

「えっと・・・・・・」


話した内容を簡潔にまとめると、最初に見ていたアニメは“アインツベルンの娘がプリズマな衣装を着てカードを集めるもの”だったらしい。だけど、後からきたご本人がそれを見て半ば発狂。止める皆を魔力で押さえ込んだ状態で、“すてきですわ、さくらちゃん! 知世のカードキャプターさくら活躍ビデオ日記!”を再生。本人の前で。

 確かにそれは酷い気がする。でもまぁ、お互い様だろうと思うから、仲裁なんかはせずに、さくらを膝の上に載せて一緒にエミヤのお菓子を食べることにする。


「相変わらず年下には無条件でモテるんだな。マスターは」

「あ? 何の事だよエミヤ」

「衛宮士郎から聞いたぞ。小学校にも上がっていないような幼女を口説いたって」

「なんか酷い誤解を招いている!?」

「まぁ、もっとやさしい言い方だったが」

「どんなだよ! それによっちゃ今後の対応も変わってくるぞ」


気にならないといったらウソになるが、どうしてもというほどでもないので、そこで話を途切れさせることにする。


「ほえー」

「うん、美味い」


そう言えば、もうすぐロリサーヴァント組の入学式があるんだよな・・・。とりあえず、保護者の暴走を止めるためにも、俺も出動しなくては。

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