我、無限の欲望の蒐集家也   作:121.622km/h

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副題:第二次月村邸決戦


007

なのはside

 

今日は4月16日。

 

周りから見れば、友達の家でお茶会の日だけど、私にとっては待ちに待った、フェイトちゃんとの出会いの日。そして、今回は絶対に負けたくないライバルとの戦いの日でもある。

 

だからこそ私は、おうちの道場でレイジングハートを振って、やる気を高めていた。

 

 

「ねえ、レイジングハート」

 

『?』

 

「私・・・フェイトちゃんに、勝てるかな?」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 


 

You can not win.(勝てません)

 

「うぇーん」

 


 

 

You can win by any means.(絶対勝てる)

 

 

今すっごい失礼な想像をされた気がする!

 

 

「なのは、そろそろ・・・・・・、何やってんだ?」

 

「お、お兄ちゃん!? な、なんでもないよ・・・、アハハ」

 

 

慌ててレイジングハートを待機状態にして後ろ手に隠す。

 

別に隠す必要はないのかもしれないけど、もしも、私達がこれからやろうとしていることが家族にバレたら、相談しなかったことを怒られてしまうかも知れないし。

 

 

「なのは、奴らは来るのか?」

 

「奴ら? ・・・・・・ああ、田中(バカ)神宮寺(アホ)? 来るんじゃない?」

 

「そうか・・・。ちなみに中田だぞ」

 

「田中で十分なの」

 

 

『中田』なんて、高尚な名前あんな馬鹿にはもったいない。

 

Perfect Humanの名に傷がついたらどうしてくれよう。

 

以前と違って、すずかちゃんち(現地)集合なので、お兄ちゃんと一緒にバスで向かう。

 

 

「あ、なのは」

 

「若菜ちゃん。やっほー」

 

「あいつらは・・・・・・いないみたいだな」

 

 

バスに乗ってきた若菜ちゃん達が、私を見つけて手を振ってくれる。

 

陸君はバカアホコンビがバスの中にいないことに安堵して、一息つこうとしている。

 

わかるよ。

 

あのコンビがいると面倒だもんね。

 

 

「・・・・・・というか、あいつらはお茶会に来てもいいのか?」

 

「「ダメでしょ」」

 

「ダメならなんでくるんだ・・・・・・?」

 

「「さあ?」」

 

 

のんびりしたお茶会にならないことは最初から分かっているけど、それでもお茶会は静かに優雅に行うものだ。

 

そんな調子ですずかちゃんのお家に向かってバスに揺られた。

 

月村家最寄りのバス停に着いて、お家に向かって歩く。以前と同じように、お兄ちゃん達と別れてすずかちゃんやアリサちゃんの待つお部屋に招かれる。

 

軽い挨拶を交わして、開いていた椅子に座った。

 

 

「なのはってば最近付き合い悪いから、来ないかと思ったわ」

 

「来るよ!?」

 

 

今日は作戦の開始日だから、というわけではないけれどこのお茶会に来ないわけにはいかない。

 

そういえば、如月さんはどんなことをするんだろ。

 

 

「キュ《へっ。同じ手は二度食らわないよ》」

 

 

私の肩の上に乗って、足元でにゃーにゃーと鳴く猫たちを見下ろすユーノくん。

 

前回、追いかけ回されたからと言って、そこまでどや顔できるのは素直にすごいと思う。

 

でも、なるべく降りてほしいな。私の足が猫さんのせいで大変なことに・・・・・・。

 

 

「ちょ、なのは。あんた足大丈夫なの!?」

 

「たぶんね」

 

 

気持ち悪いだけだし。

 

ネコさん達はイライラしたのか、私の足を履いている靴下ごと嚙み始めた。魔術を使って回復力を底上げして、痛みは催眠で何とかごまかして普通の顔をする。

 

だから、気になるのは猫のよだれでべとべとになる私の足だけである。

 

 

「なのはちゃん!」

 

「・・・・・・え?」

 

 

すずかちゃんの慌てたような悲鳴を聞いて、その指先が示す私の足元に視線を落とせば、白い靴下が赤黒く染まっていた。

 

 

「あ・・・」

 

 

血だ。

 

ネコが負わせる怪我による出血の速度に、私の回復魔法が追い付かなかったみたいだ。

 

如月さん(チート)のおかげで病気とかは心配してないけど、心配そうな周りの目がいたい。

 

そういえば、もう血が出ていることをバレているのだから、痛みを顔に出した方が良いのかな?

 

 

「キュ!?」

 

「そら、ユーノだ!」

 

 

ユーノ君を使って、陸君が猫さん達の興味をひく。

 

以前も見た光景ではあるが、それが分かってやったことかそうじゃないかによって、陸君の心労は大きく変わっていると思う。

 

 

「キュ《なのは! ジュエルシード反応だ!》」

 

「!」

 

 

ユーノ君が陸君の手から離れ、庭に向かって走って行く。

 

 

「あ、ユーノ!」

 

「私、追いかけて来る!」

 

「いいんじゃない? 放っておけば」

 

「ダメなの! 私の監督不行届でお母さんに責任がいったら困るの!」

 

「あ・・・うん。そうね」

 

「なのはちゃん難しい言葉、知ってるんだねー」

 

 

アリサちゃんとすずかちゃんのそんな言葉を背にしながら、ユーノ君の後を追う。

 

ユーノ君が設置した認識阻害と人払いを兼ねた結界の中に入る。

 

そもそもこの結界を張っていれば、誰も来れないのでは。

 

・・・・・・うーん。それはないか。魔法の適性持ちは普通には入れるんだっけ?

 

 

「なぁぁぁぁぁううぅぅぅうぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ」

 

「久しぶりなの、大きな猫さん」

 

 

小さく呟いてユーノ君を見る、お互い一つ頷いて戦闘態勢になった。

 

 

「なのは!」

 

「陸君?」

 

「悪い! 若菜は抜けられなかった」

 

「・・・・・・いいよ。そんなに難しい相手じゃないと思うし」

 

 

ネコはね。

 

 

「・・・・・・猫、なのか?」

 

「おそらく、あの猫の「大きくなりたい」っていう願いを"ジュエルシード"が汲み上げて、正しく叶えた結果だと思う・・・・・・」

 

「怪獣みたいに大きくなったなぁ」

 

「目立った被害もない内に封印してしまおう」

 

「はーい」

 

 

レイジングハートを構えて、バインドを発動しようとした、その時である。

 

 

『Thunder Barricade.』

 

 

私たちと猫の間に、金色の槍が刺さり、電撃を放つ壁が形成されてしまった。

 

分断か。

 

これなら確かに私達の戦闘と、彼らの戦いは別のものになる。

 

 

「何者だ!」

 

「──あなた達に名乗る名前なんてない。ジュエルシードはいただいて行く」

 

「なっ・・・・・・」

 

「ジュエルシードは渡さない! それは、ユーノ君のものだから!」

 

「なるほど、あなた達もいくつか持っている、と。では、それももらう」

 

「やれるものなら、やってみるの!」

 

 

防御魔法を張った状態で、バリケードを突破する。

 

強引な突破法だから、少し痺れるけど戦闘に支障は無い。

 

 

「お話、聞かせてもらうの!」

 

「話すことなど何も無い!」

 

 

私たちの全開戦闘が始まった。

 

sideout.

 

 

 

陸side

 

 

「くっ! どうするユーノ!」

 

 

なのはがフェイトに突っ込んでいって、そこに俺達を仕切るように展開された電撃の壁。

 

 

「無策じゃどうしようもない。とにかくあの壁を何とかしてなのはに加勢を!」

 

「・・・・・・そう、だな」

 

 

ユーノの言う通り。

 

がむしゃらに突っ走るのは主人公様(なのは)に任せて、しっかりとした土台を作ってから挑むべきだよな。

 

 

「よし。じゃああの壁をどうするかを考えよう」

 

「あの魔道士の魔力切れを待てば・・・・・・」

 

「ただ待つだけって言うのも、辛いものがあるけどね」

 

 

確かに。

 

頑張っているなのはを前に、何もしないと言うのは歯がゆいものがある。

 

 

「どけ! 雑種(モブ)ども! 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!!」

 

「中田?!」

 

 

中田が放った剣群は、見事に壁を破壊して地面に突き立った。

 

 

「ハッ。使えぬ雑種(モブ)は下がっていろ!」

 

「誰が!」

 

 

と言っても、何もできていなかったのは確かなので口を噤む。

 

中田がフェイトに狙いを定めて王の財宝を開く、それを邪魔するように神宮寺が飛び込んで来た。

 

 

「邪魔をするな、贋作者!」

 

「君の撃ち方では、なのはにもあたりかねん」

 

「当たるわけがない!」

 

「アハハ・・・。なんて協調性のない・・・」

 

 

一応同じクラスの仲間だと言えるはずなのに、この仲の悪さはなんだ!?

 

流れ弾がなのはやフェイトに当たったらどうするつもりだ!

 

 

「──全く、これなら私達、来る必要なかったんじゃない?」

 

「ああ。勝手に数が減ってくれる敵なんて、あたしは初めて会ったよ」

 

「なっ! 増えた!?」

 

「敵の増援か!?」

 

 

アルフと、もう一人。

 

あれは・・・・・・転生者か!

 

 

「・・・・・・私らが来たことに気づきもしないなんてね。奴さんが馬鹿で助かったよ」

 

 

アルフが仲間割れとも取れる争いをしていた中田と神宮寺に、フォトンランサーを打ち込んだ。

 

 

「うおっ」

 

「くっ。新手か」

 

「見知らぬ我の嫁が、まだいたのか」

 

「どうだ中田、ここは一時あの敵を倒すと言うのは」

 

「ハッ。構わんぞ。この我の力を持って奴をわが妻としてやろう」

 

 

ギリギリで躱した中田と神宮寺は、いがみ合うのをやめて、一時休戦にするようだった。

 

 

「私あんな金ピカの嫁になったつもりないんだけど」

 

「最低な男のようだね」

 

「結託して敵対・・・・・・。面倒なことになったね」

 

「構やしないさ。まとめてつぶせばいい」

 

「あの子が白い子を倒すまでの時間稼ぎだしね」

 

 

っ!

 

そうだ!

 

なのははフェイトに勝てるような状態じゃない。早く加勢しなくちゃあいけないんだ。

 

 

「ユーノ、いけるか?」

 

「当たり前。これでも君たちより魔法歴は長いんだ」

 

 

デバイスなしで魔法を使う準備を整えたユーノを横目に、俺もデバイスを起動する。

 

 

「いくぞ、ユーノ」

 

「アシストしかできないけど任せて!」

 

 

さぁ、戦闘開始だ。

 

 

sideout.

 

 

 

───戦闘経験者とそうでないものの違いははっきりしている。

 

しかし、その差を補ってなお優位に立つことができるのが、転生特典というものである。

 

基本的に創作物のお気に入りが選ばれるそれは、無双することを夢見たものが多い。

 

つまり、強いのである。

 

単純に。

 

たとえそれが、照準の定まっていない砲撃、もしくは中身の伴わない剣製だったとしてもだ。

 

 

「くっ。無茶苦茶な戦い方のくせに強いなんて卑怯だよ」

 

「狙いをつける必要がないなんて思われてるのかしら?」

 

「ハッ。ムカつくね。腹立つくらい余裕じゃないか」

 

 

恨みごとのようにそう呟くアルフ。

 

しかし、現状が変わることはなく、彼女たちは劣勢のままであった。

 

 

「とにかく、あの無限砲台共を何とかしなくちゃ」

 

「それができたら苦労しないよ」

 

 

そんな彼女らの神経を逆撫でするように、劣化ギルガメッシュ(中田太一)が口を開く。

 

 

「もういいだろう。我の嫁になれば、殺しはせぬ。そら、大人しく俺に抱かれるがよい」

 

「・・・・・・あいつ、殺したい」

 

「駄目よ、現地民はなるべく傷つけるな。そう言われてるでしょ」

 

「・・・チッ」

 

 

かといって、殺す気で向かわない限りあの弾幕を躱して攻撃することはできないだろう。

 

どうしようもないかと、彼女たちが諦めかけたその時だった。

 

 

「『ランダマイザ』」

 

 

激しい戦闘音で聞き逃しそうになるほど小さな声で、しかしその場に響く声がそう言った。

 

 

(『ランダマイザ』・・・? ッ! それって!)

 

 

引きこもりではないにしろ、それなりに多種のサブカルチャーに触れていた陸は、その呪文が一体何を起こすのか瞬時に気付いた。

 

しかし、気づいた時には遅かった。

 

周囲を魔法が囲み、陸を含めた男子陣の攻撃・防御力、命中・回避力が大きく下がることになる。そのせいで、目に見えてわかるようにアーチャー二人(中田と神宮寺)の攻撃がしょぼくなってしまった。

 

 

「何者だ! この我にこのような卑怯な手を!」

 

「チッ。アーチャーとしては致命的だな」

 

 

声の主は答えない。

 

返事の代わりに飛んできたのは、またも呪文だった。

 

 

「『メギドラオン』」

 

「ッ! まずい!」

 

 

陸がそう叫んだ瞬間。

 

青白い半球型の爆発が起き、すべてを吹き飛ばした。

 

その様子を範囲外から見ていた少女二人は呆気にとられながらこう思ったそうだ。

 

 

((流石如月さん、助っ人がやることも普通じゃない))

 

 

爆発が収まった後、危うく巻き込まれかけたアルフたちは辺りを見回して犯人を捜す。

 

知識があり、とっさに反応できた転生者の常識人、陸も辺りを見渡して呪文を唱えた術者を探す。

 

 

「どこだ! どこにいる」

 

「私がここにいるのが見えないのか」

 

 

それでもまあ、構わないがな。

 

そんなことを言いながら、姿を見せたのは銀髪碧眼の少女だった。

 

攻撃力の高い範囲攻撃を放ったことで、その場の全員を敵に回した可能性があるにもかかわらず、堂々たる態度で少女はそこに立っていた。

 

その歳は中学生かそこらに見え、ゴシック調のドレスを身に着けている。

 

魔導師が集うこの場所でも、なお異常な少女の姿の中でも一際目立つのが、彼女がその目元を隠すようにつけている仮面の存在だ。

 

 

「なんなんだ、お前は」

 

「私は"(ザ・ミスト)"。主からの命令で、貴方達を倒すように言われていてな」

 

「チッ。また邪魔が増えたのか・・・・・・」

 

「モテモテだな、我は」

 

「貴様目当てなわけがなかろう」

 

「なんだと?!」

 

 

いつも通り喧嘩を始めた二人を一瞥すると、少女は興味なさそうにアルフたちに目を向ける。

 

 

「『貴方達には手を出すな』と言われてる。共闘もできるが、どうする?」

 

「あんな大爆発を目の前で起こしておいて、信用されるとでも?」

 

「そうか」

 

 

少女はそう言うと、クルリと特異者達に向き直る。

 

 

「は? ちょっと、アンタあんな化け物相手に一人でやる気? ・・・まぁいいわ。潰れるところ、見ていてあげる」

 

「ああ、見ていろ。最も、潰れるのは向こうだがな」

 

 

少女はそう言って、陸たちに目を向ける。

 

喋っている間に、中田と神宮寺も相手を少女に絞っている。

 

それだというのに、彼女は臆することなく、あざ笑うかのように口の端を釣り上げて。

 

 

「さぁ、Show timeだ」

 

 

目元を覆っていた仮面が青い焔で燃え上がった。

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