皆さま、ご意見ありがとうございました。
まだ、迷うところがありますが……
外伝的な要素で、別タイトルで出そうかと……MAXとのリンクは一応つけておきますが……あまりにも相応しくないとの御意見を頂ければ、保留又は取り消しはしようと思います。
今回の内容は、深雪編ではありませんのでご了承ください。
雫ちゃんと要ちゃんの話です。
意外とほんわかで、内容は無い感じです。
2096年度九校戦を3週間後に控えた7月の中旬頃。
「要、次の日曜日私について来て」
風紀委員の仕事を終え、風紀委員室に戻って来た要に雫は声を掛ける。
「なぜですか?」
要は表情一つ変えずに聞き返す。
「家の別荘で九校戦の練習、一緒にしよう」
「私の出場はシールド・ダウン新人戦ペアですが、北山先輩はアイス・ピラーズ・ブレイクのペアでは?そもそもあのような特殊な競技が個人宅で出来るとは思えませんが?」
要は2096年度九校戦のシールド・ダウン新人戦に抜擢された。実力的に本戦のソロで出るように言われたが、それだけは頑なに断ったのだ。
雫は今年もアイス・ピラーズ・ブレイクのペアで出場予定。ペアの相手は風紀委員長で3年の千代田花音だ。昨年の本戦の優勝者でもある。
「北山家の別荘の訓練所に全部ある。改装して学校と同じ事が出来る。……それに去年は横島さんが手伝ってくれた」
「……わかりました」
要は横島が手伝ったという言葉を聞き、ピクッと反応し了承したのだった。
その週の日曜日
「……」
「……北山さんの家の敷地ってどんだけあるんだろう?」
「ひ、広いですね。エリカちゃんの家よりも広いなんて」
私服姿の要は、幹比古と美月と北山家の別荘へと足を運んでいた。
幹比古も雫に誘われ、丁度居合わせた美月もついて行くことに。
幹比古と美月は、その北山家の膨大な敷地と設備を茫然と見渡していた。
見渡す限りが全部北山家の敷地なのだ。
「皆、こっち」
「ここから練習場までカートに乗るの」
雫とほのかは運動服姿で3人を案内する。
ほのかも本戦でミラージ・バットとスティープルチェース・クロスカントリー。
雫はアイス・ピラーズ・ブレイクのペアと、スティープルチェース・クロスカントリー。
幹比古もモノリス・コードとスティープルチェース・クロスカントリーに出場する。
要は新人戦でシールド・ダウンのペアに出場。ペア相手は桜井水波。深雪の従妹となっているが、実際は四葉本家から送られた深雪のガーディアンだ。
去年と出場者枠の規定が代わり、去年は2種目に出場できたが、今年は本戦出場者は1種目+スティープルチェース・クロスカントリーとなっている。
新人戦出場者は1種目のみだ。
今年から採用となったスティープルチェース・クロスカントリーとは、要するに大規模な障害物競争だ。
4㎞四方の広大な林の中に魔法や物理的な罠を仕掛け、そこをゴール目掛けて走破する競技である。多人数が一気に参加することが出来る。林の木々より上に飛び越えると失格になる。
新人戦は無く、本戦のみの試合だが、本戦出場者全員が参加できる競技だ。
軍事訓練の意味合いが極めて高い競技である。
「要、アイス・ピラーズ・ブレイクの相手して」
動きやすい服装に着替えて来た要に、雫は早速練習の相手を頼んだ。
「北山先輩、私の今の魔法適性はアイス・ピラーズ・ブレイクに参加できるほどの技量はありません」
「別に正式な試合じゃないから、氷室の術式を使ったらいい」
「嫌です」
要は真っ向から拒否する。
要のポリシーとして、魔法科学校では氷室の術式を使わないようにしていたのだ。
横島がそうしたように……
雫もその事を十分承知している。
「今は学校の外……それに横島さんも陰陽術見せてくれて手伝ってくれた」
「……わかりました」
要はしぶしぶと言った感じで了承する。
どうやら横島がやっていたという事実に弱いらしい。
雫もそれを知っててこういう言い回しをしているのだ。
アイス・ピラーズ・ブレイク
対戦形式で、高台の固定された位置から、相手の陣地にある12本の巨大な氷柱を魔法で先に崩した方が勝ちという競技だ。
そして、要と雫はそれぞれが高台に登る。
幹比古と美月とほのかは、全体が見渡せる中央高台にある審判席に立って観戦。
「2人ともいい?……はじめ!」
ほのかが試合開始の合図をする。
雫は振動系の魔法を得意としている。
雫の振動系魔法共振破壊で広範囲に地面ごと相手盤上の氷柱を振動破壊一気に破壊を試みる。
一方、要は数枚の札を取り出し、高台の床に落とし、何やら言霊を発すると床に術式陣が展開し、サッカーボール大の岩が術式陣から次々を飛び出す。
要は飛び出した岩を次々と殴りつけ、相手の陣地の氷柱に飛ばし破壊していく。開始10秒もかからずに、12本の柱はすべて破壊された。
試合は要が勝利する。
雫の共振振動による破壊にくらべ、圧倒的速さだった。
ほのかはその状況を目を見開き、口をポカンと空けて、見ている事しかできない。
幹比古は冷や汗をかきながら、口をひくひくさせていた。
美月は目をキラキラと輝かせる。
対戦相手の雫は、無表情ならがらどこか悔しそうだ。
「お、終わり、そ、そこまで……」
ほのかは、はっと意識を戻し、試合が終わった事に気が付き、終了の合図をする。
「吉田君……その氷室さんは何をやったの?私には目にも止まらない速さで、岩を殴り飛ばした様に見えたのだけど……そもそも今のは魔法なの?」
ほのかは恐る恐ると幹比古に聞く。
「……あの飛ばした岩は物質召喚術式の類だね。古式魔法の一種だよ。あんなに見事なのは初めて見たけどね」
「……じゃなくて……その…岩を殴り飛ばしてたよね。それで氷柱が粉々に……魔法式も展開してないし、そもそもCADを使ってないわ……」
「あれ?あはっあははは……し、身体強化系魔法の一種じゃないかな、要さんのアレって横島が言ってたけど、BS魔法らしいよ」
何故か幹比古が冷や汗をかいたまま、弁明する。
そう。弁明した幹比古自身も、ただ単に殴ったように見えている。
幹比古は陰陽術者がサイオン(霊気)を直接操って、身体強化を行えることを知っている。
実際に幹比古も一時期、横島に教わっていたのだ。結局使えるレベルで身に着けたのは美月だけだったのだが……
しかし、要の場合はそれとも異なるのだ。
そう……本当に殴っただけなのだ。物理的に……
(前世の顔面凶器姫の力を受け継いでいるためとだけ言っておこう)
この競技の規定は魔法で氷柱を破壊するとある。召喚した岩は古式魔法由来でOKだが、飛ばし方が問題になる可能性がある。ただ単に殴っただけだからだ。
そもそも、氷柱が魔法以外の方法で、人が岩を飛ばして氷柱を壊すなどという荒業など、誰も想定していない。
「………」
ほのかは……何とも言えない表情をしていた。
対戦した本人たちは……
「要のバカ力が使えないと思ってたのに……あんな方法で……要、もう一回勝負」
「嫌です」
「横島さん、去年この競技の練習に付き合ってくれた。横島さんも練習で炎を出して全部一瞬で溶かした」
「……わかりました。負けて調子を崩しても私は知りません」
要は少々ムッとした表情になる。
次の勝負では、雫は去年の九校戦決勝戦で深雪に使われ、敗れさった高難易度魔法を使用する。氷結と炎獄を同時に表すことが出来る氷炎地獄(インフェルノ)を発動させたのだ。
これにより、自陣は氷結防御強化しつつ、敵陣を熱地獄と化させ氷柱を溶かすのだ。
雫は深雪に敗れた悔しさをバネに、インフェルノを努力で会得していたのだった。
対する要は札を飛ばし、自陣に強力な結界を張り、インフェルノによって襲い来る熱を遮断した。
そして、無詠唱で氷室お得意の拘束術式を展開。雫の陣に複数術式が至る空間に現れ、柴色の鎖が無数に飛び出し、氷柱を縛り上げるように締め付け破壊する。
「………吉田君……氷室さんってもしかして、物凄く強いの?」
「……少なくとも僕よりもずっと強いよ。絶対に戦いたくない。命がいくつあっても足りない」
何故か震える幹比古。
「まさか……深雪よりも?」
「光井さん……横島も氷室。要さんは氷室次期当主なんだ。横浜の時の横島見たよね……要さんが弱いとかありえないし……それに去年、あのフェイ兄弟を素手で倒してるんだよ」
「………」
インフェルノを防がれ窮地に立つ当の雫は……
「要はこうでないと……やっぱり私のライバル」
何時もの無表情ではなく、うっすら笑っていた。
この後も、結局数本練習試合を行い、雫の全敗に終わる。
練習が終わった後、雫は要に宣言する。
「横島さんが帰ってくるまでに追いついて、必ず要に勝つ。……横島さんも渡さない」
「よ、横島くんを渡すも渡さないも私には関係ないわ。……でもあなたには負けないわ」
要は後輩としての口調ではなく、以前のツンとした口調に戻していた。
美月がキラキラと目を輝かせっぱなしだったのは言うまでもない。
次は深雪編、連続投稿です。