プロローグ
深雪編:プロローグ
今は5月末。
2年に進級し、はや2ヶ月が経とうとしてます。
新学期が始まり、新入生を迎え、生徒会運営も順調に進み。
今は穏やかな日々を過ごしております。
でも、何かが物足りない。胸のあたりがもやもやとするのです。
昨年、魔法大学第一高校に入学してからの一年はいろんなことがあり、激動のような一年間でした。
大変な思いもしましたが、それでも楽しい日々だったと今は思います。
彼が居たから……
横島忠夫。
私と同学年でお兄様の同級生。
横島さんはお兄様の一番と言っていいほどの親友です。
他人に興味がなかった兄がこれほど入れ込む人物は始めてでした。
学校一の問題児にして、学校一の嫌われ者。ついたあだ名は、『痴漢、変態、ナンパの横島』
でも、それは彼の表層のほんの一部分。
普段は皆を困らせたり、笑わせたりと、おちゃらけた感じなのですが、なぜか周囲の人を和やかにし、明るく、元気にできてしまう人。
誰よりも仲間思いで、困った人を見かければ、すぐに助けに入る優しい人。
そして、今、日本で最も注目される魔法師。
その実態は、あの救済の女神氷室絹を輩出した氷室家の陰陽師。
救済の女神の後継者と目されている人物です。
規格外の身体能力に古来の魔法や術を操り、究極の戦略級防御魔法『救済の女神』を使用できる唯一の人物。
私は最初、彼の事はただ単に、兄の友人であって、知人程度の認識でしかありませんでした。
しかし、彼と接触するに連れ、彼の優しさ、強さ……そして、脆さに触れ、いつしか私も気の置けない友人となってました。
今、彼が居ない日常は………何か物足りなさを感じます。
彼は……横島さんは、新学期を迎える前に、私達に突然の別れを告げました。
春休みのあの日、いつもの様に横島さんの自宅マンションを訪れ、私は昼食の用意を七草先輩と共に行っておりました。
兄は何時ものように、横島さんのプライベートルームのパソコンを触り、何かの作業を行い。
エリカ、美月、吉田くんと西城くんはリビングを自室のように寛ぎ。七草先輩の双子の妹、香澄さん泉美さんはアリスちゃんと書斎で遊び、雫とほのかはアルバム作りに勤しんでいました。
そして、横島さんは……
「すまん。俺……一年間、ここを離れることになった。皆と進学したかった。……陰陽師としてどうしても外せない事案ができた。皆には詳しくは言えない。しかしそれほど危険があるわけでもない。必ず一年後にはここに戻ってくる。だから…………すまん」
何時もおちゃらけている横島さんが真顔で話しながらも辛そうな顔をしてました。
最初は皆、横島さんが話している意味をよく理解できずに………しばらく沈黙の時が流れ…………
沈黙の後は、皆、横島さんに詰問や抗議の声を上げ………でも、横島さんはひたすら謝るだけでした。
楽しかったあの日々は……突然打ち切られたのです。
深雪視点の後日談です。