とりあえず、真夜編第2弾です。
今回はつなぎ要素の高い回です。
2095年4月中旬
真夜は次期四葉家当主候補筆頭である達也の妹で、同じ第一高校に通う司波深雪から、映像通信による近状報告を受ける。
真夜はそれと無しに深雪に学校の様子を聞き、横島の情報を得ようとしたのだが、意外な事にあの唐変木の達也の友人の一人になっていたのだ。
達也と共に風紀委員となっていた事は、学校関係者からの情報で得ていたが、達也の友人とは予想外もいいところであった。
真夜は横島とはどんな人物なのかと聞くと、深雪の横島象はユニークな人だと一言で、兄の友人の一人というだけで、特に興味をもっていない様であった。
2095年4月末日
第一高校が反魔法師政治団体ブランシュの下部組織エガリテに襲撃される事件が起こった。
その際、達也の提案で、達也、深雪を含む数人でブランシュ日本支部を壊滅させている。
その際の深雪の近状報告では、横島が氷室家出身である事と、治癒魔法の使い手であることを多少の驚きと共に話していた。
真夜にとってその話は目新しいものではなかった。氷室家出身でることはあらかじめ知っていたからだ。また、氷室家の家人ならば治癒魔法の使い手である可能性は高いのだ。
横島自身はエガリテ襲撃にも、ブランシュ壊滅にも、手柄を立てていない。深雪の報告では一度も戦っている姿を見ていない上に、エガリテ襲撃の際は逃げ回っていたとのことだ。
真夜は、あの記憶の彼ならば、あの程度の組織は一瞬でどうにか出来たはずだと……やはり、この横島忠夫という少年と記憶の彼は別人……唯の他人の空似ではないかとこの時は落胆した。
2095年8月中旬
全国魔法科高校親善競技大会、通称九校戦が開催された。
真夜もこの大会をライブ中継で観戦していた。
深雪の仕上がりを確認し、他家の子息子女の状態や魔法師の卵を見定めるためだ。
この時、真夜の興味は既に横島から逸れていた。
冷静に考えれば、考える程、あの記憶は唯の妄想に思える。
さらに、記憶の彼と横島を結びつける物は、顔がそっくりなだけで、得た情報の経歴は記憶の彼と横島を別人たらしめていた。
通常、九校戦では二科生は出場しないため、達也が出ることはないと踏んでいたのが……予想外にも、達也が出場することになった。
十師族一条家の長男との直接対決は達也の勝利となるが、真夜にとって達也が四葉家の人間だと現段階で知られるわけにはいかないため、素直に喜んでも居られない状況であった。
さらに、九校戦を妨害していた組織無頭竜日本支部を壊滅させるため、達也を借り受けたいと、独立魔法大隊からの通達があり許可を出す。
結果、なにやら横やりが入ったとかで、作戦は失敗したのだが、当初の目的である無頭竜日本支部は壊滅に至った。
四葉の現地諜報員からの報告でも、要領の得ないものであった。
実際には横島がいつの間にか介入し、単独で解決していたのだ。
この時点で真夜はこの事件に横島が絡んでいた事は知らずにいた。
そして、九校戦最終日
九校戦のメイン競技ともいえるモノリス・コードに急遽、補欠の横島が第一高校の選手として登場したのだ。
そして……
横島の戦いぶりに思わず真夜は映像を食い入るように見てしまっていた。
そのトリッキーな戦い方。一見ばからしいように見える戦いっぷり。どう考えても効率が悪そうな非常識な動き。それなのに確実に勝利を重ねていく姿。まさしくあの時の記憶の彼が見せた英雄となる前の戦い方を彷彿させるものだった。
「………あの走り方であのスピード…こんなことを平然とできる人……同じ顔、同じしぐさ…やはり、彼だ!横島忠夫は彼に違いないわ!!」
真夜は珍しく興奮していた。
普通に考えれば33年前に見たあの記憶の彼がなぜ今ここに現れたのか?そもそもあの記憶にあった物語はあり得ない事ばかりなのだが……今の真夜には目の前の横島と記憶の彼が重なりあい、理屈ではなく、真夜の魂で同一人物だと確信に似た何かを感じ、心の高鳴りを抑えることができなかったのだ。
「わたくしを……わたくしをようやく助けにきてくれた……」
真夜は一人自室で喜びの余韻に浸っていく……何十年ぶりかに流した涙の雫が頬をかすめる。
2095年9月初旬
真夜は、横島本人を調べるために、諜報員を八王子に派遣するが、直接調査を避けることを命じている。彼のとあまりかかわりのない人間から、動向をそれとなしに聞くようなまどろっこしいやり方だ。記憶の中の彼であれば、直接尾行などしようならば、どんな離れた場所からでもバレてしまうからだ。
2095年10月初旬
横島が大亜連合諜報員フェイ兄弟を捕縛。そして、ルゥ・ガンフゥを撃破したとの報告が次々と上がってくる。
報告を聞く真夜にとって、記憶の中の彼が横島ならば当然の結果だと思いながらも笑みは自然とこぼれる。
2095年10月下旬
遂に、横島忠夫と会うチャンスが巡ってきた。
十師族の面々は氷室家の横島に興味を持ち、見定めるために、横浜で開催される全国高校生魔法学論文コンペティション大会の裏側で、京都会場警備を理由に呼びつけたのだ。
前日に京都入りした横島に直接会うために行動に移したのだが、先に九島烈、そして七草弘一に出し抜かれてしまった。
真夜はその後も様子を伺い、遂に横島の宿泊するホテルの前で声を掛けるチャンスを手にする。
しかし、真夜は横島の顔を見ただけで、声を掛けずにすれ違う。
真夜は珍しく緊張していた事もあったのだが……
顔を見ただけで胸が締め付けられる思いがし、声を掛ける事ができなかったのだ。
すれ違った後も、胸がドキドキし、押さえつけるのがやっとだ。
「……フフフフッ、見つけたわ」
真夜はすれ違い際に見た横島は記憶の彼だと確信する。
翌、全国高校生魔法学論文コンペティション当日、魔法協会京都支部十師族専用会議室では十師族の長が一堂に会し、今年の魔法科高校の気になる生徒の品評会を行っていた。
ただ、すでに横島一人に話題が集中していた。
魔法協会とは距離を置いている氷室家の家人とあって横島自身の情報は全員に浸透していない上に、定かではない情報が横行し、正確な情報は得られないでいた。
もっぱら、横島の正確な情報をかどうやって得るかが話合われる。
そこで真夜は、とんでもない提案をする。
真夜自身が囮となり、横島にナンパされに行き、直接話をするという……
確かにこの方法であれば、十師族が直接横島に介入したようには見えないが、あまりにも無謀すぎる。真夜はこの時すでに45歳、かなりの若作りで30歳そこそこに見えるが……対する横島は16歳だ。
失敗臭漂うこの提案に、十師族の長は皆諭すように止めるが、真夜はガンとして聞かない。
真夜には確信に近いものがあった。記憶の彼ならば、必ず声を掛けてくれると……
真夜自身も、自分の容姿に自信があるためのこの提案だったのだ。
十師族の長たちはしぶしぶ、六塚家当主当時27歳の六塚温子が一緒に同行するという条件で同意にすることにした。
そして、京都会場である京都国際会議場に六塚温子と共に警備中の横島にナンパされに行く真夜。
会議場通路で警備中の横島の前に、現れた二人はわざとらしく、横島の周りをうろつきアピールをしだす。
真夜は色白の肌に真っ赤なドレスをゴージャスに着こなし、ウェーブのかかった長い髪をふわふわとたなびかせ、妖艶な笑みを湛えている妙齢の美女。温子はカーキ色のブランドスーツで身を固め、ショートカットのキャリアウーマン風のピシッとした美人なのだが……この会場のゲストとしては著しく場違いな雰囲気を醸し出している。
横島はジッと二人を見ているが、声をかけてくる気配がない。
(なにか間違っているのかしら?アピールがたりないとか?)
真夜はナンパのされ方が間違っているのではないかと見当ちがいな、かなりずれた事を考えていた。
その横で六塚温子は羞恥心から顔を真っ赤にしている。
この状況をモニターで見ていた十師族の面々は……この無謀な挑戦に挑んだ二人を憐れみの目で見、失敗を悟っていた。
そんな矢先、10分ほど羞恥にさらされた二人に、遂に横島が動いたのだ。
33年前の記憶の彼と同じ声と口調で……
「ボク横島!!綺麗なおねえさん、カッコイイおねえさん!!ここで何をしているんですか!?よかったらボクとあのレストランでお茶しませんか!!」
真夜達にあの軽い感じで下手なナンパをしだしたのだ。
真夜は、はやる心を何とか抑え、いつもの口調で微笑みながらゆっくりと答えた。
「まあ、わたくしたちも丁度、どこかに休憩をしたいと思っていましたの」
これが四葉真夜と横島忠夫が交わした最初の会話だった。
今の所、真夜編を投稿しております。
かなり本編とは違った感じなので、本編に入れることができなかった真夜ストーリーが漸く本編と重なり合います。