夏季休暇も終わり、新学期が始まりました。
私は横島さんのあの物語の続きを見ることが出来ないでいました。
あの物語の世界は、横島さんやゴーストスイーパーの方々のお陰で、魔神襲来という未曾有の危機から救われました。
しかし、最大の功労者である横島さんだけは悲しい結末が待っていたのです。
そんな時、リーナから何時ものように連絡があり、他愛も無い会話を楽しんでいました。
「深雪、ちょっと元気ないみたいだけど」
「そんな事はないわ」
「そう?達也がまた何か仕出かしたんじゃないの?」
「お兄様?確かにお兄様については気になる事はあるわ……でも」
確かにお兄様の事も気になるわ。私に黙って藤林さんと連絡や会っていらっしゃったんですから。
それよりも……
「やっぱり、でも何?」
「……変な事を聞くようだけど。リーナは横島さんが好きなのよね」
私は心のもやもやを抑えることが出来ずに、ついリーナにこんな事を聞いてしまった。
「当然よ。んん?……ダメよ!いくら親友のあなたでも!タダオだけはダメよ!」
リーナは自信たっぷりに返事をするのだけど、何かに気が付いて慌てて私に映像通信越しに迫る。
「違うわ。そう言うのじゃないの。ちょっと気になる事があって……」
「じゃあ何?」
「その……横島さんって、過去に恋人と死別されてたりするのか……」
思わず口に出たのはこんな事……あれは物語の中の横島さんだとわかってるのに……現実と物語が一緒であるはずが無いのに……
「!!……な、何で深雪がそれを知ってるの!?誰から聞いたの?まさか達也!?」
「え?……本当に?」
思わず聞いた質問に、リーナは動揺しながら私に聞き返す。
……え?本当にあった話?……あれは物語の中の話のはず。
しかも、お兄様も知ってる?
「え?どういう事?知ってたんじゃ……?」
「なんとなくそんな感じが……リーナ、詳しく教えてくれないかしら」
「……本当はマリアに口止めされてたんだけど……この事を知ってるのは、多分達也と真由美と私だけ」
「マリアさんが……」
確かに横島さんは、魔女マリアと天才錬金術師ドクター・カオスと昵懇の仲だと……あまり気にしなかったのだけど、第一高校に入る前の横島さんの事を全然知らないわ。
「深雪だったら大丈夫かな……マリアも詳しくは語ってくれなかったけど……タダオのあの明るい振舞は……その……恋人を亡くしたショックを隠すために、無意識に行ってる事らしいの。タダオは第一高校に入る前に……大切な人を2人次々と亡くしたってマリアが言ってたわ。それを自分のせいだとずっと責め続けてるって……」
2人も?物語ではルシオラさんだけ……現実とはやはり異なるのね……それもそうよね。何せルシオラさんは魔族、別次元の高次元生命体ですもの、存在自体現実的にあり得ないわ。
でも現実の横島さんの方はもっと辛い事に……普段の横島さんからは全く想像できないわ。
あんなに明るい人なのに……
お兄様は……実の妹の私にさえ横島さんの事をあまり話してくれないけど……これが男同士の友情というのでしょうね。
私には入り込めない程の仲。
お兄様が初めて本音をぶつけられる友人……横島さん。
お兄様と横島さんが楽し気に会話されてる姿を見ると、心がもやもやと霧がかかったようになる。
多分この感情が嫉妬という感情。
「深雪?聞いてる?」
「ごめんなさいリーナ。ちょっとあまりの事にぼーっとしてしまって」
「でも、3月頃のタダオは吹っ切れた感じがしてるから、大丈夫だと思うわ。マリアも私のお陰だって言ってたし」
リーナはいつものように自信たっぷりに胸を張っていた。
私の胸のつかえは多少なりとも解消された様に思う。
あれは物語で現実とは異なります。
現実の横島さんも……過去に色々とあった様で、それを乗り越えてきたのね。
お兄様と一緒。
お兄様も過去は辛い事ばかりでしたけど、今はどこか楽しそう。
これで私はまた、あの物語の続きが見ることが出来る。
この後は……
例の展開です。
深雪編も徐々にクライマックスヘ