深雪編もいよいよ終盤に突入です。
10月初旬の週末。
十師族九島家の本拠地のある奈良へ、お兄様と水波ちゃんと向かいました。
日本で暗躍を続ける周公瑾の足取りを掴むために、九島家と取引を行うためです。
生駒山の麓にある九島家本家で現当主九島真言様の父親である九島烈閣下に面会し、共闘の約束を取り付ける事が出来ました。
九島家としても、周公瑾の片棒を担いだ形に取られてもおかしくない行動をパラサイトドール事件の際取っておりましたので、その件の負い目もあり、あっさりと承諾してくださいました。
その際、現当主の三男で私たちの一つ下の九島光宣さんに会いました。
優し気な笑顔が印象的な方でした。水波ちゃんが見惚れていたのはお兄様には内緒です。
魔法力は私に匹敵するとお兄様は言っておられましたが、生まれつき病弱で自室で過ごしている事が多いのだとか。
近くを観光案内してくださったのですが、何故か伝統派古式魔法師の方々に襲われる事に……周公瑾と伝統派が組んでいるという情報はありましたが、こうも早く相手から接触してくるとは予想外でした。
既に私達が追ってであることを悟られた可能性が高いようです。
むろん、お兄様が一緒でしたので、危なげなく撃退しましたが。
ただ、伝統派古式魔法師の方々がもし、氷室家や六道家の当主や一族の方レベルの使い手であったのなら、こうも簡単に撃退できなかったでしょう。
こちらがやられていたかもしれません。
お兄様は、彼ら伝統派は時代に取り残された過去の栄光に縛られた魔法師の成れの果てだと言っておられました。
私もそう感じます。古式魔法師も現代魔法と折り合いをつけ吉田君の家のように、発展していった家もあります。
また、古式魔法を高レベルで脈々と受け継ぎ、発展させ、確固たる地位を築いた氷室家や六道家などもあります。
この後も、お兄様は奈良や京都に週末に何度も行く事になりました。
その間に、気が進まなかった横島さんのお話の中編の映像を見てしまいました。
私は怒りで我を忘れそうになりました。
私と一緒に留守番をしていた水波ちゃんが慌てて、私の部屋に尋ねてきました。
どうやら、怒りと共に魔法が漏れ、家中を凍らせてしまったのです。
お兄様が出かけている間で良かったです。
この事をお兄様に知られたら、きっとこの映像の事まで知られてしまいます。
何故私が横島さんの映像を見て、怒りで我を忘れそうになったかというと……
行方知れずの横島さんを誘き出すために、とある組織がおキヌちゃんを攫って人質に取ったのです。
その組織は霊能者の非合法な人体実験や妖怪妖魔の売買まで手を染めていた最低最悪の人達でした。
そのバックには大悪魔も存在し、悪魔を使って人や妖怪を攫っていたのです。
目的は横島さんの人体実験、文珠の生成、そして死でした。
横島さんは、おキヌちゃんのピンチに組織のアジトへと現れたのですが……
既におキヌちゃんは辛うじて息をしている状態でした。
組織の人間達は人体実験だけでなく、人としての尊厳も奪い……変わり果てた姿と……
それでも横島さんが来てくれると信じていたようなのです。
私は目を覆いながらも怒りに震え……それでサイオンが漏れ出てしまったようです。
その惨状を見た横島さんの嘆きと怒りはいかほどの物か、その場に居た人や悪魔や妖怪、建物施設とありとあらゆるものを一瞬で消滅させてしまったのです。
横島さんは自分が勝手にいなくなったがためだと自身を責め……涙と嘆きを繰り返し……
そして、文珠でおキヌちゃんの辛い記憶を消し、体を元の状態に戻しました。
横島さんはおキヌちゃんを抱き留め、二度と離れないと約束します。
おキヌちゃんは奇しくも、念願の横島さんの恋人となる事が出来たのです。
おキヌちゃんは辛い記憶が消えたお陰で、なぜ横島さんがここに居て、自分を抱きしめ泣いていたのか、さっぱりわからないようで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしつつも、横島さんの恋人になれた事に……幸せいっぱいの笑顔をだしていました。
その姿に私も救われた気持ちになり……漏れ出るサイオンを止める事が出来たようです。
そのタイミングで水波ちゃんが部屋に尋ねてきたので、続きが気にはなりますが、家中を凍らせた理由の言い訳を考えないといけません。
中編は暗く辛い雰囲気から始まりましたが、ようやく幸せな方向に向かって行くようで……楽しかった毎日が戻ってくるものだと、期待に胸を膨らませておりました。