ご無沙汰しております。
2097年2月下旬
私は横島さんのあの映像が私の記憶と寸分もたがわない上に、私の知らないお兄様と横島さんの事も語られ、お兄様に確認した所、それも事実でした。
あの映像は一体何なのでしょうか?
私は事実を知るべく放課後、お兄様に黙ってこの映像を私に見せてくれたピクシーを、現在使用していない教室に呼び出しました。ここならば生徒会長の私以外は誰も入ってこれないでしょう。
「ピクシー、私に見せたあの横島さんの映像は何なの?」
私はピクシーに問いただす。
「全世界図書館に保管されている本、初めに説明しました通り横島忠夫の過去の記録を映像化した物です」
確かに10カ月前、ピクシーからこの映像についてそう言っていた事を思い出しました。
ただ、あれは何かの冗談だと。
「横島さんの過去の記録映像……これはドクターカオスが制作したものではないの?」
私はてっきりドクター・カオスが娯楽のために作成したものとばかりと……
「それは違います。これは全世界図書館の管理者がこの世のすべてを記録するために集めたデータです。真実のみしか映しません」
そんなわけが有るわけ無いわ。
あの映像が真実というならば、横島さんは100年前の人で、この世界は横島さんが身を犠牲にして、救った分離した世界という事になるわ。
「……ピクシー、………あなたは……そう言えば横島さんがパラサイト…いえ悪戯好きな精霊が入り込んでるって……、これはその悪戯というわけね」
私は一年前横島さんがピクシーに悪戯をする精霊が憑依してると教えてくれた。だからピクシーは私の真似をすると……。
あの映像も、大方ピクシーが改ざんしたに違いないわ。横島さんの過去を面白可笑しく……しかも途中からはあんなに酷い事にするなんて、悪戯にしても許せないわ。
私はCADを構え戦闘態勢をとる。
「それは否定します。全世界図書館に保管された本は真実のみを映し出します。悪戯は不可能です」
「では、全世界図書館とは何なのですか?あなたはどうして私にあの映像を見せたのですか?」
「全世界図書館とはこの世のすべての真実を本として記録する永劫の図書館。貴方、司波深雪は一部記録データが開示可能な対象者です。その範囲は横島忠夫及び司波深雪の記録データのみ」
「私の記録データ……それもすべて真実というのですか?ならばそれを確認し、すべて真実だと分かります」
そう、私の過去のデータがすべて私の記憶通りであれば、それは真実ということになりますが、そんな事は現実としてあるはずが無いわ。
「それはお勧めしません」
「何故?私には開示可能なのでしょう?」
「私はこの1年間人間に接し、人間の感情というものを知りました。記録データは貴方が知りようもない貴方に関するデータまでも記録されております。貴方は不必要に知るべきではない真実に触れる可能性が在ります。それはとても辛い感情を生み出す結果となり得ます」
「……どういう事?」
「真実とは時には残酷です。貴方は知ったはずです。横島忠夫の過去を……あの事実を横島忠夫本人に見せる勇気がありますか?」
確かにあの過去が本当に真実だとしたら、横島さんに見せるには憚れるものです。
しかし、あんな過去はあり得ません。
100年前には妖怪や神や悪魔が存在し、人間と戦争し、それを止めるために横島さんが世界を分離したなんて………。
「私の過去は私の物です。私には開示可能なのでしょう?」
私はそう言って、ピクシーに私の記録の開示を迫る。
「……どうしてもですか?」
ピクシーは躊躇するように確認してきました。
「どうしてもです」
私はそれに答えてしまいました。
私はこの後、後悔することになる事を知らずに。