大分前に書いていたものをちょっと変更し、だしちゃいました。
真夜は、横島と香取小鳥、そして六塚温子とで、京都国際会議場に併設されているレストランで遅い昼食をとる事になる。
「こっちの綺麗なお姉さんが真夜さんで、そんで、こっちのかっこいいお姉さんが温子さん」
横島は真夜と温子を軽い感じで香取小鳥に紹介する。
小鳥に十師族の長とは言えないが、流石にこの対応に温子は呆れていた。
「か、香取小鳥です。横島くんとこの会場の警備担当をしています」
「二人は恋人同士なのかしら?あらいやだわ、わたくしたちお邪魔だったかしら?」
真夜は小鳥が明らかに、自分たちと横島が一緒に居ることに気落ちしている風であったため、わざとらしくこういう言い方をする。
小鳥の為に気を利かしたわけではない、横島との会話を楽しむためにも、場の雰囲気を和ませようとした結果だ。
「い、いえ違います。お邪魔でもないです」
小鳥は顔を赤らめて、慌てて否定する。
「あら、可愛らしい」
真夜はそんな小鳥にそんな一言を発するが、フォローを入れたものの、内心その若さに嫉妬を覚えていた。
真夜の目から見ても、こうして横島と小鳥が並んで座っているとお似合いのカップルに見え、更には自分にはない若さゆえの初々しさを小鳥が持っていたからだ。
しばらく、たわいもない会話をしていたのだが、国際会議場ホールの方が何やら慌ただしく人の出入りしだしたのだ。
小鳥はその様子に、状況確認するために、席を立ち会場の方に向かっていった。
直後に、真夜の元に四葉のガーディアンの一人が、スッと真夜の後ろに立ち、耳打ちをする。
「横浜が大規模な襲撃を受けております」
真夜はその一報に一瞬目を見開くが、即対応するために横島と共に国際会議場のVIPルームに入り、自らの状況確認と横島への説明をする。
真夜の元へ次々と情報が上がってくる中、横でそれを聞いていた横島の顔をが徐々に厳しいものになっていく。
真夜は横浜でテロが起きる可能性についてをある程度予想していたが、ここまで大規模なものだとは、想定外であった。
今の所、達也達が居る横浜国際会議場は、無事であることを報告を受けている。
仮に、達也達が戦闘に巻き込まれていても、他の生徒がどうなろうと達也と深雪は無事であろう事は、確信していた。
達也であれば、どんなことが起きようと、深雪を守り、切り抜けると……それだけの技量を十分持っていることも把握していたからだ。
そして戦闘状態に入った横浜広域の衛星画像も入ってきた。
ところどころで、火の手や煙が上がっている。
「横浜全域が戦闘状態になっているようですわ」
「くっ……」
横島の顔が苦しそうに歪む。
「どこに行かれるのですか?もうすでに戦闘が始まってから30分経過していますわ。今から貴方がいかれても、間に合いませんわ」
「…すみません」
横島は真夜の制止を聞かずに、VIPルームを出て行った。
(本当は無理にでも止めたい、私の傍に居てほしい。でも、記憶のあなたならば………)
その2時間後、横浜事変と言われる事になる大亜連合の侵攻は終幕を迎えることになった。
その晩、深雪から横浜事変の報告を真夜は自室にて映像通信で受けていた。
それまでに、真夜の元にも横浜事変の情報が多数上がってきているが、要領の得ないものばかりであった。
「深雪さん。無事で何よりです。あなた方ならば、かならず切り抜けられると信じておりました」
「……はい、ご当主様………しかし、私たちだけでは切り抜けるのは厳しかったかもしれません」
「どういうことです?達也さんも一緒では?達也さんの封印を解いたのでしょう?」
「はい、兄は……ガーディアン司波達也の封印と解きましたが、軍の要請で、離れて行動しておりました」
「軍からは聞いておりませんが」
「緊急時だったため、致し方がなかったと思われます」
「そう……それでも、貴方の力があれば十分切り抜けられるでしょうに」
「……敵の新兵器と思われる攻撃を受けておりました。その第一波だけで、横浜は大打撃を」
「新兵器……確かに、それらしい報告は入ってきておりますが、まだ何ともこちらでも把握しておりませんの。さらに、それらの攻撃を正体不明の大規模防御魔法が発動し防いだという信憑性に欠ける報告も上がっておりますわ」
「……敵の新兵器については、よくわかりません。超高速で飛来する弾丸または砲弾だということだけは確認できました。ただ、それが兵器由来なのか何らかの魔法由来なのかさえ分かりません。その攻撃から自分一人を防御するだけで、手一杯でした」
「深雪さんをもってしても、そんな状況ですか……新兵器とやらの威力は大層なものだったのですね。……そうであれば、横浜は壊滅していたでしょうに、そうはならなかった。達也さんがその新兵器を破壊した。または、術者を排除したという事でしょうか?」
「……いえ、違います。……『救済の女神』が発動されました」
「……まさか、あれは氷室家13代当主の究極の防御魔法ですよ。誰が?……!」
(もしや…しかし、間に合うはずが)
真夜はふと、京都国際会議場のVIPルームを後にする横島の後ろ姿を思い浮かべる。
「兄のクラスメイト、横島忠夫です。……彼が発動させました」
「!!……詳しくお話しなさい」
(やはりそうですか!)
「横島忠夫は、横浜襲撃から大凡1時間半程度たった頃だと……敵の新兵器による攻撃、第2波が迫ると同時に、私の目の前に突如として現れました。まるで、瞬間移動したかのように…そして迫りくる砲弾を次々と迎撃していきました。何をしていたのかはほぼ見えず、彼からは何らかの光を帯びたレーザーのような魔法が四方八方に放出されるように見え、同時に巨大な光の剣をふるった様にも見えました。……まるで、夢を見ていたかの様な光景です。とても人が成したように見えませんでした」
「!………続きを」
(巨大な光の剣……間違いない!あの記憶と一緒。あれは夢うつつではなかった)
「彼は、その後『救済の女神』を発動し、横浜全体を覆ったようです。新兵器の攻撃を阻み。その発動と同時に一切の戦闘行為が横浜からなくなったようでした」
「……そう」
(50年前の13代氷室家当主の術と一緒、敵兵のマインドダウンのようですわね……間違いない、いえ、間違いようがない。記憶の彼は横島忠夫に間違いない)
「……横島さん……横島忠夫、何者なのでしょうか?人間なのでしょうか?ありえません……あれ程の圧倒的な力がこの世界に存在していいのでしょうか。あの力を誰が止める事ができるのでしょうか?……今は恐怖心は何故かなくなりましたが……あの攻撃や青白い光を帯びて戦うあの姿を見た私は恐怖に心が支配され身動き一つできませんでした……彼は一体」
深雪はあの時の事を思いだし、言葉を探し、そして飲み込みながら、語った。
「深雪さん、落ち着きなさい。疲れているのですよ。また、後日に……今日はもうお休みなさい」
「……はい、失礼いたします」
真夜は、深雪との通信を終え、今も尚、手元に入ってくる報告を確認しつつ、考えに耽る。
(もう、間違いようがありません。わたくしの記憶の彼は、横島忠夫本人です。私が見たあの夢は真実に違いありません)
真夜は一人、自室で歓びに身を震わせていた。
しかし、その3日後、真夜は絶望の淵に立たされる。
独立魔装大隊が四葉(自分)の許可なしに達也の戦略級魔法マテリアル・バーストを使用したことについての釈明を求めたところ、その弁明と謝罪に軍の制服組が四葉を訪れ、今、真夜の前で謝罪と使用状況やマテリアル・バースト効力結果データ等を手渡していた。
「……これはどういうことですか?」
真夜はデータを受取、端末で内容を確認していたが、凍りつくような鋭い言葉を訪れた軍の制服組高官に投げかける。
端末を操作している真夜の手が明らかに震えていた。
「どの件でしょうか?」
「!!……済州島でのマテリアル・バーストの報告とこの映像です!!これはどういうことですか!!」
「……あの、それは」
制服組高官は何度も真夜と交渉を行っていたが、これほど語気を強め、怒りを露わにする真夜を見たことが無かった。
「わたくしは説明を求めているのです!!」
「……マテリアル・バーストは、予定の威力を発揮し、済州島で発動したのですが……何者かに阻まれまして……予定の場所で爆散しませんでした」
制服組高官は真夜は、マテリアル・バーストが効果を発揮しなかったことに怒りを覚えているのだと勘違いしている。
「そんなことは、見ればわかります!!……この映像に写っている人影は誰かと聞いているのです!」
「………はっきりとは確認できませんが……おそらく、氷室家の横島忠夫だと、現場は判断いたしました」
「…………」
「マテリアル・バーストの膨張エネルギーと済州島からの攻撃で、横島忠夫は死亡したと判断しております。結果的にはマテリアル・バーストは有効だったと考察します」
「…………………」
真夜の怒りは頂点に達し掛けていた。その目は殺意に溢れ、今にも目の前の男を射殺さんとする勢いだ。
「ひっ……」
殺意に満ちたその視線と発する圧倒的な威圧感に、制服組高官の男は思わず尻込みをする。
「…………あなた方とは、口を聞きたくありません。早々に立ち去りなさい」
真夜は冷たくそう言い放ち、応接室から自ら先に出ていった。
(なんて事を!なんて事を!私の希望を!………………………)
真夜は自室に篭り、打ちひしがれていた。