真夜は横島の死亡報告を聞いてから、自室に籠ったままだった。
食事も禄に取らずに、延々と今迄の人生を振り返っていた。
(わたくしの最後の希望。横島忠夫。やっと出会えたと思いましたのに……こんな事になるなんて。
わたくしは時と共に最後の希望であったあの温かな記憶を忘れ去り、わたくしを拒んだこの世界を壊すためだけに達也さんを究極の戦略級魔法師として育成してきました。その究極の戦略級魔法でわたくしの希望を……皮肉にも、わたくしは自らの手で、やっと見つけることができた最後の希望を撃ち滅ぼしさせてしまいました。
わたくしを嘲笑うかのように、運命とこの世界はわたくしの存在をどこまでも拒み続けるのでしょうか?わたくしは何時まで、この世界を恨み続けなければいけないのでしょうか?
わたくしにあのような希望を見せなければ、わたくしはここまで苦しまなかった。
そもそも、あの時の温かな記憶は私自身の物ではないではないですか。何者かがわたくしに見せた何者かの記憶……なぜ、わたくしにあのような物を見せたのか……なぜわたくしに希望をみせたのか……)
真夜はただただ、呪いのような運命に嘆き続けた。
あれから1か月が過ぎた今も……
その日も真夜は深雪からの定期通信報告も上の空で聞いていた。
「ご当主様。横島忠夫は生きてる可能性があります。日本政府は横島忠夫の生存を確信し、次なる動きを見せております。ガーディアン司波達也もそう確信しております」
「!?……どういうことですの深雪さん。彼はマテリアルバーストの直撃を受けたのですよ。そんなはずは!?」
真夜の目が大きく見開かれる。
「先日、USNAのテーマパークで起きたテロで、彼らしき人影が映像に映しだされておりました」
「ドクター・カオスが数十年ぶりに現れたというあの事件……!!……ドクター・カオス……魔女マリア!?」
(あの記憶には、ドクター・カオスと魔女マリアも……しかも記憶の彼(横島忠夫)の友人として!)
真夜は驚きと共に、横島が生きている可能性について、頭を巡らせ、喜色の表情へと変わって行く。
「はい、そうです。……ご当主様?どうかなされたのですか?」
深雪は通信映像先の真夜の様子がおかしい事に気が付く。
「な、なんでもありませんわ。……深雪さんもう結構です」
真夜は深雪との通信を切り上げ、USNAのテロ映像を早速確認しようと、四葉家のデータベースからダウンロードする。
横島が生きているかもしれないという喜びに酔いしれるように、テロ映像を解析していく。
そして、女性らしき人物を連れ、ドクター・カオスの魔法から通常ではあり得ないような回避行動をとりながら無軌道に逃げ惑う人影を見つけることができた。
(間違いありません。彼ですわ。彼は生きていた。……そうですわ。彼があれぐらいで死ぬわけがあろうはずがありませんもの)
真夜はその映像の人物を横島と確信し、喜びに打ち震えながら、何度もその画像を繰り返し見ていた。
真夜は翌日には政府の横島に対しての動きを探るべく、各方面にわたりをつける。
政府は横島がUSNAでの生存を確実視し、さらに横島が現在、ドクター・カオス又はUSNA軍に軟禁されていると判断していた。
そして、横島の日本への帰還を模索していたのだ。
(日本政府も、彼の存在を重要視しだしましたか……、彼の帰還又は奪還に本気度がうかがえます。しかし、彼はドクター・カオスと友人のハズです。私が見たあの夢に見た映像には確かに、彼とドクター・カオスと魔女マリアは昵懇でした。まず、カオスの庇護下にあると見ていいでしょう。そうなると誰も手出しはできませんね。ここは何もせず彼の帰りを待つのが得策でしょう。……ドクター・カオスは1000年以上生きていたとされる人物。魔女マリアも人造人間で800年以上生存してます。もしかすると、彼も姿形を変えずに100年以上生きながらえる事が出来るのかもしれません。そうなるとわたくしが見たあの記憶の映像の内容について、ドクター・カオスと魔女マリアは何か知っている可能性がありますわ)
真夜は状況を冷静に判断し、横島については直接何かをせず、注視することに決める。
横島なら、友人のために必ず日本に帰って来ると信じていたのだ。夢の映像の横島がそうだったように。
真夜はUSNAの横島の状況を注視すると同時に、USNA軍が何かを探しているような動きがある事が判明した。
それは二つ。
一つは大亜連合の鎮海軍港を戦略魔法で壊滅させた【灼熱のハロウィン】を起こした人物の捜索・抹殺。勿論これは、軍の命令でマテリアル・バーストを使用した達也の事である。
もう一つは、逃亡兵の捜索と捕縛、抹殺だった。これは情報が錯そうしており、はっきりとしたことは分からないが、集団で軍から行方不明になった一団があったとの事だ。しかもすべて魔法師だと言う噂もある。
真夜が重視したのは一つ目の【灼熱のハロウィン】を起こした人物の抹殺だった。
どうやら、日本政府と裏取引をし、USNA軍魔法師エリート部隊スターズのメンバーを数名日本に送り込む算段のようだった。
年が明け、しばらく経ってから、東京界隈で奇妙な事件が連続して起こっていた。しかも魔法師のみが次々と襲われ、外傷がないのに死亡に至るという不可解な事象だ。俗に吸血鬼事件と言う名がつけられていた。これは今後パラサイト事件と名が変わるものだ……後に横島自身が大きくかかわる事件であったが今は誰も知る由が無い。
真夜は、この事件について興味を持って介入の機会を伺っていたが、中々その機会が巡ってこなかった。この事件、七草家や十文字家が取り仕切っている上に、軍や警察組織まで関わっていたためだ。
そうこうしているうちに、達也と深雪が映像通信でUSNAの横島とコンタクトをとる事が出来た事を報告を受ける。
深雪の報告には、横島はドクター・カオスと魔女マリアとは友人関係である事が本人の口から聞いたとあった。
やはり、自分が見た夢の映像のとおりだと、真夜は内心興奮が止まらなかった。
最早疑いようがないと、色々と妖怪や悪魔が存在していたなど辻褄が合わない物もあるが、これだけ情報が一致しているのだ。そんなものは些細な物に感じられた。
横島に会いたいと言う思いを必死に抑える真夜だった。
次かな、チョコ