ちょっと過去に戻りたい   作:黒彼

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ちょっと早めに書けた!
遅くても一ヶ月に1、2話は投稿したいなぁ。


ちょっと大変なんだけど

リナリーSIDE

彼女の第一印象は、まるで泥みたいな人だと思った。

別に彼女が汚れていたわけでも、汚らしい容姿だったわけではなかった。

ただ単純に、彼女は人を引き込むのが得意そうだと思ったのだ。

動物だったら何だろう。蛇、キツネ、狼……。狼はどこか違う。羊の毛皮を身に纏っている狼と言った方がしっくりくる。

そんな彼女と会ったきっかけは、私が教団に反抗して監禁され心が壊れかけていた時に彼女が私の元に連れて来られたのだ。

彼女――クラウディアは一瞬目を開いて驚いた顔をしたけど、すぐに無表情に戻り、私に近づいてきた。

 

「初めまして、私はクラウディア・G・ラグエル。気軽にディアでもいいわ。貴女は?」

「……。リナ、リー…リー」

「そうですか、では親しみを込めてリナリーと呼びますね」

 

ディアは私の状態を見ても特に動揺も同情もせずに、日常的な会話を私に振ってきた。

自分が教団に来る前の事や好きな食べ物、好きな色、嬉しかった出来事などを語り掛け、まるで学校などで友人と日常的な会話しているような錯覚を感じた。

それが私には奇妙で仕方がなかった。とても違和感を感じたのだ。監視の人も疑問の表情を向けていた。

今になっても思う、彼女の纏う雰囲気があの異質な空間の中で異様(・・)だった。顔も高揚していて目がキラキラしていた気もする。

 

「リナリーの好きなものは何ですか?」

「好き…な、もの…」

 

ディアに聞かれた質問で思い出す。

暖かかった陽射しの中、兄とよく笑ったあの日々を。

どんなにご飯が焦げていても、愛で満たされていたあの味。

夜、親がいないことに泣きそうになった時には兄がいつも傍にいて抱きしめてくれた。

……連れていかれる時、兄は私の名前を必死に呼んでいた。

 

「お兄、ちゃん…お兄ちゃん、に、会い…たい」

 

涙が零れる。会いたい、会いたい、会いたい。

唯一の家族の兄に会いたい。こんな冷たい場所から逃げ出したい。おうちに帰りたい。

考えれば考える程、悲しい感情が生まれて涙が止まらない。

神様なんて大っ嫌い。お兄ちゃんと私を引き離すんだもん。戦争も嫌い。戦いたくなんかない!

 

「では、戦わなければいけませんね」

「!?」

 

何で!痛いのは嫌だよ!

何でそんなことを言うの!?

 

「…あぁ、その顔は嫌だと言っていますね。では、私の話を聞いてみませんか?」

 

――例えの話ですが…男は"世界平和"を求め、何でも願いが叶うという願望器を手に入れようとしました。その願望器を手に入れるにはクジで選ばれた相棒と共に他7人の参加者と相棒、男のグループを含めて14人で争奪戦を行い、勝ち進めなければいけなかったのです。男は沢山のズルをして他の参加者やその相棒を殺し、自分の妻も相棒も犠牲にして願望器を手に入れたのです。

 

「さて、そんな男の事をリナリーはどう思いますか?…あぁ、想像するだけでいいですよ。元気になってから私に伝えて下さい」

 

……正直に言って、なんて話だと思った。

世界平和を求めた男が人を殺しているなんて可笑しい。色々と食い違っていると思った。

 

「その顔は…呆れていますね?そうです、男は矛盾しているのです。そもそも、願望器なんかに叶えてもらうっていうのが私としてはいけ好かないんですよ」

 

なんだったらラジオやTVなどで自分の心の内を話せば良いんですよ。そうしたら、誰もが賛成して武器なんか手放して敵と握手をして、手と手を取り合って貧しい子供達を救うでしょう。

それをしないで願望器に手を伸ばしたのだから元々"世界平和"を実現するのが無理だと分かっていたのですよ、その男は。

 

「まぁ、先程の話は例え話なので信憑性がありませんが、実際に”世界平和”だ”皆が平等な世界”等と掲げているところがありますが自分の利益を増やしたい、自国の戦力を自慢したい、自分を馬鹿にしたからなどの人間の欲で戦争が起きているので、そんなのは出任せの様にしか感じません。…どれだけ目標を掲げようが人間の欲が消えない限り、世界平和というものがいかに夢物語で、困難なんて言葉では足りない程難しいということが分かりましたか?」

「…」

「そう、何の犠牲も無しに世界平和を創るなんて天と地が引っくり返るほど有り得ないことです。何かしら犠牲はついてくるのです。ですから世界平和…とまではいきませんが自身の平和は敵と戦い、勝ち取らないといけません…私よりも小さい子供である貴女には酷かもしれません。私だって戦うのは嫌です。痛いのは嫌ですよね。死にたくないですものね。…ですが、貴女の家族を守ることに繋がるとしたら頑張れる気にはなれませんか?」

「!」

 

そうだ、お兄ちゃん。

お兄ちゃんも危ないんだ。敵を、AKUMAを倒さないとお兄ちゃんが殺されちゃうかもしれない。

エクソシストは年々少なくなっていていくけど、AKUMAは増え続ける。誰かが倒さないと増えるばかり。

 

「…今は休みましょう。そして心を落ち着かせ、整理しましょう。私は先に敵と戦っています。早く貴女と共闘出来ることを願っています。それまでは私は絶対に死にません」

 

誓うように私に言った彼女は私の手を両手で取り、握った。

温かさが伝わってきてジワリと視界が歪んだ。

連れて来られた時みたいに冷たくない、温かい手。

そっと彼女が片手を外して私の目元まで近づけ、零れかけていた涙を掬う。

 

「……主よ、この者に救済を」

 

 

ルベリエSIDE

新しいエクソシストが入団した。リナリー・リーより少し上の女児と同じくらいの男児だという。

男児の方は第二使徒(セカンドエクソシスト)なのでこちらを警戒しているが女児の方はこちらのことを知らない。

引き入れるならこちらからだと女児…クラウディア・G・ラグエルがいる医療棟に向かう。

 

が、そこにはもういなかった。

医療班のスタッフに聞いたところ、一人のドクターがリナリー・リーの元に連れて行ったという。

何て事をしてくれたんだ!!

リナリー・リーのあの状態を見たらこちらに疑念を持つのが目に見えている。

早く引き離さなければ!

急いでリナリー・リーのいる部屋に向かう。何とか部屋に着き、中に入ろうと扉に手を掛ける。

 

「………自身の平和は敵と戦い、勝ち取らないといけません…私よりも小さい子供である貴女には酷かもしれません。私だって戦うのは嫌です。痛いのは嫌ですよね。死にたくないですものね。…ですが、貴女の家族を守ることに繋がるとしたら頑張れる気にはなれませんか?」

 

扉に掛けていた手を止めた。

誰だ?リナリー・リーに戦いを勧めているのは。

女にしては低いアルトボイス、だが、私はこの声を聴いたことが無い。

教団に女性は少ない為、ある程度なら覚えている。ということは…この声の持ち主は新しく来た女児、クラウディア・G・ラグエルのものということになる。

あのリナリー・リーの状態を見て、戦うことを勧めているというのか……!?

あの状態を大体の人が見たら顔を歪め、中には彼女を開放しろ等と噛み付いてくる愚か者もいた。

戦争中の真っただ中にいることを理解していない馬鹿な奴は本当に腹が立つ。もし敵の容姿が庇護欲を駆り立てさせるものだったら逃がすと言っているのと同じことだ。変な正義感は組織内を混乱させる。そんな心は戦時中に必要ない。むしろ捨てるべきだ。

そんな馬鹿の内の一人がここに新しいエクソシストを連れていきこの組織の状況を見させることで教団のやり方に疑念を持たせ味方を増やし、あわよくばリナリー・リーの精神の回復をと考えて連れてきたんだろう。

これは連れて行った者も想定外だっただろう。水だと思って投下したものが燃料だっただなんて誰でも驚く。

だが、この女児は何を考えている?

普通はしない行いをあの子供は行った。まるで戦争というものが理解出来ているかのように!大人でも理解出来ていない者がいるのに!!

どうしてその行動をとったのかを聞いてみたい。あの子はどれくらい理解しているのだろうか。子供の脳を遥かに上回っているだろうその思考を聞いてみたい!

 

そして話が終わったのか、女児……クラウディア・G・ラグエルが出てきたので先回りをして偶然会ったように対面した。

 

「見掛けない顔だね、新しく入ってきたエクソシストかな?」

「…クラウディア・G・ラグエルと申します。エクソシストがどういうものか分かりませんが奇異なモノを倒す者の事を言っているならそうです」

「おや、自己紹介してなかったね。私はマルコム=C=ルベリエ、…簡単に言うと監査官をしている。君は何をしていたんだい?」

「私と同じくらいの年齢の子に会わせて貰ったんです。年齢の近い子がいて心強かったです」

「そうか…何か思うことはあったかな?」

「思ったことですか…」

 

何か考え込んでいる彼女の解を待つ。

君はどちら側なんだ、教えてくれ!

 

「そうですね、春のような子だと感じました」

「………春かい?」

「はい」

 

どういうことだ?彼女の答えは何処から来たのだ?あの状態で”春”?

 

「陽だまりの中、野原を駆け回り、躓いてしまったら兄が駆け付け心配をする。泣けばあやし、泣かなければ出来た子だと頭を撫でる。そんな春のような生活を、彼女は過ごしていたのでしょうね」

「…」

「……なのでここは彼女にとって地獄のような場所に見えるでしょう。戦争なんて無縁で、戦うことを恐れる子供ですから。戦時中なので焦るのも分かりますが早急に進めるのではなく、アフタ―ケアをしながら進めたならば彼女はああ(・・)はならなかったでしょう。それに対して私は……怒りを感じます」

「…………そうか」

 

……理解している、理解している!

この子供は理解している!戦争の残酷さ!円滑に回す為の方法!

この子は戦争にリナリー・リーを参加させたことに怒りを感じていない!

リナリー・リーを戦争に参加させる為の準備を怠っていたことに(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)彼女は怒りを感じているのだ!

 

「あの状態では戦闘は難しいでしょう。彼女には考える為の時間が、休息が必要です。その代わりに私が敵を減らしましょう。その方がどちらも得をする筈です」

「……検討しよう。今後精進してくれ。クラウディア・G・ラグエル」

「はい、良い返事が聞けるのを願います。失礼します」

 

丁寧なお辞儀をし、彼女は足を進めていく。

あぁ、貴重だ。

戦いを理解出来ている彼女は貴重だ。

あの子は私の考えを理解出来る。

私の願望(・・)も彼女に話したら理解してくれるかもしれない。

まずは、ここで経験を積んでから。

ある程度の経験を積ませたら、彼女に話を持ちかけよう。彼女はどんな反応を返してくるのだろうか?

 

楽しみだなぁ。

 

 

 




とりあえず纏めます

何故目がキラキラしていたのか
→ヒロインに会えたからです

例え話の物語と男
→勿論、運命のスナイパーのことです

主人公はスナイパーが嫌いなのか
→別にそうではありません。ただ、推しが言峰なので敵対関係にあったスナイパーは若干微妙なところです。てか、大切な人は守らなアカン

何故リナリーを戦争に参加させることに反対しなかったのか
→彼女は主要キャラなので、どうやっても戦争から外せないのでせめて心を休めさせようと話し合いをした

戦争に関して理解出来ているのは何故か
→見た目ロリだが、中身が30の男だから

リナリーの心が10、安定した!
クラウディアの信頼[]が14、知らない間に上がった!


ルベリエの話し方、丁寧バージョンと威圧的バージョンがあるから難しい(´・ω・`)次回は原作に入ります!=凄くトびます!
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