月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

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なんか月一投稿になってきているな? と思う今日この頃。お仕事が忙しいとかじゃないんですけど、帰ってきてから何もやる気起きずに寝落ちしちまってるの許して許して……

今回は前回書いた通り、メンインブラック3のパロです。

とは言っても宇宙人が出ないのでタイトルは月読調の華麗なるメンインブラックから月読調の華麗なるタイムジャンプへと変更しましたが。

いつかはメンインブラックしてる装者を書きたいです。


月読調の華麗なるタイムジャンプ

 今日も今日とてわたし達に課せられた任務は、ここ最近あまり自重しなくなってきた錬金術師達への対応。パヴァリア光明結社という枷が無くなったせいで好き勝手に色々とやりたい放題な錬金術師達と何度も何度も相対してはやっつけて、相対してはやっつけて。

 クリス先輩と一緒に任務に向かう時なんて、ちょっとふざけて「錬金術師は?」なんて聞いてみたら、「バンバンだ」なんて言いながら、クリス先輩はRED HOT HORIZONで狙撃を決め込んでいた。

 それぐらいに最近錬金術師が自重を止め始めているから、装者二人もいれば対処可能と言えど、流石にヘビーローテーション決め込む必要が出てきてオーバーワーク気味。いや、こうでもしないと錬金術師のせいで被害が広がっちゃうから、やるしかないんだけどね。

 わたし達もそれに異論はないし。

 で、今日も今日とてわたし達日本に常駐している装者ことリディアン生徒組四人で発見した錬金術師の本拠地に乗り込んでいた。

 外を先輩達二人に任せて、わたし達は本拠地内に潜入して暴れ放題好き放題。

 

「とうとう本丸デスよ!」

「慎重にいこうね、切ちゃん」

 

 とは言うけど、何かあって大怪我とかはごめんだから、結構注意は払っている。

 で、注意を払いながらずんずんと奥へ進んでいって、発見しましたは錬金術師の工房らしき場所。そこの扉を切ちゃんが蹴り開けて、わたしはヨーヨーを両手に構えながら切ちゃんの一歩後ろから入場。そこでは無駄に広い工房の中でこっちを見て表情を歪めている錬金術師標準装備の黒ローブさんが。

 

「大人しくプチョヘンザデス!」

「逮捕オアザババ。どっちがお好み?」

「くそっ、政府に飼い慣らされた小娘共が!」

 

 叫びながら黒ローブが挨拶も無しにアルカノイズをけしかけてくるけど、その全部を切ちゃんは一息に斬り裂いて、逃げようとしている黒ローブに向かってワイヤーを発射して雁字搦めにするとそのまま拘束した。

 うん、いつものことながら天晴な腕前だね、切ちゃん。

 

「さぁ、年貢の納め時デス! これ以上暴れたら二百数本の内一本くらいは骨が事故で折れる可能性があるデスよ」

「弦十郎さん、調です。自制の効かない大きなお子様を拘束しました」

『よくやってくれた、二人とも。すぐに外に待機させていた者達を突入させるが……いつもと言葉遣いが違うと思えるのは気のせいか?』

「二人で洋画を数時間耐久コースしちゃったせいで」

『なるほど、分かるぞその気持ち。ちなみに何を見たんだ?』

「エクスペンダブルズです」

『話が分かんじゃねえか、後輩共。良い趣味してやがる』

 

 なんか急にクリス先輩が割り込んできた。

 とりあえず三人で映画談義をしていると、切ちゃんが何度か逃げ出そうとしている黒ローブを動くたびに鎌の石突きで制止させて、黒ローブが絶対に逃げれないようにしている間にSONGの職員が登場。そのまま切ちゃんが拘束していた黒ローブを掴み上げて連行していった。

 

「小娘共め、絶対に許さんぞ!! この私を敵に回したことを後悔するんだな!!」

「あーはいはい、よくある捨て台詞をどうもありがとうデス」

「あなたは今日までの行いを後悔して檻の中へどうぞ」

 

 映画の三流悪役みたいな捨て台詞を吐いて錬金術師が拘束されたまま連れ去られて行った。ドナドナ~。

 こうなったら後はSONGに後始末を任せるだけだから、わたし達は一応ギアを纏ったまま外に居る先輩達と合流してからようやくギアを解除して帰還用のヘリに乗り込んで、本部から何か連絡が来たらすぐに対応できるように右耳に小型のイヤホンマイクを取り付けて談笑。

 まぁ、こういう時に連絡が来る事なんて滅多にないんだけどね。

 そんな事を思いながら響さんも交えて四人でオススメの映画とか、最近見た映画とかで話題を膨らませていると、滅多に通信がかかってこないイヤホンマイクに通信がかかってきた。

 嫌な予感。

 

『すまない、君達。連行班の方で手違いが発生した』

「手違いですか?」

『あぁ。早い話が逃げられた。奴め、アルカノイズを隠し持っていたようだ。幸いにも職員は全員無事だが、奴には逃げられた。すまないが、もう一仕事頼めるだろうか?』

「あぁ、大丈夫だ。おバカな良いコに鉛玉のプレゼントしてこりゃいいって話だろ? 楽勝だ」

 

 クリス先輩の言葉に頷き、ヘリが向かった先でもう一度ギアを纏ってアルカノイズを殲滅……したのはいいんだけども。

 あの黒ローブは見つからず、暫くの間黒ローブを捜索していたけど結果は駄目。結局あの黒ローブは取り逃してしまったという形でわたし達は帰還する事になってしまった。

 ただ、その後の調査でエルフナインが言うには、どうもあの黒ローブはあの工房の中で時間についての研究を行っていた、とか。多分若返りか、そこから派生する不老不死の研究なんじゃないかとは言っていたけど……わたしにはよく分からない。

 一応、あの黒ローブが突如襲ってくる可能性もあるから細心の注意を払うように、と注意を受けてわたし達は帰還したのでした。

 

「あぁ、すまない調くん。ちょっと話がある」

「はい、なんでしょう」

「すまないが、ギアを纏ってこの書類を至急ここまで運んでくれないだろうか?」

「ここって……ギアでも夜中の間は走らないと着けないんですけど」

「本当にすまない。至急というわけではないし、俺か緒川か藤尭に行かせるのが一番なんだが、俺達は事後処理でここを動けなくてな……埋め合わせは確実に行う。だから、頼まれてくれないか?」

「まぁ……別に大丈夫ですよ。明日休みですから」

「すまない、恩に着る。人目などは気にしなくてもこちらが全て対処する。君はこの書類を届ける事だけを考えてくれ」

「分かりました。じゃあ、行ってきます」

 

 でも、わたしだけはこの通り残業を命じられたのでした。

 別にいいんだけどね。この程度の事なら、夜中にあっちに着いて適当なホテルで泊まって、朝の内にこっちに戻ってきたらいいだけだし。切ちゃんの夜ご飯は……マックにでも行ってきてもらおうかな。わたしも多分道中マックで済ませるし。

 よし、行こう。

 きょうのきーずなにー。たいしのーためにー。

 

 

****

 

 

 あー、今日は犯人を取り逃すし調が残業でどこかに行ったからマックで……と思ったら寝落ちしちゃったせいでマックの営業時間が過ぎちゃったせいでマックどころかコンビニの298円以下のカップ麺でお夕飯を済ませる事になって散々だったのデス……

 でも、明日はお休み! しかも調が居ないという事は夜更かしし放題デス!

 お菓子にコーラを用意して、ネットで今日クリス先輩にオススメされたバックトゥザフューチャーでも見ながら思いっきり夜更かしするのデス!!

 

「タイムスリップ物だと聞いてはいるんデスけど、どんな感じの話なんデスかね。楽しみデス!」

 

 それじゃあ、さっそく再生を…………

 ……あれ? なんだか目の前が歪んで……しかもなんか周りまで変な感じに……しかもなんだか頭痛と吐き気が…………!?

 こ、これ本当にヤバい奴デス! すぐに本部に知らせないと、調達まで巻き込ま「ぅぁっ」

 

 

****

 

 

 あすにむーかってー。って感じで歌いながら明朝の高速道路を思いっきり爆走して戻ってきました。

 明朝の車が殆どない高速道路を爆走って中々気持ちいいね。ついでに途中で朝市みたいなのを見つけたから新鮮な魚とか買ってきたし、朝ご飯は焼き魚とお米とみそ汁かな。ちょっと遅くなっちゃうけど……どうせ切ちゃん、夜更かししているだろうから、朝ご飯はちょっと遅いくらいがちょうどいいよね。

 朝ごはん前の運動をしたのに加えて、LiNKERの効果時間がほぼ切れたせいか頭痛と吐き気がなんかすごいけどね。しかも喉まで乾くからついつい道中のコンビニでチョコレートミルクを買って禁月輪しながら飲んできちゃった。

 でもお腹が減っているのには変わりないから、お腹が鳴る前に弦十郎さんに書類を届けてきた事を知らせないと、という事で戻ってきた足でそのままSONGの本部へ。発令所まで行くと、丁度そこには弦十郎さんが。

 

「おぉ、調くんか。戻ってきてくれたか」

「はい。ちょっと一泊してきちゃいましたけど、無事に」

「そうか。あれは緊急を要する案件だったからな。機動力がある君に任せたのだが、解決してくれたのなら何よりだ」

 

 え? あの書類、そんなに重要なモノだったの? 昨日はそこまで切羽詰まっているようには見えなかったけど。

 

「お役に立てたのなら。じゃあ、わたしは帰りますね」

「本当に助かった。今日は一人ゆっくりと休んでくれ」

 

 そうします。

 ……あっ、そうだ。

 

「すみません、チョコレートミルクもらえませんか?」

「チョコレートミルクか? 可能だが……好物なのか? そんな記憶は無いが」

「いえ、なんか今朝から妙に飲みたくって……ここに来る前も一杯飲んだんですけど、なんでかまた欲しくなっちゃって」

 

 なんでだろ、ヤケにチョコレートミルクが飲みたくなるんだよね。さっき飲んでハマったからって言えばまだ聞こえはいいけど、さっき買った時も妙にチョコレートミルクに惹かれてついついって感じで他の飲み物をスルーして買っちゃったし。

 食堂で作ってもらえるのなら作ってもらいたいけど。

 

「そうか。ならば、すぐに食堂へ行こう」

「弦十郎さんもですか?」

「あぁ。俺の料理の腕は知っているだろう? 最高に美味いチョコレートミルクをご馳走しよう」

 

 え?

 弦十郎さんって、そんなにわたし達に手料理を振舞ってくれた事ってあったっけ? 時々弦十郎さんも外に出て任務で、しかも野営とかになった時は弦十郎さんがサバイバル料理とか作ってくれることはあったけど……

 あー、駄目だ。なんか深く考えると頭痛と吐き気が酷くなる……

 とりあえず何も考えずにわたしは弦十郎さんについて行って、エプロンを着けた筋骨隆々の男の人にお手製のチョコレートミルクをご馳走され、それを手に持って帰った。

 なんだろう、この釈然としない感じ……あっ、美味しい。

 弦十郎さんお手製のチョコレートミルクを飲みながらわたしはまだ朝焼けの街中を歩いて、今住んでいるアパートの部屋に。切ちゃん、どうせ鍵もかけずに夜更かししているだろうし、鍵は出さなくても……あれ?

 

「鍵閉まってる? よかった、切ちゃんもようやくそこら辺を気を付けてくれるようになったんだ」

 

 前々から何度も言ってるのに聞かなかったから、今日もかと思ったけど、どうやら切ちゃんはしっかりと防犯意識を見に付けてくれたみたい。

 よかったよかった。じゃあ、鍵を開けてただいまーっと。

 

「朝から禁月輪で何十キロも移動するのはちょっと疲れた……切ちゃん、おきてるー?」

 

 聞いてみるけど、やっぱり声は帰ってこない。

 やっぱり夜更かしして寝てる。

 このまま切ちゃんの部屋に突入して起こしたい所存ではあるけど……なんかさっきから頭痛と吐き気が収まらない上に頭痛も吐き気も限界ギリギリのラインで留まってる感じだから、気分が悪いと言うか。

 端的に言えば体調が悪い。

 月の日はまだ先だし、かと言って病気ではないだろうし。よく分からないから、朝の間は寝て過ごす事にした。

 で、寝て起きたんだけど……

 

「……治らない」

 

 どうして。

 ちくしょうと言いながらもとりあえず立ち上がって頭痛薬……の前にコンビニに行ってチョコレートミルクを購入。あー美味しい。で、飲み干してから部屋の常備薬を飲んだんだけど、これがまた効かない。

 月の日が予想以上に重かった時みたいな感じで頭痛と吐き気がすっごい。けど我慢できないほどじゃないからちょっとイライラする。でも、あんまりイライラしてられないからさっき買ってきたもう一つのチョコレートミルクを飲みながら切ちゃんを起こすために切ちゃんの部屋に突入する。

 

「切ちゃーん。そろそろ起きて……あれ?」

 

 枕を抱えて寝ているであろう切ちゃんを起こすために部屋に入った……はいいんだけど、切ちゃんは居なかった。

 いや、居なかった、なんて問題じゃない。

 

「……こ、これ、なんのドッキリ?」

 

 切ちゃんの部屋が、切ちゃんの部屋だったもの、になっていた。

 切ちゃんのベッドも、机も、椅子も、本棚も、タンスも。何もかもが無くなっていて、切ちゃんの部屋だったもの、に。部屋の中に入ってクローゼットの中を調べたり、黒歴史ノートがある隠し棚も確認してみたけど、クローゼットの中には何もないし、黒歴史ノートに至っては隠し棚ごと無くなっていた。

 ほ、本当に何のドッキリ? こんな質の悪い冗談を決行するなんて、一体誰が……?

 呆然としながらも切ちゃんの部屋を出て切ちゃんを探すけど、切ちゃんは居ない。それどころか、切ちゃんがいたという痕跡すらない。歯ブラシも食器もコップも靴も、全部わたし一人分しかない。切ちゃんが買ってきたゲーム機も雑誌も無くて、あるのはわたし一人が生活していたという痕跡だけ。

 切ちゃんが隠していた冷蔵庫の中のプリンも確認したけど、やっぱり無い。

 

「ど、どうして……? いったい何が……」

 

 冷や汗が溢れ出てくる。ついつい手に持っていたチョコレートミルクを一口飲んで、そんな場合じゃないと頭痛と吐き気を抑えて切ちゃんを探す。

 だけど、見つからない。

 本格的にわたしの焦りが酷いモノになってくる。どうしよう、このまま切ちゃんが見つからなかったら……

 手がかりの一つもないせいで息が荒くなるけど、そんな中、わたしの端末に連絡が。

 これは……弦十郎さんから?

 

「はい、調です……」

『調くんか。すまないが、至急本部に来てくれるか? 緊急の任務が入った』

 

 こんな時に……!?

 いや、でも切ちゃんもドッキリで隠れているのだとしたらこの報告は無視できない筈。つまり、本部に行ったら切ちゃんは絶対に居る!

 なんだ、焦って損した……

 

「わかりました。すぐに向かいます」

 

 返事を一つ返してから、わたしは走って本部に向かった。

 悪戯切ちゃんめ……あっちで顔を合わせたら説教してやる。

 

 

****

 

 

 説教してやる。そう思って本部に来たけど、切ちゃんは一向に来ない。

 響さん、クリス先輩、翼さんとやって来て、後はマリアと切ちゃんが来るのを待つだけ。その間にも軽くブリーフィングはしているけど、どうやら今回は旅客機がハイジャックにあったせいで墜落するかもしれない状態で既に十数分間飛んでいるから、それに対してミサイルで追いついて空中で取りつき、そのまま内部に侵入してハイジャック犯を犠牲無く仕留めるのが任務らしい。

 こんな任務、あまり来た事は無いんだけど、響さん達は気合十分。わたしはチョコレートミルク片手に頭痛と吐き気に格闘中。

 というか早くマリアと切ちゃん来てよ……絶不調なわたしをあんまり繊細な現場に出さないで……

 

「すまない、遅れたわ」

「ごめんなさい、ここに来るまでの道が混んでいて……」

 

 あっ、やっと来た。

 もう、切ちゃん。あんな悪戯は………………え?

 

「あぁ、マリアくんに『セレナくん』か。構わない、来てくれただけありがたい」

 

 う、嘘、でしょ?

 なんであそこに、セレナが……? しかも、あの日のセレナよりも成長している……

 な、なんで? なんで切ちゃんは来なくてセレナが……?

 

「ん? どうしたの、調さん。わたしの顔に何かついてる?」

「え、あ、違っ……そうじゃ、なくて……」

 

 上手く言葉が出てこない。

 どうしてセレナがとか、なんでここに、とか。色々と言いたい言葉が溢れてくる。でも響さんや弦十郎さんは特に何も思っていないらしく、普通にブリーフィングを進めていく。

 

「突入役には、ガングニール装者である響くんとマリアくんの二人に頼む。翼とセレナくんは天羽々斬とアガートラームの応用力を以って二人のアシストを。クリスくんと調くんは旅客機の外で万が一に備えて……どうした、調くん? 顔色が悪いが……」

 

 そりゃあ、悪くなる。

 だってみんな切ちゃんの事に全く触れないし、セレナが居る事にも全く不信感も何も覚えていない。そこに居るのは切ちゃんのハズで、セレナはもうこの世にはいない筈なのに、どうしてみんなセレナが普通に居るのを受け入れて居られるの……?

 いや、嬉しいよ? セレナとまた会えたのは嬉しい……だけど、それ以上に疑問と、切ちゃんの安否が……

 

「調、どうしたの? さっきから変よ?」

「マリア……いや、だって、切ちゃんが……」

「っ……切歌が、どうかしたの?」

「みんな、切ちゃんが来ないのに普通にしてて……セレナも居て……よく、分からなくて……」

 

 切ちゃんの名前を出した途端、マリアの表情が一気に変わった。

 まるで悲しさを抑えているような、そんな表情に。

 

「……司令、どうも調は調子が悪いみたいなの。その分の穴は私が埋めるわ。調には休ませてちょうだい」

「マリア!? 確かにちょっと吐き気と頭痛はあるけど大丈夫だよ!?」

「調、いいから。ごめんなさい、あなたがそんなに思い悩んでいるのに気づけなくて……本当に、ごめんなさい。話は後でゆっくりと聞くわ」

 

 そんな事を言われても余計に訳わかんないんだけど。

 わたしの内心を無視して話は進んで、結局わたしは精神を病んじゃっているかもしれないからという事で、本部で待機する事になってしまった。

 いや……わたしは切ちゃんの事を聞きたかっただけなんだけど……

 ポツンと発令室の端っこで椅子に座ってるわたしを他所に作戦はどんどん進んでいく。それをポツンとチョコレートミルクを飲みながら観戦しているわたしの元に、どうやら作戦が大体は上手く行き始めたから手持ち無沙汰になったエルフナインがやってきた。

 

「調さん、調子はどうですか?」

「今朝から特に変化ないけど……強いて言うなら頭痛と吐き気が酷いだけで」

「そう、ですか……あの、失礼かもしれませんけど、先ほど口にした切ちゃん、という方は暁切歌さんの事ですよね?」

「そうだけど、どうしてそんなに他人行儀なの? エルフナインもいつも切ちゃんとは顔を合わせていたでしょ?」

「いえ? ボクは一度も暁切歌さんとは顔を合わせたことはありませんが」

 

 ……へ?

 

「……エルフナイン? ふざけるのは」

「ふざけてませんよ。ボクは一度も暁切歌さんとは会ったことがありませんよ。だって、調さんはよく言っていたじゃないですか」

 

 ――暁切歌さんとは、F.I.S時代に死別したと――

 

「…………は?」

 

 え? し、死別……?

 いや、そんな、こと、あるわけないでしょ。

 だって切ちゃんは昨日まで一緒に居て、任務もこなして、面白おかしく談笑して……

 

「う、嘘だ。だって切ちゃんは昨日もここに来てたし、一緒に住んでいたのに!」

「嘘じゃありませんよ。確かに、イガリマの装者であった暁切歌さんが亡くなった事で調さんはかなり長い間塞ぎこんでいたとは聞きましたが……まさか、そこまで思い詰めていたなんて……」

 

 ち、ちがっ……!

 

「そんな訳ない! 携帯にだって切ちゃんの写真はしっかりと……」

 

 しっかりと…………

 …………嘘。

 なんで? なんで切ちゃんの写真が一枚も無いの? 全部、わたしやマリア、セレナが映っているだけで、切ちゃんの写真は一枚も無い。連絡先も見てみるけど、一番使っているハズの切ちゃんの連絡先だけが、奇麗に消えている。

 切ちゃんが生きていたという痕跡だけが、奇麗に消えている。

 思わずチョコレートミルクを一気に飲み干す。

 

「調さん、今日の所はもう帰って落ち着いた方が……」

「わたしは落ち着いてる! 切ちゃんは確かに昨日まで生きていた! だからっ…………」

 

 でも、現にわたしの携帯からは切ちゃんの情報が消えているし、他の所でも切ちゃんが生きていたという痕跡は完全に消えている。

 それが意味わからなくて、わたしはイライラしながらコップを片手に立ち上がった。

 

「調さん!」

「チョコレートミルクをお代わりしてくるだけだから」

 

 どうしてか、チョコレートミルクが無いと落ち着かない。

 イライラしつつ吐き気と頭痛と戦いながら立ち上がってチョコレートミルクをお代わりにしに行こうとしたけど、その前にエルフナインに手を掴まれた。

 

「待ってください。今、チョコレートミルクって言いましたか?」

「言ったけど、それが何? エルフナインには関係ないでしょ」

「もしかしたら関係あるかもしれないんです。いいですか、調さん。ボクの質問に答えてください」

 

 いつになく真剣な表情のエルフナインに思わず気圧されて、頷いてしまう。

 でも、どうせわたしが異常だって事を知らしめるために……

 

「調さん、暁切歌さんは昨日まで生きていたんですね?」

「そうだよ。わたしは昨日も切ちゃんと一緒に任務に出た」

「昨日、特に任務は無かった、というのはこの際置いておきます。次に、頭痛と吐き気はしますか?」

「思いっきり」

「いつから?」

「今朝、起きてからかな。寝る前は全くなかったけど」

「……じゃあ、最後に。どうしてチョコレートミルクを?」

「なんか、急に飲みたくなって」

 

 どうしてそんな事を? と聞く前にエルフナインはもしかして、と呟いて、弦十郎さんの方へと何かを伝えるとわたしの手を引っ張って発令室を出た。

 

「え、エルフナイン?」

「調さん、調さんは昨日と今日で、何か劇的に変わった事は思いつきますか? 簡単にでいいです」

「劇的に変わった事……? そう言えば、昨日は届け物をする時に弦十郎さんから急ぎの用事じゃないけどって言われたのに今日戻ってきたら急ぎの用事だったって言われたり、なんか弦十郎さんが料理が得意って言ってたし。後は……セレナが、生きていたり」

「……現状、考えられる状況は三つあります」

 

 連れてこられたのは、エルフナインの研究室だった。

 どうしてこんなところに? と思っていると、エルフナインはファイルを一つ取り出してその中を速読でもしているのか一気に読み込んでからソレを閉じて、わたしの頭に思いっきり打ち付けた。

 

「いっだぁ!!?」

「まず一つ目、古代から生息しているダニに寄生されている事。これに寄生されると甘いものを異様なまでに欲して頭痛と吐き気に悩まされ、一日経過した後に体がパーンってなります」

「パーン」

「パーンです。ただ、寄生されると痛みを感じないらしいのでこれは違いますね」

 

 か、体がパーンってどういうことなの……?

 いや、聞かないでおこう。多分予想している通りの事だろうから。っていうか、そんなダニが古代から生息しているなんて聞きたくなかったんだけど。死滅してないの、そのクソみたいなダニ。

 で、次に、とエルフナインは口を開いた。

 

「調さんが寝ている間に何者かの手によって平行世界に放り投げられた、ですね。そのせいでなんかこう、頭がパーンってなった」

「頭がパーン」

「頭がパーンです」

 

 なんなの、そのパーンって擬音。

 本当にわたしの頭がパーンってなってるみたいで怖いんだけど。ホントなんなのパーン。

 でも、エルフナインはそれだとチョコレートミルクをお代わりし続ける理由がよく分からないからきっと違う、と自己完結して、何かを取りだした。

 懐中時計かと思ったんだけど、それにしてはメカメカしいし、なんか変だし。

 

「もう一つは、時空断裂に巻き込まれた、です」

「じ、時空断裂?」

 

 そんな仰々しい事に巻き込まれたって……一体いつの間に?

 

「正確には時間改変ですね。文献によると、それにより改変された事象に近しい人は頭がパーンってなった人みたいに有り得ない事を口にして、頭痛と吐き気を訴え、そしてチョコレートミルクを欲するとあります」

「それ大真面目に書いた人、頭がパーンってなってるんじゃないの? というかさっきからパーンって擬音多すぎでしょ」

「便利ですから、パーン。で、調さんの場合は最初は頭がパーンかと思ったんですが、チョコレートミルクをピンポイントで欲する。そして、有り得ない事を口にし続ける。これがヒットしています」

 

 時間改変に巻き込まれた……

 それで過去を変えられたのだとしたら、セレナが生きているのも納得いくし、切ちゃんが死んでいるのも……

 どうしてそんな風に過去が、なんて聞いても多分分からないから黙っているけど、でも本当にそうだとしたら、わたしにはどうしようもできないんじゃ……

 

「そして、事象の改変を覚えているのは、改変の瞬間に居合わせた人だけです。調さんは恐らく、事象の改編の瞬間……暁切歌さんの死亡の瞬間に居合わせたのでしょう」

 

 っ……!

 覚えて、ないけど……でも、そんな瞬間を見たら、塞ぎ込んでいたって言われても納得できる。

 そうすると、本当に切ちゃんは過去を改変されて、誰かに……!!

 

「調さん。ここに、ボクが試作したタイムジャンプ機があります」

 

 そう言ってエルフナインが手渡してくれたのは、さっき取り出したメカメカしい懐中時計のような物だった。

 これが、タイムジャンプ機……?

 

「これはとある錬金術師が作り上げたのをパヴァリアが押収し、ボクがパヴァリアの支部跡から設計図を発見して作り上げた物です。使うなと念は押されましたが……もしも時空断裂が起きているのだとしたら、それが原因でどんなパラドックスが起きるか分かりません。下手をしたら、新たなカストディアンが襲来し世界が滅ぶ、なんて事も有り得ます」

 

 そんな事まで……!?

 

「調さん。これをあなたに預けます。もしも本当に過去が改変されているのなら……調さん、これを使って悲劇が起こる前に、世界を元の形に戻してください」

 

 これを使って、過去に……?

 急に言われても一から十まで納得できない……けど、本当に切ちゃんが過去で殺されたのなら、わたしはこれを使って切ちゃんを……!!

 

「使い方は単純です。高い場所から落下してください。そうすると、この緑色の部分が光り、この装置の中心に青色の線が発生します。それを指で切ってください。そうしたら、タイムジャンプできます」

「なるほど……でも、どうして落下しなきゃいけないの?」

「ジャンプ、だからですよ。タイムジャンプだから」

 

 ……そ、そういう理屈?

 

「ボクが聞いている暁切歌さんの命日は、ここです。詳しい時間については任せます」

 

 なんかさっきからトントン拍子で話が進んでいるけど……タイムジャンプなんて、そう簡単にやってもいい事なの?

 色んなSF映画とかだと、タイムジャンプには細心の注意が居るとか、そもそも禁止されているとか色々とある筈だけど……

 

「確かに、タイムジャンプ無しで起こった出来事にタイムジャンプで干渉するのは、規則どころか人の領分を超えています。ですが、それを元に戻すためにタイムジャンプするのなら、きっと許されるハズです。それに、もしかしたら調さんも時空断裂に巻き込まれて、元からいない歴史が作られる可能性もありますから……」

 

 えっ、なにそれ怖い。

 

「時間っていうのは、それだけ繊細なんです。それと、一つ、これだけは覚えておいてください。タイムジャンプ先で切歌さん以外の人を助けようとは思わないでください。生者と死者は差し引きゼロ人。誰かが死んだら誰かが生きる。誰かが生きたら誰かが死ぬ。これがタイムジャンプの鉄則です。いいですね?」

 

 生者と死者は差し引きゼロ人……

 そっか、だから切ちゃんが居なくなった代わりにセレナが……そう思うと、どうしてセレナが生きているのかは何となく理解できる。

 つまり、切ちゃんを助けるにはセレナを……

 ……いや、まだ諦めない。エルフナインには止められるだろうけど、もしかしたら裏技があるかもしれない。もしかしたら切ちゃんを助けてセレナを助けるための手段があるかもしれない。

 一生に一度であろうタイムジャンプ……絶対に成功させる。

 

「あとは、これを。恐らく当時でも使える電子マネーです。数十万円程、今入れました。きっと何をやるにもお金は必要でしょうから」

 

 エルフナインが渡してくれた電子マネーのカードを受け取る。

 ほ、本当にいいのかな……と思ってエルフナインの顔を何度か見たけど、どうやら経費で落ちるし、もしかしたらこのやり取りも無かった事になるからと言ってエルフナインは頷いてくれた。

 

「きっと時間が元に戻ればボクは全部忘れていますが……幸運を」

「任せて。全部元に戻してくる」

 

 エルフナインに向かって頷いて、本部を出る。

 そしてそのまま手短な高い建物の上に行って……よし。行こう。

 

「っ!」

 

 高層ビルから垂直に落下。右手にタイムジャンプの装置を握って、エルフナインにセットしてもらった時間の二日前をセットしているのを確認してから左手で念のためにギアを持ち、そのまま聖詠を唱える。

 

「various shul shagana tron!」

 

 ギアを纏って、空中から落下しながら装置を見る。

 確かエルフナインは緑色のランプが光るって言っていたけど、全然光らない……あっ、光った! それに装置の真ん中に青色の線も出てきた。

 

「後はこれを、指で切れば!」

 

 エルフナインに言われた通り、着地する前に青色の線を指で切る。

 本当にこれだけでタイムジャンプできるのか不安だったけど……でも、青色の線を切った瞬間、地平線から緑色の光が溢れてきて、光が地上の様子を一瞬にして塗り替えた。

 あれって……恐竜!?

 

「も、戻りすぎでしょ!?」

 

 叫ぶけど、まだ落下には時間がある。

 とりあえず途中で止まったら何が起こるか分からないから、自然落下に身を任せたままひたすら落下する。恐竜が大口を開けてこっちを見ていて、思わず攻撃しそうになったけど、その前に再び緑色の光が地上を覆って、今度は普通に現代の地上が見える。

 急いで着地のために体勢を整えようとしたけど、落下してビターンとなる直前に何故か体が停止。そのまま上空に打ち上げられたと思ったら、気が付いたらわたしは飛び降りる前に立っていたビルの上に立っていた。

 

「……えっ、なに、いまの」

 

 呆然としながら地上を見るけど、わたしがもう一人ビターンってなってるわけでもなく、特に問題は見当たらない。右手のタイムジャンプ装置も普通だし、ギアも普通。でも、この時代にもフォニックゲインの反応を捉える装置があるかもしれないから、急いでギアを解除。来た道を戻ってビルから降りる。

 で、降りたのはいいんだけど、特に何か変わっているようには見えない。

 本当にタイムジャンプに成功しているのか不安だけど、きっと大丈夫だと思ってそのままコンビニへ。えっと、新聞新聞……あった。

 

「日付と年は……本当に過去に戻ってる……」

 

 内心まだタイムジャンプなんて……って思っていたからか、本当に過去の年と日付を指す新聞を見て改めてここが過去なんだって事を自覚できた。

 本当にタイムジャンプしたんだ……この時代では一人っきりと思うとなんだか心細く思えてきたけど、大丈夫。きっと上手くやれる。

 という事でまずは。

 

「アメリカに飛ばなきゃ」

 

 ……先にアメリカに行ってからタイムジャンプしたら良かったかも。

 

 

****

 

 

 SONGの端末を用いればパスポートの偽造も何のその。しれっと適当な漫画喫茶に入ってパソコンと端末を直結。ゲームしてるだけですよ風な感じで端末を弄って偽造を終わらせて、後は適当な場所でそれを受け取るだけにしてからちょっと休んで漫画喫茶を出て偽造パスポートを受け取る。

 ちょろいちょろい。何するものぞ、この時代の日本のセキュリティ。

 ……今回はSONGの端末の中に入っている、この間の響さん達みたいに平行世界から帰還不可能な状態で何週間も独自で動かないといけない時になってしまった時に備えた、ハッキングや偽造を行うためのアプリがあったから何とかなったけど、もしもこれが無かったらと思うと、ゾッとする。

 まぁ、そんなもう有り得ないもしもは置いておくとして、あとは安い飛行機を取ってそのままアメリカまで飛ぶ。ちょっと面倒だったけど、これにてアメリカへの移動の任務コンプリート。まぁ、無理そうだったらギアで潜入して密入国するんだけどね。

 

「お嬢ちゃん、一人で旅行かね?」

「はい。親戚がアメリカにいるので、会いに」

「そうかそうか。えらいねぇ」

 

 そしてお隣のお婆さんからそんな事を言われたんだけど……わたし、一人旅できない位の子供に見られてる……?

 まぁ、いいけど。今更背が小さい事は気にしないよ。気にしても負けだから……

 どうせこの時代で今のわたしに何かしようにも無駄だろうしね。

 で、飛行機の中で当時の映画を見ながら暇を潰して機内食を食べて、気が付いたらアメリカに。確かこの空港が研究所に一番近かった……ような、気がする。あの研究所を出たのなんてもう何年前だろう。もう忘れた。

 手持ちの荷物はかなり少ないと言うか、ほぼ手ぶらなんだけど、特にそれを気にすることなく空港の外に出てからSONGの端末でこの近くにある空いてるホテルを探す。

 えっと……あっ、あった。ここは比較的安めだし、研究所に近い場所にあるし評価も低くもなく高くも無いからここにしよう。

 

「ヘイタクシー」

 

 久々にアメリカなんて来たけど、とりあえず英語でタクシーを捕まえて場所を伝える。

 で、伝えるとタクシーの運ちゃんは目的地まで運んでくれる。お金のことはちゃんとその前に電子マネーで払えるか可能かを聞いたから大丈夫だよ。

 目的地に着いたらタクシーの料金をしっかりと払って、その日はホテルで一泊。翌日に研究所に着いた。

 

「久しぶりに来た……あんまりいい思い出はないけど、ここで切ちゃんが」

 

 茂みの中で隠れながら研究所を観察する。

 本当に久しぶりに来たけど、この研究室はわたし達レセプターチルドレンの教育をしたりする場所。そして、セレナが死んだ場所。

 こっちの時刻に合わせた端末を見てみれば、その日付はわたしの中でも印象に残っている日付を指している。

 過去に飛んだ時は必至すぎて気づかなかったけど、今なら十分に思い出せる。

 明日にネフィリムの起動実験が始まって、セレナが死ぬ。つまり、切ちゃんは本当にセレナの代わりに死んだって事なんだと思う。許せないけど……それをわたしは止めることができる。

 絶対に止める。

 ……と、決意したけど、まさか中に潜入して一日過ごす訳にもいかないし、ギアを纏うわけにもいかないから今日はここで一先ず退散。明日は明朝の内からここで張り込もう。

 

 

****

 

 

 あの後ホテルに戻ったけど、切ちゃんが明日……って思うとどうしても寝つきがいいとは言えない結果になった。そわそわしながらほぼ眠れずに今日を迎えたけど、ドキドキする。

 もしもわたしが失敗したら、切ちゃんが死んでしまうのはもう確定している。それがどうしてもプレッシャーになっちゃう……でも、わたしがやらないといけない。わたしがやらないと、切ちゃんが。どうして切ちゃんが急に狙われるのか理由が分からないけど、わたしが絶対に止めてやる。

 

「一先ずは潜入かな」

 

 見張りの人に見つからないようにこそこそと動いて、そのまま裏口から侵入する。

 荷物搬入の入り口って実はちょちょいってやると開くんだよね。昔はそれを知っていても技術も知恵も無くてできなかったけど、今ならそれも容易い。装者七つ道具の一つ……ではないんだけど、まぁ普通に端末をプラグインしてアプリを起動したら御開帳。アラートも鳴らさずこそこそと中に侵入する。

 手慣れてるって? そりゃあ……孤立無援な状態で平行世界に行く事もちょっとはあったし? 特に一度普通に捕まったしね……そこから学んでしっかりと対策を立てました。それに、ここは勝手知ったる場所でもあるからね。

 さて、じゃあ後はどこに隠れてようかな……

 んー…………あっ。

 

「確かここ、職員用の更衣室……よし」

 

 服パクろう。

 今着ている服は、帰る時に着ていくから持ち歩くとして……後は制服を着て、誰の私物か分からない鞄の中をぶちまけてわたしの服を入れておこう。これで持ち歩けるね。

 服パクって、後は研究所の仲をうろちょろ……するんじゃなくて、ここはわたしの記憶通り動く。確かこの時代のわたしはずっと切ちゃんと一緒に居たからね。既にシュルシャガナは持たされていたけど、まだLiNLERもマトモに無い時代だから適合率が比較的高めであるわたしや切ちゃんが持ってるってだけだからね。

 

「……あっ、そういう、事なのかな」

 

 わたしが切ちゃんの事を覚えていたのは、わたしがずっと切ちゃんと一緒に居たから。

 その中でピンポイントで切ちゃんが殺されて、この時代のわたしはそれを目撃して……それで、わたしは時空断裂に巻き込まれた人間として、この時代の記憶に塗りつぶされず、元の時代の記憶を保持していた。

 ……つまり、セレナが死んだあの日、わたしが何をしていたのかをしっかりと思い出せば、切ちゃんを助ける事はできる。

 だから、思い出すんだ。今日、わたしが何をしていたか。今日、わたしがどこで切ちゃんと一緒に居たか……!!

 ……確か、あっちだ。

 

「あっちで、切ちゃんと一緒にマリアとセレナを待っていた。でも、その結果はセレナは帰ってこなくて、気絶したマリアが……」

 

 ……そうだ、思い出せないわけがない。

 この日を、セレナが死んだあの日のわたしを。

 

「……行こう」

 

 ……きっと、セレナは助けられない。

 エルフナインは言った。誰かが死ねば、誰かが生きる。誰かが生きれば、誰かが死ぬ。切ちゃんやわたし、そしてマリアの誰かが死ねばセレナは生きて、セレナが死ねば、わたし達三人が生き残る。

 わたし達の私利私欲で誰かを犠牲にする事なんて、できない。元の時代に戻すためには、死ぬと分かっていながらもセレナを……!!

 

「……いた。わたしと切ちゃんだ」

 

 でも、その考えを捨てて、職員に紛れて移動を続けて、まだ子供のわたしと切ちゃんを見つける。

 きっと、もう既にセレナとマリアはネフィリムの実験をしているあの場所に行っている。この時には既に装者としてアガートラームと適合していたセレナと、そんなセレナを心配してマムに懇願して呆れた顔をされながらも連れて行ってもらえたマリアが。

 マムはもしもがあった時、わたし達全員がそこに居れば確実に誰かが犠牲になると思って、連れていかなかったんだと思う。その結果は、確かに正解だったと思う。もしわたし達があそこに居たら……きっと、施設の崩落に巻き込まれて死んでいたかもしれない。

 

「……あとは、わたしと切ちゃんを見張っていれば」

 

 職員のほとんどはネフィリムの方に行っていて、わたし達レセプターチルドレンの方は放っておかれている。精々やる気の無い職員が見張り程度に見ている程度。そこにシレっと混ざる程度、訳が無い。

 これなら、何があっても……!!

 

「ふぁぁ……くそ、暇だな。どうして俺がネフィリムの実験じゃなくてこんなガキどもの面倒を……」

 

 あー……なんかそんな風にぼやいていたのが居たの、なんとなーく覚えてる。

 にしても、切ちゃんは一体どうやって殺されたんだろう……? わたしが覚えてない以上、分からないから構えているしかないんだけど……

 

「……ん? 何だあれ。炭、か……? ったく、誰か書類でも燃やしたのか?」

 

 どうしよう。もうギアを纏ってこの人を気絶させておいた方が……いや、でもシュルシャガナを纏えば確実にわたしと切ちゃんにバレる。変にタイムパラドックスが起きたら……いや、もう起きてるから時空断裂なんてものが発生してるのかな? そうだとしたら別に今さら我儘起こした程度で……

 

「ひぃっ!? の、ノイズ!!? そんな、警報なんて鳴ってないぞ!!?」

 

 っ!?

 の、ノイズ!? こんな時になんて……いや、おかしい。

 この時期にノイズなんて出てこなかったはず。だと言うのにノイズが居るって事は……まさか!

 

「おい、お前も逃げろ!」

 

 そう言いながらこっちに来た男の人の後ろを見れば、そこに居るのはノイズ……だけど、ちょっと違う。間違いない、アレはアルカノイズ!! あの錬金術師は、こうやってアルカノイズをけしかけて切ちゃんを殺したんだ!!

 

「で、でも、誰かに伝えた方が……」

「ガキの心配でもしてるのか!? ガキの身か自分の身どっちが大事なんだ! 悪いが俺は逃げるぞ!!」

 

 ノイズを発見した男の人が逃げて言ったけど、それなら好都合。これならシュルシャガナを纏って……!!

 

「の、のいず!? のいずデスか!!?」

 

 と思った矢先に切ちゃんが!?

 くっ、見られている以上はシュルシャガナを使う事なんて……!!

 

「きりちゃん、にげよう!」

「そ、そうデス! そっちのおねえさんも……およ? どこかでみたことが……」

「言ってる場合!? 悪いけど、担ぐよ!」

 

 しかもわたしにまで見られたしなんか気づかれかけた! もうこうなったらウダウダしている時間なんてないから、子供のわたしと切ちゃんを抱えて思いっきり逃げる。

 お、重い……! そりゃそうだよね、二人分も子供を抱えたらわたし一人分以上にはなるもんね! でも挫けない! だって鍛えてますもの!! 二人の子供を抱えてそれゆけ全力疾走! ギアがあればこんなのへいきへっちゃらなんだけど、ギアが無いとへいきへっちゃらじゃない! わたしはお米の袋より重い物を生身で持ったことがありません!!

 

「あっ、あぶないデス!」

「っ!?」

 

 抱えていた切ちゃんが叫んだから、咄嗟に身を捩った。

 その結果、思いっきり二人を前に投げ出す結果になり、更にわたしのシュルシャガナが紐の部分を分解されてどこかに飛んでいった。

 そんなっ!? いや、ギアなんて後でいくらでも回収できる。今は二人を連れて逃げないと……って!?

 

「き、気絶してる……!?」

 

 思いっきり二人をぶん投げてしまったせいか、二人は気絶してしまっていた。

 頭を打ったのか、衝撃で気絶したのかは分からない……それに、ギアがどこかへ飛んでいっちゃったから戦うための力が……

 

「ふっ、無様だな、装者よ」

 

 もう一度走るために気絶した二人を抱えようとしたけど、その前に男の声が。

 この声は……!!

 

「ま、まさか本当にこんな分解器を持ったノイズを持っているとは……驚いたぞ、未来の俺よ」

「ふっ、当然だ、過去の俺よ。さて、本来なら俺をふざけた言葉遣いで邪魔したそっちの金髪の装者を殺すだけで終わらせてやろうと思ったのだが……まさかあの時のピンク色が何故かこの時代に居るのは誤算だった。まぁ、タイムパラドックスを恐れてシンフォギアを使えなかったようだがな?」

 

 あの時取り逃した錬金術師……!

 それも御大層に過去の自分まで引き連れて!!

 

「……何罪になるのかもう分からないけど、とりあえずあなたを逮捕します。罪状はそっちがご存じのはず」

「はっ! ギアの無い小娘が一人で何ができる! 過去に自力で来た事だけは褒めてやるが、記憶を持った貴様がここに居るのなら殺すしかあるまい!!」

「そ、そうだ! シンフォギアなんてよく分からん物を使う異端者は殺してしまうべきだ! お前たちのようなのがいなければ、俺のタイムジャンプ装置の完成は早まるらしいからな!!」

 

 って、まさかのこのタイムジャンプマシンを作ったのって、この人!?

 た、確かにタイムジャンプマシンを自分で作れるなら自力で過去に戻って過去改変だってできるけど……いや、今はそんな事はどうでもいい。タイムジャンプ装置を持っていようが持っていなかろうが、どうでもいい。

 この場を切り抜けて、アルカノイズを倒して歴史の流れを元に戻さないと!

 でも、この手に握っていたはずの鋸が……

 ……いや、ある。

 そうだ、この時代のわたしなら!!

 

「やっぱり! ごめんね、借りるから!」

 

 やっぱりあった。シュルシャガナのギアペンダント。

 リビルドギアでもないし、強化改修もしていないからアルカノイズ相手には不利だけど……でも、アルカノイズの総数は十体程度。それなら、未強化のシュルシャガナでも!!

 

「various shul shagana tron!!」

「なっ、過去の自分のシンフォギアを!?」

「過去のわたしのギアなら、適合できない理由なんてどこにもない!!」

 

 纏うのはかつての黒いギア。

 出力が予想以上に低い……エルフナインが作ってくれた愛と優しさのLiNKERを使っても、魔法少女事変の時の出力まで至らない……!!

 でも、なんとかなる!!

 

「卍火車!!」

 

 バックファイアのせいで大技は使えないけど、それでも基本的な技なら使える!

 丸鋸を発射して、一気にアルカノイズを殲滅する。それと同時に過去のわたしと切ちゃんを担ぎ上げて、ついでにすっ飛んでいたわたしの本来のギアも同時に見つける。

 相手からの攻撃は来ない。なら、ギアは回収だけしておけば大丈夫!

 

「この、国の犬風情がぁぁぁ!! 行く先々に現れ俺の崇高なる目的を邪魔してからに!!」

「国の作ったルールも守れず変な目的のために、夜な夜な一人でやらしい事をしている人の邪魔なんて、いくらでもしてやる!」

「おい、過去の俺!! 最終手段だ!!」

「ほ、本当にやるのか!?」

「当然だ! このすぐ横では聖遺物の起動実験をしている! そいつは聖遺物を食らう聖遺物だ! それをシンフォギア装者にぶつければ!!」

 

 聖遺物を食らう聖遺物って……間違いない! この錬金術師共、ネフィリムをわたしに!!?

 

「そんな事、絶対にさせない!」

「させない? ふん、それはもう手遅れだ」

 

 手遅れ? まだ何もしてないなら間に合うはず……!

 

「既に実行しているからだ。過去の俺がぐずぐずしていたからな。こっちのスイッチで、既にここに至るまでの壁をアルカノイズで炭にしておいた。ほら見ろ、来るぞ、貴様らの天敵がな」

 

 錬金術師が話したと同時に、わたしの真横の壁がアルカノイズによって消え去る。

 それと同時にその奥に見えるのは……!!

 

「アルビノ・ネフィリムッ!!」

 

 聖遺物を使わず機械で起動させた結果生まれた、あの白いネフィリム!!

 アルカノイズに炭にされるんじゃなくてアルカノイズを食らいながら聖遺物を纏うわたしに突っ込んでくるネフィリムに対して、急いで大きな丸鋸を二枚展開して盾にするけど、それを突き抜ける程の衝撃と共に二枚の丸鋸が食われ、そのままわたしの体は吹き飛ばされる。

 

「ぐぁぁっ!?」

 

 いったい……!! でも、両手で抱えた過去のわたし達だけは、守り切る!

 二人を抱えて背中から叩きつけられる……けど、守り切った!

 アマルガムを使えば倒せるかもしれないけど……でも、今のわたしは過去のわたしのギアを使っている。これじゃあアマルガムを使えない……!! 出力の低いギアでどうやってネフィリムを倒せば……!!

 

「はははは! いいぞ、もっとやれ聖遺物喰らいの聖遺物よ!!」

 

 そんでもってあっちの傍観者はウザい!!

 後で拷問にでもかけてもう二度とこんな事を想い付かないように調教しておいた方がいいんじゃ……

 

「お、おい、なんかあの怪物、こっちを見てないか!?」

「は? 気のせいだろう。あいつが狙うのは聖遺物だけだ。俺達は聖遺物なんて……」

「タイムジャンプ装置の中に埋め込んでいるだろ!!? 時空間に干渉する聖遺物を!!」

 

 ……へ?

 いや、ちょっ、拷問にかけるとは言っても殺すなんて言ってない! もうネフィリムのせいで誰かを殺させたくなんかない!

 

「間に合って!!」

 

 すぐに卍火車を撃つけど、今のわたしの卍火車じゃネフィリムを止められる訳も無く、むしろネフィリムはそれを喰らって大きくなるだけ。わたしの方を見ずに、恐らく力が強力なのであろうタイムジャンプ装置を持つ錬金術師の方へと向かって……

 

「や、やめっ」

「い、嫌だったんだ! 最初から! こんな計画に乗るなんてぇぇぇ!!」

 

 助けようと手を伸ばしたけど、二人はわたしの目の前で食われてしまった。

 っ……また、ネフィリムのせいで犠牲者が……多分過去のあの人は本当に関係ないはずだったのに……!!

 ……でも、時間はできた。一度ギアを解いて、昔のわたしの手に握らせてから、わたし自身のシュルシャガナを握る。

 

「various shul shagana tron」

 

 ギアを纏い、そのまま両手を交差する。

 

「アマルガムッ!!」

 

 ギアインナーが変わり全てのエネルギーが金色のバリアフィールドへと変換される。それを束ねて咲いた金色の花を掲げ、不退転の武器とする。

 切ちゃんが居ないアマルガムは初めてだけど……でも、この盾で、守る!!

 もうネフィリムに殺される被害者なんて、要らないんだ!!

 

「この力で、守るんだ!!」

 

 盾を掲げ、ネフィリムと相対したその時。

 

「だからこそ、共に戦いましょう!!」

 

 ネフィリムが通ってきた穴から、銀色のビームが飛んできてそのままネフィリムに炸裂。同時に飛んできた短剣が次々とネフィリムに突き刺さり、ネフィリムは怯む。

 このビームと短剣……当時のマリアはまだアガートラームへの適合はできてない……

 なら、このアガートラームの攻撃の主は!!

 

「どうしてあなたがシュルシャガナを纏っているのか分かりませんが……月読さんと暁さんを守ってくださっているのなら、共に戦いましょう! お二人と、F.I.Sのみんなを助けるために!!」

「セレナ……!!」

 

 やっぱり、セレナだ!!

 そうだ、まだネフィリムが稼働しているのなら、セレナは死んでいない。むしろネフィリムがここに居るのなら、セレナの死因が無くなったと言ってもいい!

 でもこのまま一緒に戦えばきっとセレナは死んじゃうけど……だけど、この場で共闘しない理由が無い!!

 

「わかった、一緒に戦おう!」

「はい!」

 

 二人で並んで武器を構えてネフィリムと相対する。

 白いネフィリム……こうやって見るのは初めてだけど、あの時の赤いネフィリムと比べれば、赤子も同然!

 

「わたしが時間を稼ぐ! 隙ができたらわたしがネフィリムを止めるから、セレナはその間に絶唱を!」

 

 セレナの絶唱の適性ならネフィリムを止めることができるから、今回の戦いはセレナがカギになる。

 

「わたしの絶唱……はい、わかりました! わたしは大丈夫ですけど、あなたは大丈夫なのですか!?」

「この黄金錬成の不退転なら、心配いらない! あんな芋虫もどき、どうとでもなる!」

 

 盾を投げ、変形させて人型にする。

 それを両手の指から伸ばしたエネルギーワイヤーで操り、わたし達の前に立たせる。

 きっと一度でも食われれば、再生はできない。この力は不退転。後退なんて許されない力にスペアなんてない。一度使ったのなら、勝つか負けるかの戦い!

 チャンスは一回きり。その一回で、ネフィリムを倒す!!

 

「来た!」

 

 ネフィリムがわたし達を食べようと突っ込んでくる。

 それならカウンターで!!

 

「そこっ!!」

 

 ネフィリムに殆ど思考能力はない。だからこその愚直なカウンター。

 突っ込んできたネフィリムの前足を金色のロボットで斬り裂き、もう片方の足をそれを操るエネルギーワイヤーで斬り裂く。きっと通常時のギアだと力負けしていただろうこのカウンターも、アマルガムの力なら力づくで押し込めた。

 両前足を斬り裂き、ネフィリムが倒れた所でロボットを変形。檻のようにしてそのままネフィリムを拘束する。

 

「セレナ!!」

 

 ネフィリムが咆哮を上げながらロボットに食らいつく。

 いくら不退転の力でも、ネフィリムのような聖遺物特攻の攻撃を受けたら無事では済まない。徐々に徐々に食われて行く檻に顔を顰めながらも、でも絶唱分の時間は稼げたことで勝利を確信する。

 セレナの絶唱が一撃でも当たれば、この戦いは!

 

「――Emustolronzen fine el zizzl…………いきますっ!!」

 

 セレナが絶唱を唄い終え、白銀のエネルギーを放出する。

 そのエネルギーの波に巻き込まれたネフィリムが苦しみだし、わたしはセレナの邪魔をしないように檻を縦に戻して腕に装着。そのまま後ろに飛び、同時に気絶している過去のわたしと切ちゃんを抱えて上げて衝撃から逃れる。

 十数秒。いや、もしかしたら数分にも及ぶセレナの絶唱によるエネルギーベクトル操作が行われ、白銀の光が徐々に徐々に収まったと思うと、ネフィリムが居た場所には基底状態にまで戻ったネフィリムが。そして、セレナは肩で息をしながらもなんとか立っていた。

 

「はぁ……はぁ……や、やった……!!」

 

 基底状態にまで戻したセレナはそれを見て喜んでいるけど、わたしは見逃さない。

 セレナの真上の天井が絶唱の衝撃で崩れ始めているのを。

 

「危ない!」

 

 それを盾で防いで壊し、セレナを何とか助ける。

 

「あっ……ありがとう、ございます……」

「ううん。セレナのお陰で助かったから、代わりに助けただけ。辛いなら寝てていいよ。後はわたしが何とかしておくから」

「い、いえ……大丈夫、です。それよりも、月読さんと、暁さんを先に……」

 

 絶唱のバックファイアで目と口から血を流して本当に辛そうなのに、セレナは過去のわたしと切ちゃんの心配をしてくれる。

 優しいなぁ、セレナは。

 でも、そんなセレナにいつまでも構っていられない。ここでもたもたしていたら、もしかしたらわたしのせいで未来が変わってしまうかもしれない。こうしてアルビノ・ネフィリムを基底状態に戻して切ちゃんを助けられた以上、わたしはここで退散しないと。

 

『セレナ! 無事ですか、セレナ!』

 

 そう思いながらも、とりあえずここからどうしようだなんて考えていると、マムからの通信が入った。

 そっか。一応過去の通信もシュルシャガナなら傍受できるんだ。

 

「ま、マム……ネフィリムは、封印しました。それと、月読さんと暁さんも、無事です」

『よかった……待っていてください、セレナ。すぐにそちらに回収班を寄越します。本当に、よく頑張りましたね』

 

 ……それなら、ここでわたしは退散しようかな。

 これ以上ここにいたら厄介な事になるし、ね。

 

「……じゃあね、セレナ」

「え? あっ、ちょっと!?」

 

 アマルガムのまま、こっちのわたしのシュルシャガナをセレナに投げ渡して、そのまま研究所を出る。

 多分セレナはこの後、運命通りに……でも、切ちゃんは助かった。歴史はきっとこれで元通りになる。

 だから、これでいいんだ。これで。

 わたしはF.I.Sの追手が来ない内に飛行機のチケットをその場で取ってそのまま日本に戻り、この間飛び降りたビルの上から再び飛び降りた。

 きっと、これでいいんだ。セレナは助からなかったけど、切ちゃんは助かったから、これで……

 目下に広がる恐竜達の喧嘩やらを見送りながら、どうしても釈然としない気持ちを持って、わたしはそのまま現代へと戻ってきたのでした。

 

 

****

 

 

 そう、釈然としないまま、戻ってきた。

 だってセレナはあの後死んでしまい、歴史は元通りになるのだから。だから、もう二度とセレナには会えないって思っていた……思っていたのに。

 

「あっ、月読さん。昨日はどうしたの? 訓練にも来ないで休んだりして」

「そうデスよ、調! 連絡しても出てくれないなんて酷いじゃないデスか!!」

「えっ、あ、いや、その、それは……ね?」

 

 なーんであの日ちょっとだけ見た大人になったセレナが素知らぬ顔で混ざってるの!!?

 

「調さんにはボクが作った装置の実験に極秘裏に行ってもらってたんですよ。こればかりはあまり知られたくない事だったので、切歌さんとセレナさんにも秘密にしてもらったんです」

「そ、そうそう、そう言う事……」

「なんだ、そうだったんデスか。てっきりあたしと同じで頭痛と吐き気で休んだのかと……あっ、ちょっとチョコレートミルク飲んでくるデス」

 

 どうやら歴史の改編で昨日のわたしはエルフナインの言う通りの事をしていた事になったけど、それ以上に気になるのはやっぱりセレナだ。

 あの後、セレナは運命通りに死んだはず。じゃないと、過去に戻る前にエルフナインに言われた、生者と死者は差し引きゼロって……

 …………ん? 生者と、死者は、差し引きゼロ…………

 

「…………あっ!!?」

 

 そ、そうだ!! ネフィリム!!

 ネフィリムに一人食われてた!! あの時代の、あの場に居る筈が無かった錬金術師が一人、あそこで食べられていた!!

 セレナが死んで切ちゃんが生きるのなら、セレナの代わりにあの錬金術師が死んでセレナが生きていたのだとしたら!!

 

「どうしたの、月読さん。そんなに大きな声を出して」

「い、いや、なんでもないよ……ちなみに、セレナ。アルビノ・ネフィリムって、セレナはどうやって基底状態に戻したんだっけ……?」

 

 セレナとはもうあれから会わないだろうからと思って共闘したけど、セレナが生きているって事は……

 

「……戦って、戻したよ?」

「そ、そうだよね。ち、ちなみに、それは一人で……?」

 

 汗をダラダラと流しながら聞けば、セレナはどうして今さら? と言いたげな表情をしていたけど、すぐに何かに思い当たったかのような表情をして、笑顔でこう告げてきた。

 

「月読さんと、だよ? あの時はありがとね、ついさっきまでどうにかして過去に行っていた月読さん?」

「あ、あはは……な、ナンノコトヤラ…………」

 

 ば、バレテーラ……

 わたしはどうやら意図せずに歴史を変えてしまったらしい。やっちまったと言わんばかりに冷や汗をダラダラと流して、こっちに戻ってきた瞬間消失したタイムジャンプ機を思い浮かべながら、とっととその場を離れた。

 だ、だからなのかなぁ……さっきからずーっと、チョコレートミルクが飲みたいって思うのは…………

 …………もう考えないようにしよう、そうしよう。




という事で時空断裂をどうにかしたつもりが新たに時空断裂を引き起こして過去が変わってあーもう滅茶苦茶だよ状態だけどいい方向に世界が進んだのでチョコレートミルクをがぶ飲みエンドでした。サラッとその場に居た切ちゃんもチョコレートミルクをがぶ飲みエンド。

はい、こっからはいつもの怪文書ですが……まずはULTRAMANコラボ。とうとうやりやがったなと思いながらもストーリーを読んで、やっぱULTRAMANの諸星さんとか北斗は性格全然ちげーなーって思いました。
最初は洗脳……家族を殺された……それぐらいできる天才……つまりバルタン星人だな!! とか思った直後にノラザム星人出てきて誰だよテメーは。いきなり現れて好き勝手言ってんじゃねーぞ状態でした。でも面白かった。
あとエースギアの調ちゃんが可愛い。ウルトラタッチしたりホリゾンタルギロチンするの可愛い。凸れなかったけど。

で、ようやく書けたし更新よーとか思った直後!! なのはコラボって俺得コラボでコラボの八割を占めるのをヤメロォ!(建前)ナイスゥ!!(本音)
多分なのは、フェイト、はやての三人が出てきて三人をモチーフにしたギアが出てくるんでしょうけど、個人的には翼さんにレヴィのバルニフィカスを持って欲しい。水色だからフェイトさんよりも合ってるだろうし。
最近色んなとこでなのはがコラボしてるなーとか思ってたんですが、まさかのシンフォギアとまでコラボしてくるとか予想外でした。いや、上松繋がりで来ねーかなとか思ってたんですけどね?
ゴジラ、ULTRAMAN、なのはとコラボしたから出したい作品が増えていく……とりあえずゴジラの平成モスラコラボ話書いて、ULTRAMANはどうしましょうか……バルタン星人がシンフォギア世界にやってきてスペシウムが使えるF.I.S組が戦うとか、そんな話を書いてもいいかもしれませんね。

コラボキャラ使ったこんな話を! とかあったら活動報告の方に怪文書で乗っけてくれるともしかしたら参考にするかもしれません。

君達の怪文書、待ってるぜ!!

……そういや三人娘って一応聖遺物纏っているんだからギャラルホルン通って異世界に来れたりしないのかな。可愛いと思ったらやべーくらいゲスでジジイに惚れてるあの子もギャラルホルンを通ってこれたんだし。
可能なら出してあげたい感ある。
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