サボってた訳じゃないよ? ただ、apexやったりゲームしたりVにハマったりとか色々と忙しかったわけで……
よし、この話ここまで!
今回は何か月か前の話になりますが、テイルズオブシンフォニアとシンフォギアがコラボしたので、そのコラボ回です。
ただ、一点だけ注意を。
今回の話は厳密に言えばテイルズオブシンフォニアではなく、テイルズオブシンフォニア ラタトスクの騎士とのコラボです。そのため、エミルやマルタが出てきます。
ついでに言うと、時間軸も色々な事情から物語も終盤も終盤、ギンヌンガ・ガップへと向かった直後の話となります。
なのでラタトスクの騎士のネタバレが多大に含まれていますし、エンディングにも軽く触れています。
既にラタトスクの騎士をプレイ済み、もしくはそれを承知している、という方のみここから先へとお進みください。
で、改めて軽く書きますが、ギンヌンガ・ガップ突入直前の部分からエミル達がやってきますので、エミルは常時緑目状態。つまり、エミル状態で話が進みます。ラタトスク状態はありませんのでご注意ください。
それと、一部のキャラが思いっきりレイズの技を使いますので、知らない技だなーと思ったら大体レイズの技だと思っていただけるとありがたいです。
それでは、本編をどうぞ。
ちなみに五万文字あります。
この間、翼さん達はギアを纏わなくてもギアを纏った装者並に戦えるファンタジー世界の人達と一緒にちょっとした事件を解決したらしい。
エターナルソードとか、天使術とか、魔法とか……そういう錬金術とはこれまた違ったファンタジーな事に巻き込まれて翼さん、奏さん、マリアの三人は大変だったけど楽しかったとか、あの四人はきっと世界を救えたんだと語っていた。
それと、モンスターを倒すとアイテムとかお金を落として、本当にRPGの世界がそのまま具現化したみたいだった、とも言っていた。なんやかんやでわたし達が知り合った異世界の人って、ガールズバンドのみんなが一般人程度で、他は大体怪獣だったりヒーローだったり調査兵団だったり魔法少女だったりで、RPG的なファンタジーな人たちは初めてだから、翼さん達も話を聞かせてくれる時は凄い笑顔だったよ。
で、そんな話を聞いたものだから、わたしもその、ロイドさん、だっけ? その人たちと会いたいなー、とか思いながら今日も学校に向かっている……んだけど……
「う、うぅ……ま、マルタ……退いて……」
「な、何が起こったのよぉ……」
…………不審者を二名がベンチの上でくんずほぐれつしていました。
男女の不審者で、どっちも服装が明らかに日本に合っていない物なんだけど、それ以上に不審な点が二つ。
まず男の子なんだけど、腰に剣みたいなのを吊るしてるんだよね。た、多分真剣じゃないと思うんだけど……ここ日本だしね。で、女の子の方は何だろう……ヨーヨー? じゃなくてチャクラム……? でもなくて……そんな感じの円状の物を手に付けている。で、わたしの見間違いじゃなければ確実にアレ刃付いてるよね……
えっ、警察に連絡すべき? それともSONG? これ何案件……? 公の組織に知らせていいやつ? それともわたし達が対処すべきやつ? なんか後者な気がするけど……
「いててて……確か僕達、ギンヌンガ・ガップに行くために……」
「うん、異界の扉に行って、それから光に包まれたって思ったら……」
な、何を話しているの? ぎ、ぎんぬん……なに? 異界の扉って……?
あ、明らかにこれわたし達案件だよね……聖遺物、異端技術、平行世界案件だよね!!
そう思いながら携帯で弦十郎さんに電話をしようと思ってポケットからスマホを取り出した。えっと、弦十郎さんの電話は……
「……あれ? あそこに誰かいない?」
「あ、ホントだ。女の子、みたい」
あっ、気づかれた。
ど、どうしよう。ギアを纏って逃げるべき? でも、あの二人は全然敵意を持っていないみたいだし、言葉もしっかりと通じるっぽいから、普通に話しかけてみてからでも遅くない……かな?
「あの、ちょっといいかな?」
とか思ってたら声をかけられた。
と、とりあえず話は通じそう、かな。こういう時って会話が通じずに戦闘に発展する時が八割くらいだから、ちゃんと会話してくれるんならありがたいや。
「あ、はい。なにか?」
「えっと、ここってどこか分かる? ルインやパルマコスタじゃないみたいだし……」
「る、ルインって何? えっと、ここは……」
なんかやっぱり異世界案件っぽいなー、と思いながらも、ここが日本のどこかを説明する。けど、二人とも首をかしげてどういうコト? と言わんばかりの表情をしている。
「ぎ、ギンヌンガ・ガップじゃない……みたいだね。見ればわかるけど……」
「ど、どうしよう……コレットやジーニアス達も居ないみたいだし……完全にあたし達二人だけで見知らぬ場所に飛ばされちゃうなんて……仲間にした魔物も居ないみたいだし」
コレットに、ジーニアス……?
そういえば、その二人の名前ってこの間マリアから聞いた気がする。確か、コレットって子は天使術を使って、ジーニアスって人も魔法を使うとか言っていたような。
……そういえばこの二人、なんだかファンタジー系の人っぽい服装してるよね。現代風じゃなくて中世風というかなんというか。
……一応聞いてみる? まさかそんなミラクルが起きるわけないだろうけど。
「そのコレットとジーニアスって、天使術を使う人と魔法を使う人? 確か……金髪の子と、銀髪の。あっ、チャクラムとけん玉を使ってるって言ってたっけ」
マリアから又聞きした情報を二人に伝えてみると、二人ともかなり驚いた様子でわたしにちょっと詰め寄ってきた。
「コレットとジーニアスを見たの!?」
「ど、どこで!? あと、それ以外に誰かいなかった!?」
ちょっ、ちょっと落ち着いて……
とりあえず二人を一旦押しやって冷静にさせてから、改めてマリアから又聞きした事について説明する事にした。
もしかしたら名前が同じで特徴も一緒の別人かもしれないしね。あと、その二人を見たことはないし。
「わたしは見た事無いよ。ただ、この間わたしの仲間がその人たちと会ったの」
「君の仲間が?」
「うん。確か会ったのは……二刀流を使うロイドさんと、天使術を使うコレットさん、魔法を使うジーニアスさんと、斧を使うプレセアさん、だっけ。わたしも又聞きしただけだから知り合いとは限らないけど……」
「ま、間違いない。それ、僕達の知ってるロイド達だよ」
えっ、本当に?
それなんてミラクル?
でも、そうなるとこの人たちは確実に平行世界の人って事だよね。しかも、マリア達の出会ったロイドさん達の仲間の。
……ど、どうしよう。生身の人はギャラルホルンを通ることはできないし、シグルドのデュプリケーターも異世界から来た痕跡が無いとこの人たちを元の世界に帰す事なんてできないし、APPLEはこの間帰っちゃったし、平行世界で出会った平行世界の響さん含めた人たちはそもそも敵対しているし……
となると、事情を説明してSONGで保護してもらうしかないよね。SONG本部にまで来てもらえば、少なくとも事情をある程度は知っているであろう翼さんとマリアが来てくれるだろうし。二人とも今は日本に居るからね。
「えっと、とりあえず現状なんだけど、多分二人とも何かしらの理由で平行世界……この世界に来ちゃったんだと思う」
「へ、平行世界? そんな……いや、でも……」
「少なくともわたし達の世界でそんな剣を持ってたらすぐに逮捕されて檻の中だから、間違いないと思う」
「えっ、そうなの? 剣を持ってるだけで逮捕って、なんだか敏感過ぎない?」
「逆に物騒だよ。だから、わたしの所属してる組織で一旦保護してもらおうと思うんだけど、どうかな? もしかしたらあなた達の仲間のロイドさん達、だっけ。その人たちも保護されてくるかもしれないし。嫌なら無理強いはしないけど……」
もしもこの人たちが自力で帰る術を持っているんなら過干渉すべきじゃないからね。だから、保護されるか自分達で動くかはこの人達の最終決定次第にはなると思うけど……
まぁ、最終的には銃刀法違反で逮捕からのわたし達が引き取りって形になるだろうから、最終的にはSONGで保護、って形になるのかな。
あ、あと。
「それと、多分そっちのお金もここじゃ使えないからその内生きていく事も難しくなるかも……」
「お、お金も!? ガルド使えないの!?」
「うん、確実に」
そんなお金聞いた事無いし。
そう言うと、二人は困ったように顔を会わせた。
「ど、どうしよう……食材、全部ジーニアスとプレセアが持ってるし……」
「僕達、魔物用の餌しか持ってないもんね……一文無しのすかんぴんって……」
その剣を質屋に出せばワンチャンあるよ、とは言わない。多分剣って剣士の魂的な感じだろうから。
暫く待ってみると、二人ともやっぱり一文無しですかんぴんの、しかも犯罪犯している状態で街中を歩くのは嫌だったのか、背に腹は代えられないと言わんばかりにがっくりと肩を落とした。
「えっと……君の所属してる組織って、ヴァンガードみたいな感じじゃないよね?」
「ヴぁ、ヴァンガード……? カードゲームの事……? いや、別にやましい事が無ければ平行世界のお客さんはしっかりと保護してくれる優しい組織だよ?」
「それじゃあ、せめて帰る手段が見つかるまでそこに居させてもらっても大丈夫? あっ、ちゃんと働くわよ?」
「そこは心配しなくてもいいと思うけど……分かった、ちょっと待ってて。今事情を説明して迎えの車に来てもらうように説明するから」
よし、二人とも剣を抜かずに話に応じてくれた。
やっぱ人間には言葉があるんだからこうならないとね。今まで挨拶代わりに戦闘があったのが異常だったんだよ、うん。
あっ、そういえば自己紹介してない。
「えっと、わたしは月読調。調が名前ね。二人の名前は?」
「あ、そっか。名前、言ってなかったっけ。僕はエミル。エミル・キャスタニエ。よろしく」
「あたしはマルタ・ルアルディ。よろしくね、調」
「うん、よろしく。エミル、マルタ」
これは今日の学校は公欠かな。また追加の宿題がどーんどーんと……いや、人命には代えられないから別にいいんだけどね、うん……
二人も保護に同意してくれたし、一旦二人には剣と、手の丸い武器を下ろしてもらってから弦十郎さんに電話をかける事に。あ、でも弦十郎さんのプライベートの奴じゃ駄目だよね……じゃあ本部宛に電話をしないと。で、そこから転送してもらえば弦十郎さん達、本部の人達にこの事が伝わる筈だし。
じゃあ、本部の方に……
「っ……! 待って、調」
え?
なんか急にエミルが剣の柄を掴んでわたしの前に立った。しかもマルタまで。
えっと、急にどうしたの?
「来るよ、マルタ! 調はなるべく下がってて!」
「大丈夫、調の事はわたし達が守るから!」
「え、えっと、何か来てるの? せ、説明してくれると……」
わたしが混乱して二人に説明を求めた瞬間だった。
空から、何かが降ってきた。
その衝撃に体が若干吹き飛びそうになるけど、それを抑えて前を見れば、そこには見たことも無い生き物が鎮座していた。
まるで木の化け物。そうとしか言えないような生き物が、触手のような枝を動かしながらこちらを見ている。
「トレントが三体! くっ、こういう時にジーニアスやゼロスの魔法があったら!」
「でもわたし達ならトレント程度、敵じゃないわ! 行きましょう、エミル!」
「うん、マルタ!」
わたしも戦えるって言おうとしたけど、出遅れた結果エミルが走り出して、マルタがその場で構えた。
っていうか、エミル凄く速い! 剣を持ってるのに、ギアを纏ったわたし達にも負けない速度でトレントに向かって走っていってる!
「はぁぁぁ!! 魔神剣ッ!!」
走りながらエミルが叫んで剣を振り上げた。すると、剣を振った時の衝撃波が飛び出してトレントに当たり、トレントを怯ませた。あ、あんなことをギアも無しにやるなんて……
「まだだ! 虎乱蹴! そして、崩襲脚ッ!!」
しかもエミルはそのまま一気に一体のトレントに接近して、飛び上がりながらトレントを蹴って、更に空中で体を回してトレントを蹴って跳躍すると、今度は炎を纏って空中から蹴りをトレントに叩き込んだ。
な、何か生身でギアでしかできないようなことしてる……炎を纏って蹴りって……
その蹴りでトレントの一体が燃え始めてわたし達よりも大きな体を悶えさせながらエミルに突っ込んでいく……って、危ない!
「various shul shahana tron!」
このままじゃ確実にエミルが大怪我を負う。だから、聖詠を口にしながらマルタの横を抜けて、そのまま真っ直ぐエミルの元へと走る。
大丈夫、これなら間に合う!!
「し、調!?」
後ろからのマルタの声を敢えて無視しながら走り、途中でギアの展開が完了したからギアでの走行に切り替え、エミルを追い抜かす寸前で禁月輪を使って更に加速してそのまま燃えるトレントを真っ二つに斬り裂いた。
「なっ!? し、調、なんだよね? その装備は……」
「話はあと。今はこいつらを倒さないと」
真っ二つに斬り裂いたトレントは何故か消えて行って、その場に見た事が無い硬貨を落とした。
この特徴……確かに翼さん達が言っていた魔物の特徴そのものだ。だから、確実にこのトレント達はエミルたちの世界から来たんだと思う。
でもなんで……? なんでそう平行世界から…………いや、考えるのは後。今はこのトレント達が一般人に被害を与える前に討伐しないと。
「二人とも、下がって!」
そう思いながらもヨーヨーを構えてエミルの横に立ったけど、直後にマルタからの声が。
振り返れば、マルタが目を閉じてこちらに手を向けていた。何をするのか分からないけど、エミルが下がったのに従ってわたしも後ろに下がる。
すると。
「煌きよ、威を示せ! フォトンッ!!」
フォトン、とマルタが叫ぶと同時に一体のトレントを光の球体が包み込んで、それが破裂する事によってトレントの片腕……片枝? が吹き飛んだ。あれが魔法なんだ、とわたしがその光景に驚いていると、すぐにエミルが前に向かって飛び出した。
「決める! 砕覇、双撃衝!!」
剣を突き刺してからの二連撃。その攻撃にトレントは耐えられなかったみたいで二連撃によってトレントは斬り裂かれ、消滅していった。
生身であれを斬り裂くなんて、本当に凄い……けど、負けてられない。
一気に前に出たエミルを狙って最後の一体のトレントがエミルを攻撃しようとするけど、その前にわたしが飛び上がって足から電ノコを生やして一気に落下する。
「これで、トドメ!!」
もちろん、電ノコに木が勝てるわけもなく、トレントは真っ二つに斬り裂かれて消滅していった。で、代わりになんか落ちた。
えっと……これ、グミ?
えっ、グミ? 思いっきり地面にボトって落ちてたけど食べていいのこれ……?
「お疲れ、調」
「凄いじゃない、そんな装備を持ってたなんて!」
「えっ、あ、お疲れ様。まぁ、持っていたと言うか変身したと言うか……」
とりあえずグミは一旦置いておくとして、ギアを解除すると二人は驚いたのか目を見開いていた。
まぁ、そりゃそうだよね。シンフォギアなんてビックリドッキリの塊みたいなものだし。
ギアについては多分説明しても分からないだろうし、わたしだってどういう原理でギアが展開されるのかとか分からないから、一応変身して戦えるようになるんだよ、とだけ説明してから本部に連絡を入れた。
本部の方でもわたしのフォニックゲインは観測できたらしく、事情と用件を伝えればすぐに迎えが来る、との事で暫く待っていたら車が来たので乗り込み、そのまま本部へ。
ちなみにエミルとマルタは初めての車に驚きながらもちょっと興奮してたよ。でも、二人の言ってたレアバードっていう一人乗りの空飛ぶ機械の方が凄いと思うんだけどなぁ……
****
本部に着いてから、わたしとエミル、それからマルタの三人で弦十郎さんと、自分の仕事を切り上げて事情の把握のために指令室に来ていたありのままを説明する事にした。
一瞬二人が弦十郎さんを見た時に「つ、強い……!!?」って一歩退きながら呟いていたけど……もしかして二人とも、相手を見ただけで何となく強さが分かったりするのかな……?
で、エミルとマルタがどうして自分達がここに居るのか、というのを説明し終えた。
「――という訳なんです。僕達もどうして自分達がここに居るのか分からなくて……」
「魔界への扉、ギンヌンガ・ガップか……エルフナインくん、聞いた事は?」
「調べてみましたが、こちらの逸話としてはギンヌンガガプが残されていました。ですが、ラタトスクは世界樹ユグドラシルに住まう栗鼠の精霊です。それがギンヌンガガプの主と言うのはとてもですが……」
「ついでに言えば、シルヴァラントやテセアラという土地についてもこちらは何も情報を持ちえないな……やはり、君達の世界は我等の認知するどの平行世界よりも遠い平行世界で間違いないだろう」
今回に関しては、結構状況が詰みに入っていると思う。
翼さん達の時はエターナルソードがあったから何とかなったけど、今回ばかりはシグルドの定期連絡も結構先みたいだし、結構詰みが入っていると思う。
あと、エミルがラタトスクは栗鼠の精霊って言葉に何故か反応して「僕ってこっちだと栗鼠なんだ……」って遠い目していたけど、エミル達とラタトスクってそんなに因縁があったりするの……?
「そう、ですか……その、元の世界に帰る方法って、あったりしませんか?」
「すまんな……我等の持つ平行世界への移動手段は調くん達のような聖遺物を纏う者でしか行うことができない」
「聖遺物……シンフォギア、ってやつ?」
「あぁ。聖遺物そのものが移動できることも確認してはいるが……」
「それって、あたしじゃ使えないの?」
とりあえず、現状はシグルドを待つしかない。そう思いながら溜め息を吐いていると、ふとマルタがそんな事を切り出した。
確かに、ギャラルホルンを通るにはシンフォギアを纏うのが手っ取り早い。けど、それには奇跡的な確率でしか持ちえない適合率が必要だから、実際にシュルシャガナを握ってもらったけど、やっぱり纏うことはできず。
エミルの方も試してみたけど、案の定。
で、その後も結局どうしたらいいのかは分からないから、最終的にはシグルドを待つことになって、エミルとマルタもどうしようもないという事でそれに頷いてくれた。
「では、エミルくんとマルタくんは俺達SONGが責任を持って保護させてもらう。何かあれば遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます、弦十郎さん」
「あ、じゃあ早速一ついい? 多分あたし達だけじゃなくて仲間のみんなもこの世界に来ているから、見つけたら同じように保護してほしいのだけど……」
「勿論だ。ならば、君達の仲間の特徴や名前を教えてくれるか? 警察やその他関係部署にも掛け合ってそのような人物の保護履歴等が無いか確認してみよう」
もしかしたら既に保護か逮捕されているかもしれないから。
そういう訳で二人に仲間の特徴を聞くと、結構分かりやすい感じの特徴を教えてくれた。
赤い服で二本の剣を吊るしているロイドさん。ロングの金髪で巫女服を着た天使コレットさん。銀髪でけん玉を武器にしている見た目は子供なジーニアスさん。そんなジーニアスさんのお姉さんのリフィルさん。忍の一族でお札とかをいっぱい持っているらしいしいなさん。日本人……?
で、後は赤髪でイケメンらしい女ったらしなゼロスさん。ピンクの髪を二括りにした見た目は子供年齢は大人のプレセアさん。手枷をしているかもしれないし牢屋に居るかもしれない巨漢のリーガルさん。えっ、悪口?
「いや、リーガルさんは色々とあって……」
「そこら辺はあたし達が勝手に言っていいか分からない事情があるから……」
「後は……なんだろう。捕まりやすい運命……なのかなぁ……」
そ、そうなんだ……二人とも結構暗い顔しているし、本当に重い事情なのかも。
とりあえず、仲間の事が分かったから弦十郎さんはすぐに捜索の手配を始めてくれて、結構厳重な感じで平行世界からのお客さん探しが始まった。ちなみにわたしは既に遅刻確定……というかここに来るまでに既に一時間目の授業が終わって切ちゃんから鬼のようにメッセージが飛んできているのでこのまま公欠ルートです。後で返事しておかないと。
「えっと……じゃあ、僕達は何をしていたら」
携帯の通知を見て切ちゃん心配し過ぎだなー、とか思っているとエミルがふとそんな事を。
待っていればいいんだけど……どうやら二人ともただ待つだけじゃなくて何かをしながら待っていたいみたい。
「うーむ……別に好きにしていてくれて構わないのだが」
「魔物とかが出ているのなら倒してくるわよ?」
「マルタ、こっちに魔物は居ないから」
「じゃ、じゃあお仕事手伝います!」
「その申し出はありがたいのだが、機密事項があるのでな……迂闊に外部の者に触れさせるとまずいんだ」
どうやら二人とも、待ち時間や暇な時間があった時はクエストって形で貼り出されている魔物討伐とかをして報酬を貰いながら過ごしていたらしくって、どうにも保護されっぱなしというのは気まずいみたい。
でも、この世界に魔物なんて居ないし、ここの仕事だって機密事項ばっかりだから迂闊に外部の人に知られると大変だし、何か取ってきて、とかも無いし……
うーん……そうするとSONGの仕事でできそうなのって……
あっ。
「そうだ。じゃあ、食堂のお手伝いとか」
「おっ、いいじゃないか。二人とも、料理はできるか?」
「僕はできますけど、マルタが……」
「あたしが、なんだってぇ……?」
「じょ、冗談だよ冗談! 最近はマルタも料理すっごく上手になってるから!」
っていう事は最初は……まぁ、わたしも最初はカップ麺だったし、よく頑張った仲間という事で。
「ほら、テネブラエも最近はマルタの料理が上手って………………あっ」
「あっ? あって一体…………あっ、テネブラエが居ない!!?」
「ど、どうしようマルタ! いつも傍にいたから今も居るんだと思って!」
「早く見つけないと珍しい動物として売られちゃう!!」
え、えっと……とりあえず、そのテネブラエって人も捜索対象に入れておかないと……ね?
人じゃなくてセンチュリオン? 犬っぽい感じの黒くて渋い声……?
ふぁ、ファンタジーの世界ってそういうペットもいるんだね……えっ、ペットじゃなくてセンチュリオン…………うん、よく分からないや!
****
――スキット『異世界のいろは』――
「にしても、この潜水艦は凄いわね。テセアラでもここまで凄い技術は無かったわよ」
「この世界には魔法が無いから、その代わりに科学が発展したのかな?」
「そうとも限らないよ。魔法……この世界だと錬金術がそれにとって変わっているんだけど、錬金術師も少なからずこの世界には居るから」
「そうなの? じゃあ街中で魔法使ってもいいんじゃ?」
「ううん。確かに錬金術はあるけど、この世界で錬金術や、魔法、魔物、神様とかは全部テレビや漫画の存在って言われているから。街中で大っぴらに使ったら大問題になっちゃう」
「テレビ? 漫画?」
「あー……えっと、後で見せてあげるね? まぁ、簡単に言うと実在すると思われてないから街中でドンパチは止めましょうってこと」
「なるほど……ちなみに調のシンフォギアってやつは?」
「勿論使っちゃダメなやつ」
「結構制約が多いんだね……」
「というよりも、裏に潜んだ非常識が多いってだけかな……」
「息苦しいったらありゃしないわね」
****
とりあえずエミルとマルタの二人は食堂で臨時のお手伝いさんとして働きつつ、もしも異世界案件が来た時は民間協力者として戦う事になった。もしも異世界から来た魔物が自分達の仲間だった場合は、声をかければ絶対に暴れないし、力になってくれるから、とも。
で、それから一日が経ったけど、二人の仲間がどこかに居た、という報告は一切来なかった。痕跡無し、とすら言えるとか。
で、一応違いの認識の相違が無いかを確認するためにロイドさん達と実際に会った翼さんとマリアをすぐに呼んで二人と会話をしてもらったんだけど。
「間違いない、この者達が話しているのはロイド達の事だ」
エミル達の言っている人たちは間違いなく翼さん達が出会ったロイド・アーヴィングさん達で間違いないらしい。殆どの特徴が一致したし、聞いた話も大体一致していたからほぼ間違いないとか。
ただ、何故か四人ともちょっと不可解と言わんばかりに首をかしげている。
「ただ、ちょっと不可解なのよね」
「不可解?」
どの辺が?
「えっとね、翼達が知ってるロイドと、僕達の知ってるロイドはちょっと合わないんだよ」
「具体的には、翼達が言っているのはあたし達の知ってるロイドじゃなくて、二年前のロイド達の事。まだテセアラとシルヴァラントが一つになる前の時代の事なのよ」
「あぁ。ロイド達が無事世界を救い、統合を成し遂げた事は素直に嬉しい事だ。ただ、私達からしたらまだ数か月も経ってない程最近の話だ。それが、二年も前の話となると……」
「単純にこちらの世界とあちらの世界で時間の流れが違うか、あの島はそういった時間や空間を超越していたせいでそこら辺がごちゃごちゃになっているかの二択ね。まぁ、何はともあれ、この二人はコレット達の仲間で間違いないわ」
なるほど……ちょっとした時間の差異があったんだね。それに、翼さん達もロイドさん達の旅は無事に終わったのか、生きているのか、力を貸せなかったけど大丈夫だったのかとか、大丈夫だと信じてはいても結末は気になっていたみたいだから、それを聞けて嬉しそうにしている。
奏さんにも教えてあげないとね。
で、ここからは二人を元の世界に戻す方法なんだけど……
「うむ……やはりエターナルソードがロイドの手を離れている以上、シグルドを待つしかないか……」
「でも翼。あなた、ロイドの力を使っていた時にエターナルソードを使ってたわよね?」
「あれはギアでロイドの技を再現したに過ぎない。確かにまたあのギアを纏えればエターナルソードに似た剣を作ることはできるが、それに時間と空間を操るだけの力はない」
「そういう事だったのね」
「まぁ、魔神剣や裂空斬、獅子戦哮は通常のギアでも使えるがな」
「魔神剣は基礎中の基礎の技だからね。頑張れば誰でも使えると思うよ」
「とは言うがな、エミル。こちらはそちらの世界とは色々と違うのだ。まず普通の人間は剣を振っても衝撃波が出ない」
「えっ……!!?」
まぁ、あんな事できる人なんてそれこそ弦十郎さんみたいな規格外だけだよね……じゃないとわたしだって翼さんの剣を借りて頑張れば魔神剣使えるって話になっちゃうし。だからエミルはそんなに驚かないで。
世界が違う事によるカルチャーショック的な事を受けてるエミルはとりあえず放っておくとして、今はこれからの方針を決めないと。
現状はエミル達の仲間を探す、エミル達が元の世界に帰れる手段を探すっていうのが固まった方針ではあるんだけど、そこに向かうためにやる事を決めて行かないといけない。
そうなるとエミルたちの仲間を探すためにはわたし達が行ける平行世界に実際に行ってみて、エミルたちが別世界でバラバラになってないかを探す事が第一優先かな? 全員が全員この世界に来ているとは思えないし。それに、エミルたちと戦った魔物も気になるし、エミルたちの仲間だった魔物に加えてテネブラエってセンチュリオンの事も気になる。
それに、原因についてもね。
平行世界行き来できるトンネルができたって事は、それをしてしまう程の力を持った聖遺物が関わってる可能性もあるから。もしかしたら二つの世界を文字通り崩壊の危機に招く可能性だってあるんだし。
「そうだな。まずは立花達を呼んでロイド達を捜索しよう。行くべき平行世界は多数あるからな」
「とりあえずは虱潰しに、ね。それと、カオスビーストの空間も覗いてみるべきね。もしかしたらそこで戦っている可能性もあるから」
「えっと、じゃあ僕達は……」
「エミル達は私達が留守の間、この世界の事を頼む。月読の時のように、いつ魔物が現れるか分からないからな。そういうのは知らぬ存ぜぬの私達よりも勝手知ったるお前達の方が適任だろう」
「分かったわ。こうしてお世話になっている以上、恩はしっかりと返すわ」
よし、方針決定。とりあえずこの事は弦十郎さんに相談して、装者のみんなにも共有しなきゃいけないけど……
……招集かけたのに響さん達、なんか遅いね?
「確かに遅いな。立花と暁なら道端で人助けか何かで遅刻する可能性はあるが、今回は小日向と雪音が居るのにも関わらず連絡すらないとは……」
「わたし、響さんに電話してみます」
「なら私は雪音にかけるか」
学校に行っている四人には既に招集をかけたのに、何故か時間通りに来ないし連絡もない。
電話に出れないようなら確実に危ない事に巻き込まれているし、そもそも連絡が来ない時点で戦闘が始まるかもしれないって認識は持たないといけない。
もしかしたら分断されているかも。そう思いながらわたしは響さんに、翼さんはクリス先輩に電話をかけることに。あと、マリアも切ちゃんにかけてくれるって。
という事で電話。エミルとマルタが興味津々にスマホを見てくるけど、ちょっと待ってね。多分二人にも後で支給されるから。
お願いだから出てよ…………あっ、出た?
「もしもし、響さん?」
『あっ、調ちゃん。ご、ごめんね、呼ばれたのに遅れちゃって』
「それはいいんですけど……何かありました?」
『まぁ、あった事にはあったんだよね……というか、今丁度それに引っかかっていると言うか……』
引っかかっている?
どうやらクリス先輩は電話に出なかったようで翼さんは首を横に振った。でも、響さんの近くにクリス先輩はいるようだし。
とりあえず、わたしはスマホをスピーカーモードに切り替えて響さんとの通話を続ける。
「引っかかってるって、何に?」
『えっとぉ……』
何故かわたしの質問に答えにくそうな響さん。
そんなに答えにくい事って……
『ねぇねぇ、いいじゃんそこの君達ぃ。ちょーっとそこでお茶しながらお話させてもらえればいいんだからさ~』
『だぁかぁらぁ!! こっちにそんな時間はねぇんだっての!! そもそもなんだお前その格好! コスプレ会場から抜け出してナンパとかいい度胸してんじゃねぇか!』
『いやいや、これはコスプレじゃなくて俺様の正装だってば。いいじゃんいいじゃん、ちょっと話するくらい』
『だぁもう話聞けや!!』
『く、クリス……もう時間過ぎちゃってるから口喧嘩やめよう?』
『怒られちゃうデスよ……』
『アタシが今現在怒髪天ブチ抜いてんだよ!! このしつけぇナンパ男にな!!』
『だって一通りこの街の女の子見てみたけど、一番可愛かったのが君達だったし? まぁ、話聞くだけなら誰でもいいんだけど、どうせなら可愛い子とお茶しながらの方がいいじゃん?』
う、うわぁ……ナンパされてる……
…………ちょっといいなぁ、とは思わない。
って、あれ? エミルとマルタ? なんで溜め息吐いたり怒ったりしてるの?
「……ねぇ、調。今ここで叫んだらわたしの声ってそっちに聞こえるのかしら?」
「え? あ、ちょっと待ってね。響さん、そっちスピーカーから音出せますか?」
『うん、出せるけど……ちょっと待ってね。はい、できた』
「マルタ、もう大丈夫」
「ありがと。はぁぁぁ…………」
で、マルタがわたしのスマホを持って口に近づけて……
「異世界に来てまで何ナンパしてんのよゼロスッッ!!」
急に叫んだ……って、知り合い!!?
『おわっ、なんだ!? 急にマルタちゃんの声が……』
「この機械から喋ってんのよ!! アンタ、異世界に来てまでやることがナンパとか……もっとやることがあるでしょう!!?」
『い、いや、ナンパしようとか思ったんじゃなくて……いや、ちょっと思ってたけど、この子達からいろいろ情報を聞こうかなって思って……』
「やってる事言ってる事が完全にナンパじゃない!! しかも否定しきれてない!! いいからそこの子達と一緒にこっちに来なさい!! こっちにはエミルも居るから!!」
『わ、わかったわかった! だからあんまり怒んないでよマルタちゃん』
「はぁぁぁぁ……ちなみに、他には誰かいるの?」
『他って言うと……一応、しいなとリーガル、後はプレセアちゃんは俺と一緒にいるぜ。ハニー達はまだ見てねぇな』
プレセアって……そういえば、二人と一緒に戦ったって言う……
「プレセアが居るのか!?」
「よかった、顔見知りは一応いるみたいね。奏は居ないけど、また会えるのなら嬉しいわ」
「そういえばプレセアと二人は一緒に戦ったって言ってたね。じゃあ、ゼロスにはこっちに連れてきてもらわないと」
二人ともこんなに早く顔見知りと会えるとは思っていなかったのか、結構驚いていた。
でもプレセアって人とよく喋ってたのは奏さんらしいし、ここに奏さんが居ないのが残念かも。後で奏さんにこっちに来てもらって顔を合わせてもらうのが一番いいかな?
「そう……分かった。じゃあ、その三人が待ってるところにそこの子達と一緒に行ってちょうだい。調、ゼロスたちの迎えって出せる?」
「出せると思うよ。えっと、仲間なんだよね?」
「えぇ……この状況じゃ否定したいけど……」
あ、あはは……
な、なんというか……その、個性的だね……
という事で、一応電話越しにわたし達から事情を大体説明して、響さん達をナンパ……じゃなくて話を聞いて事情を把握しようとしていたらしいゼロスさんと、人気のない場所で待機しているらしい残りの三人いるらしい仲間を本部に迎える事にした。
その間マルタは溜め息吐いてるし、エミルは苦笑しながらごめんね? って謝ってくるし……なんかこう、本当に個性的なんだなーって思いました。
ちなみに、ゼロスって人みたいに女性に目が無いのはゼロスって人だけらしい。まぁ、ああいうのが何人も居たらちょっと話も纏まらなさそうっていうのはあるけどね。それに、その人もしっかりするところはしっかりするらしいし。
で、弦十郎さんに事のいきさつを伝えて迎えを出してもらい、待つ事十数分。
「って事で。アタシはしいな。このアホ神子がほんっとうに悪い事しちまったみたいで……アンタもいい加減その女癖直したらどうだい!!?」
「いででででで!! 結果的にエミルくん達は見つかったからいいじゃねぇかよ! あっ、俺様はゼロス・ワイルダーだ。かわい子ちゃんはいつでも大歓迎だぜ?」
「すまんな、騒がしくて。私はリーガル・ブライアン。一応事情はある程度彼女達から聞いている。私達にできることがあれば喜んでやらせていただこう」
エミルの仲間であるしいなさん、ゼロスさん、リーガルさんが無事合流した。
ゼロスさんは何と言うか……チャラそう。というか、チャラい。女癖が悪いっていうのはどうにも事実らしく、会って早々わたし達にもナンパしてきた。特にマリアに対しては結構凄かったね……マリア様ぁとか言いそうだったし。お姉さんっぽい人が好き……なのかな……?
で、その反面リーガルさんは凄く礼儀正しい人。こっち来て早々職質からの手錠コンボで付けられた手錠が外せずにいるけど、何故かそれでも落ち着いた状態で話してくれている。
それも当然、リーガルさんはとある会社の社長らしい。だからこそ紳士的で優しくて礼儀正しいんだとか。あと、筋肉の量が弦十郎さんに匹敵しそう。
しいなさんは何と言うか……
「日本人、じゃないんですよね?」
「あぁ、そうだよ。アタシはミズホの人間さ。にしても、こっちの世界じゃミズホのような名前が一般的なんだね。驚いたよ」
「それは国によりますね。アメリカって国だとマリアみたいな名前が一般的ですし」
「なるほどねぇ。じゃあどっちかと言ったら少数派って訳かい」
しいなさんの言葉に頷いて、わたしはチラッと翼さん達の方を見る。
実はなんだけど……ちょっとばかり問題があるんだよね。
「ぷ、プレセア、私達の事を覚えていないのか?」
「ほら、あの島での……」
「すみません……どうしても、思い出せなくて……」
プレセアと翼さん&マリアの感動の再会は、プレセアがその時の事を覚えていないせいであまり良くない雰囲気が出てきちゃっていた。
翼さんとマリアは確かに覚えている。けど、どうしてかプレセアはそれを覚えていないみたい。
初めましてと挨拶されて、二人は困惑しながらもその時の事を話しているけどプレセアは全然覚えていない様子。
どうしてなんだろう……プレセア側からしたら確かに二年前の話ではあるらしいんだけど、覚えていないって言える程薄い体験じゃない筈だし……
「もしや、エターナルソードで帰還する際に異常があったのでは……?」
「それはあり得ません。エターナルソードの力は確かに強力ですけど、人の記憶を消すなんて力は……」
「難しい話ね……まぁ、今ここでそれを議論してても仕方ないわ。プレセアからは初めまして。わたし達からは久しぶり、で通しましょう」
でも、ここで話していても解決はしないからと、プレセアと二人は改めて一度だけ握手してから一旦この話は置いておくことになった。
一旦全員の会話が終わったところで、とりあえず今後の事を改めて話し合うために弦十郎さんとエルフナインを交えて色々と話す事に。
「さて。こうして異世界からの客人が六人も集まったのだが、エミルくんとマルタくんには先ほども言った通り、現状君達を元の世界に帰す手段は我等の手には無い。それだけは先に留意してもらいたい」
「それは確かにこっちに来るまでに事情と理由も聞いたけどよぉ。俺様達はこう見えても急いでんだ。あまり道草食ってる訳にゃいかねぇんだが?」
「ゼロス」
「わーってるって、しいな。こうして勝手知らない場所で屋根と壁貸してくれるだけありがてぇのは確かだが、俺様達が急いでんのも確かだ。わりぃけど、帰れるってなったら先に帰らせてもらうって事だけは言っておくぜ」
「それは構わない。寧ろ、君達の帰還こそが現状、我々の第一優先事項だ。そこは安心してほしい」
ゼロスさんが結構憎らしい言葉を使って自分達の事情を話してくるけど、それは重々承知している事。平行世界で取り残されるっていうのがどれだけ辛い事なのかは装者であるわたし達と、それをバックアップしているSONGが一番分かっている。だからこそ、客人の帰還は最優先にしなくちゃいけない。
その言葉に満足したのか、それとも毒気を抜かれたのか、ゼロスさんはそれでいいんだよ、とだけ言って口を閉じた。
「そっちが親切にしてくれるってのはよく理解したよ。それで、帰れる手段が見つかるまでアタシ達は何したらいいのさ。この世界には魔物も居なければクエストも無いんだろう?」
「それについては、SONG内での仕事を手伝ってもらう、としか言えんな。現状は食堂が多少人手不足だから、そこを手伝ってくれるとありがたい」
「このメンツならそれでも問題あるまい。もし戦闘が起こるのなら、私達を使ってくれ」
「あぁ、助かる。エミルくん達と共に魔物が出た例があったからな。その際は、力を貸してもらおう」
とりあえず、異世界組は人手不足だった食堂の方に行かされるみたい。
まぁ、何もせずに手持ち無沙汰のまま、よりはいいのかな? 後は、体を動かしたいんならシミュレータールームを使っての自主訓練もしていいとの事。
後は残りの四人を見つける事を現状の優先事項に。残りは自由時間……という事になる筈だったんだけど。
「えー。折角異世界にまで来たってのにこんな薄暗い所で閉じこもってるとか退屈で仕方ねぇんだけどぉ? どーせならさ、街中にパーッと飛び出して異世界のカワイ子ちゃんをだなぁ!」
「うるさいアホゼロス!! 寝れる場所をタダで貸してもらえるだけありがたく思っておきな!!」
「あだだだだだだ!!?」
あーあー、ゼロスさんが引き金でなんかひどい事……
でも、ゼロスさんの言う事も一理くらいはあるかも。ずっと本部に籠っているのもどうかと思うし。
「ですけど、わたしもここまで文明が違う世界というのは少し気になります」
「私やゼロスはいいが、プレセアやしいなは特に外が気になるだろう。すまないが、時々でいいが外出できる時間をくれないだろうか」
まぁ、そうだよね。
翼さん達から又聞きした情報を元にすると、科学技術も発展はしているらしいけど文化の違いや娯楽の差がある程度はあるっぽいし。
本とかはあってもテレビとか映画は無いとか。
「それに関しては問題ない。言ってくれれば自由に外出してくれてもいいが……武器は置いていってもらえないか? しいなくんのような符ならまだいいが、斧や剣と盾は流石にな……」
「武器持ってっちゃいけないとか、危機感無さすぎじゃねぇの?」
「そういう法があるのでな」
「確かに、私も脛当てでこの世界の警察に手錠までかけられたからな……それと、この手錠についてだが……」
「あぁ、任せておけ。フンッ!!」
「……お見事」
リーガルさんの手錠は無事弦十郎さんの力により引きちぎられ解体されました。これにはリーガルさん他異世界組の目は点に。
とりあえず……あまり時間が経たない内にエミルやマルタ、後は興味ある人を連れて映画館とかショッピングに行くのがいいかな?
****
――スキット『それぞれの娯楽』――
「ふむ……この映画というモノは中々面白いな。映像によって劇を見せる……これならば、実際に劇場に足を運ばずとも家庭で劇を見る事ができるな」
「そうですそうです! じゃあ、次はこの映画を見ましょう!」
「あぁ! 男の鍛錬に必要な物、それは飯をたらふく食べ映画を見てよく寝る事だ!」
「それも確かに正しい鍛錬かもしれんな。それに、この映画の中で繰り出される技は確かに新たな技の参考になる。響、そして弦十郎よ。次の映画を見たら一つ手合わせなどどうだ?」
「望むところです! 師匠もリーガルさんも、一緒に技を磨きましょう!!」
「勿論だ!」
~場所は変わって~
「こんにゃろっ! なんだこれ全然思い通りに動かねぇぞ!」
「格ゲー初心者にあたしが負ける筈ないデスよ! それ十連コンボデス!!」
「だぁぁぁ!!? クソっ、もう一回だもう一回!! 勝つまで止めねぇからな!!」
「ぷっぷっぷー。ゼロス如きに負けるあたしじゃないデスよ」
「こ、このガキンチョ……ッ!! 絶対に泣かすッ!!」
~更に場所は変わって~
「プレセアなら、こんな服が似合うんじゃないかしら? ほら、結構可愛いわよ」
「た、確かに可愛いですけど……わたしには似合いませんよ……それにわたしが着るにはちょっと子供っぽすぎるような……」
「何言ってるの。ほらほら、早く試着室で着てきちゃいなさい」
「わ、わたしは大人ですから……! もうちょっと大人っぽい服装を……!!」
「ふむ……しいなのように身長も高くスタイルも良いのなら、このような服がよいのではないか?」
「おっ、いいじゃないか。だったら翼にはこれがいいんじゃないか?」
「なるほど、こういう着眼点もあるのか……そういえば、しいなは日本寄りの文化の者だったな……なら、このような着物など良いのではないか? ほら、この画像のような」
「こんな煌びやかな着物もあるのかい? けど、こういうのってもっと地位が高い人間が着るモンだろ? アタシのようなのが着るモンじゃ……」
「心配は無用だ。私もある程度は着物を持っているし、レンタルもできる。折角異世界に来たのだ、こういう物も着てみるといい」
「……なら、お言葉に甘えようかね」
「わ、わたしも、わたしもあっちに……!」
「ほらプレセア! 次はこれよ!」
「あっ、あぁぁ~……」
~また場所は変わって~
「ねぇエミル、あたし達もあの映画っぽくしない?」
「ま、マルタ……さ、流石にちょっと恥ずかしいよ……」
「ねぇエミルぅ……だめぇ……?」
「うっ……だ、駄目じゃ……ないけど……」
「………………何だろう、この敗北感……二人ともわたし達の事見えてないっぽいし……」
「ま、眩しい……! 純粋な二人が眩しい……!!」
「……恋愛物は失敗だったな…………砂糖吐きそうだ……」
「……クリス先輩、未来さん。コーヒーどうぞ」
「……あんがとな」
「あ、ありがと……なんか空気が甘いなぁ……」
「エミルぅ……」
「マルタ……」
****
色々とあって翌日。あの後、エミルたちの仲間である残りの四人を発見することはできず、わたし達装者が行ける平行世界にとりあえず行って、協力組織がある場合はそこでエミルたちの説明を、そうじゃない場合は数時間ほど操作をしたり聞き込みをして残りの四人の行方を追った。
けど、発見することはできず。奏さんは時間が空いたらプレセアに顔を見せに来るとの事だったけど、それ以外に新しい展開は特に起こらなかった。
強いて言うなら……エミルとマルタが付き合ってるのかそうじゃないのか、分からなかった事が改めて分かったかな。あの距離の近さと仲の良さから付き合ってるんじゃないかってずっと思ってたんだけど、実際に聞いてみたら二人とも顔を真っ赤にしてそっぽ向いたんだよね。
確実に両想いなんだろうけど、付き合ってはないっぽい。
ただ、エミルとマルタの二人にちょっと話を聞いた限りだと、キスしたり抱き合ったり、色々としたらしいです。告白はしてないらしいけど……いや、そこまでしたんならもう付き合えばいいじゃん!? 完全に両思いじゃん!? 最初は初々しい二人にきゃーきゃー言ってたけど、途中から何と言うかもどかしい上に惚気るせいでコーヒー飲んじゃったよ!
……ごほん。取り乱した。
で、昨日は色々とあったんだけれども。
今日、わたし達装者は学校に行かず、いつ問題が起きてもいいようにという事で本部で待機する事になった。念には念を入れて、という事らしいけど……
それは功を奏した。
「街中で奇妙な生物を目撃したとの報告が!」
「怪我人も出ているようです! 警察の武装では手も足も出ないとの事!」
「分かった! ポイントは!」
「合計四か所! いえ、今五か所になりました!」
「くっ……数が多い……! ならば、装者と協力者を計五か所に分散させる!」
五か所同時に魔物が発生。昨日、エミルとマルタの二人の前に出てきた魔物以外、魔物が出てこなかったのは嵐の前の静けさだった、とでも言わんばかりの同時発生に本部はかなり慌ただしかった。
けど、こちらには装者七人に加えてエミル達六人が居る。その合計十三人を五か所に分散させよう、というのが今回の作戦だった。
「班分けは君達の方に任せる。特に、エミルくん達は自分達の連携がしやすいように人員を分けてくれ」
「分かりました。じゃあ……」
異世界組はエミルを中心に、班を分ける事になり、わたし達装者はそれに合わせる事になった。
その結果、リーガルさん、響さん、未来さん。しいなさん、ゼロスさん。クリス先輩、翼さん。マリア、切ちゃん。そして、魔物の数が一番多いらしい場所には一番人数多めでわたし、エミル、マルタ、プレセアの四人で向かう事になった。
装者で構成されたクリス先輩達は即座にミサイルに乗り込んで本部から一番遠い場所に。響さんと未来さんにリーガルさんを加えた三人は一番近い場所に車で。
そしてわたしと他三人は……
「…………えっ、これで行くって正気ですか?」
「すまんな……車が全て交通網の封鎖に出てしまっているんだ……」
「いや、それは分かってますけど……わたしの腕に紐括ってリアカー繋げてそこに三人乗せるって正気ですか?」
「……周りの目は、気にするな!!」
「気にしますけど……!!?」
わたしが禁月輪を使います。両手がフリーになります。わたしの腕にロープ繋げます。その先にリアカー繋げます。それで移動します。
馬鹿じゃないの?
まぁ、それしか手段がないらしいからやるしかないけど……シュルシャガナならそこら辺なんとかなる速度で走れるけど……その、周りの目が……
……いや、人命の方が大事だからやりますけども……よっこらせっと……
「それじゃ行ってきます……」
「あ、あぁ……その、帰ってきたら我儘の一つは叶えよう」
「じゃあ美味しいご飯奢ってくださいということで」
それじゃあ行ってきますっと。
相乗りならシュルシャガナで問題なくできたんだけど、それができないから仕方ない。きゅいいいいんと音を鳴らしながらリアカー背負ってミサイルが飛ぶ空の下をわたしが走る。
アスファルトの上だからリアカーもあまり揺れないけど、ちょっと辛いだろうし、なるべく早めに……
「これを光らせながらこの紙に書いてある事を言えばいいんだっけ?」
「はい、声を大きくする機械です」
「僕がやるの……? えっと……『き、緊急車両が通ります! 道を開けてください!!』」
「車両じゃないけど!!?」
誰、それ用意したのは!! 土壇場でふざけたの誰!!
えっ、響さんと切ちゃん?
あのお気楽コンビ、後でお説教!!
とりあえずエミルには変な事を言ってもらうのは止めてもらって、案外後ろが余裕そうだったからそこそこ全力で走る。
禁月輪で走る事数分。無事現場に到着した……けど。
「な、なにあの魔物……竜……?」
「ウェアドラゴンだ! いや、でも一体だけ……?」
「それだけじゃないわ。気を付けて、多分あのウェアドラゴン、相当強いわ!」
「あの魔物はあそこまで強くない筈なのですが……」
そこにいた魔物は二足歩行の竜、と言えるような存在だった。身長はわたし達よりも大きいし、炎も吐いているから相当強そうだというのは何となく分かるんだけど、エミルとプレセアはあの魔物……ウェアドラゴンを見て軽く驚いている。マルタも驚いていたけど、すぐに切り替えたらしく、腕のスピナーを構えた。
とりあえずわたしはリアカーをパージしてそのまま射出。エミルたちはその途中でリアカーから飛び降り、リアカー本体はそのままウェアドラゴンに激突した。
けど、ウェアドラゴンはそれを物ともせず、それどころか即座にこちらを向いて火を噴いてきた。
「ブレスだ!」
「任せてください! 崩襲! 地顎陣ッ!」
それを即座にプレセアが前に出て斧を振り上げながら飛び上がり、回転しながら地面に叩き付ける事で地面を隆起させて防いで見せた。
すぐにプレセアは斧を地面から引き抜いてもう一度構えるけど、その額にはうっすらと冷や汗が。
「強い……ですね。ウェアドラゴンだからと侮っていては痛い目にあいそうです」
「そうだね。気を引き締めて行こう!」
エミルの激励に頷いて相手がいつ動いてもいいように改めて気を引き締めた、瞬間だった。
ウェアドラゴンが大きく吠え、同時にその体から黒い瘴気のようなものが溢れてきたのは。
いや、あれは……!
「な、何!?」
「あんな技、ウェアドラゴンが使える筈が……!!」
いや、あれは技とかじゃない。
わたしの間違いじゃなければ、あれは……!!
「カルマノイズの、瘴気!?」
「カルマ、ノイズ……?」
いや、間違えるわけがない。世界蛇と一緒に猛威を振るってきたあの瘴気を、よりにもよってわたし達が。
すぐにクリス先輩達に連絡を入れようと思ったけど、その前にクリス先輩達装者組から通信が飛んできた。
『おい、魔物とやらがカルマノイズの瘴気を纏っていやがるぞ! どういうこった!』
『こっちでも確認したデス!』
『同じくこっちも! しかもリーガルさん曰く、魔物が本来よりも相当強くなってるって!』
やっぱり、他の所でも同じような事が……!
すぐにわたしも響さんと同じようにエミル達が本来よりも強化され、瘴気を纏った魔物が出てきたとだけ伝えてから通信を終えてヨーヨーを構える。
ここで瘴気が出てくるっていう事は、ほぼ間違いない。
ウロボロスの残党が今回の件には関わっている。やっぱりと言うべきか、APPLEと一緒に倒したウロボロス残党は最後じゃなく、まだまだ残っていたという事なんだと思う。数多の平行世界に関与していた裏の組織だから、残党がいくら居ても不思議じゃないとは思えちゃうんだけどね……!!
「みんな、注意して。あの瘴気を纏っているって事は、相当強化されているはず」
「何か知ってるってわけね。分かったわ、気を付けましょう」
「そうなると、他のみんなが心配だ。手早く終わらせてみんなの援護に行こう!」
その言葉と同時にエミルとプレセアが駆けだし、マルタも詠唱を始める。
なら、とわたしもマルタよりも前に出て二人を援護するためにヨーヨーを構えながら前進して、歌を歌う。
「綺羅綺羅の刃で、半分コの廃棄物! 予習したの、殺戮方法!!」
二人が剣と斧を振るう前にわたしが牽制として百輪廻を放ってウェアドラゴンを足止め。けど、ウェアドラゴンは効かないとでも言いたいのか、百輪廻を受けながらも前に前にと進んでくる。
百輪廻が効かないとなると、もうちょっと火力の高い技じゃないとダメ、かな……
でも、エミルとプレセアはそんな事知らないとでも言わんばかりに生身とは思えない程の速さでウェアドラゴンの足元に潜り込んだ。
「穿孔破ッ!」
「翔月双閃ッ!!」
エミルの突きとプレセアの斧を振り上げながらの二連撃がウェアドラゴンに当たるけど、ウェアドラゴンの鱗は相当硬いのか、二人とも顔をしかめながら剣と斧を引いてブレスと同時に後ろに跳躍した。
その合間を縫ってもう一度百輪廻を使って隙を作ろうとするけど、ウェアドラゴンの鱗に電ノコは弾かれるだけ。
でも、詠唱を早めに完成させたマルタがウェアドラゴンに向かって魔法を放った。
「剣に秘められし七色の裁きを受けよ! プリズムソードッ!」
魔法の発動の直後、ウェアドラゴンに向かって降り注ぐ結晶のような物でできた剣。それがウェアドラゴンの周囲に何本も刺さって結界みたいなものを作って弾けると共にウェアドラゴンが全身に傷を作りながら後退した。
けど、そのせいでウェアドラゴンの敵視がマルタに向いてしまい、マルタに向かってブレスが放たれる。
もちろん、そんな事はわたし達の全員が分かっている。だから、即座にわたしが禁月輪を使ってマルタの腕を掴んで後ろに乗せてからブレスの範囲を即座に離脱する。
「勝負も夢も、命掛けのダイブッ!」
「ありがと、調!」
マルタのお礼に頷きつつ、禁月輪での移動を止めずにヨーヨーを投げつけて攻撃を続けるけど、禁月輪を移動に割り振っている以上、これ以上の火力を出す事ができない。
アームドギアがしっかり使えればもっと火力は出せるんだけど……けど、この戦いはわたしが前に行かなきゃいけない戦いじゃない。エミルたちが代わりに前に出てくれる戦いだから。
「くらえっ! 砕覇、双撃衝ッ!!」
「獅哮、滅龍閃ッ!」
マルタが作った傷に向かってエミルが突きを叩き込み、更に二連の魔神剣を叩き込む。それでウェアドラゴンがふらついた瞬間、プレセアが斧を思いっきり振り回してウェアドラゴンに一撃を叩き込み、更にもう一撃、虎の形をした衝撃波を乗せた攻撃を叩き込んでウェアドラゴンを吹っ飛ばした。
吹っ飛ばした事で生まれた隙。それをプレセアは見逃さず、倒れたウェアドラゴンに向かって飛び掛かった。
「終わりですッ!」
その一撃はウェアドラゴンに突き刺さり、直後に地面が隆起し始める。
「塵と化しなさい……ッ! 奥義ッ! 烈破焔焦撃ッ!!」
プレセアが技名を叫んだ直後、ウェアドラゴンの真下の地面から爆炎が吹き上がり、そのままウェアドラゴンの体を焼きながらウェアドラゴンを上空まで吹き飛ばした。
陸上で生活する形で進化した生物だからか、ウェアドラゴンは翼を使って一瞬滑空する事はできたけど、安全に着地することはできずにほぼほぼ最大速度で地面に叩き付けられる結果となった。
これで、倒せたかな……?
「よかった、これで何とか……」
「いえ、まだです!」
「調! 油断しちゃダメだ!」
「えっ?」
あんな凄い技が当たったんだから買ったに違いない。そう思ってしまった直後、ボロボロになりながらも起き上がったウェアドラゴンがわたしに向かって火球を吐いているのが見えてしまった。
禁月輪も止めてマルタも下ろしたからマルタは無事だけど……ま、マズい、間に合わない……!?
せめて防御だけでも――
「――飛天翔駆ッ!!」
そう思い、電ノコを展開しようとした瞬間だった。
わたしの後ろから誰かが飛び出し、急降下しながらウェアドラゴンの放った火球を切り払った。
それに呆然としていたけど、更に後ろから声が聞こえてくる。
「行くわよ、ジーニアス!」
「うん、姉さん!」
『プリズミックスターズ!!』
プリズミックスターズ。その魔法名が聞こえた瞬間、ウェアドラゴンの周囲から光の玉が飛んできて、ウェアドラゴンに炸裂しては弾ける。
さらに。
「聖なる翼よ、此処に集いて神の御心を示さん……! エンジェル・フェザー!!」
続けて飛んできた光輪のようなものが満身創痍のウェアドラゴンに炸裂し、吹き飛ばす。
そして最後は。
「散沙雨ッ! 続ける! 秋沙雨ッ! 驟雨、双破斬ッ!!」
わたしを助けてくれた双剣使いの人が目にも止まらないほどの連続突きをウェアドラゴンに叩き込み、最後に切り上げてから切り下げる二連攻撃でウェアドラゴンを吹き飛ばした。
そのままウェアドラゴンはカルマノイズの瘴気と共に消えていき、ウェアドラゴンが居た場所にはトレントから落ちた物と同じようなグミが二、三個落ちた。
「危ない所だったな。大丈夫か?」
双剣使いの人はウェアドラゴンが完全に消えたのを見てからわたしに声をかけてくれた。
勿論大丈夫です、と声を返したけど、この人ってもしかして……
「ロイド! よかった、無事だったんだね!」
「あぁ、エミル。お前も無事でよかった。それより、お前達はどこにいたんだ? 結構探したんだぞ?」
「それはまぁ、色々とあって……それよりも、コレット達も居るんなら、これで全員だね」
「全員って事は、しいな達もいるのか?」
「うん、みんな調の仲間に保護してもらったんだ。あっ、そうだった。紹介するよ。この子が調。この世界に飛ばされた僕とマルタを助けてくれたんだ」
なんか凄い自然な流れでわたしの紹介が入った。
急に話を振られて驚いたけど、とりあえず目の前に立つ双剣使いの人……ロイドさんと、後ろに居る三人にも自己紹介をする。
「えっと、月読調です。ロイドさん達の事はある程度聞いてます」
「そうなのか? なら話は早いな。俺はロイド。お前の後ろに居るのがコレット、ジーニアス、リフィル先生だ」
翼さん達からの話だとロイドさんって凄い明るい人ってイメージがあったけど、こうして話してみるとなんだか大人びた人って感じがする。ロイドさん達の方は二年の時が経っているらしいし、その間に成長したって事なのかな?
とりあえず後ろに居た人……コレット、ジーニアス、リフィルさんにも挨拶をして、一旦本部と翼さん達に通信だけ入れてから、こっちの通信が終わるのを待っていたらしいリフィルさんとちょっと話す事に。
「まず、あの子たちを保護してくれて感謝するわ。私達も独自に動いて探していたのだけど、何故かこの世界の警察組織が追ってくるからあまり大々的に行動できなかったのよ」
「この世界じゃ武器を持っているだけで違法ですから。リフィルさんやジーニアスの武器ならまだしも、ロイドさんやコレットの武器はちょっと……」
「なるほど……世界が違えば法も違うという事ね。それで、そっちの方でこの世界へと来てしまった原因は把握できていて?」
「いえ、こちらは殆ど情報を得れず……そちらの方は?」
「ロイドの話と、私とジーニアスの仮説で半々……って所かしら。そこら辺はもうちょっと落ち着いたら話す事にするわ。ゼロス達も居ないみたいですし」
半々……って事は、もしかして何か重要な情報を掴んでいる?
それなら早くみんなと合流して情報を共有しないといけない。パーティのまとめ役の一人でもあったらしいリフィルさんはそれからも軽くこの世界について色々と聞いて来たけど、その途中で空をミサイルが飛んでいき、そこからクリス先輩と翼さんが落下してきた。
二人ともかなり身軽に着地した物だから、それを見た事が無いエミル達はちょっと驚いていた。
「すまない、待たせた。どうやらこちらも片付いているようだな」
「んで、増えているメンツが異世界からのお客さん、ってわけか? 随分と大所帯になったもんだな」
「十人いるからね。一応、これでテネブラエ達を除けば全員だよ」
「それはよかった」
とりあえず迎えについてももうすぐ到着するとの事で、もうしばらくはここで待機する事に。
だから雑談する時間ができたんだけど……翼さんはロイドさんとコレットの二人に声をかけて、落胆していた。
「そうか……やはりお前達もプレセアと同じで覚えていないか……」
「え、えっと……ご、ごめんね? 思い出そうとはしてるんだけど……」
「いや、いいんだ。あまり気にしないでくれ」
ロイドさん達は、翼さんの事を覚えていなかった。
プレセアさんが覚えていなかったから予想はできていたんだけど、それでも一緒に戦った仲間が自分の事を覚えていない、というのはショックだったようで、翼さんの表情はあまり浮かんでいなかった。
そんな翼さんに罪悪感を覚えたのか、ロイドさんは申し訳なさそうな表情をしながらも口を開いた。
「……ごめんな。俺はお前の事を覚えてないけど、あまり気にせず、前に出会った時のように話してくれると嬉しい」
「ロイド……あぁ、そうだな。いつまでもこんな顔をしていたらお前に申し訳が無いか」
浮かない顔をしていた翼さんだったけど、ロイドさんの言葉で浮かない顔をするのを止めた。
覚えていないのは悲しいけど、また出会えたって事実は変わらないからね。
「なら、改めてよろしく頼む。また手合わせしてくれると嬉しい」
「こちらこそ。見た所、相当腕が立つみたいだからな」
前に一度一緒に戦ったからか、それとも剣を持つ人同士で通じるところがあったのか、二人は笑いながら握手した。けど、その時だった。
手を取り合った瞬間、ロイドさんが急にボーっとし始めた。手を握ったまま、翼さんの方を見ているんだけど翼さんを見ていない。そんな感じで、呆けているように見えた。
それが十秒以上続くものだから、流石に周りのみんなが心配し始めて、翼さんもどうしたらいいのか分からずこっちを見たりあっちを見たりしていたんだけど、暫く経ってからロイドさんがようやく戻ってきた。
「……す、すまない。急に立ち眩みが……」
「だ、大丈夫か? 調子が悪い用なら……」
額に手を当てて軽く俯いたロイドさんに、もしかして体調が悪いんじゃないかと心配した翼さんが声をかけて顔を覗き込んだ。
そのままロイドさんは暫く翼さんの顔を見て、呟いた。
「……翼、か?」
「あぁ、そうだが……」
「…………そうだ、翼だ! 思い出した!」
「思い出したとは……ま、まさか!」
「あぁ! 久しぶりだな、翼! よかった、お前達も無事だったんだな!」
「ロイド……! あぁ、お前達も無事で何よりだ!!」
え、えっと……これって、もしかして。
「ロイドさん、翼さんの事を思い出したの?」
「あぁ、なんでかさっきまで忘れていたが、翼と握手した瞬間に思い出したんだ。あの島での出来事を。翼達と一緒に戦った時の事を」
「えっ、ロイド。その人とどこかで会ったことあるの?」
「どこかって、ジーニアス。お前も居たじゃないか……って言っても、多分俺と同じで覚えていないんだろうな。あの場にはコレットも、ジーニアスも。あと、プレセアも居たんだ」
どうやらロイドさんは何かが切欠で翼さん達の事を思い出したみたい。だけど、プレセア達はまだ翼さん達の事を思い出せていないようで、首をかしげている。
けど記憶を取り戻したロイドさんは翼さんと楽しそうにアレから何があった、とかこんな事があった、とか会話を膨らませている。翼さんも、ロイドさんとまた出会たからか、相当楽しそうに喋っている。お陰でわたし達はちょっと置いてけぼりな感じ。
二人で楽しそうに喋るのを見ながら、残りのメンツで集まってやれやれ、と言わんばかりに溜め息を吐いたんだけど、今度は回収地点に合流するために建物の屋上を飛び跳ねてきたマリアと切ちゃんがやってきた。
「待たせたわね、みんな。プレセアの仲間が合流したって聞いたけど……」
「マリアか! 久しぶりだな、お前も元気だったか?」
「その声……ロイド!? 合流した仲間ってあなたの事だったのね! あなたは私達の事を覚えているの?」
「あぁ、そのことなんだが……」
ロイドさんがマリアの事を覚えている感じで声をかけた物だから、一瞬マリアがその過程にあった事を知らずに勘違いしそうになったけど、すぐに翼さんがさっきまでの事を説明してマリアもここで起こった事を理解する事ができた。
「なるほど……じゃあ、コレット。あなたも……」
「ごめんなさい……ロイドは思い出せたみたいだけど、わたしは思い出せなくて……」
「いいのよ、気にしないで。ロイドが思い出せたのだから、いつかコレットも思い出せてくれるって信じてるわ。だから、またよろしくね、コレット」
「うん! よろしくね!」
やっぱりコレットもマリアの事を覚えていなかった。けど、それはプレセアの件で何となく理解はしていた事。けど、ロイドさんが翼さん達の事を思い出せたのも事実。だから、いつかコレットがマリア達の事を思い出せてくれると信じて、手を伸ばした。
それをコレットは両手で取り、ブンブン。
「え、あ、あれっ……?」
「ど、どうしたの、コレット」
けど、ブンブンしていたコレットが、さっきのロイドさんと同じように呆けた。
すぐに翼さんとロイドさんが目を合わせ、同時にさっき、ロイドさんが記憶を取り戻した時の事を思い出したわたし達ももしかして、と目線を合わせた。
これは多分……
「…………え、と……ご、ごめんね、なんか急に立ち眩みが……」
「だ、大丈夫なの? 調子が悪いなら休んでいた方がいいんじゃないの?」
「う、ううん。だいじょぶだから……あれ?」
「ど、どうかしたの?」
「マリア……? マリア!? 思い出したよ、マリア! 久しぶりだね!!」
「本当なの!?」
「うん! どうして忘れちゃってたんだろう……ちょっとわからないけど、今はちゃんと思い出せるよ! マリア達と一緒に戦った時の事!」
やっぱり、と言うべきか。コレットはマリア達の事を思い出す事ができた。
すぐにコレットはマリアの後ろに居る翼さんにも久しぶり、と挨拶していたけど、疑問はやっぱり残る。
どうして急にロイドさんとコレットは二人の事を思い出せたんだろう。二人が共通してやった事といえば握手だけど……プレセアは二人と握手しても記憶を取り戻さなかったから違うのかな……
「……なんだか、わたし達だけ仲間外れな感じがしますね、ジーニアス」
「そ、そそそそそそうだね、ぷ、ぷれ、プレセア……」
あと、あっちで挙動不審になってるジーニアスとそれを気にしないプレセアについてはどうするのが一番なのかな……
****
本部からの迎えが来て全員で一度本部に集まって、そこでリフィルさん達の状況やリフィルさんが組み立てた仮説を元に色々と話す場が設けられた。
勿論、一旦ロイドさん達とエミル達が再会できたから、それを喜ぶ時間もあったけど。
ただ、喜ぶのも少しだけ。どうやらロイドさん達はそれどころじゃない事態を把握しているようで、すぐに意識を切り替えてリフィルさんが指令室に集まったメンツを前に自分達が置かれていたらしい状況を放し始めた。
「まず、エミル達はこの世界のどこかにバラバラで飛ばされてきた。これは間違いないわね?」
「あぁ、間違いないよ。ただ、アンタ等も探しつつ移動はしたけど、見つからなかった。どこに隠れていたんだい?」
「それについてなのだけど、結論だけ言ってしまえばわたし達は世界と世界の狭間にある建物に飛ばされたわ」
世界と世界の狭間にある場所……?
それって、ギャラルホルンの道の事!? いや、でも建物となると……一応、ミレニアムパズルの入り口はあったけど、あそこは建物とは言えないし、そもそもあんな場所に移動させられたら帰る手段なんて無いに等しいだろうし……
「目覚めてからすぐに敵に囲まれて、何とか逃げ出したのだけど……相手は、ウロボロスと名乗っていたわ。この名前に聞き覚えはなくって?」
う、ウロボロス……!?
「聞いたことがあるも何も……」
「この間、そいつらの残党と戦ったばかりだ」
「ウロボロスは私達が壊滅させた組織だ。ただ、残党は残っているようで色々と企んでいるらしいが……」
「なるほど……ウロボロスの目的は?」
「世界蛇を使い平行世界を喰らいつくす。これに尽きるわ。ただ、世界蛇は私達で倒してその幼体もこの間撃破したわ」
「平行世界を、喰らいつくす……!?」
リフィルさんはウロボロスが狙っている事の大きさに驚いたけど、すぐにリフィルさんに変わるようにロイドさんがみんなの前に出て、リフィルさんの説明を引き継いだ。
「だとしたら、納得がいく。奴らはあの剣を……エターナルソードを使って世界蛇ってやつを復活させようとしている。戦った時に、世界蛇の復活を、とか言っていたからな」
エターナルソード……? それって、確か……
「いや、待てよハニー。エターナルソードは、ハニーのマテリアルソードは……」
「あぁ。フランヴェルジュは母さんの墓に置いてきた。けど、奴らはエターナルソードを保管していた。多分、俺のエターナルソードとは違うエターナルソードを……恐らく、作ったか、平行世界から持ってきて」
確かに世界蛇の復活は何が何でも止めなきゃいけない。じゃないと、また数多の平行世界が犠牲になってしまう。
けど……
「その……そんなにエターナルソードって剣はそんなに凄い剣なの?」
「言ってもただの剣だろ? ンなもん一本あったところで……」
そう。確かにエターナルソードは平行世界に行き来する事ができる凄い剣っていうのは知っているけど、それだけで世界蛇を蘇生させる事ができるとは思えない。
「いや、立花、雪音。そうじゃない。エターナルソードは確かに世界を渡る事だって可能とする剣だった。だが、あの剣の力はそれだけじゃない」
「エターナルソードは時空を……時間と空間を操る事ができる剣、だったわよね」
「あぁ。だからこそ、エターナルソードは過去に干渉する事も未来に干渉する事もできる。お前達に倒されたという世界蛇を、倒される前の時間から連れてくる事だってできてしまうんだ。俺はそれを使ったことがあるから分かる。あの剣は、その程度の事は簡単にやれちまう、最強の剣なんだ」
空間だけじゃなくて、時間も……!? 時空を操るって、そういう……
いや、だとすると!
「それじゃあウロボロスにエターナルソードを取られているのって駄目じゃないデスか!?」
「むしろ、もう手遅れな可能性も……」
「そこは大丈夫だ。エターナルソードを使える奴は限られている。それこそ本来はハーフエルフしか使えない剣なんだ。それを俺は、とあるアイテムを鍵にして使えるようにした。だから、相手にそれこそミトス並みの力を持つハーフエルフが居なければエターナルソードはそこにあるだけだ。現に世界蛇ってやつがまだ出てきていないのがその証拠だ」
そ、そうなんだ……良かった。
もしもエターナルソードって剣が誰にでも使える剣だったら、今回の件は相手にエターナルソードが渡った時点で既に詰んでいた可能性があったからね……というか、それだったらとっくに世界蛇が復活しているもんね……
よかった……とはあまり手放しに喜べないかな。
どっちにしろ、相手にはエターナルソードって言うそれ一本で世界蛇をこの時代に呼び出すための鍵が渡ってしまっている。これを放っておくわけには……
……でも、そうなるとまだ疑問点はあるよね。
「ならば、どうして君達がウロボロスの拠点に飛ばされ、エミルくん達はこの世界に飛ばされたんだ。いや、そもそもどうやって君達をこの世界に?」
「恐らくエターナルソードの力を無理に使って、エターナルソードの力を扱える人間を呼び寄せようとしていたんだ。本来ならエターナルソードの力でも、無理に使っただけじゃ俺達を呼び寄せることはできない。けど、俺達は丁度その時、世界の狭間に居た。だから、無理に使った力でも不完全にそれができちまったんだ」
「世界の狭間……そっか、ギンヌンガ・ガップへの!」
「あぁ。けど、結果的には俺だけを呼び出す事はできず、周りに居たコレット達を同じ場所に。エミル達を近くの世界に飛ばした。多分、魔物とか、人間やそれに近しい存在以外は何とかして呼び寄せる対象から除外したんだろうな。だからテネブラエも居ないし、仲間の魔物も居ない。あの強化された魔物も、あいつらが俺達を呼び寄せるために実験していた際の副産物なんだろう」
なるほど……
本来はロイドさんだけを狙った犯行だったけど、使った力が不完全だったせいでロイドさんの周りの人達をそのまま攫ってきただけになってしまった。その際に不必要だったエミル達はこの世界に、ロイドさんとその近くにいた人はウロボロスの拠点に飛ばされる羽目になった……
「その後、ウロボロスってやつらの拠点に飛ばされた俺達はレアバードみたいな乗り物があったから、それを奪って逃げてきたんだ。乗り物は近くの山の中に隠してある」
「そんな乗り物があったのか……」
「一応、乗れるのは操縦する奴とその後ろに乗るやつの合計八人までだ。覚えておいてくれ」
八人……
ここに居るのは十七人だから、半分以上はウロボロスの拠点に行けない事になる。少数での戦闘になるからかなり辛い戦いになるかも……
そこら辺は要相談になる……のかな。
でも、相手の目的と敗北条件、攻撃する場所とやらなきゃいけない事はこれで明確になった。
相手が欲しいのは、ロイドさんの力。そしてエミル達も元の世界に帰るためにはエターナルソードの力が必要になる。だから、ロイドさんを中心に戦ってエターナルソードを奪取、そのままウロボロスの拠点を破壊してみんなで帰還する。
「なるほど、事情は理解した。では、我等の目的は同じという事で間違いは無いか?」
「あぁ。俺達はエターナルソードを手に入れて元の世界に帰る。そしてあんた達は」
「ウロボロスの残党を殲滅する。そのために、力を貸してくれ」
「勿論だ。強化された魔物の件もある。なるべくすぐにウロボロスを倒そう」
「じゃあ、ウロボロスの拠点に行くメンバーとこの世界で戦うメンバーをまずは分けよう。それから、準備ができ次第ウロボロスの拠点を叩く」
エミルの言葉に全員が頷き、メンバーを決めてから、準備のための自由時間を思い思いに過ごす事になった。
****
――スキット『その後のロイド』
「そうか……ロイドは世界を救った後にそんな事を……」
「あぁ。世界中のエクスフィアを回収する旅。その中で濡れ衣を着せられたけど、それでも俺にはやらなきゃならないことがあった。そのせいで、コレット達にはちょっと迷惑かけちまったけどな……」
「だがその後にロイドはエミル達と和解できたのであろう? ならばよいではないか。終わりよければ、というやつだ」
「それもそうだな」
「ところで……ロイドよ。そのエクスフィアを集める旅というのは、一人でやっていたのか?」
「いや、コレットと一緒だったけど……って、な、なんだよその顔……」
「いや? という事は、少しはコレットとの仲も進んだのではないかと思ってな」
「…………」
「……す、すまん、揶揄いすぎたな」
「い、いや、事実だからな……その、一緒に旅をしていく中で……」
「そ、そうか……だが、お似合いだと思うぞ。お前とコレットは」
「ありがとな、翼」
「さて、ではコレットに情けない姿を見せないよう、もう一つ手合わせといくか!」
「あぁ! 行くぞ、翼!」
――スキット『その後のコレット』
「やっぱりコレットは可愛い服が似合うわね。いつもの神子服もいいけど、もうちょっとお洒落な服を着てみるのもいいんじゃないかしら?」
「そ、そうかな? わたしにはちょっと可愛すぎるような……」
「コレットが可愛すぎるから似合っているのよ。そういう服を着た方がロイドもちょっとは意識してくれるかもしれないわよ?」
「そんな事しなくてもロイドはわたしの事を見てくれるからだいじょぶだよ………………あっ」
「…………あら? なるほどなるほど。二人ともそういう仲になってたのね」
「ち、ちがっ、違くないけどちがっ、あうあうあうあう……!?」
「ふふふ。コレットは二年経ってもコレットのままね」
――スキット『その後のプレセアとジーニアス』
「そ、その、ぷぷぷぷ、ぷ、プレセア……こ、ここ、楽しい?」
「はい。にくきゅうがいっぱいあって天国です。ふにふに……」
「……えっと、あの二人っていつもあんな感じなんですか?」
「あぁ……ジーニアスも、しっかりとする時はしっかりとするのだがな。如何せん、惚れた弱みというのは辛いらしい」
「そうなんですね……所でリーガルさんも肉球、好きなんですか?」
「勿論。これはとても素晴らしい物だ。それに、この猫カフェというは実に素晴らしい。元の世界に戻ったらこの猫カフェを参考ににくきゅうを思う存分楽しめるカフェを作るとしよう」
「その時はわたしもご協力します。いえ、させてください」
「ぷ、プレセアが手伝うんなら僕も手伝うよ!!」
「……なんか、あの二人の関係って面白いですね」
「だろう?」
****
戦う準備とウロボロス残党の拠点に向かうメンバーの選出は終わった。
拠点に向かうメンバーは、まずロイドさんとコレット、ジーニアス。それからエミルとマルタに加えてわたし、マリア、翼さん。残りのメンバーはこっちの世界に残ってウロボロス残党の攻撃と強化された魔物を撃退する役目に着いた。
装者を多めに残す理由は、もしも相手がアルカノイズとかを召喚してきた際の手札を増やすため。残党の拠点に向かうメンバーも、エターナルソードに詳しいロイドさんを中心に素早く移動しつつサポートができるメンバーを選んだ。コレットは本来こっちの世界に残る予定だったんだけど、コレットはいざという時の切り札として連れて行かれることに。
転んだらいいことあるかもって……どゆこと?
とにかく、その八人でウロボロス残党の拠点に向かう事に。
「じゃあ、まずは乗り物を回収してこよう。俺達がウロボロスの拠点に向かったら、すぐに先生達は魔物が現れてもいいように弦十郎の所で待機だ」
「分かったわ。こっちの指揮は私がするわ。それと、怪我をしたらすぐに私が回復するわ」
「では、作戦は決まりだ。この作戦はウロボロス残党の戦力が現状未知数だ。エターナルソード回収班と現地での戦闘班はくれぐれも気を付けて戦ってくれ。エターナルソード回収班も、エターナルソードを回収でき次第、こちらの世界に戻ってくる」
この作戦、あまり相手に気づかれちゃいけない作戦でもある。
ウロボロス残党が、プレセアの強力な攻撃を受けても耐え切るほどの魔物を何体も用意している事は容易に想像できる。わたし達はそれを八人という少人数で突破しなきゃいけないし、こっちの世界も次々に現れるであろうそれらを民間人に被害が出る前に片っ端から倒していかないといけない。
それを抑えるためには、なるべく相手に気づかれる事無く潜入してエターナルソードを奪取、そのまま相手の拠点をエターナルソードの力で破壊してこっちに帰ってくる必要がある。
幸いにも、こちらの敗北条件はロイドさんがエターナルソードを使って世界蛇を召喚するという、洗脳でもされない限りは絶対にありえない敗北条件。
まず負けるなんて事は、ない。
「行くよ、みんな! エターナルソードを取り戻してウロボロスを倒すんだ!」
エミルの言葉に全員で頷き、ロイドさん達が世界の狭間に居るウロボロス残党の拠点に向かうための乗り物を格下場所へと走る。
勿論わたし達はギアを纏って。残りのメンバーも交通規制と情報統制によって人気が無くなった街中を武器を手にしながら。
このまま乗り物まで辿り着ければいいんだけど、やっぱりそうはいかないというのが現実。
乗り物の場所へと向かう最中、急に空に切れ目が出現したかと思うとそこから黒い瘴気を伴った魔物達が降り注いできた。その中にはこの間、わたし達が苦戦したウェアドラゴンの姿も何体も確認できて、他にも対面するだけで強いと分かる魔物も沢山いた。
「魔物だ!」
「エミル、道は私達が作るわ! あなた達は一刻も早くウロボロスの拠点に!」
「はい! みんな、突っ切るよ!!」
後ろからのリフィルさんの言葉に頷いて、エターナルソード回収班は全力で前に。その道を開くために近接戦闘が得意な人は前に、遠距離での戦闘が得意な人は後ろに下がって攻撃を始めた。
「命を糧とし、彼のものを打ち砕け! セイクリッド・シャインッ!!」
「あたしの力を見せてやる……! 風塵ッ! 封縛殺ッ!!」
「持ってけダブルだッ!!」
「いっけぇぇぇ!!」
リフィルさんの魔法としいなさんの奥義、そしてクリス先輩のミサイルと未来さんのビームが一気に目の前を塞ぐ魔物たちを吹き飛ばし、その空いた空間に今度はゼロスさんが飛び込んだ。
「へっ、俺様の魅力に惚れるなよ……? 食らいなッ! シャイニング・バインドッ!!」
直後にゼロスさんの体から放たれた光がそのまま攻撃になり、一気に魔物たちを蹴散らしていく。
そして、そこに割り込んだのはインファイターでもある響さんとリーガルさんの二人。
「行くぞッ!」
「はいッ!」
『殺劇舞荒拳ッ!! ハァァァァァァッ!!』
前に出た二人の、まさかの合体技。目にも止まらない拳の連撃と蹴りが魔物を次々に吹き飛ばし、さっきまでの五人の攻撃すらも耐えていた魔物すら二人の技に続々と蹴散らされて消滅していく。
「まだだ!」
「まだ終わりじゃない!」
『トドメぇぇぇぇぇぇぇ!!』
そして最後は二人が同時に飛び上がり、地面に向かって蹴りを叩き込むと地面が隆起して爆発。それに巻き込まれた魔物はそのまま消滅していった。
けど、それでも倒しきれないほどに魔物はうじゃうじゃと沸いてくる。思わず足を止めそうになるけど、わたし達の上をプレセアと切ちゃんが飛び越えた。
「道を開くのならあたしが適任デス!」
「狙いを定めて……シュートッ!」
飛び越えた瞬間、切ちゃんが回転してティンカーベルの状態になり、それをプレセアが斧を使って全力で殴りつけて切ちゃんを吹っ飛ばした。
普段の何倍もの速度を出しながら突っ込む切ちゃんは文字通り魔物の群れをホームランしながら道を作っていく。
多分、あれは後で目が回って女の子がしちゃいけない事をしちゃうパターンだね。でも、道を作ってくれたのは確かだから切ちゃんの尊い女子力の犠牲を無駄にしないために前に前に進んでいく。
けど、そうして前に進んでいる時だった。
「……しまった、囲まれました」
後ろで切ちゃんと一緒に突出していたプレセアが魔物に囲まれていた。
すぐに戻れば助けられるんだろうけど……続々と魔物は迫ってきているから、足を止めればわたし達も囲まれてジリ貧になっちゃう……! 後ろの響さん達も自分達を囲もうとする魔物に精一杯みたいだし、どうしたら……!
「――プレセア、そこ動くなよ!! オラァ!!」
この状況を打開するための策を考え始めたその瞬間に上空から声が聞こえて、同時に降り注いできた無数の槍がプレセアの周囲を囲んでいた魔物に突き刺さり隙を作った。
その隙を縫ってプレセアが自分を囲んでいた魔物の内、手近な魔物の首を斧で斬り付けて消滅させて難を逃れた。
そして空からプレセアの窮地を救った人が降ってきて、プレセアの横に着地した。
「よっ、加勢に来たぜ!」
「奏!」
「ナイスタイミングよ!」
着地したのは、なんと奏さんだった。
多分、丁度いいタイミングでこっちに来て、そのままこっちの戦いに参加してくれるという事で通信する前に本部を飛び出してきたんだと思う。
奏さんが来てくれるなんて、相当心強い。これならプレセアの方も任せてわたし達は前に進める。
「事情は聞いてるよ。プレセアはアタシの事を覚えてないんだろ? アタシの方は覚えてるから、そっちは好きにやりな。アタシがそれに合わせるから」
「えっと……ありがとうございます」
「いいって事よ。アタシとプレセアの仲だからな」
奏さんはいつもの頼れる笑顔を浮かべながら乱暴にプレセアの頭を撫でた。
最初はプレセアも困惑して奏さんの手を退かそうとしたけど、プレセアも急に呆けて……
……も、もしかして?
「…………あっ。思い、出しました」
「お? って事は……」
「はい、お久しぶりです。まさかまた会えるなんて」
急にプレセアも奏さん達の事を思い出した……
えっと……ロイドさんは翼さんと握手した時に思い出して、コレットも同じような状況で思い出して……で、プレセアが頭を撫でられた時に思い出して……
……もしかして、翼さん達の誰かが触ると思い出すとか、そういう仕組み? もしかしたらギアを纏っている時じゃないとダメ、とかの条件はありそうだけど……
「なんだよ、ちょーっとは寂しいかと思ったら全然そんな事なかったな。っつか、それならジーニアスにもアタシ達の誰かが触れば思い出すんじゃねぇのか?」
「そんな簡単なわけないじゃない、奏。だったらこれで解決しちゃうわよ」
とか言いながらマリアが思いっきりジーニアスの頭に手を置いた。
まぁ、確かに奏さんの言う通りならこれでジーニアスも……
…………あれ?
なんかジーニアスも同じような感じに……
「……え、えっと、どうにもその通りだったっぽいね?」
「嘘でしょ?」
「あはは……ひ、久しぶり。と言っても、僕は途中で捕まってたから影薄かっただろうけど……」
えぇ……そんな簡単でいいの……?
……まぁ、思い出したんならそれで良し、だよね。
「じゃあ、奏! プレセアの事、お願いね!」
「任せときな! んじゃ、いっちょ派手に暴れるぞ! プレセア!」
「はい。この程度の魔物、蹴散らしましょう」
ジーニアスの言葉に奏さんが頷き、二人が槍と斧を構えた。
その瞬間だった。プレセアの首元の宝石が輝き、奏さんのギアが光に包まれてその姿を変えて、まるでコレットの服装そのままのように変化したのは。
あれって……心象変化? そういえば、翼さん達はロイドさん達の力をある程度使えるようになるギアに心象変化を起こしたって言っていたけど……それがあのギアなのかな。
「おっ、またギアが変化したな。こうなったんなら、やる事は一つだ!」
「タイミングは?」
「そんなもん、勢いでどうとでもなる!!」
直後、奏さんが斧に変化した槍を振り回して近づいてきていた魔物を叩き斬りながら吹き飛ばす。更に二人が吹き飛んだ魔物を跳躍しながら追い、斧を魔物に叩き付けた。
「これで!!」
「終わりです!!」
直後、前に見たプレセアの技のように地面が隆起。そのまま炎が噴き出し、二人の斧が空中に吹き飛んだ。
けど、二人はそれを即座に跳躍してキャッチ。それを思いっきり振りかぶり回転しながら倒れる魔物に向かって斧を叩き込んだ。
『緋焔ッ! 滅焦陣ッ!!』
追い打ちとして放たれた一撃で更に地面から炎が大量に吹き出し、それを叩き込まれた魔物どころかその周囲の魔物をも巻き込んで消滅させていく。
その凄まじい一撃に思わず呆然とするけど、すぐにわたしはマルタに手を引かれて乗り物のある方へと走る。
あれなら、この場は絶対に大丈夫。だからわたし達は前に行かないといけない。
「時は戻らない。それが自然の摂理……」
「あぁ、その通りさ」
二人の会話を最後に、わたし達はそのまま魔物が発生してきた場所を何とか通り抜け、人気のない所に隠してあった飛行機のような形をした乗り物に二人ずつ搭乗し、ウロボロス残党の拠点へと向かった。
****
――スキット『レアバード』
「すまないな、ロイド。操縦を任せてしまって」
「いや、いいんだ。レアバードの操縦なら慣れているからな」
「レアバード……っていうの? この乗り物」
「多分違うけど、結構それに近いよね。わたし達も前は一人一台ずつレアバードを持ってたんだ」
「今は必要もなくなったし、返しちゃったから持ってなかったけど、まさかまた操縦する事になるなんてね」
「一応ロイドは持ってるんだっけ?」
「あぁ。けど、俺のレアバードはあっちに置いてきちまったからな。今は持ってない」
「そうなんだ。わたし、エミルとこんなにくっ付けるし、この乗り物好きだな~」
「ま、マルタ……お願いだからみんなの前では……」
「……いつもあんな感じなの?」
「まぁ、何もない時は大体ね。僕もいつかプレセアと……」
「ちょっ、ジーニアス!? 照れるのはいいけどせめて操縦はちゃんと!! 世界の狭間に落ちちゃう!!」
****
色々とあったけどウロボロス残党の拠点に到着した。
外観は、世界の狭間に不自然に存在している研究所って感じなんだけど、とりあえずそこの屋上のような場所に着陸してから八人で拠点の中を走る。
「エターナルソードの場所は!」
「ここの地下だ! みんな、急ぐぞ!」
「きっと僕達が来た事はバレているから、戦闘準備も怠らないで!」
ロイドさんを先頭に、案内してもらう形で拠点の中を走る。
本当に普通の研究所みたいな感じなんだけど、どこか不気味な気配も感じる。油断していたら即死するほどの罠があると考えてもいいと思う。
けど、ロイドさん達はここに一度来た事がある。だから、ロイドさん達に気を付けるべきポイントは教えてもらいながら屋上から下へ下へと進んでいく。何故か階段の場所が西側から降りてきたと思ったら東側に行かないと次の階段が無かったりと、かなり面倒な作りになっていたけど、問題なく進んでいく。
地下まで残り二階程になったころ。廊下を走るわたし達の前にウロボロスの構成員が現れた。
「来たな、装者とその仲間!」
「時の剣は渡さん!」
「エターナルソードは世界を壊すための道具なんかじゃない! 悪いが、エターナルソードは俺達が手に入れる!」
ロイドさんが剣を構え、ウロボロスの構成員がカルマノイズの力を取り込んでガンド化する。
流石にガンド化した構成員は強いけど……けど、この八人なら絶対に負けない!!
「魔神剣・双牙!!」
「魔神剣ッ!」
ガンド化した構成員に向かってロイドさんが魔神剣を二回放ち、更にエミルもそれに続いて魔神剣を放つ。けど、構成員はそれを簡単に打ち消しながらこっちに迫ってくる。
それをロイドさんとエミルは剣で迎え撃ち、ガンド化した構成員と一対一で互角以上に立ちまわって見せる。
勿論、わたし達だってそれを黙って見ているわけじゃない。
「御許に仕える事を赦したまえ……響け、壮麗たる歌声! ホーリー・ソングッ!!」
「助かる、コレット! 蒼ノ一閃ッ!!」
「HOLIZON†CANONよ!!」
コレットが天使術を発動すると同時に、体に力が漲ってくるのを感じた。その力を受けた二人はそれぞれの攻撃を構成員に放ち、加勢する。
その瞬間に奏さんの時と同じようにロイドさんの手の甲に付いている宝石とコレットの首元に付いている宝石が光り輝き、翼さんとマリアのギアが二人の衣装をモチーフにしたものに変わった。
「心象変化か!」
「このギアなら、同じ技が私達にだって使えるわ! 行くわよ、コレット!!」
「うん! その御名の元、この穢れた魂に裁きの光を降らせ賜え!!」
『ジャッジメントッ!!』
二人の力の一端を使う事ができるギア。その力を使ってマリアがコレットの天使術に合わせて天使術を使う。
発動された天使術により、構成員の足元に魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣を目印に降り注いだ光の雨が構成員に無視できないダメージを与えていく。
「ぐああああああ!!?」
「な、なんだこれはああああ!!?」
「チャンスだ、ロイド!」
「あぁ、一気に決める!!」
その一撃で膝をついた二人の構成員に向かって、翼さんとロイドさんが剣を掲げ飛び上がった。
剣には雷が走り、二本の剣がまるで一本になったかのように見える程の輝いている。その輝いた剣を落下しながら構成員に向かって叩き落とした。
「決めてやるッ!」
『翔破蒼天斬ッ!!』
二人の息を合わせた技は文字通りガンド化した構成員を切り裂き、吹き飛ばした。
この一撃は流石のガンド化した構成員と言えど耐え切れなかったようで、ガンド化も解除された構成員はそのまま気絶。わたしとマルタは何もするまでもなく、二人のガンド化した構成員は無力化された。
「よし、行くぞ! もうすぐで地下だ!」
剣を構えたまま油断は一切していないロイドさんの声に従って、再び拠点の中を走る。
その最中に時折構成員や魔物が出てきては道を塞いできたけど、その度に敵を全て蹴散らし、一気に地下へ。
地下の空間はかなり広く、階段を降りてすぐにだだっ広い空間のド真ん中に鎮座している台座に突き刺さったまま、神々しいとも言える光を放つ一本の剣を発見する事ができた。
ここまで来たら間違う理由もない。
あれが、エターナルソード。時と空間を司る、究極の剣。あれがあればエミル達は元の世界に帰れるし、世界蛇をこの時代に召喚して世界を破壊することだってできる……
「……間違いない、エターナルソードだ。ただ、やっぱり俺のエターナルソードじゃない。それに、新しく作られてって訳でもなさそうだ。どこかの世界にあったもう一本のエターナルソードで間違いないと思う」
ロイドさんもアレはエターナルソードだと言っている。
けど、ロイドさんの想像通り、あれはロイドさんのエターナルソードじゃなく、どこかの平行世界から持ってきたエターナルソードで間違いないという。
すぐにそれを回収しに行きたかったけど、エターナルソードを確認してすぐに白衣を着た男がわたし達の前に現れた。明らかに、エターナルソードを研究していますとでも言わんばかりの風貌をしている。
「来たか、エターナルソードの担い手」
「エターナルソードはお前達みたいな奴等には渡しちゃおけない。俺が元の世界に戻す。だから、そこを退け」
「渡してやってもよい。だが、その対価にベアトリーチェ様と世界蛇を復活させてもらおうか?」
「それこそ断る! お前達の狂った野望に協力なんかするか!」
「お前達みたいな狂った信仰心が生む願いなんて、願い下げだ!」
交渉する余地はない。剣を構えるロイドさんとエミルの後ろでわたし達も武器を構える。
例えあの人がガンド化しても、わたし達ならガンド化した人の一人や二人程度、簡単に倒せる。寧ろ過剰戦力とも言える。
それは相手にも分かっているはずなのに、相手は何故か不敵に笑っている。
「ならば、貴様の心を折り、我等の野望のために力を振るう傀儡としてくれるわ! この力を使ってな!!」
そう言いながら、相手は懐からリモコンのような物を取り出し、ボタンを押した。
まさか基地ごと自爆する気じゃ……とか思ったんだけど、そんな予想はすぐに違うと気が付いた。
エターナルソードが輝き、まるで空間そのものに切れ目が走ったと言わんばかりの現象が起こって何もない場所が罅割れた。そうして罅割れた空間から、剣を持った骨の異形。そうとしか言えない存在が姿を現し、わたし達に向かってその手に持った剣を構えた。
あの骨……こうして対峙すると分かる。相当……それこそ、わたし達が力を合わせないと勝てないくらいに強い。
「なっ……!? ソードダンサー!?」
「そんな、アレは二年前に……!」
「まさかエターナルソードの力を使って呼び出したのか!?」
「その通り! 確かに世界蛇とベアトリーチェ様を呼び出す程、エターナルソードの力は解析できていない。だが、強力な存在を無作為に呼び出す程度なら既に幾多の実験を重ねて成功している! さぁやれ! あの赤色の男以外は不要だ!」
あの骨の名前はソードダンサー、というらしいけど、どうやらあれはロイドさん達が一度倒したことのある相手らしい。けど、ロイドさん達はかなり表情を強張らせている。
そんなソードダンサーを召喚した相手はかなり得意げだけど……
呼び出しただけの魔物が、本当に人の言う事なんて聞くの……?
「……うるさい。邪魔だ」
「は?」
「くっ、ソイツから離れろ!! 殺されるぞ!!」
そんなわたしの疑問を解決する言葉。ロイドさんの敵に対して放った言葉でこの後起こる事が容易に想像できてしまった。
その予想を裏切らないとでも言いたいのか、ソードダンサーは四本の腕で持った剣の内一本を使い、相手を切り裂き、そのまま吹き飛ばした。吹き飛ばされた人は血を流しながら倒れ、動かなくなった。
予想通り、としか言えない光景。でも、ソードダンサーの後始末はわたし達がしなくちゃならない。
「……強き者よ。命を賭してその力を我に示せ」
「俺達に倒される前の時間のソードダンサーか、それとも別の世界のソードダンサーか……気を付けろ! アイツは強いぞ!!」
アレが喋っていることについては、気にしない。相手はファンタジーなんだから何が起こったって不思議じゃない。
ただ、わたし達の前に立つあの骸骨、ソードダンサーは途轍もなく強い。それだけは確かだった。
「ダメージを受けたらあたしが回復するわ!」
「援護は僕が! 地に伏す愚かな贄を喰らいつくせ! グランドダッシャーッ!!」
「……グランドダッシャー」
ジーニアスがけん玉を構えて魔法を放つけど、それと全く同じ魔法がソードダンサーから放たれ、二人の目の前の床が同時に裂けて瓦礫を吹き飛ばしながら二つの魔法がぶつかり合った。
二つの魔法の威力は殆ど互角。けど、ソードダンサーが詠唱をほぼせずに魔法を放てたって事は、ソードダンサーはその気になればほぼノーモーションで魔法を放てるということ。その事実にジーニアスが顔を顰めるけど、すぐに次の魔法の詠唱を始め、それとほぼ同時にマルタも詠唱を始める。
「雷雲よ! 刃となりて敵を貫けッ! サンダーブレードッ!!」
「剣に秘められし七色の裁きを受けよ! プリズムソードッ!!」
「翼、エミル! 詰めるぞ!!」
「あぁ!」
「任せて!」
ジーニアスが二発目の魔法を放ち、それにマルタが続いてプリズムソードを使い、雷と光の剣が同時にソードダンサーに向かうのを確認した翼さん達剣士組が一斉にソードダンサーへ向かって飛び掛かった。
「魔皇刃ッ!!」
「魔神連牙斬ッ!!」
「空牙衝ッ!!」
ロイドさんと翼さんの、今までとは一味も二味も違う魔神剣。それに加えてエミルが空中で放った相手を切り裂く衝撃波がソードダンサーに一斉に襲い掛かる。
更に、後ろからコレット、マリアが追撃の準備をするのに合わせて、わたしもなるべく前の三人を誤射しないようにソードダンサーの横に回り込みながら百輪廻のためにアームドギアを展開する。
「レイトラスト!」
「リミュレイヤーッ!!」
「当たって!!」
二本の魔法の剣に加えて何連発もされた魔神剣、更にエミルの衝撃波に加えてコレットが投げたチャクラムとマルタが剣を振る事で飛ばした三個のチャクラム。更にわたしの百輪廻と、普通の敵ならオーバーキルレベルの攻撃を重ね合わせた合体攻撃。
流石にこれならソードダンサーもダメージを負うだろうと思って、ジーニアスとマルタを除いた全員が攻撃を放った直後に前に出る。
「……天光満つる処我は在り。黄泉の門開く処汝在り」
けど、ソードダンサーはわたし達の攻撃を受けてもビクともせず、攻撃を見てから始めた詠唱を何の妨害も受けなかったと言わんばかりに続けている。
さ、流石に少しくらいは堪えても……
「ッ!? あの詠唱は!?」
「みんな下がって! あれはマズい!!」
そう思いながらも、魔法一発程度なら見てからでも避けれるなんて判断してわたしと翼さん、それからマリアは更に前進するけど、詠唱を聞いていたロイドさん達は顔色を変えてわたし達に下がれと言ってきた。
それに従ってわたし達も即座に下がり、構えるロイドさんの後ろに隠れる。
「て、天光満つる処……」
「出でよ、神の雷……!!」
「ダメ、間に合わない!」
「くっ、粋護陣ッ!!」
「リデュースダメージ!」
ロイドさんと、その横に急いで並んだコレットが同時に緑色の結界のような物を展開した。
けど、それが意味なんて無いと言わんばかりにソードダンサーの周りには当たったら確実に死ぬと確信できるほどの紫電が散っていた。
思わずわたしも電ノコを展開して壁に。翼さんも天ノ逆鱗を五本もわたし達とソードダンサーの前に突き刺し、マリアも短剣を大量に召喚してバリアを作り出した。
その瞬間。
「インディグネイション……ッ!!」
ソードダンサーから放たれた雷が、わたし達が作り上げたバリアを簡単に破壊し、そのままロイドさん達が作り上げた結界に突き刺さる。
「くっ、流石に……!!」
「い、威力が……きゃっ!!?」
その威力にコレットが吹き飛ばされるけど、それを見てからすぐにわたしが前に飛び出し、両手をクロスさせる。
できるなら最後までとっておきたいとっておきだけど……今使わないと少なくともロイドさんの負担が途轍もない事になる。それに、三人で作り上げた簡易バリアと魔法の性質のおかげで、攻撃が来る場所は分かっている。
なら、そこに潜り込んで、絶対防御の盾を使えばこの攻撃は防げる!
「アマルガムッ!!」
ギアが弾け、わたしの周囲に黄金のバリアを作り上げる。
そのバリアに簡易バリアを貫通してなお一切威力が減衰してないんじゃないかとすら思える雷がぶつかり、視界が白一色の光に呑まれる。
けど、アマルガムのバリアフィールドはシンフォギアの最強の盾。これを貫ける攻撃なんてない。
数秒の雷撃を何とか受けきり、バリアフィールドの中から後ろを確認する。勿論、アマルガムのバリアフィールドで雷撃を全て受け止め切ったからか、ロイドさん達は無事だった。
「ぶ、無事なのか……?」
「アマルガムを使ったのね……いい判断だわ、調」
「す、すごいよ! インディグネイションを防ぎきるなんて!」
「ありがと、エミル。でも、これを使っている間は動けないし、動けるようにするともうこれは使えないから気を付けて」
アマルガムをとっておきたいとっておきと言った理由は、そこにある。
アマルガムを使うという事は、不退転の戦略を取らざるを得なくなるというコト。火力は上がるし、発動した瞬間は絶対防御の盾があるけど、それを矛にした瞬間、わたしの防御力はほぼ生身と変わらないレベルまで落ちる。
防御に回す全てのエネルギーを攻撃に転換する不退転の力こそがアマルガム。それを一度切ったという事は、もうわたしに一切の被弾は許されない。
それを覚悟しながら、前を向きこのコクーンをイマージュに変えようとして。
「えっ?」
前を向いた瞬間、わたしの目の前で剣を振り被っていたソードダンサーを見て思考が停止した。
いつの間に?
そんな風に呆けていると、バリアフィールドの上から強烈な一撃がブチかまされ、ダメージこそ無かったものの足が地面を離れて物凄い勢いで壁に叩き付けられた。
「な、なにっ?」
思わず呆然としてしまう程の速度。多分、あのまま流れでイマージュを展開していたら確実にわたしの体は一刀両断されていた。
その事実にゾッとしながらも、ソードダンサーからの追撃が来てもいいようにコクーンの状態で待ち続けるけど、ソードダンサーはこちらに来ず、ロイドさん達と斬り結ぼうとしていた。
「調!!?」
「調なら大丈夫よ、それよりも、今は斬りかかってきたコイツを!!」
「来るぞッ!!」
わたしが壁にバリアフィールドごとめり込んだ状態で戦場を見ていると、ロイドさんが双剣を構えると同時にソードダンサーの一撃がロイドさんを襲った。
それをロイドさんは両手の剣で何とか受け止め、受け止めた剣の上にその時の衝撃を利用して飛び乗った。
その曲芸染みた動きに合わせて翼さんが一緒に剣の上に乗り、二人同時にソードダンサーの顔に向けて剣を構えながら飛んだ。
「合わせろ、ロイド!」
「あぁ!」
『鳳凰天駆ッ!!』
二人が空中から炎を纏って落下し、そのままソードダンサーの顔を斬り付けた……かのように思えたけど、それをソードダンサーはバケモノ染みた反射神経でガードしていた。
けど、二人はそれを手応えで確認し、ソードダンサーの後ろに降り立った瞬間に振り向いて剣を構えて。
「行くぜッ!」
「衝破ッ!」
『十文字ッ!!』
一瞬の速度で放った突きをクロスさせて、ソードダンサーの足に一撃を叩き込んだ。
けど、足りない。ソードダンサーの足はそれではヒビ一つ入らず、二人に向かって四本の剣を自在に振るってくる。そんな凶刃の雨霰の中、ロイドさんと翼さんは時折攻撃を防ぎ、時折避けながら再び連携の準備のため、ソードダンサーの前に二人で並んで立った。
「風輪火斬・月煌ッ!!」
「獅子戦哮ッ!!」
翼さんが風輪火斬でソードダンサーを切り抜け、ロイドさんがそこに獅子戦哮を合わせる。それによりロイドさんが全身に炎を纏い、獅子戦哮で軽く怯んだソードダンサーに追撃を叩き込んだ。
「獅哮爆炎陣ッ!!」
ロイドさんと翼さんの完璧に息の合ったコンビネーションにソードダンサーも流石に堪えたのか、獅哮爆炎陣を剣でガードしたけど、その一撃で大きく仰け反った。
そこに剣に炎を纏ったエミルが飛び込み、その剣を地面に向かって叩き込むと同時にマルタが魔法を発動させた。
「魔王地顎陣ッ!!」
「ディバインセイバーッ!!」
エミルの炎を纏った斬撃とマルタの光の剣が同時に突き刺さり、ソードダンサーが怯む。
この勢いなら、もしかして勝てる……?
「一気に片付けるぞ、翼!」
「あぁ!」
「わたしも続く!」
「僕だって!」
翼さんとロイドさんが一気にソードダンサーに向かって距離を詰めるのを見て、わたしも即座にアマルガムをコクーンからイマージュ形態に変化。右手に盾を持って、それを力の限りぶん投げ盾の側面を刃に変えてソードダンサーの顔面を砕くためにエネルギーワイヤーを使った遠隔操作を行う。
翼さんとロイドさんは剣を構えて飛び掛かり、エミルもそれに続いて飛び掛かった。
けど、その瞬間だった。
「……」
「なっ!?」
「しまっ!?」
「くそっ!」
ソードダンサーが何も言わないまま、その上半身を思いっきり回転させた。
その勢いと速度にロイドさん達は反応する事ができず、なんとかガードはできたみたいだけど、そのまま吹き飛ばされて地面に叩き付けられ、地面を数バウンドして壁に叩き付けられた。
「ロイド!」
「エミル!!」
「っ、駄目よ二人とも! 今は!!」
吹き飛ばされたロイドさんとエミルを助けようとコレットとマルタが飛び出したけど、その瞬間にソードダンサーが飛び出した二人の前に飛び込んできた。
それに二人の体が硬直し、助けようとしたマリアが前に出たけど、マリアがアマルガムを使う暇もなく短剣でガードした直後にマリアが短剣ごと体を吹き飛ばされ、そのままコレットとマルタを巻き込んで壁に叩き付けられた。
「み、みんな!」
「……クレイブ」
「えっ、うわっ、フォースフィールドっ!」
更にジーニアスが反撃をする前にジーニアスに地面が隆起する魔法が直撃し、一瞬ジーニアスがバリアを展開したけど、その魔法はジーニアスのバリアを簡単に叩き割ってジーニアスまでも吹き飛ばした。
い、一瞬で全滅した……!? 残ってるのはわたしだけ……という事は!
「来るッ!」
吹き飛ばされた盾を手元に戻して腰を落として盾を構える。
その瞬間にソードダンサーが突っ込んできて、その剣をわたしの盾に向かって叩き落とした。その一撃で盾にとてつもない衝撃が走り、腕と足が今にも折れそうなほどの衝撃に晒される。
とてつもなく痛いけど、耐えられない事はない。続く一撃を横に転がって避け、盾を展開。人型に変更させてからソレを操作して更に放たれた横凪の攻撃を防がせた。
わたし一人だけならこれである程度は防げるけど……でも、ロイドさん達が……
「ぐっ……みんな、大丈夫か……」
「な、なんとかな……」
「ぐ、グミを……」
「ついでにファーストエイド……!」
よ、よかった、みんな生きてる!
けど、ちょっとこっちが危ないかも……!!
…………でも、みんなが戻ってきても、このままじゃジリ貧になっちゃうんじゃ……何か、ソードダンサーを圧倒できるような力が……
……あっ。
エターナルソードをロイドさんに手渡せば、もしかしたらその力でソードダンサーも倒せるんじゃ。そうと決まれば取りにいきたいけど……ソードダンサーの攻撃が激しすぎて防御に使う手を緩められない!
「と、とりあえずホーリーソングを使うね! えっと、えっと……御許に仕えることを許したまえ、響けんそうれん…………あっ」
「ちょっ、コレット!? あなた詠唱間違ってない!?」
「えへへ、失敗失敗~」
いや、ちょっとギャグしている暇があったら!?
「あれ?」
「へ? えっ、ちょっ、急にギアが!? なんなの一体!!?」
へ?
「も、もしかしてこれって……」
「いいぞコレット!! ナイスだ!!」
あっ、なんか急に周りが白く……
「ぐおおおおおおおお!!?」
「きゃあああああああああ!!?」
「あっ、調が巻き込まれた!?」
「調ぇ!!?」
うわわわわわわっ、なにこれなにこれなにこれぇ!!?
わたしの周りに急に白い光が!? 一応頭上を盾でガードしているから何とかなってるけど、すっごい勢いで白い光が!!?
あっ、でもその光でソードダンサーがかなりダメージを受けてる……と、言う事は、今なら!
「こ、こっち!!」
全力で走って謎の魔法の範囲を抜けて台座に刺さっているエターナルソードを握る。
わたしじゃその力は使えないけど!
「ロイドさん、これを!!」
エターナルソードをロイドさんに向かって投げる。
これを使ってもらえば!
「ッ! あぁ!!」
回転しながら飛んでくるエターナルソードをロイドさんは両手の剣を鞘に仕舞ってから何とかキャッチ。それを掲げた。
「エターナルソードか! それならば!」
「あぁ! コレットが作ってくれた隙を見逃すな! 一気に攻めるぞ!!」
その言葉と共にロイドさんが掲げたエターナルソードを全力で振り下ろした。
「ウロボロス! お前達は根本的に間違っているぜ!! 双星! 響振陣ッ!!」
それだけでまるで斬撃そのものが空間を引き裂かれ、突如として現れた光の斬撃がソードダンサーを切り裂いた。
その隙を逃すわけがなく、みんなが一気にソードダンサーへと詰め寄る。
とりあえず、ロイドさんが作った隙を伸ばすために!
「双β式・連刑断刃!!」
盾を変形させたロボットでソードダンサーを切り刻み、ロイドさんが作った隙を更に長くする。
その長くなった隙を使って、エミルが仕掛けた。
「吹き飛べ!!」
エミルが吠えると同時にエミルの周りで暴風が起き、ソードダンサーを宙に浮かせた。更にエミルはそれを追って跳躍した。
「やってみせるよ!」
更に跳躍した先でソードダンサーを斬り付け、踵落としを最後に叩き込んでソードダンサーを地面に叩き付ける。
「僕の全力を込めて! 絶対に負けないッ! 襲翼虎乱旋ッ!!」
更に剣から飛ばした衝撃波でソードダンサーを追撃した。
そこに更にマルタが追撃をかけるため、腕に装着したスピナーを分離させた。
「あたしが、ラタトスクの騎士なんだから!!」
分離したスピナーは高速で飛び交い、マルタを頂点の一角としてソードダンサーを中心にした三角形の魔方陣を作り出す。その魔法陣に閉じ込められたソードダンサーは動けないらしく、エミルの攻撃で体勢を崩していたソードダンサーはその場で釘づけにされた。
「邪悪を退ける正義の力を!!」
そしてマルタの額の赤色の宝石が一層強く輝き、マルタの腕にもう一度スピナーが戻った。
その瞬間、マルタが作り上げた魔法陣が強く輝いた。
「レイディアント・ロアーッ!!」
その光が弾けると共にすさまじい衝撃が。その衝撃に晒されたソードダンサーは少なくないダメージを受け、更に弾けた光はみんなの傷を癒した。
それで一気に調子が出たのか、ジーニアスが追撃を仕掛けるために構えた。
「天光満つる処、我は在り。黄泉の門開く処、汝在り……! 出でよ、神の雷!!」
あの詠唱って、確かインディグネイション!?
でも、さっきのように紫電こそ散っているけどその紫電は空中に集まって形を作っている。
あれは……剣? もしかして、インディグネイションよりも強い魔法を!?
「へへっ、力の違いを見せてやる!!」
紫電はそのまま文字通り剣となり、紫色の巨大な剣となる。それを見たソードダンサーは思わずガードをしようとしていたけど、そんなの無駄だと言わんばかりにジーニアスは笑いながら構えたけん玉を振り下ろした。
「インディグネイト・ジャッジメントッ!!」
それに連動して叩き落とされた雷の剣はソードダンサーに突き刺さると同時に巨大な爆発を起こした。
この一撃でソードダンサーの体がかなりボロボロになる。けど、ソードダンサーは健在。それを見たロイドさんと翼さんは即座にソードダンサーの足元に潜り込んだ。
『決めてやるッ!!』
ロイドさんがエターナルソードを構え、翼さんが持っていた二本の刀を頭上に掲げ、一つの剣に……エターナルソードに変える。それをロイドさんと同じように構えると二人の足元から衝撃波が走り、ソードダンサーはそれにダメージを受けながら空へ舞い上がっていく。
そして二人は同時に跳躍し、ソードダンサーの上を取るとエターナルソードを構えた。
『天翔!! 蒼破斬ッ!!』
エターナルソードの力を使った一撃。それを叩き込まれたソードダンサーの体はかなり罅割れた。
けど、まだ生きている。全身をほぼ砕かれているけど、それでも立ち上がろうとしている。
「まだだ……まだ……終わりでは……!!」
流石に切り札をくらいすぎたソードダンサーはもうボロボロ。けど、それでも立ち上がろうと剣を地面に刺してでも立ち上がろうとしている。
けど、もう終わり。ここまで来たら、もうわたし達のターン。
ソードダンサーに好きにはさせない。
前に出るエミルとマルタに合わせてわたしも前に出る。
「行くよ、二人とも!」
「うん、エミル!」
「合わせるよ!」
エミルとマルタが背中を合わせ、わたしもその後ろに回り込んで変形させていた盾を元の形に戻して構える。
そしてエミルが先に突っ込み、その手に持った剣でソードダンサーを高速で斬り付ける。更にマルタがそれに続いてその手のスピナーと体術を使って一気にソードダンサーをボロボロにしていく。
わたしも、それに続き盾を投げてぶつけ、更にエネルギーワイヤーを使ってソードダンサーを縛って破壊する。
「お願い!」
「合わせるよ!」
「逃がさない!」
マルタが突っ込み、エミルが跳躍し、わたしは盾を変形させてもう一度ロボットの形にしてから突っ込ませる。
「これで!!」
「この一撃で!」
直後、突っ込んだマルタが魔力を放出してソードダンサーにダメージを与えながら吹き飛ばす。その追撃にわたしがロボットを動かし、空中でソードダンサーを切り刻む。
そして最後は剣に炎を纏ったエミルが空中でその剣を構えて。
「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
剣を振りぬき、その炎をソードダンサーに叩き込んだ。
その一撃でソードダンサーの体は砕け散って地面に散らばった。
「み、ごと……だ…………」
ソードダンサーは最後にその一言だけ残すと、そのまま動かなくなった。
…………勝った?
「……俺達の、勝ちだ」
ロイドさんはそう呟き、エターナルソードの剣先を落ろした。
それに続いてエミル達も武器を収め、わたし達もギアを解くまではしないけど、一息ついて武器を下した。
「ソードダンサーは倒した。それに、世界蛇の復活を目論んでいた奴も……」
「……後は、この拠点を破壊すれば終わりだ」
「分かった。この拠点は、エターナルソードの力で破壊する」
「そうだね。じゃあ、帰ろっか。調達の世界に」
みんながエミルの言葉に頷き、ロイドさんはエターナルソードを軽く振るった。
そして行使されたエターナルソードの力で空間が切り裂かれ、わたし達の世界への入り口ができあがった。わたし達はその中に入って元の世界に帰還し、ロイドさんは最後にエターナルソードを一度振るって拠点をエターナルソードの力で真っ二つにすると、同じようにわたし達への世界の入り口を通って帰還した。
****
その後だけど、今回の事件にかかわったみんなで軽く祝勝パーティーをした。
こっちの世界の料理や、エミル達の世界にしかない料理を作ってもらってのみんなでの祝勝パーティー。それはホントに楽しかったし、ウロボロス残党が企んでいた世界蛇の復活も阻止できて、本当にほっとした。
けど、エミル達にはやらなきゃいけないことがある。だから、別れの日はすぐに来た。
エターナルソードを片手に持つロイドさんと、その周りに集まるエミル達。ロイドさんが剣を振るえば、世界を繋ぐ道が再び出来上がる。ロイドさん達はそこに入り、エターナルソードはエターナルソードが元あった場所へと戻るように手放す。
そうしたら、もうエミル達の世界とわたし達の世界は繋がる事は無いかもしれない。ギャラルホルンも繋がらないかもしれない。
――それに、祝勝パーティーが終わって暫くしてから……エミルから、こんな事を聞いた。
「……そう、なんだ。じゃあ、エミルがギンヌンガ・ガップに行こうとしたのは」
「うん。僕は、精霊ラタトスクとして生きる事にしたんだ。ギンヌンガ・ガップで、扉を守り続ける……」
「……そうなったら、エミルはもう」
「……みんなには、会えない。僕は、世界と一緒に、ギンヌンガ・ガップで扉を守り続けるんだ」
……エミルとマルタは、とても仲が良かった。ううん、仲がいいなんてものじゃない。互いに好き合っている。
けど、二人は元の世界に戻ったら、もう二度と会えなくなる。
それでいいの、とか。そんな事よりも、とか。そういう事を言いたくなかったわけじゃない。でも、エミルは覚悟を決めた目をしているし、マルタもそんなエミルと一緒に、ギンヌンガ・ガップに行こうとしている。
……わたしには、エミルが決断するまでに至った心の辛さは分からない。けど、本当に、本当に悩んで……それしかないから、その決断をしたんだと思う。
だから、わたしがするのはエミルにそんな事をしちゃいけないという否定の言葉をぶつける事じゃない。友達として言える事は、一つだけ。
「……頑張ってね、エミル。応援しているよ」
応援、する事だけ。
「うん、ありがとう調。元の世界に帰って、ギンヌンガ・ガップに
わたしはそれに頷いて、エミルの決意を否定はしなかった。
だって、それはエミルが決めた事なんだから。
例え何百年、何万年と一人で生き続けるのだとしても。それが、エミルの選択なら――
「……それじゃあな、翼。また会えてよかった」
「あぁ。私もだ」
「元気でね、コレット。あまり転んでロイドを心配させちゃ駄目よ?」
「あはは、だいじょぶだよ。ちゃんと気を付けるから」
「プレセアも、じゃあな。短い間だったけど、また会えて嬉しかったよ。ジーニアスも、ちょっとは頑張れよ?」
「はい。わたしも嬉しかったです」
「えっ、頑張れって……か、奏には関係ないだろ!?」
昨日はエミルとの湿っぽい話はそれだけで終わらせて、後は楽しい思い出が残るように面白い話やおかしい話なんかを沢山した。
もう十分話した、とは言えない。だから、盛り上がるみんなを尻目に、わたしもエミル達と最後の会話をする。
「……じゃあね、エミル。マルタも、元気でね。わたしはギンヌンガ・ガップって所には行けないけど、二人の無事を祈ってるから」
「調も、元気でね。ウロボロスなんて訳の分からない奴等がまた出てきても、負けるんじゃないわよ?」
「僕も調達の事を応援しているよ。きっと、調達なら大丈夫」
エミルとマルタと握手をして……そっと、マルタの耳元で囁く。
「大丈夫だよ、マルタ。きっと、奇跡は起きるから」
「えっ……?」
「エミルと一緒に居たいって。そう願って、足掻き続けて。諦めずその手を伸ばし続けて。そうしたら、きっと奇跡は起きてくれるから」
そして、今度はエミルにも。
「エミルも。一人でずっと扉を守り続けるなんて、寂しいだけだから……だから、手を伸ばすのを諦めないで。そうしたら、きっと誰かがその手を繋いでくれるから」
「調…………うん。ありがとう」
もうわたしは、二人に会う事はできない。
けど、二人の友達として、二人が全てを解決した後に、ずっと一緒に居られる事を願っている。
「じゃあ、行くか。みんな、本当にありがとな。今度は、元の世界に帰った後も、みんなの事を絶対に忘れない」
「あぁ。私達も、絶対に忘れない。だから、頑張れよ」
「そっちこそ」
ロイドさんは最後にそれだけ言うと、エターナルソードを後ろの何もない空間に向かって振るった。
すると、あの時と同じように空間が裂け、その先にはよく分からない場所が広がった。
……あれが、ギンヌンガ・ガップ。その先には扉があって……エミルは、そこで精霊ラタトスクとして。
「……じゃあね、調」
「元気で」
「うん。二人がずっと一緒に居られる事……わたしは祈ってるから」
最後に、二人にそれだけ言うと、二人はロイドさん達と一緒に世界の裂け目の中に入っていって。
そして、消えた。
……エミル達は、最後の戦いに挑むための、元の世界に戻っていった。
……ちょっと寂しいけど。でも、もしかしたらギャラルホルンがいつか、エミル達の世界との道を作ってくれるかもしれない。
わたしはそれを待っている。いつかあの二人ともう一度会える日々を。
だから、二人に負けないようにわたしも戦おう。みんなが暮らすこの世界を、無数の平行世界を守るために。
****
「……本当に、よかったのか」
「あぁ。どっちにしろ俺はここで扉を守り続ける。それは……もう、決まった事だ」
「そう、か……確かに、お前一人ならそうかもしれないな」
「なに? どういう事だ」
「簡単な事だ、ラタトスク。俺は、お前に手を伸ばす。お前のコアの宿り木となるために、俺はこの場で手を伸ばそう。そして、お前の肉体は地上へと行け」
「……そ、それは」
「俺は、エミルには人としての一生を過ごしてほしい。それに、それを願っているのは何も俺だけではない筈だ。お前の仲間は、最後までその道が無いかと手を伸ばしていた。だが、それでも一歩足りず、お前も、お前の仲間も手が届かなかった。ならば、俺がその一歩を埋めよう。俺がお前の手を繋ぎ、お前の仲間と手を繋がせてやる」
「リヒター……」
「お前が俺の手を取らないのは勝手だ。だが、お前が手を取るのならば。俺はこの体を貸そう」
「…………」
――手を伸ばすのを諦めないで。そうしたら、きっと誰かが手を繋いでくれるはずだから。
「……勇気は、夢を叶える魔法」
「あぁ。お前は、俺の手を取る勇気はあるか? それとも、このまま手を伸ばす事を諦めるか?」
「…………俺は――」
ED曲:二人三脚ver.2013
いやー、長かったっす……という事でTOS-Rコラボ話はこれにて終了。
書きたい事を色々と詰め込んで、ついでに一部カットしたのにも関わらずこの長さ……正直に言うとロイド視点で合流までの話を書くとかも考えてたんですけど、流石にコラボキャラの一人称を使う訳にもいかなかったので、調視点で話を進めていきました。
実は当初は敵をガンドで強化されたアビシオンにして、敗戦するけどエターナルソードの力で何度も戦いを繰り返しているループ系を書こうとしたんですけど、流石にエターナルソード使ったら記憶持ち越すだろうし……と悩んだ結果、ストーリーはこんな感じに。
で、基本的には原作の技を使っていましたが、一部の技はレイズから持ってきています。襲翼虎乱旋なんかはレイズの魔鏡技ですし、マルタのレイディアント・ロアーもレイズ仕様になっています。
そっちの方がテンポ良くて書きやすかったので……
それと、ロイドくんのみ決戦魔鏡こと双星響振陣を使っております。個人的にこの魔鏡、クッソ好きなので今回採用しました。
そんなこんなあってこのコラボ回はできあがりました。エミマルとロイコレすこ過ぎて要素ぶち込んでしまって申し訳ない。
ちなみに皆さんはロイドくんの旅をした仲間イベ、誰を選びましたか? 自分は何の迷いもなくコレットを選びました。ロイコレてぇてぇんだ。ついでにエミマルもてぇてぇんだ。アリスとデクスもいいぞぉ。ジニプレもいいけど攻略王のせいで二人がくっ付くところが想像できない……すまんなジーニアス。
次回はまたいつも通りに戻る……かもしれません。
だってガメラコラボ来ちゃったんだもん……ゴジラとULTRAMANがまだ残ってるのにガメラ来ちまったんだもん……公式の供給過多なんだもん……
とりあえず自分はイリス好きですって事で次回へと続く。
……ガメラコラボに調ちゃん居ないけどどうすっぺ…………マジでネタががががが……
P.S
ここのエミルとマルタはイグニスのコアとトルトニスのコアをロイドよりも先に入手しています。つまりエミルとマルタは最終決戦後に……