月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

111 / 113
なんかね、気が付いたら四月でした。

社会人になってからなんか時の流れが恐ろしく早いの……少なくともシンフォギアライブやるまではエタらないから許して許して……

今回は超次元サッカー時空の続きです。主役はガザCらべちゃんこと、調ちゃん(アナザー)です。

それではどうぞ。


月読調の華麗なる超次元サッカー2

 平行世界の切ちゃん達……SONGと、この間ヒビキと一緒に戦った人たち、APPLEの司令塔でもあり装者であるあの二人からわたし達宛にこんな招待が送られてきた。

 

「平行世界間での親睦を深めるためのサッカー? なんでまたそんな面倒な……」

「まぁまぁ、いいじゃないですか。どうやら今回は旅に出たらしいヒビキさんも捕まえて我々VSSONG装者の、遊び感覚のサッカーらしいですし」

 

 ダメ助手の若干ノリ気な言葉にイラつく。

 この間箱買いしてきた安いエナジードリンクを飲みながら、やけにノリ気なダメ助手を放っておいて、その横にいる切ちゃんに視線を向ける。確か切ちゃんはFISにいるとき、他の子とサッカーで遊んでいた。そのせいか、切ちゃんの目がキラキラしている。

 行きたい、っていうのはよーくわかった。別に切ちゃんが行く分にはこちらとしてはいいんだけど……

 

「……それ、わたしも強制参加でしょ? あまり運動とかしたくないんだけど」

「えー、いいじゃないデスか! 調、最近はちょっとお腹が……」

「おっと、それ以上はライン越え。それ以上は切ちゃんでも容赦しない」

 

 なんで切ちゃんはずっと寝てたのにあんなに育って、わたしは出るとこ出ないのに出ちゃいけないところが……いや、わかってるけど。明らかに栄養不足と睡眠不足による発育不足だってことは。

 でも、だとしたら菓子しか食べないダメ助手はチビデブでいいはずなのに……

 

「どうかしましたか?」

「死ね」

「理不尽!?」

 

 ……まぁ、切ちゃんもリハビリはとっくに終わってみんなと訓練できる程度には回復してきているし、たまには生身で目一杯運動する機会を設けてもいいか。テスラとの一件が終わって以来、他の装者とは会ってないし近況報告の場としては十分だろうし。

 TEC以外にも、この平行世界に蔓延る不穏な影はある。それこそ、SONGが戦ったっていうウロボロスなんかは特にそれ。

 わたし達も自衛はできるけど、常に後手に回る気はないし。先んじて情報を仕入れておけば自衛手段だって増える。ウロボロスはまだ残党がちょっと残っているみたいだし。

 レセプターチルドレンとして集められたこの身……どうにも放っておかれるとは思わないし。

 

「……仕方ない。ダメ助手、準備しといて」

「調さんならそう言うと思ってとっくに用意できてますよ」

「無駄に用意周到な所が腹立つ。そういうコトだから切ちゃん、行こうか」

「ラジャーデス!」

 

 ついでに、平行世界の見知らぬエナジードリンクをお土産がてら買ってくるのもいいか。

 この箱買いしたエナジードリンク、クッソまずいし。なんだこのビーフストロガノフ味って。作ったやつ舌イカれてるでしょ。買ったわたしもわたしだけど……

 

 

****

 

 

 実際問題、平行世界を移動するのは結構簡単。

 わたしが作った例の装置を使えば二人までなら移動可能だし、今回はAPPLEにダメ助手と切ちゃんが向かってから、わたしがそのあと回収される手はずで無事三人同時の移動が叶った。

 正直クッソだるいけど、わざわざ仲間達との仲を怠惰で潰すわけにはいかないし、偶には戦いなんてないのんびりとした平行世界旅行だって切ちゃんにとっても嬉しいはず。普段から研究所で窮屈な思いをさせているし、家事ばっかりしてもらっているから、こういうところで還元していかないと。

 ……まぁ、クソだるい以外にもあの地獄みたいなトレーニングという名の拷問のせいでここに若干のトラウマがあるとも言えるけど。もう二度とあんな拷問、受けたくない……!!

 という事でマリアとセレナの二人に拾われ、道中翼とクリスを拾って、例の世界に出向。

 

「にしても、こんなに早くこのメンツが揃うなんて思ってもいなかったわ」

「平行世界って遠いようで近いしなぁ。オレ達はギャラルホルンのゲート使わないといけないけど、徒歩数分だし」

「わたし達なんて、平行世界を移動する船が家ですから」

「案外まともに地に足付けて生きてる人、少ないよね」

「まぁ事情が事情デスし」

「SONGみたいな組織がないとこうなるのも仕方ない」

「いや、なんか普通に駄弁ってるけど、わたし、そこそこ重い決意を固めて平行世界の旅に出たんだけど……なんか急に拉致られたこっちの身になってほしいんだけど……」

「あの時はこっちが助けてやったんだから付き合え。人付き合いが悪いやつめ」

「えぇ……?」

 

 ちなみにヒビキは話にもあった通り、既にマリアとセレナに捕まっていた。

 ヒビキも、わたし達の返事がある前に時間がもったいないという事でAPPLE式拷も……トレーニングを受けていたけど、なんか普通にけろっとしていたし、普通にシャワー浴びて戻ってきた。

 テスラの件から顔を合わせたことはなかったけど、なんかこいつ、凄い活き活きしている。話によると、テスラに消されたらしい親友が分解の構築が行われたときに戻ってきたらしく、テスラ達の事もしっかりと受け止めているらしいから今まで以上に活力にあふれているとか。

 ……まぁ、気持ちは分からなくもないけど。わたしも、あの切ちゃんのために頑張っている今この時が楽しくないわけじゃないし、多分あの切ちゃんが戻ってきたら、ヒビキみたいになると思うし。

 

「あ、もうすぐSONGに着きますよ。多分皆さん待ってますから、早めに降りましょう」

「さぁ、わたしの必殺技が火を噴くわよ!!」

 

 必殺技が火を噴くって……この人、本当にセレナの姉なの? 明らかに逆というか、子供というか……

 ……まぁ、魂が肉体に引っ張られて子供っぽくなっていると思おう。多分、これが普通に成長していたらSONGのマリアみたいな感じになるんだろうし。

 全員で生暖かい視線を送りつつ、船から降りれば、そこは既にグラウンド。どうやらSONGがこの日のために貸しきっておいた場所らしい。で、わたし達の前にはジャージに着替えているSONGの装者が。

 

「あ、来た来た! みんなこの間ぶり!」

「おう!」

「わたしも、今日は楽しもうね!」

「あーもう分かったから一々くっつかないで……」

 

 抱きついてくるあっちの響に文句を言うヒビキだけど、特にまんざらでもなさそう。

 ……もしかしてそっち系? 流石に平行世界の自分とはちょっと……

 ……にしても。

 

「……改めて見ても、過ごしてきた環境一つでこうも変わるか」

「えっと……?」

「ううん、こっちの話。あの時はありがとう」

「あ、こちらこそ。改めて、切ちゃんが迷惑かけたみたいで、その節は本当にごめんね?」

「いや、どちらかというと迷惑かけたのはこっちだから……」

「そうかな……? あと、うん……多分わたしだから同じ感じになると思うけど、避難の準備はしておくといいと思うよ」

「は? 避難?」

「まぁそこら辺はそのうち分かるよ、うん」

 

 なんでサッカーごときで避難? まぁ、運動不足が祟って足首をくじきましたとかはやるかもしれないけど。

 とりあえずわたしとの会話は程々に、とりあえず一戦やるという事でポジションにつくことに。

 こちらはマリアと翼とクリスがフォワード、切ちゃんがミッドフィルダーでわたしとセレナがディフェンス、ヒビキがキーパーになった。まぁ、わたしは特にきびきびと動く気はないし適当にがんばれ。

 で、あちら側はあっちの翼とクリスがフォワード。マリアと……えっと、誰だっけ。あぁ、そうだ。未来だ。その二人がミッドフィルダー。で、切ちゃんとあっちのわたしがディフェンス、響がゴールキーパー。まぁ、あれだよね。平行世界とは言えあんまり変わらないよね。

 という事で。

 

「では、試合開始だ!」

 

 SONGの司令の宣言で試合開始。ボールはこちら側から。

 まぁ、前でフォワードがあれこれやってる間、わたしはのんびりと……

 

「ヒャッホォォォォォッ!!」

 

 ……ん?

 …………あれ?

 なんか翼、ボールの上に乗ってない? というかなんかボール変形してない? なんかボールすっごい平べったくなってない?

 あぁ、最近疲れてるから幻覚……

 

「まずは小手調べだ! スパークルウェイブッ!!」

 

 いや、そんなわけあるか!?

 えっ、なにそれ!? ボールがボードみたいに変形したと思ったらその上に人が乗ってなんか星のエフェクト出しながら空中飛んで、最終的にはボールが自分で相手のゴールに突っ込んでいったけど!? しかもなんか明らかにサッカーボールで出していい速度越えてるけど!?

 

「凄いシュートだ……! でも、簡単に点はあげないよ!!」

 

 いや、逃げた方が……

 

「この距離ならこの技で! カウンター、ドライブッ!!」

 

 とか思っていたら響は響で翼のシュートにアッパーを叩き込んだ。流石にそれだけじゃ止まらないと思ったけど、そんなわたしの科学者的計算を完全に無視したボールはアッパーによってかけられたであろうバックスピンで地面をえぐりながらもラインギリギリで止まった。

 もうなんか……物理現象どこ行った?

 

「やるな! 次は入れてやるからな!」

「こっちだって何回だって防いでみせます!!」

 

 目の前の科学者の一人として容認したくない現実から目を背けていると、あっちのわたしからヤケに生暖かい視線が。

 そうなるよね、と言わんばかりの視線に思わず知っていたんなら言えよ、と思ったけど……まぁ、言われたところで信じないし。信じたくないし。

 で、地面にめり込んだボールを手にゲーム再開。

 ……ん? なんかさっきボールがめり込んでいた地面、直ってない……? えっなにそれこわい。

 

「未来! お願い!」

「うん!」

 

 で、響からのボールは未来に。

 ……まぁ、一応前に出ておく? いや、わたしディフェンダーだしボーっとしてていいか。あんなシュート飛んで来たら多分死ぬし……

 

「悪いが、ボールは貰うぜ!」

 

 未来のボールを奪おうと翼が突貫。無意味に突貫したら必殺技で死ぬんじゃ……

 

「甘いよ! 疾風ダッシュ!」

 

 と思ってたけど、なんか普通の技が出た。

 ……いや、瞬間移動張りに高速移動するのを普通とは言いたくないんだけど、さっきのボールをサーフボード代わりにしたシュートと比べると普通と言いたい。

 っていうかそれ戦闘で使えよ。多分凄い活躍できるから。

 

「マリアさん! アレを!」

「えぇ、いいわよ!」

 

 えっ、ロングシュート……?

 この距離からシュートを撃ったところでキーパーに普通にキャッチされる……あっ、必殺技か。下がっておこ。

 で、下がってからすぐにあっちのデカいマリアにボールが渡って、そのままボールを軽く打ち上げた後、それを足で挟んで思いっきり回転させた。

 その結果、ボールを中心に竜巻が起こる。

 …………あーもう知らね。

 

「これが私達の必殺技!」

『ザ・ハリケーンッ!!』

 

 で、その竜巻を起こしているボールを、未来がとんでもない速度の助走を丸っと乗せたライダーキックでこっちに向かってぶっ飛ばしてきた。

 うん、あれをくらったら死ぬ。下がっておいて正解……ん?

 なんかボールが上に向かって……? しかもあっちのクリスがなんかボールに向かって走っている……?

 

「シュートチェインってなぁ!」

「やらせない!」

 

 ボールがある程度こっちに向かって飛んできたところであっちのクリスが体を回転させながら飛び上がった。しかも、その体には炎が巻き付いている。

 しかも、それを止めるためにこっちのクリスまでもが飛び上がる。地面に膝をつくくらい溜めてから思いっきり跳躍して、回転しながら炎を纏っている。

 ……あの技、なんか似てる?

 

「ッ!? チィッ!!」

 

 あっちのクリスが舌打ちしながらも、更に体を回転させながら飛んでくるボールに追いついた。

 更にこっちのクリスも、そのボールとタイミングを合わせて足を伸ばして……

 

『ファイア、トルネードッ!!』

 

 どうやらあの二つ、細かい点は違うけど同じ技だったらしい。

 空中で平行世界の同一人物同士の同じ技が炸裂した結果、ボールは二人のキック力に負けて上空に向かって弾かれた。

 …………さぁて、ツッコミどころしかない。なんで人間が炎を出せるのか。なんで人間があんな回転しながら何メートルもトランポリンも無しに跳躍できるのか。あと、そこから普通に着地できているのか。装者って物理法則に対して喧嘩を売る人間の総称だっけ?

 

「……まさかファイアトルネードが使えるなんてな」

「そっちこそ。ちょっと型は違ったけど……」

「お前の師匠はオッサンだったな……なら、ファイアトルネードが使えてもおかしくねぇって事か」

「……そういうこと」

 

 いや、なんか少年漫画みたいな事してないで普通にサッカーしてよ……

 ちなみにボールは、若干あっち側の威力が高かったのか、こっち側のミッドフィルダーの所に落ちてきた。つまり、切ちゃんの元に。

 ……あっ、ヤバい。

 

「切ちゃん逃げて!?」

「大丈夫デス! あたしだって一端のサッカープレイヤーデス!」

「ならばその腕前、試させてもらおう!」

 

 あっ、あっちの翼が切ちゃんの元に!?

 切ちゃん逃げて!! ホント逃げて!!

 

「まだ昔程じゃないデスけど……!」

 

 もうサッカーなんてどうでもいいから切ちゃんにタックルしてでも推定物理法則超越女から切ちゃんを守ろうと思って走り出したけど、切ちゃんは足の甲にボールを乗せて、もう片足を軸にして体勢を低くしながら回転し始めた。

 ……ん?

 

「デスサイズロー、V3ッ!!」

「なっ、ガハッ!!?」

 

 そのまま足から衝撃波のような物を出してあっちの翼を吹き飛ばした。

 …………あの、切ちゃん?

 

「こう見えても昔はサッカー頑張ってたんデス!」

 

 いや、知ってるけど、そんな人間離れした事ができる程だったの!!?

 

「くっ、まさか技が進化する程とは……! これで本調子では無いとはな……!」

「本当はZまで進化していたんデスけど……鈍ってるのは仕方ないデス!」

 

 あ、うん、そだね……シカタナイネ……

 

「このまま前に詰めるデス!」

「行かせない!」

「だったら、押し通るデス! デスサイズローV3ッ!!」

「きゃあっ!?」

 

 わー、きりちゃんつよーい。がんばれー。おうえんしてるよー。

 

「あっちのわたしが遠い目してる……そうだよね、特にそっちの切ちゃんが急にあんな事したらそうなるよね……」

 

 きりちゃんかっこいー。いいぞもっとやれー。

 

「くっ、もうゴールまで……!」

「このまま一点、貰うデス!」

 

 わー、きりちゃんのシュートだぁ……

 ……さて、そろそろ現実見ようかな……

 

「真ギアドライブッ!!」

「っ、また進化した技……!! だったら、わたしだって手加減は一切しないよ! ハァァァァァァッ!!」

 

 …………ん? 現実に戻ってきたら、なんか切ちゃんが歯車を召喚してブチかましたシュートに対して響がなんか出してる……?

 紫色の煙……? オーラ? それがなんか人型に……

 は?

 

「これがわたしがフォワードからキーパーに転向した理由……! どんな物だってブン守る力ッ!!」

「っ!? ま、まさかのまさかデス!?」

 

 えっ、いや……は?

 えっと……ここってジョジョ的な世界線だっけ……? それともペルソナ……?

 

「これがわたしの『化身』ッ!! 魔神グレイトォ!!」

 

 …………あーもうどうでもいいや。

 なんかあっちのわたしも目を見開いてるし、多分今日が初出しの情報だったんだろうなぁ……

 

「化身使いが相手だとちょっと分が悪いデスよ!」

「そっちの切歌ちゃんの全力、わたしが受け止める!!」

 

 あっ、なんか構えた……

 

「グレイトォ!! ザ・ハンドォッ!!」

 

 なんか化身とやらの手のひらが切ちゃんのシュートを受け止めたと思ったら、化身はビクともせずに切ちゃんのシュートを受け止めた。

 ……もうさ、シンフォギアよりもそれで戦った方が良くない? 多分ノイズ程度なら化身とやらで倒せるよ。確実に。

 

「化身は選手の気力が高まった結果現れる存在……けど、都市伝説になるレベルで、実際に化身にできる選手は希少だって言うのに……」

「まさかあんなにも強力な化身を使えるなんて、完全に予想外でした」

「化身は必殺技よりも遥かに強い必殺技を使う事ができるしな……けど、あの魔神グレイトは多分化身の中でも相当上位の化身……! そんなのと戦えるなんて、すっげぇワクワクしてきたぜ……!!」

 

 いや、どういうことなの。説明聞いても分かんないよ。あと約一名、少年漫画の主人公かライバルキャラみたいな事言ってるんだけど。

 正直科学的に解明したい事が多すぎるし、多分解明しようとしても失敗することだらけで正直気が狂いそう。というか狂う。

 

「みんな、一気に攻勢に移ろう! 景気づけに、翼さん!!」

「あぁ! 立花が化身を使ったのだ。それならば、私も化身を使わねば不作法という物!!」

 

 えっ、なにそれ。

 まさかあの化身とやらを使えるの、まだいるの?

 

「来い! 戦国武神ムサシッ!!」

 

 ……うわ、ホントに出た……

 しかも物凄い勢いでこっちに走ってくるし。あっ、こっちの翼とクリスが吹き飛ばされた。

 ……あれに当たったらわたしみたいな虚弱体質、死ねる。下がっておこう。

 

「化身使いが二人も!? っていうか化身まで使ってのガチバトルなんて聞いてないわよ!?」

「でも姉さん。姉さんなら、止められますよね?」

「……ったく、仕方ないわね。なら見せてあげるわ! このわたしの化身をッ!!」

 

 えっ、こっちも?

 

「来なさい、わたしの化身ッ! 戦旗士ブリュンヒルデッ!!」

 

 うわ、こっちまで本当に出た!!?

 

「そちらも化身か……! 相手にとって不足はない!!」

「来なさい! 真正面から粉砕してあげるわ!!」

 

 なにこのスタンドバトル……でもなくペルソナバトル……でもなく超次元バトル。

 化身と化身がなんか取っ組み合い始めようとしているし、その下ではあっちの翼とマリアがバトル始めようとしている。

 あっ、その前にあっちの翼が飛び上がった。

 

「ならばマリアごとゴールを割らせてもらう! これが私の化身必殺技!! 武神連斬ッ!!」

 

 あっ、なんかさっきまでのシュートとは明らかに別格なシュートが飛んできた……

 これ、わたしまで巻き込まれないよね? 結構端にいるけど、衝撃波で吹き飛ばされたりしないよね!!?

 

「あまりシュートブロックが得意なわけじゃないけど……でも、やってみせるわ!!」

 

 わたしはシュートの勢いのせいで発生している暴風に吹き飛ばされないように必死なのに、マリアはその正面で涼しい顔をしながら構えていた。

 ……いや、化身出しただけであれと真正面から戦えるってどういうことなの……ほんとマリアもそれで戦えばいいのに……

 

「ヴァルキリーフラッグッ!」

 

 化身の旗を使った必殺技っぽい物がシュートを真正面から受け止めた。

 けど、どうやらあっちの方が威力が上なのか、マリアの化身が吹っ飛ばされた。

 

「きゃあっ!?」

 

 いや、あの威力を真正面から受け止めてきゃあっ、だけ? 普通死ぬと思うんだけど……

 あっ、死ぬと言えばヒビキ……

 ……南無。骨は拾ってしっかりと元の世界に埋めておくから。

 

「わたし化身使えないんだけど……まぁ、これぐらい威力が弱まってるんなら、楽勝かな」

 

 は?

 

「化身が使えないなら、化身並みの力を持つ必殺技を作ればいい。未来と一緒に居た短い間に考えて作り上げた、最強の必殺技!!」

 

 楽勝って言葉が聞こえて耳を疑った瞬間、ヒビキが胸に手を当てながらシュートに背中を向けた。

 まさか背中で受ける気じゃ、と思ったけど、ヒビキは胸に当てた手を、体を正面に戻しながら地面に向けて突き出した。すると、確かに化身のエネルギーに負けないほどのエネルギーを放出する翼がヒビキの手から生えて、それがVの字に折れ曲がった。

 いや、もう本当にそれで戦えばいいじゃん!? 多分そのエネルギーでぶん殴ったら相当な火力出るけど!?

 

「これがわたしの、化身を越える必殺技!! ゴッドハンドVッ!!」

 

 で、そんなエネルギーをシュートのキャッチに使ったもんだから、そりゃあ勿論シュートをキャッチできるわけで。

 

「なんというキーパー技……!!」

「すごい……! すごいよわたし!! そんな技を開発していたなんて!!」

「どうも。そっちが化身を使うなら、こっちもこの技で絶対にゴールを守ってみせる。だから、シュートは任せた!」

 

 ヒビキが叫びながらキャッチしたボールを前に向かってぶん投げた。

 その先には、吹き飛ばされていた翼とクリスの二人が。

 

「任された! こうなったら加減は無しだ! クリス、ここはあの技を!!」

「うん。あの技なら、きっと化身にも負けない」

 

 化身バトルを見ていたせいでディフェンスはあの二人を止められない。まぁ、あっちのわたしも一般人っぽいし、そりゃ止められないよね……

 

「例え二人が相手でも! 来て、魔神グレイト!!」

「行くぞクリス!」

「タイミングは、翼に合わせる!」

 

 魔神グレイトを再び出す響。対して翼とクリスは全く同じ速度で走りながら、徐々に左右に分かれて距離を取っていく。

 そしてある程度距離が離れた所で翼がボールを打ち上げ、二人は全く同じタイミングでボールが落ちる地点に走っていった。

 

「ハッ!!」

「っ……!!」

 

 そして走るとほぼ同時に、翼は赤い炎を。クリスは青い炎を纏って、そのままボールを中心に一度すれ違ってから。

 

『クロスファイアッ!!』

 

 体を翻して、二色の炎を纏わせたボールを蹴り出した。

 ……もうツッコミはするまい。

 

「凄いシュートだ……! でも、止める!! グレイト・ザ・ハンドッ!!」

 

 そして響も対抗してグレイト・ザ・ハンド。また普通に止めるんじゃないかと思ったけど、シュートを受け止めた途端、響の顔が歪んで一瞬響が後退した。

 けど響はそのままシュートを受け止め続け、徐々に徐々にシュートの勢いでゴール側に押し込まれて行く。

 そんな一進一退っぽい勝負は、最終的にラインの寸前でなんとかシュートを止めた響の勝利だった。

 

「いったた……ナイスシュート、二人とも!!」

「くそっ、止められた!!」

「けど、あの調子なら次こそは……!」

「ううん、次も絶対に止めて見せる! という事で未来!」

「うん! からの、クリス!!」

「おうよ!!」

 

 翼とクリスが悔しがっている間に響が受け止めたボールが未来に、そしてそのままパスであっちのクリスに渡った。

 さて、わたしは下がっておこう。

 

「あっちのアタシ達があんな技披露してんだ。こっちもやるしかねぇよな、センパイ!!」

「無論だ! 雪音、タイミングはお前が!」

「へっ、上等! きっちり合わせてくださいよ、センパイッ!!」

 

 どうやらこちら側に触発されたらしいあの二人が、ドリブルしながらこっちに走ってくる。勿論わたしは退避済み。

 で、件の二人はボールを蹴り上げて、足を止めた。両足を開いて、互いが鏡合わせになるような形で構えてから炎を纏って飛び上がった。

 あれって確か……

 

「ファイアトルネード!?」

「違うわ! まさかあの二人、ファイアトルネードを二人同時に!? そんな事が可能なの!?」

「いや、オレもファイアトルネードは使えるが、ファイアトルネードの回転方向は同一……! 仮に逆回転でやったとしても、回転しているせいでタイミングなんて本当に一瞬しか無いってのに……!!?」

 

 えっ、そんなに難易度高いの?

 まぁ確かに完全に回転する速度と飛び上がる角度、タイミングを合わせないといけないと言われると難しいような気はするけども。いや、わたしじゃ無理だから難しいというか不可能としか言えないけどさ。

 

『ファイアトルネードD(ダブル)D(ドライブ)ッ!!』

 

 で、なんか完璧なタイミングでファイアトルネードとやらを決めた結果、なんかトンデモない威力のシュートがヒビキに向かっていった。

 ……ホントに死ぬんじゃないの、あれ。

 

「くっ、せめて少しでも威力を! ザ・ミストッ!!」

「デーモンカットV3ッ!!」

 

 一応セレナと切ちゃんが必殺技で止めようとしたけど、ザ・ミストとかいう霧はいとも簡単に抜けられるし、切ちゃんの悪魔みたいな形をした衝撃波も結局真正面からぶち抜かれた。

 あれ、本当に威力弱められてるの……? わたしの目では全く変わらないように見えるんだけど。

 

「これぐらい弱まれば! ゴッドハンドVッ!!」

 

 でもどうやらかなりシュートは弱まっていたみたいで、ヒビキのゴッドハンドVで無事キャッチする事ができた。

 

「くっ、硬いな!」

「だったら何度だって打ち込むだけだ! なぁ、センパイ!!」

「無論だ! 一度防がれただけでは諦めん!!」

「何度だって止めてみせる。例え、化身のシュートだって」

 

 …………これ、わたしとあっちのわたし、いる? ベンチに居た方がいいんじゃないかな。

 

 

****

 

 

 試合はかなり白熱した。

 なにせ、必殺技の応酬なのだから、まぁ派手なわけで。

 

「姉さん!」

「えぇ!」

『キラーフィールズッ!!』

「ロングパスだ! グングニル(ガングニール)!!」

「シュートブロック……! アトミック、フレア!!」

「これがわたしが研究した最強のペンギンよ! 皇帝ペンギンXッ!!」

「させないデス! ハンターズネット!!」

「姉さんが使えるのなら、わたしだって使えます! 皇帝ペンギン7!!」

「もちもちぃ! きなこ餅ぃ!! からのやきもちスクリューでパス!!」

「止めるデス!! デーモンカットV5!!」

「また技が進化しただと!!?」

「段々と思い出してきたデス!」

「だったらこっちだって! 爆熱スクリューッ!!」

 

 と、まぁこんな感じで。

 もうどっちがどっちが分からない程度には必殺技が飛び交ったけど、後半のかなり後まで0対0。このままロスタイムまで突入するかと思われたんだけど……

 

「翼さん、クリスちゃん!」

「何でお前が前に……って、そういう事か!」

「まだ未完成ではあるが……面白い! 決めるぞ、二人とも!!」

「タイミングは任せたぞ、馬鹿!!」

 

 まさかのゴールキーパーである響が前に出てのシュート。それを止めるためにこっちも動いていたけど、既にシュート体勢に入った三人を止められるわけもなく、響がボールを両足で挟んだまま飛び上がって、空中で思いっきりボールを回転させながらボールの上を陣取った。

 更にそれに追従するようにファイアトルネードDDの体勢で飛んでくるあっちの翼とクリス。

 

『ファイアトルネードT(トリプル)C(クラッシャー)ッ!!』

 

 まさかの合体技を、こっちのチームは誰も妨害できず。

 

「ゴッドハンドV!! …………ぐぅっ!!」

 

 ファイアトルネードDDの時点で危うかったヒビキのゴッドハンドVが破られ、得点を入れられる事になった。

 

「やったぁ!!」

「やるじゃねぇか!!」

「やはり立花は本番に強いな。よし、残り時間は僅かだ! この一点、死守するぞ!!」

 

 あっちはテンションがかなり上がっている。

 でも、なぜかこっちも負けじと。

 

「なに、たった一点よ! こっちが二点入れてしまえばこの状況も覆るわ!!」

「化身はそう何度も使えません。このままシュートを決め続ければ、確実に逆転はできます!」

 

 それが難しいんだけど、というツッコミはしない方がいいんだろうね。

 で、試合再開。こちらボールから……ん?

 

「調、パスデス!!」

 

 え?

 あっ、ちょっ、切ちゃんの馬鹿!!?

 折角今まで空気に徹していたのに!! これじゃあわたしが必殺技の餌食に!!

 

「悪いけど、ボールは貰うわよ!」

 

 ほら! あっちのマリアがわたしの方に!!

 ひ、必殺技なんて使えないのに……! ひ、必殺技……必殺技…………

 ……あっ、そうだ。

 もう炎出したり化身出したりペンギン出したりしている時点でどれが必殺技なのか分からないんだし、こっちに来たダメ助手が監視カメラ代わりにハッキングした、どこかの軍の監視兼攻撃用のアレを使えば……

 えっと、確かこうやってこうやって、こうすれば…………あっ、できた。

 

「もらっ…………ん? なにこの線」

 

 よし、照準用のレーザーが降ってきた。それじゃあ、わたしはちょっと離れてっと。

 

「なにって、わたしの必殺技」

 

 文字通りのだけど。

 

「えっ、ちょ」

「軍事衛星フォボス」

 

 その瞬間、あっちのマリアが光に包まれた。

 ハッキングしておいてよかった軍事衛星フォボス。という事でボールは適当にセレナにパス。

 

「ナイス必殺技です!」

 

 …………うん、これも超次元サッカーでは十分に必殺技になってるみたい。

 とりあえず、黒焦げになったあっちのマリアは端に寄せておいてっと。

 

「…………試合終了だ!!」

 

 で、ここからがこっちの番だと言わんばかりに攻める前に試合が終了した。

 残念、こっちの負け。

 

「くっ、負けたか……! でも、いい勝負だったぜ!!」

「あぁ。できればまたやりたいな」

「今度はこっちが勝つ」

「何度だってアタシ達がブチのめしてやるよ!!」

 

 で、試合が終わった後はなんか色々と称えあっているけど……

 とりあえずわたしはこの世界のわたしと顔を合わせ、こそっと二人でグラウンドを抜け出した。

 なんでかって?

 

「……その、お疲れ様」

「そっちこそ……で、何あれ」

「超次元サッカーとしか……」

「そう……もう疲れた……今日は切ちゃんとも顔合わせたくない……認めたくない現実に頭痛がしそう」

「あはは……とりあえず、ご飯でも行こっか」

「賛成。で、こっちの世界ってマ〇クある?」

「あるけど……体に悪いよ?」

「ジャンクフードこそこの世のジャスティス。ハンバーガーとエナジードリンクを所望する」

「本当に体壊すよ……?」

 

 ……常識人同士で溜め息吐きながらご飯食べるため。

 とりあえず帰りはダメ助手に迎えに来てもらおうそうしよう……今日はもう装者と会いたくない……

 っていうかどうしてこっちのわたしはそんなに平気な顔してるの。

 

「……慣れた、としか」

 

 あぁ……




という訳で調ちゃん以外が超次元なサッカーでした。どうしてこれを書いたかと言うと、最後の軍事衛星フォボスがしたくて書きました。
オリオンであれが出てきたとき大爆笑したのはいい思い出です。必殺技って言っとけばサテライトキャノンも許される世界。それがイナズマイレブン。

ちなみに前回登場組の必殺技は2になった事で変わっているのもしばしば。

では、お約束として今回出てきたキャラの必殺技一覧だけ載せておきます。それではまた次回、お会いしましょう。

ビッキー……カウンタードライブ、やきもちスクリュー、もちもち黄な粉餅、ファイアトルネードTC、いかりのてっつい(秘伝書)、グングニル(秘伝書)、グレイト・ザ・ハンド(化身:魔神グレイト)
ズバババン……伝来宝刀、菊一文字、王の剣、影縫い、武神連斬(化身:戦国武神ムサシ)
きねくり先輩……ダブルショット(シュートコマンド07)、ファイアトルネード、アグレッシブビート、ファイアトルネードDD、アテナアサルト(化身:虚空の女神アテナ)
たやマ……フォルテシモ、グラディウスアーチ、オールデリート、エアーバレット
切ちゃん……ハンターズネット、ラスト・デスゾーン、スカイウォーク、ラ・フラム
393……ザ・ハリケーン、風神の舞、疾風ダッシュ、シロウサギダッシュート

グレビッキー……ドリルスマッシャー、グングニル、ゴッドハンド、ゴッドハンドV、スーパーメガトンヘッド(秘伝書)、タマシイ・ザ・ハンド(秘伝書)
アナつば……スパークルウェイブ、ファイアトルネード(アレスの天秤)、マキシマムファイア、爆熱スクリュー
アナクリ……アトミックフレア、ファイアトルネード(アレスの天秤)、クロスファイア、スパークエッジドリブル
アナマリ……皇帝ペンギン2号、キラーフィールズ、皇帝ペンギンX、ペンギン・ザ・ゴッド&デビル、ヴァルキリーフラッグ(化身;戦旗士ブリュンヒルデ)
アナセレ……ザ・ミスト、ディープミスト、バタフライドリーム、皇帝ペンギン7
アナ切……デーモンカットV5、真ギアドライブ、デスサイズローV3、真刹那ブースト





調ちゃん……ジャッジスルー、ジャッジスルー2、ジャッジスルー3、ジャッジスルー(アレスの天秤)、ド根性バット、メガネクラッシュ(ド根性バットをメガネの人間でやる)

アナ調ちゃん……軍  事  衛  星  フ  ォ  ボ  ス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。