ぶくぶくぶく。わたしの前に置かれたコップに注がれたジュースがわたしの口から伸びるストローから流れてきた空気で泡立つ。要するに結構お行儀の悪い事をしています。
普段ならこういう事は一切しないんだけど、それをさせる原因がわたしの目の前に居る。
「でねでね、響がその後……」
そう、わたし達装者が絶対に他人に見せられない装者の中でもトップクラスの変態にしてクレイジーサイコレズ、またの名をグラビティレズ、未来さんだ。
わたしと未来さんは、とある協定を結んでいる。
わたしは切ちゃんが好き。そして未来さんは響さんが好き。わたし達二人とも恋愛がアブノーマルだから互いに互いを助け合ってなんとか意中の相手を落とそうっていう協定を結んでいる。というか結んでしまった。
うん、結んだ時期が丁度わたしがリディアンに入学する前、なんやかんやで自由の身になってからすぐの事なんだよね。だから当時は未来さんは響さんが大好きなわたしの同類、って程度にしか思ってなくて……それから一週間くらいでもう未来さんへの評価は変わったよね。響さんが大好きな一途な人から響さんが好き過ぎるやべー人って評価に。
やっぱり当時のわたしって周りにいた親しい人がマム、マリア、切ちゃんだけで女の子が好きなのは異常だって思ってたから仲間が出来るって思ったら嬉しくて二つ返事で了承しちゃって……実はマムにも相談はしていたんだけど、マムってあまり適切なアドバイスはしてくれなかったと言うか、貴女のしたいようにするのですとしか言ってくれなくて……具体的に何をしたらいいのかって聞いたら目を逸らされた。その日のマムの夕食は手を抜いた。反省も後悔もしていない。
ウェル博士? 論外って言うのが当時の思いだったけど、よく考えればあの人って愛に関しては人一倍詳しい人でもあったから猫かぶってた当時のウェル博士なら協力してくれたりしたのかな……? あ、でもやっぱ駄目だあの人生理的に受け付けないや。
まぁそんな事もあって未来さんと協定を結んだんだけど……何気に未来さんからのアドバイスって的確で有り難いって思う時があるから今更協定破棄なんて出来ないんだよね。これ、バレたらわたしも確実にグラビティレズの仲間入りって形になるだろうから諸刃の剣もいい所だけど。
「ふぅ……あ、そうそう調ちゃん」
「え? あ、はい何ですか?」
とか思ってたら未来さんの響さんへの愛を語る時間は終わったらしい。
え? 聞き流していいのかって? 逆に未来さんの惚気的な何かを聞いていたい人は聞いていたらいいんじゃないかな? わたしはもう嫌。だって……うん。愛が重すぎてドン引きするから。
で、えっと、何だろう。今日は未来さんから呼び出されたからほいほいと喫茶店まで来たんだけど……うわ、最初はわたし達の周りに何人か客が居たのに皆どっか行ってる。あ、店員さんホントごめんなさい。同情する視線はいらないです。
「今度響と遊園地に行こうかなって思ってるんだけどいいデートプランないかな?」
「遊園地ですか? それならまぁ無難に……」
取り敢えずこの協定を組んでからわかったことっていうのは幾つかある。その中の一つは……
ここまでこじらせないようにしようっていう事。
はぁ……もう切ちゃんに告白して玉砕して未来さんには頑張ってくださいって言って協定破棄した方がいいのかなぁ……いいのかもしれない。今度実行してみよう……
あー……なんというか、こんな事で告白を決めるわたしもわたしだなぁって。
****
「……切歌ちゃん、最近の未来がよりアグレッシブになってきたんだけどどうしたらいいかな」
「いや知らんデスよ……」
わたしと切歌ちゃんの第三十二回レズの被害対策会議はあまり進展していなかった。
この会議を開くようになった切欠は切歌ちゃんがわたしに調ちゃんの事で困っているっていう相談を受けたから。それからわたしと切歌ちゃんは何度か集まって貞操を狙う獣をどうやって退けるかっていう会議をしている。なんだか最近切歌ちゃんが投げやりな気がするけど。
「もうくっ付いたらいいんじゃないデスか?」
「わたしはノーマル! ノーマルなの!! 普通に男の人が好きなんだよ!!」
「うっさいデス」
確かにわたし自身スキンシップは人よりも激しいっていうのは自覚しているよ!? でもわたしはノーマルなの! 普通に女の子よりも男の人の方が好きなの! 学校の友達はもう未来に色々と有る事無い事吹き込まれているのかそう言ってもはいはいって言うだけで真に受けてくれないし!
……取り乱した。まぁそんな訳でわたしの恋愛感性は普通。そう、普通なんだよ……!!
切歌ちゃんは……まぁ聞いていないけどああやって相談しに来るっていう事は切歌ちゃんも普通にノーマルなんだと思う。つまり仲間。ナカーマ。
「いや、もう無理だと思うんデスよ。未来さん、神獣鏡のせいであたしらでも止められないデスから……」
「憎むべきはシンフォギア特攻……!」
「いや響さんの過去の行いじゃないデスかね?」
「後ろを見ない! 前へ向かって全力疾走!!」
「カッコいい事言ってるつもりかもデスけど、言ってる事最低デスよ?」
「狼狽えるな!」
「それマリアデス」
確かにわたしにも悪いところはあったと思う。
未来に内緒でシンフォギアで戦ったりそのせいで未来との団欒がちょっとおざなりになったり未来に相談せずに無理し続けたりそのまま殴り合い空になったり……
でもそれでわたしへの愛情が深まってああなるなんて思わないじゃん!? どっちかと言ったら嫌われるじゃんわたしの行動! あれ、言ってて悲しくなってきた。
ま、まぁともかく。未来がああなったのは未来の抱えていた性癖のせいであってわたしの行動はあまり関係ないと思う。だから切歌ちゃん、そんなおざなりな対応しないでもっとわたしを助けて……!
「いや、あたし、調が告白して来たら受け入れるつもりデスし……」
…………
………………ゑ?
「何というか……響さんと未来さんを見てるともうあたしと調がくっ付く程度なら異常には見られないなぁと思いまして……」
「じゃ、じゃあ何で相談なんて……」
「その、やっぱり女の子同士なんて異常だと思って……女の子同士で付き合ってるっぽい響さんに相談したデスけど……まさか付き合ってないとは思ってなくて今までズルズルと……」
そ、そんな……だから五回目を過ぎたあたりから何だか同情するような眼差しになって二十回を過ぎたあたりからめんどくさそうに……?
「本当はこういう恋愛ってどうしたらいいんデス? って聞こうと思ってたデス」
そんな……
切歌ちゃんはわたしの仲間だと思ってたのに、それはタダのわたしの妄想でわたしは常に一人だったと……?
ウゾダドンドコドーン!!
「いや、相談になら乗るデスよ? ただ、正直こう何度も同じようなことを相談されると面倒とでも言うデスか……」
あっはい。
でも、なぁ……でもなぁ。
「まさか切歌ちゃんと調ちゃんが両想いとは」
「まぁあたし等って結構閉鎖的な空間で閉鎖的な仲を築いていたデスから。なんというか……そういう仲なら調しかいないなぁと思ってたらいつの間にか、デスかね」
へぇ~……二人がイガリマとシュルシャガナを纏えているのもそういうのが関係しているのかな?
まぁそこら辺考えるとわたしは頭痛くなるか眠くなるかの二択だから考えないけど、そうかー……後輩二人は両想いだったかぁ……
まぁ別にショックではないかな? 最近クリスちゃんと翼さんはいい雰囲気だしマリアさんもエルフナインちゃんとなんだかいい感じだし。っていうかわたしの周りレズ多すぎじゃない……? もしかしてわたし以外みんなレズ? え? わたしが可笑しいのこれ?
いやそんな事は無いハズ。だってわたしはノーマルな性癖してるから。普通に男の人の方が好きだから。好きな人はまだ居ないけど。今度からは緒川さんとか師匠に相談しようかなぁ……了子さんが存命なら了子さんに相談したんだろうけど。まぁこういう時は大人の人に頼るのが一番だよね。それか平行世界にお邪魔して奏さんとかセレナちゃんとか。その二人もダメそうなら平行世界のわたし? っていうかもう自分で何とかしないといけない感じ?
「あー……取り敢えずさ、わたし、週末に未来と遊園地行くことになったんだよね」
「遊園地デスか? あたしも調と行ってみたいデス」
「……大丈夫だよね? わたし、いつの間にか眠らされて茂みの奥で……とか無いよね?」
「いやそれは未来さんの匙加減じゃないデスか?」
「匙加減一つで決まるわたしの貞操ェ……」
わたしの貞操ってそんなに薄く儚いものなんだね……とほほ。
早いうちに彼氏とか見つけないとホントに未来に襲われて……あれ? 彼氏作ったら彼氏が抹殺されてわたしが監禁される未来しか見えないぞぉ? 可笑しいなぁ、わたしの将来バッドエンドが確約されているみたいだ。なんでこうなっちゃったんだろうなぁ……ほんとどうして……どうして……
……どれもこれも未来の愛に発破をかけたウェル博士が悪いっていう事にしよう。今度の平行世界で見つけたら一発ぶん殴る。完全に八つ当たりだけど。
まぁ今はとにかく……未来に貞操を散らされないように頑張ろう。頑張ってどうにかなるとは思わないけど……
「ま、まぁ。あたしも陰で見守ってるデスよ。特別についていくデス」
切歌ちゃんマジ天使。
****
そんなこんなでやってきました遊園地。未来さんに無理矢理陰からサポートしてって言われてチケット渡されたから来ちゃったよ……はぁ、こんな事ならお家で切ちゃんとゆっくりまったりした休日が過ごしたかった……
あ、でも今日は切ちゃん、用事があるって言ってたからどっちにしろ暇になるか未来さんに付き合うかの二択だった。まぁ響さんに南無って両手を合わせておこう。
前の方で未来さんと響さんが二列で並んでいるのを一応視界内に収める。未来さん嬉しそうだなぁ……響さんも普通に楽しそう。多分、貞操を狙われてはいるけど親友と遊園地で遊ぶっていうのは普通に楽しみなんだと思う。いいなぁ……わたしも切ちゃんとここに来たかったなぁ。今のわたし、完全に一人で遊園地に来た可哀想な女の子だもん……
あ、列が動いた。一応未来さんを見失わないように歩かないと。
今日のわたしは眼鏡をかけて髪型はいつものツインテじゃなくてポニテにして帽子着用。服装もボーイッシュな感じで仕立て上げてきたから響さんに見つかっても人違いでゴリ押し出来るはず。
「チケットを拝見します」
「あ、はい」
ちょっと髪とか手櫛で適当に整えているといつの間にかわたしの入場の番になってた。まぁ今日は今度切ちゃんと遊園地に来た時のための下見って事にして楽しもう。
えっと、未来さんは……いた。うーん、ああやって見ると普通に仲のいい友達なんだよね、あの二人。でも恋人繋ぎしてる。響さん、あれを何の違和感も感じずにやっているからなぁ。わたしも響さんに手をつながれた時、恋人繋ぎだったし。
なんというか……勘違いされる事ばっかりしているよねあの人。しかもイケメンな所があるし男前な所もあるから未来さんの愛情が深まる深まる。わたしも切ちゃんがいなかったら響さんにポッとなっちゃってたかもしれないし。あ、最初はフリーフォールに乗るみたい。わたしも一応乗る。
うーん、別にわたし達ってヘリから紐なしバンジーしたりミサイルに乗って垂直落下したり崖から誰かを担いでアイキャンフライしたり、結構紐なしバンジーしてるからフリーフォール程度じゃあまり怖くないというかなんというか……内臓がこう、ふわっとなる感覚は未だに慣れないけど、別にそれが嫌いって訳じゃないからね。だから特に怖くなんて――
「きゃあああああああああああああああああ!!?」
…………訂正。ギア無しは結構ヤバい。
なんというか……怖かった。内臓がふわっとする感覚もそうだけど自由落下じゃなくて人為的に生み出された速さで落ちるのは結構くる物がある。え? もういっか……
「ひいいいいいいいいい!!?」
……うえっ。ちょっと酔った。でもこれ切ちゃんと一緒なら楽しいかも……
取り敢えずフリーフォールも終わったからアトラクションから降りて……うえっ。ちょっと休憩したい。普通に朝ごはん食べてきちゃったから結構気持ち悪い……
えっと、響さんと未来さんは……え、ウソ。フリーフォール行った直後にクレープ食べてる……わたし、流石に気持ち悪いから暫く何も胃に入れたくないんだけど。
ま、まぁ響さんと未来さんだし。
えっと、次は……海賊船? え? 本気ですか? いや、未来さん、来いじゃなくって……はい、行きます。
これ絶対降りたら吐くって……美少女にあるまじき行為に及ぶことに――
「あああああああああああああああ!!?」
こ、これ結構スリルが……ってこれ何回揺れるのぉ!!?
「ギア……ギアをまとわせて……うっぷ……」
あ、これ駄目ほんと駄目なんかこう吐いちゃいけないものが喉の付近まで込みあがってきてうっぷ。
助けてマリア……助けて切ちゃん……
あぁ……時が見える………………
え? あ、終わった? よかった……乗っている間にやらかすっていう最悪の事態はなんとか防げた……それに揺れも収まったから出かかっていた物も引っ込んだし……ほっ。ちょっとわたしは適当なベンチに座って休憩しよう。また絶叫系に乗ったら絶対に吐くから。
あ、誰か先に座ってる。ちょっと座りづらい空気だけどまぁ気にせず……どっこいしょ。ふぅ。
えっと……響さんと未来さんは……
「うわ、なんで絶叫系乗った後に唐揚げ食べてるのあの二人……」
「響さん……流石に鉄の胃袋すぎるデス……」
…………ん?
なんか横の人から聞き慣れた人の声が……
空耳かな? ちょっと横の人のお顔を拝見……
「……」
「……」
あ、ガッツリ目が合った。どうも……じゃなくて、え?
『…………えっ?』
あ、あれ?
いつも見ないボーイッシュな感じの服で帽子を被ってるから一目じゃ分からなかったけど、もしかして……
「き、切ちゃん!?」
「調!?」
や、やっぱり!
え、なんで!? どうして!?
「ど、どうしてここに!?」
「それはこっちの台詞デスよ!」
いやもうお互いさまだよ!
え? ほんとになんでここにいるの!? え、わたし大丈夫だよね? 変な格好してないよね……うん、してない。大丈夫。ちょっと慣れてないファッションだけどちゃんとしてる。切ちゃんからのポイントを下げるような変な格好はしていないハズ。あとボーイッシュな切ちゃん可愛い。
「えっと……わたしはその、えっと……」
チラッと未来さんの方を見る。あ、あの人響さんに夢中でこっちに気づいていない。
え、でもどうやって説明したら……まさか一人でここに来たなんて言えないし、まさか未来さんと響さんの観察に来たとも言えないし……え、どうしようこれ。誰か助けて。未来さん、こういう時に助け……畜生あの人こっちの事一切見てない。今度響さんにある事ない事告げ口してやる。
と、取り敢えずはどうにかして切ちゃんに納得してもらわないと……
「……もしかしてあの二人関連デス?」
わたしが言葉に詰まってると切ちゃんは響さんと未来さんの方を指さした。
え? っていう事は切ちゃんも? と聞くと切ちゃんは頷いた。
「響さんがどうしてもついてきてほしいってうるさかったデスから……」
「わ、わたしも未来さんが……」
えーっと、これで取り敢えず切ちゃんにわたしが一人で遊園地に来る悲しい女じゃないっていう事は伝わったかな? もし誤解されていたらあの二人なんてアウトオブ眼中にして切ちゃんを説得するけど……
まぁその説得がないからよかった。よかったけど……この状況どうしよう。わたし達確実にバッタリ会っちゃいけない立場だよねこれ。あ、響さんがこっち向いたけどわたしに気づかず切ちゃんについて来てって言わんばかりに手を振って歩き始めた。
うーん……え? どうするのこれ。一個だけあるっちゃあるけど……
「……切ちゃん、どうしよう」
「一個考えがあるデス」
「わたしも一個だけあるの」
多分、考えてる事は二人とも一緒。
だから手をつないで一緒に……
『
遊ぼっか切ちゃん!!
****
切ちゃんとのデートは凄く楽しかった。
一緒にゴーカートとかコーヒーカップとか乗ったり。あとジェットコースターも一回乗ったけど凄かった。ここのジェットコースター、この付近だと一番人気みたいですっごく怖かった。何度も叫んじゃったけど切ちゃんも楽しそうだったし乗って良かった。
なんかわたしと切ちゃんの電話が恐ろしいくらい震えてたけど最終的に電源切って鞄に突っ込んである。帰ってから画面見るのが怖いなぁ……怖いなぁ!!
そんなこんなで最後は観覧車に乗ってから帰ることにした。やっぱり遊園地の最後と言ったら観覧車だよね。
「おぉ、すごく高いデスよ、調!」
「うん。予想以上」
観覧車から見る景色は予想していた光景よりも遥かに絶景だった。
うん、ほんとに凄い絶景。なんだかいい感じだし……これなら、告白も出来そう。
多分玉砕しちゃうんだろうけど……せめて告白した思い出はいい思い出みたいな感じにしておきたいし。思い切ってしちゃった方がいいよね。
あーうーあー……緊張するぅ……するけど、告白しなきゃずっとこの気持ちを引きずったままになる。自分の気持ちをリセットするためにも、未来さんの呪縛から解放されるためにも、わたしはちゃんと告白しなきゃ。
「……ねぇ、切ちゃん」
「なんデス? 調」
もう夕日となった太陽の光が切ちゃんの横顔を照らす。
いつも通りに、だけどちょっと微笑みながらこっちを向く切ちゃんは、観覧車の中、二人きりという事もあってか凄く綺麗に見えた。
だからかわたしの顔は熱を帯びた感じがするけど、多分気付かれないと思う。わたしの顔は多分、夕日の赤で赤くなってるから。
「……わ、わたしね」
今なら引き返せる。今ならまだこの気持ちを抱えたままいつも通りの日常に戻れるって心が言っている。
多分、告白して玉砕したら暫くは変な空気になると思う。なると思うけど……前に進まないと。いつか口にしなきゃいけない気持ちなんだ。だから、今。ここで、口にする。
「切ちゃんの事が、好き」
「……」
「友達として、じゃなくて、恋愛的な意味で。切ちゃんの事が、ずっと大好きだった」
口にした瞬間、全部が終わったと思った。
終わったと思ったけど、なんだかスッキリしていた。自分の中の秘密にしてたことを口にして、なんだかスッキリ。
初恋だったけど……まぁ、仕方ないよね。女の子同士だし。
「……ご、ごめんね。女の子同士なのに。あまり気にしなくてもいいから」
うん。これでいい。これでいいんだ。きっと、これで……
「……気にするデスよ」
「え?」
切ちゃん……?
「あ、あたしも、その……調の事、大好きデスから……」
え?
そ、それって……?
「……そ、その、ずっと、りょうおもいで、えっと、その……デス……」
じゃ、じゃあ……
「わ、わたし達……恋人って事で……」
「だ、だいじょぶデス……」
帽子で目を隠しながら消え入るような声で呟いた切ちゃんの顔は夕日のせいなのかそれとも熱のせいなのか、凄く真っ赤に見えた。
わたしも、顔が熱い。凄く熱い。思わず帽子で顔を隠したけど……多分、切ちゃんと同じ状態なんだと思う。
それから暫くしてわたしと切ちゃんは観覧車から降りた。スタッフの人に顔が真っ赤だけど大丈夫? って聞かれたけど、何とか大丈夫だって知らせて。二人で手を繋ぎながら海賊船の前にあるベンチに二人で座った。
なんでそこに座ったかって聞かれると、なんとも言えないんだけど……ただ、適当に座れて人目にもつかない場所がいいって思ったら、ここだった。
ベンチに腰かけたわたしは同じように腰かけた切ちゃんの肩にそっと体重をかけた。切ちゃんも同じように体重をかけてきた。
「……大好き」
「……あたしも、大好きデス」
確認するように囁く。わたし達の声はわたし達以外には聞こえず遊園地の喧騒に消えていく。
そしてそっと交えたキスは、きっと誰の記憶にも残ることなく、ただわたしと切ちゃんだけの思い出となって、消えていく。
****
……はい、ガッツリ見てました。切歌ちゃんと調ちゃんのデートと告白とキス。
うん、その、なんというか……観覧車、実はその二つか三つあとのゴンドラにわたし達、乗ってたんだよね。未来にゴンドラの中で押し倒されかけた時に偶然二人が見えたからいつの間にか消えていた上になんだかデート始めちゃってる二人を見て、まぁ急にいなくなった軽い仕返しとして揶揄うためにちょっと観察に入ったの。未来も何でか乗り気だったし。
で、何かあったときのために映画を見て身に着けた読唇術で告白をガッツリと見まして、それでそのまま二人で気配を消して尾行してたらキスしまして……なんかホントごめんね二人とも。なんか乱入しようとしている未来はわたしが責任もって回収するから。
あー……わたしも男の人とあんな感じで甘酸っぱい恋愛したいなぁ……
響ワゴンはクールに去るぜ……
後日談
調「という訳で切ちゃんと恋人になれたので協定破棄で」
未来「なんでわたしは響と恋人になれないの……」
調「単純にがっつき過ぎなんですって……」
未来「え?」
調「まさかの無自覚……あ、わたしこれから切ちゃんとデートなので」
未来「うぅぅぅ……もうこうなったら響を押し倒すしか!!」
調「それがいけないんだと思うんですけど……でも響さん、性癖はノーマルなので期待薄だと思いますよ?」
未来「響いいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
調「諦めることも、大事ですよ」
単純にきりしらが書きたかったんや……書きたかったんや……!
っていうかこの作品の未来さんロクな扱いされてねぇなぁ……そろそろひびみくでくっ付いてる世界を書くか……まぁそれでも主役は調ちゃんなんですけどね。
またオリジナル書き始めたので更新速度は落ちますが、取り敢えずうすーくながーくやっていきたいなぁ……