月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

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基本的にこの短編集の話は他の話と繋がっておりません。ということで今回はもしも調ちゃんが声優デビューしたらという並行世界の話

時系列はGX開始前からスタート


月読調の華麗なる声優デビュー

 リディアンに入学してから早一か月。

 なんやかんやでご飯とか出てきて快適だった牢屋の中の生活とはオサラバして、わたしと切ちゃんはリディアンに。マリアは偶像としてアイドルを続けることになった。

 わたし達はマリアがそうやって生贄にされる事には不満を覚えたけど、マリアは特に嫌そうな顔をしていなかったから、わたし達は何も言えなかった。

 そんなマリアも新しい生活には慣れたようで、マリアが外国にいる時は切ちゃんと一緒に電話したりしてる。

 そうやって早一か月。わたしはSONGのシュミレータでの訓練を切ちゃんと終わらせて帰る途中、顔を見せた指令室にカバンを置いてきちゃったのに気が付いて、切ちゃんには先に帰ってもらってわたしは指令室に向かっていた。

 ついでに体内のLiNKERの体内洗浄もしてもらおうかな、って思ってる。何時もは家で簡単にやってるだけだから偶には、ね?

 そういう訳で指令室に到着。多分、まだ風鳴司令とか友里さんとか藤尭さんが居るから誰かに頼めばしてくれると思う。

 

「失礼します」

 

 声を出して指令室に入ると、さっき名前を挙げた三人が集まって何か話してた。わたしに気付いていないのかな?

 ちょっと話を聞いてみようかな。マズそうならすぐに声を出せばいいし。

 

「……と、いう訳なんだ」

「うーん……なんというか、何でお上はそんな事を……」

「すまん、本気でわからん」

「まぁ、司令も分かりませんよね。まさか装者の子をうたずきんの声優にしたいなんて」

 

 え? うたずきん? 声優?

 えっと……うたずきんってあれだよね? わたし達装者が存在するっていう事実をうやむやにして、都市伝説に変えるために作られたプロパガンダ作品で、実は結構人気が出てる少女漫画っていう。

 そういえばアニメ化するってこの前インターネットのニュースで見たことがあるけど……え、その声優を、わたし達の誰かが?

 

「うーむ……ん?」

 

 あ、気づかれた。

 

「あ、調ちゃんじゃない。どうしたの?」

「えっと……カバン、忘れちゃったので取りに来ました」

「カバン? あぁ、これね?」

 

 友里さんがわたしの用事を聞いてすぐにわたしが置いていったカバンを手渡してくれた。

 これでわたしの用事は終わったし後は家に帰って体内洗浄すれば全部終わるんだけど……わたしの中の好奇心がさっきの話に食いついて離さない。

 やりたい、とかは思わないけどやっぱり気になっちゃう。

 

「あの……」

「ん? 何かしら?」

 

 でもこれって聞いていいことだったのかな……もしかして聞いちゃいけない事だから後で口封じ代わりに何かされるんじゃ……いや、されるって事はないだろうけどやっぱり誰にも言わないでって釘刺されるのかな……

 なんて迷っていると友里さんは。「あ、もしかして」って口を開いた。その声を聞いた風鳴司令と藤尭さんがあぁ、と同時に口を開いた。多分、気づかれたのだろう。

 

「もしかしてさっきの話、聞いちゃった?」

 

 その言葉にわたしは頷いた。こうやって聞いてくるって事はあまり隠し通そうとは思っていない事なのだろう。

 というか、次に集まったあたりで言おうとしていたとかそこら辺だと思う。友里さんの言葉に頷くと「聞かれちゃってたみたいですよ」と苦笑しながら二人に知らせた。

 風鳴司令と藤尭さんはそうみたいだと頷くと苦笑しながらわたしに事情を説明し始めた。

 

「実はだな。上の方から怪傑うたずきん! のアニメ化に際して主人公、うたずきんの声優を装者の誰かにしたいと打診されてな。恐らく、戦場で君たちの誰かの声が聞こえても誤魔化しが聞くように、との事だろうが……」

「SONGは飽くまでも災害対処の組織。流石に声優までは……」

「翼君やマリア君を歌手にしておきながら、と言われるかもしれんが、やはり君達への負担は最低限にしたくてな。断ったんだが、上からどうしてもと言われてしまって困っていたんだ」

 

 つまりは、権力での命令?

 

「そんな所だ」

 

 ちょっとくだらないと思ってしまったわたしは悪くないと思う。

 それに、さっき司令は理由はわからないって言っていたから、今言った理由もわたしが納得できるように即席で考えたんだと思う。にしては凄く納得できたけど。

 うーん……でも声優かぁ。切ちゃんとか響さんはやってみたいって言うかもしれないけど……クリス先輩とかは一蹴するんだろうなぁ。

 わたしもやりたいかって聞かれたらどっちでもないかなぁ。やっぱり興味はあるけど、それをお仕事にしたいかって言われるとまだ分からないし。

 

「風鳴司令達は誰がいいか、とか決めてるんですか?」

「いや、特には。強いて言うならクリス君が合っているとは思ってるんだが、彼女の性格上こういうのは苦手だろう」

 

 確かに。うたずきんは赤ずきんがモチーフのキャラって聞いたから、赤色がパーソナルカラーなクリス先輩なら確かにイメージ的には合っていると思う。

 それに、クリス先輩って可愛い声もかっこいい声も全部出せちゃうし。何やかんやで声優やってもバッチリな気がする。

 でも、そうやって言っても、クリス先輩は顔を真っ赤にして「ば、馬鹿言ってんじゃねぇ!」って一蹴してくるのが容易に想像できる。

 風鳴司令はわたし達が嫌なことは絶対に強要しないからそう言われたら「そうか、悪かったな」と言ってもうその話は切り上げてくると思う。

 

「藤尭さんは?」

 

 取り敢えず風鳴司令の意見は聞けたから今度は藤尭さん。

 話を振られた藤尭さんはあー、と呟いて頬を掻いた。一体どうしたんだろう? 少し恥ずかしいのかな?

 

「えっと、俺は……」

「藤尭さんは?」

「そ、その……調ちゃんが一番合ってるんじゃないかって思ったんだよね」

 

 …………え、わたし?

 

「調ちゃんの声って凄く綺麗だからさ。案外似合うんじゃないかって」

「あ、分かるわそれ。クリスちゃんもいいけど調ちゃんもいいわよね。響ちゃんや切歌ちゃんはちょっと元気すぎて合わない感じよね」

 

 え、いや、ちょっ。

 

「わ、わたしにそんな……」

「そうか? 案外合っていると思うがな」

 

 風鳴司令まで……なんかこうやって褒められると少し恥ずかしいというか……でも満更でもないというか……思わず顔をカバンで隠してしまう。

 

「でも、一番は本人がやりたいかどうかですし」

「そうね。どうかしら、調ちゃん」

 

 そ、そうだよね。そこで話を振ってくるよね……

 でも、今のわたしって学校は……まぁ落ち着いたけどやっぱりおさんどんだし切ちゃんを一人にすると何だか不安というか何というか……それに、声優ってお仕事になるよね。

 今のわたしって実はSONGからの手当てで普通の人よりも結構多めにお金貰えてるからお金もあまり要らないし……

 

「そういえば、声優といえば一度翼ちゃんもやってたわよね」

「そうなんですか?」

「昔やってた子供向けのアニメ映画でね。丁度フロンティア事変の最中に特別ゲストとしてやったのよ」

 

 あ、そういえばそんなニュースを当時見たような見てないような。

 確かあの時は響さん達のデータを何でもいいから集めておこうってなって、翼さんが声優をやったっていうデータもその時偶々見たような見てないような。

 あとマリアも、歌姫時代にアニメの声優をゲストとしてやってみないかっていう依頼が来たって言ってたような。

 当時は忙しかったし断ったって聞いたけど。だったら、これから翼さんやマリアも声優のお仕事をやってみる時があるのかな? そういう時にわたしが頼られたりしたら……満更でもないかも? 

 あ、でも切ちゃんとかに知られるのは少し恥ずかしいかも……

 

「あら、案外満更でもない感じ?」

 

 うっ、バレた……

 

「で、でも切ちゃんやクリス先輩に知られるのは恥ずかしいですし……」

「別に隠してもいいわよ? キャストに載る名前もこっちで用意するし顔出しNGにしておけばライブとかも行かなくていいし」

「本業は学生だからな。学業に不利になるような事がないように、こちらも精一杯協力する」

 

 そ、それならいいのかな……? 一応他に条件を言ってみて良さそうなら……考えてみてもいいかも。

 

「その、じゃあもう何個かいいですか?」

「あぁ、構わんぞ」

「えっと、声優のお仕事はうたずきんだけって事で」

「それは元からね。もし調ちゃんが気に入ったらこっちで本格的な声優デビューも手伝うわよ?」

 

 つまり暫くはうたずきんだけ考えればいいと……それに、もしかしたらこのお仕事のお陰で将来の就職先が広まったりとかもしちゃうのかな? それだと受けてみて損はないかも。

 

「あとは本名と顔出しNGで」

「うむ、問題ない」

 

 だって知られたら恥ずかしいし。

 

「それと、切ちゃん達には言わないでください。マリアと翼さんは……こっちから話せるときに話します」

「じゃあ調ちゃんが仕事の時はこっちで全部調整しておく。学校も公欠って事にしておくから」

 

 け、結構な我儘言ったと思うけど全部いいんだ……特に声優のお仕事はうたずきんだけっていうのは少し無茶かなって思ってたのに……やっぱりこの人達凄い。

 それから色々と聞いたけど、主役になる声優はオープニングの主題歌を歌わせてもらえるとか。で、声優として申し分ない演技を身に着けるために決まってから一か月は空いた時間にレッスンを設けるとか。

 だから、決まってから本当に声を当てるのは一か月と少し後。その間に歌は収録しちゃうらしい。

 歌のレッスンはいいのかって聞いてみたら、装者故に文句なしの技量は既に持っているとの事。自分じゃわからないけどそうなのかな? 前にリディアンの文化祭でORBITAL BEATを歌った時も好評だったみたいだし。

 取り敢えず一通り聞いたけど、あまり悪い条件じゃなさそう。

 ただ、当たり前だけど一度決めたらもう引き返せない。プロのお仕事の中に入り込むんだから、これくらいの覚悟は必要だよね。

 それに、わたし自身そういう芸能のお仕事に興味がないわけじゃないし……よし!

 

「……じゃあ、わたし、声優やってみます」

「おぉ、受けてくれるか!」

「これはうたずきんの視聴は確定ね」

「俺、リアルタイムで見た後に録画したのを何度も見ますよ」

「そ、それは恥ずかしいです……」

 

 ふ、藤尭さんにこう言われるだけで恥ずかしいなら切ちゃんには言えないよぉ……

 あ、そういえば。

 

「翼さんみたいにマネージャーって付くんですか?」

「あぁ、それなら俺達三人が都合を付ける」

 

 マネージャーの一人は世界最強の大人になるみたいです。凄く逞しい。

 

 

****

 

 

 声優になると決めて、それからレッスンとかを受け始めて早二か月。

 どうやらアニメは秋からの放送らしく、わたしがうたずきんの声優になると決まった後からオーディションで他の役を決めていったらしい。

 その間、わたしは緒川さんのレッスンを受けたり、誰もいないシミュレータ室で一人練習してみたり、錬金術師の襲撃とかもあってシュルシャガナが一時的に使えなくなったり、エルフナインが新しく仲間になったり色々とあった。

 エルフナインはどうやらわたしのマネージャーの一人になってくれるらしく、主にスケジュール調整を担当するみたい。

 ただでさえ忙しいのに大丈夫? って聞いてみたら実はエルフナイン、ここに来てからわたし達の隠ぺいのために使われているプロパガンダ作品である怪傑うたずきん! を読んでハマってしまったらしく、結構ノリノリで笑顔だった。

 わたしも役作りするために読んでみたけどなんだか斬新で面白かった。

 そうやって色々とあり、シュルシャガナの修復が終わった頃、初めてのアフレコの仕事の時間がやってきた。

 

「えっと、風鳴プロダクションの月詠了子です。よろしくお願いします」

 

 わたしの芸名はわたしの名字を少し弄った物と、フロンティア事変の最中にわたしの中に居るのが明らかになったフィーネが、わたしの中に来る前に宿っていた人の名前、櫻井了子さんの名前を使わせてもらった。

 それと、プロダクションの名前は完全にダミー。政府が作った架空のプロダクション。

 名前が業界に知られていないのは、単純に出来たばかりだからであり、わたしはそこに唯一所属する声優という事になっている。

 既にわたしの名前は怪傑うたずきん! の公式ページには載っていて、オープニングのとどけHappy! うたずきんもとっくに収録済み。結構上手く歌えたって自画自賛してる。

 

「あ、これ差し入れです。よかったらどうぞ」

 

 そして挨拶ついでにスタッフさんやわたしの後に来た先輩の声優さん達に差し入れもしておく。

 友里さんに選んでもらった差し入れとしては十分な物を送った結果、皆喜んでくれたようだった。

 それにしても……緊張する。スタッフさん達はわたしが新人だっていう事を知ってるし、特に立場が上の人はわたしが政府から連れてこられた人間だって分かってるから、結構良く接してくれてるけど、それ以前に声優っていう仕事が初めてだから緊張する。ガッチガチ。

 

「大丈夫よ、調ちゃん。今日まで努力してきたんだし何とかなるわよ」

「友里さん……はい、頑張ります」

 

 今日、わたしの送迎を担当してくれた友里さんがわたしを励ましてくれる。あと、この場では了子です。

 スタジオに入ってスタッフさんに案内されたマイクの前に立って少し声を出してみたりマイクの高さを調整してみたり。

 あぁ、ものすごい緊張する。

 

「えっと、了子ちゃんだっけ? 大丈夫?」

「え、あ、はい、その、何とか……」

 

 そうやって何度も読んでよれよれになった台本を読んだり、またマイクを調整したりしていると横から先輩の声優さんに声をかけられた。

 確かこの人は結構ベテランで売れている人なんだっけ。

 

「確か声優のお仕事は初めてだっけ」

「は、はい。その、色々と縁あって……」

「大丈夫だよ、そんなに緊張しなくても。案外勢いでやれば何とかなっちゃう部分って結構あるから」

「い、勢い、ですか?」

「そうそう。やっぱり演技とは言っても白熱するとアドリブとか入っちゃうときあるし。わたしがこの間入った現場だと台本投げ捨てて演技してた人とかいたし」

「な、投げ捨てて……」

 

 なんというか、声優って結構アグレッシブな人が多いのかな……?

 

「ほら、もうちょっとで始まるから。深呼吸して肩の力抜いて」

「は、はい……」

 

 そ、そうだよね。いったん落ち着かないと。

 大丈夫。今日のために何度も練習してきたんだし。緒川さんにもこれなら大丈夫だって背中を押されたから。

 よし、頑張ろう。

 

 

****

 

 

 わたしの初めての声優活動は何とか成功に終わった。

 何度かリテイクを貰ったけどそれでも監督も頷いてオーケーを出してくれた。特に歌魔法で変身する場面は良かったとか。

 シンフォギアで慣れてますから、とは言えないから、偶々ですって言っておいたけど。

 そんな声優活動をしながらも結局今回の事件、魔法少女事変も何とか無事に解決した。

 何度か死ぬかもしれないって思ったけど案外何とかなった。

 そうやって魔法少女事変も終わって暫くして。

 わたしはあれから何度か現場入りしてうたずきんとして声を当てた。やっぱり少し慣れないところがあるけど、何とか及第点を貰っている。

 

「しらべぇ、おなかすいたデス……」

「もうちょっとで朝ご飯出来るから待っててね」

 

 そんなとある日の朝。わたしが朝ご飯作っていると丁度切ちゃんが起きてきた。今日は学校は休みだしわたしも声優のお仕事は無い。

 最近は魔法少女事変のせいであまり休めなかったから今日は久々の休暇。切ちゃんと家でゴロゴロする予定。

 

「あ、うたずきんデス」

 

 わたしが偶々、という体で付けていたテレビからは「怪傑うたずきん! このあとすぐ!」と言うわたしの声が流れてきている。何だか体中がむず痒くなる感覚がするけどもう慣れた感覚。

 

「うーん……何だかこの声、どこかで聞いたことがある気がするのデス」

「そうなの?」

「聞いたことがあるというか、何時も聞いてるというか……不思議な感覚デス」

 

 ふふふ。

 

「ほら、切ちゃん。朝ご飯できたよ」

「おぉ! もうあたしはお腹が減りんこファイヤーデスよ!」

「ほら、並べるの手伝って?」

「了解デス!」

 

 そのあとわたし達はテレビから聞こえてくるとどけHappy! うたずきんを聞きながらご飯を食べた。

 うん、今日も美味しい。

 

「うーん……調、一回うたずきんの声真似してくれないデスか?」

「えっ……そ、それは……は、恥ずかしいからまた今度ね?」

「嫌なら別にいいんデスよ? それにしてもこの思い出せそうで思い出せない感覚……何だか変な感じです」

 

 ……バレるのも時間の問題なのかなぁ。




大人三人組の声優になったらの感想は作者の思ったことです。旋律ソロリティ(Ignited arrangement)の調ちゃんは声が綺麗すぎて逆に浮いているまである。逆にマリアさんは合いすぎ。

パロディ元は無し。強いて言うならきねくり先輩のとどけHappy! うたずきんから

とどけHappy! うたずきんの調ちゃんverを聞いてみたいなぁ、なんて思ったので書きました。それだけです。一応この世界線の話はあと一、二話程度は書くつもりです

次回、「月読調の華麗なる幼児退行」。なお次回の内容は告知したものと別になる可能性があります。
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