月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

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エイプリルフールはネタが何も思いつかなかったんや。すまんな。

今回は、まぁサブタイで察する人は察する。

さぁ誰があの人のアレをするのか……


月読調の華麗なるカブト狩り

 暑い。

 時期は七月。既に猛暑。もう暑くて暑くて仕方がない。はしたないけど夜中にお腹を出した状態で寝ちゃうくらいには暑い。切ちゃんは下着オンリーか全裸だから切ちゃんよりはマシだとは思うけど……思いたい。

 そんな猛暑日が続く中。わたしはボーッとしながらテレビを見ていた。

 アイスを咥えながら団扇片手にテレビを見る夏休み。華の女子高生の青春とは思えなくて笑えるんだけど。もう頭の中可笑しくなる位には暑い。

 クーラー? 猛暑日初日にご臨終して以来天に召されたままだよ。買い替えるお金なんてないし、本部で涼む事も考えたけど……皆お仕事中の中、わたしが涼みに行くのは、ね? そういう訳でわたしはアイスを食べながら暑さを忘れるようにテレビを見る。

 はぁ……なんかこう、楽にクーラーを買い替えれる位のお金が降ってくるような案件が無いかなぁ……

 なんて考えていると携帯が鳴った。

 クリス先輩だ。はいもしもし。

 

『……なぁ、お前ん家、クーラー付いているか?』

「理由をどうぞ」

『家のクーラーがお天道様へ向かって全力でダッシュしていった』

 

 え? 何? 装者の家のクーラーは壊れる宿命なの?

 取り敢えずわたしの家のクーラーも壊れている事を伝えるとクリス先輩はマジかぁ……と溜め息と一緒に絶望が混じった溜め息を吐いた。どうやらクリス先輩もクーラーを直すお金がないみたいでもう泣きそうだった。

 相当参っているんだろうなぁ。わたしも最初の方は暑さでイライラし過ぎて切ちゃんを水風呂に放り込む八つ当たりしてたし。まぁ、切ちゃんはそれを楽しんでたしこんな八つ当たりなら可愛いほうだよね。わたしは入らなかったけど。

 

『何日か泊めてもらう代わりに宿題でも見てやろうかと思ったんだがな……』

 

 クリス先輩が珍しい。普段ならそんな事こっちから頼まないと引き受けてくれないのに。

 でもそれを考える位には参っちゃってるって事なのかな。その条件は魅力的だけど、クーラーが壊れている以上その条件は呑めない。悲しい。

 クリス先輩と電話越しで溜め息がシンクロする。変なところでユニゾンなんかしなくてもいいのに……っていうかテレビの音声邪魔。イラつく。消してやる。

 

『最近は空前のカブトムシブームです。なんと、こちらのカブトムシ、一匹二万円もするんですよ』

 

 ……ん?

 

『そしてこちらの日本で捕れたカブトムシも諸外国に人気があるらしく、一匹数千円で取引されているとか』

 

 ん? ん? ん?

 これは? これはこれは?

 

『どこのお店でもカブトムシは品切れの状態。もしも持ち込みがあれば高値で買い取るとの事です』

 

 これは、つまり、そういう、事、だよね?

 

「……聞きました?」

『あぁ、バッチリとな』

 

 クリス先輩と思考回路が一致する。

 この空前絶後のチャンス。逃すわけがない。クーラーを買い替えて楽園を取り戻すためにわたしとクリス先輩がやる事は一つ!

 恥? 年齢? 性別? 安っぽいプライド? そんなの全部溝に捨てる。わたし達がやる事はただ一つ!!

 

『カブト狩りじゃああああああああああああああああああああっ!!』

 

 

****

 

 

 と、いう訳で!!

 

「虫除けよし! 日焼け止めよし! 帽子よし!」

「網よし! 虫かごよし! トラップよし!」

 

 急遽わたしとクリス先輩は近くの山へと遠征に来た。半袖の服と動きやすいズボン。そして虫除けスプレーだったり日焼け止めだったり、女の子として大事な物も全部持った。あと塗った。ここに来るまでになんか微笑ましい感じで見られたけどそんな事知らない。わたし達が狙うのはただ一つ。

 カブトムシ、から派生するお金。そしてそこから派生するクーラー! 絶対にここでクーラーを直してこの夏の楽園を取り戻す!

 

「アタシ達の捕ったカブトを纏めて売り払って金を作る」

「そしてクリス先輩の部屋のクーラーを直してわたしがそこへ避難。切ちゃんは放置」

「これはアタシとお前の共同戦線だ。誰にも邪魔なんかさせねぇ!」

「カブト狩りを無事に終わらせて、わたし達は楽園を手にする!!」

 

 網を両手に真昼間の山の中で意気込みを口にするわたし達、なのだけど。

 困ったことが一つある。

 それは、わたし達はカブト狩りに関してはズブの素人だという事。クリス先輩の幼いころは……まぁ、その、あんまり軽々しく言えない感じだし。わたしに関しては記憶ないし。気が付いたらアメリカだったし。USAだったし。だからカブト狩りとは意気込んでみたものの、カブトムシを見つけれる気がしない、というのが本音。

 だけど、そこら辺は根性でカバー。絶対にカブト狩りを成功させてクーラーを修理する。あんな地獄からとっととオサラバする。その為ならわたし達は全力になれる。奇跡だって起こしてみせる。今まで何度も奇跡なんて起こしてきたんだし、この程度の奇跡、安い物!!

 

「さて、じゃあ適当に探しながらトラップを仕掛けるか」

「そうですね」

 

 なんてテンションを上げたけど、この広い山を駆け回ってたら体力が幾らあっても足りない。

 という訳で。常識人であるわたしの発言でお昼の内に即席で作ったトラップを仕掛けまくって夜中と明日に全てを懸ける事にした。ちなみにこのトラップは藤尭さんに作り方を電話で教わった。

 わたしとクリス先輩は装者の中ではトップクラスの常識人枠。クリス先輩は、ほら。言動がちょっとアレでお食事が汚食事なだけだから。それ以外は本当に常識人だから。

 そんな常識人が立てた作戦。成功しないわけがない。

 

「確か、樹液が出ている木がいいんだよな?」

「確かそう言ってました」

「……樹液って、なんだ?」

「……実物見たことありません」

 

 なんか皆樹液が樹液がって言ってるけど、探そうと思って探せる物じゃないよね。

 取り敢えず樹液を探していこう。

 ……なんかこう、樹液って黄色っぽいイメージがあるからそんな物が光ってたらそれって断定する方針で。決して調べるのが面倒だったわけじゃない。

 

「……ん? おいこれ」

 

 とか思ってると早速クリス先輩が何か発見した。

 木に塗られているテラテラとした黄色の液体……こ、これはまさか!

 

「だよな! っておい、あっちにもあるぞ!」

「け、結構群生してるんですね!」

 

 凄い大量に樹液が滴っている木が! これなら案外作りまくったトラップも全部設置できるかも!

 でもこの樹液……なんか何処かで見たことがある気が……っていうか何かすっごい甘ったるい匂いが……え? これ樹液だよね? わたしにはちょっと違う液体に見えるんだけど……樹液、なんだよね?

 

「おいこっちの方に行くともっと………………――――」

 

 あ、クリス先輩がフリーズした。

 

「何かあったんです…………――――」

 

 …………え?

 ………………え?

 その……え? なにあの……なに? わたしの幻覚? 暑すぎてなんか変なの見えちゃってるの? ちょっとあれを現実として認識したくないんだけど。

 

「……クリス先輩」

「……なんだ」

「……わたしの目には、その、あの」

 

 ……うん、言おう。多分クリス先輩は幻覚だって言ってくれるハズ。

 

「響さんが片足を上げて両手を広げた状態で下着姿でハチミツを全身に塗りたくっているように見えるんですけど」

「奇遇だな、アタシもだ」

 

 なんかこう、ぬとぬとしているというか……ハチミツが全身から滴っているというか……ついでに片足立ちなのに全くバランスが崩れる気配無いし……っていうか何であんなにドヤ顔? なんで痴女してるのにドヤ顔? 馬鹿なのあの人。馬鹿だったわ。

 あ、目が合った。

 

「ハニー大作戦だよ」

 

 わたしとクリス先輩はそっとその場を離れることにした。

 

「クリス先輩、この森怖いです」

「ちげーよ。あれはハチミツの化身だよ。ああやってハチミツが蛮族に奪われないように見張ってるんだよ」

「どっちにしろそんな化身がいる時点で怖いです」

 

 もうあの人を今まで通りの目で見れない。

 とにかくわたしはあの場から離れたかった。クリス先輩も、いつも馬鹿馬鹿言ってるけど響さんの事は認めているから、あんな響さん見たくなかったと思う。なんか目から汗が流れているように見えるし。

 何だかなぁ……暑さって人をあそこまで壊すんだなぁって。

 もうこの森から離れたい……っていうかあの人を風鳴司令に突き出して説教してもらいたい。っていうか足元にあった巨大なハチミツの瓶は一体どこから仕入れてきたの。

 もうツッコミ所多すぎて何も言えないよ……ん?

 

「クリス先輩」

「言うな」

「ここにもハチミツが」

「言うんじゃない」

「もしかしてあの馬鹿な事をやっているのがもう一人」

「それが身内だったらもう耐えられねぇんだけど」

 

 いや、でも……なんかバッチリとハチミツの跡が……

 わたしは何とかクリス先輩を説得してハチミツの跡を追うことにした。もしかしたら。もしかしたらこの先でカブト狩り名人がハチミツを使った物凄い画期的なトラップを仕掛けているかもしれないし。もしかしたらそこに本人がいるかもしれないし。

 身内だったら……わたしも耐えられない。多分蹴っ飛ばすと思う。

 あ、ごめん嘘。ハチミツに濡れた身内を蹴りたくない。

 

「アタシの勘だとお前にゃ見てほしくないって感じがしてな……」

 

 え? どういう事です?

 それを聞く前にわたしとクリス先輩はあの……なんだっけ? ハニー大作戦? をやっているかもしれない馬鹿二号が居るであろう空間を見つけた。

 草木を掻き分けながらようやくその馬鹿を目にして――――

 

「…………え?」

 

 思わず声が出た。

 だって、その馬鹿二号は……響さんと対をなす馬鹿は……

 

「きり、ちゃん?」

 

 切ちゃんだった。

 切ちゃんが、響さんと同じ格好をして全身にハチミツを塗りたくって、しかもそのついでと言わんばかりに下着姿で直立不動の状態でそこに立っていた。足元にはデカいハチミツの瓶が。

 

「……ハニー大作戦デス」

 

 わたしは泣いた。

 

「落ち着けって。あれは馬鹿の化身だ。ああやって馬鹿を表すことでこれ以上馬鹿が増えないように頑張ってんだよ」

「ひ、ぐっ。えぐっ……」

「あーもう泣き止めって。な? あれはただの馬鹿の化身だからさ。ほら、泣くなって」

 

 いや、もうさ……泣かずにはいられないよ。

 だって、だってだよ? 十年近く一緒にいる自分の片割れがだよ? 森の中で痴女姿で全身にハチミツ塗りたくってテラテラした状態で直立不動してるんだよ? もう怒りも何もかもを通り越して悲しすぎて泣いちゃうって。響さんならまだ何とか耐えられたけど……切ちゃんだよ? 自分の片割れだよ? 相方だよ? もう恥ずかしいし悲しいし……

 もう涙が止まらない……きっとマムも天国で大号泣しているよ……割とマジの大号泣だよ。

 

「ぐすっ、うぅ……」

「大丈夫だって。ほら、あそこにも馬鹿三号がいるだろ? あれ見て落ち着……ん? 馬鹿三号?」

 

 馬鹿、三号?

 ……なんか察した。

 顔を上げればそこには特徴的なサイドポニーを結った青色の髪の、国民的歌姫でありながらクリス先輩の先輩兼、わたしの身内であるあの人の姿が。

 

「え、あ、せ、センパ……」

 

 風鳴翼。彼女が下着姿で全身にハチミツを塗りたくって響さん達と同じ格好をしながら、こう言った。

 

「ハニー大作戦だ」

 

 クリス先輩は泣いた。

 

「そん、なのねぇだろ……ひぐっ、ぐすっ……」

「大丈夫ですよ……あれは刀の化身です。ああやって光って自分はキレるぞって事を知らしめてるんですよ……ぐすっ」

 

 わたし達、マジ泣き。

 二人して涙を流しながら森の中を歩く。

 可笑しいなぁ。わたし達って身内だったり片割れだったり先輩だったりの痴態を見るためのここまで来たんだっけ……カブトムシの影も見えないのに何で大号泣してるんだろう……なんで暑いのに二人で並びながら泣いてるんだろう……これも猛暑のせいなのかなぁ……

 いや、だからと言ってここで発狂してハニー大作戦とかはしないよ? そんな事したら同じ穴の狢だし……っていうか何であの人達もカブト狩り……カブト狩り? に来てるんだろう……

 

「もうやだ……かえる……」

「かえってもあついです……」

 

 もうわたしもクリス先輩もメンタルボロボロだよ。なんで身内にこんなに精神をタコ殴りにされなきゃならないの。

 でも、これならもう帰っちゃったほうが……あんなのが居る森でマトモにカブトムシ探せる気しないし精神的なショックで倒れそうだよ……倒れたら死ぬけど。

 

「んー!! んんんー!!」

「……ぐすっ。なんか聞こえるな」

「行きたくないです……」

 

 とか思ってたらなんか聞こえてきたよぉ……

 っていうかこの声って……

 

「……響さん?」

「……まさか、痴女紛いな事してたから襲われてんのか?」

 

 だ、だとしたら!

 わたしとクリス先輩はすぐに涙を拭ってギアペンダントを握りしめた。

 わたし達は近づきたくすら無かったけど、男の人ならもしかしたら興奮してそのまま響さんに乱暴を……とか考えられる。だって下着姿なんだもん。だったら、助けないと。もう暫く話したくすら無かったけど、ピンチなら助けないと!

 わたしとクリス先輩は最短ルートで響さんの声がする方へと走った。

 そしてその先に広がっていたのは……

 

「ハァハァ……やっぱ平行世界の響もいい……ハチミツを塗りたくってそのまま美味しく……」

「んん!! んんんー!!」

 

 ……えっと。

 その、解説しますと……未来さんが響さんを木に縛り付けて拘束した状態で猿轡を噛ました状態で全身にハチミツを塗りたくっていました。しかも、近くに灰色のパーカーが無造作に投げ捨てられているから多分この響さんはグレ響さん。

 もう下着すら無いよね。全裸だよね。全裸で縛られてなんか物凄いマニアックなプレイを強要されているよね。

 ……なんなの? この山って装者が集まるように仕掛けられているの? っていうか今装者間ではハチミツがブレイクしてるの? 大流行なの?

 取り敢えずわたしとクリス先輩が出来る事は……

 

『……ご、ごゆっくり』

「んんんんー!!」

 

 あ、多分これ助けてって言ってる。

 けど、わたしとクリス先輩じゃ未来さんには勝てないので……それでは。

 ……さて。

 

「帰りますか」

「もう扇風機と水風呂で我慢しましょう」

 

 もう、ここに居たくない!!

 そういう訳でわたしとクリス先輩は最短で真っ直ぐに一直線に下山を……あっ、なんかいる……

 

「……ハニー大作戦よ」

 

 わたしとクリス先輩は下山途中に見つけてしまったマリアの頭を全力で蹴り飛ばしてから全力で下山した。

 もうやだこの装者達!!




裏話

響「実は最近お菓子の食べ過ぎでお金がなくて……」
切「クーラーが壊れたデス……」
翼「私も、バイクで金がな……」
マ「セレナと買い物してたらついつい……」
切「こういう時の作戦はただ一つ、カブト狩りデス!!」
響「という訳でここにハチミツを用意しました! これを全身に塗りたくってわたし達が木となるのです!!(真面目)」
翼「なるほど……まぁ、やってみる価値はあるな(思考放棄)」
マ「セレナのためなら恥もプライドも全部捨ててやるわ!!(思考放棄)」

この結果が調とクリスの号泣である。


という訳で今回のパロディ元はまたしても銀魂。アニメ65話と原作83訓、『少年はカブト虫を通し生命の尊さを知る』、銀魂乱舞の近藤さんの特殊技、実写版銀魂のカブト狩りからでした。

取り敢えず響と切ちゃんはお気楽コンビとしてハニー大作戦行きは決めてました。が、ズバババンとマリアさんを沖田さん枠か土方さん枠にしようとして……結局ハニー大作戦してもらいました。本来はこの後の乱痴気騒ぎも入れようかと思いましたが二万文字くらいになりそうだったので省きました。

そして未来さんは平常運転。この後グレ響は美味しくいただかれました。セレナはまだ謹慎中。奏さんは思いつかなかった。

次回はサバゲーか、調ちゃんと切ちゃんが君の名はするか。頭を打ったら起こるギャグ補正特有の症状とかもう思いつかない。
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