緒川さんに無人島に島流しされてから数時間が経過した。
一応、着替えとかは緒川さんが用意しているらしく――一応、わたしの分は切ちゃんが用意したらしい――着替えの心配はない。何なら海で遊んでも問題ないくらいの日程は確保していると言ってくれた。いや、うん。何故か水着もあるから遊んでもいいんだけどさぁ。
ただ、現在地が分からないからね? 多分、画面の向こうの皆さんには右下らへんにマップが表示されているか、わたし達の位置がちゃちゃっと説明されているかもだけどね。ただ、わたし達は見えないの。ここどこってレベルなの。マジでここどこ。
「悩んでいても仕方ないぞ、月読。飲み水だけは幸いにも用意されているから残りは食料をどうにかせねばなるまい」
「翼さんは適応力高すぎですって。そんな野草なんて取ってきて……っていうか生で食べてるんですか!?」
「案外生でもイケる」
「はぁ……まずはここからどうやって脱出するか決めましょうよ」
いや、飲み水はあると言っても食料はどうにもならないような……それこそ海に潜るしか。
銛とかあったらいいんだけど、それが無いから多分貝とかしか取れないし。かと言って森の中行くのは嫌だし……っていうかここからどうやって脱出したらいいのさ。
……いや、口には出せないけど、一応装者としての訓練の一つに戦闘中どこかへ漂流した際にどうにか生存、もしくは本島が見えるなら本島に帰れるように筏を作る知識とか毒のある物を見分ける方法とかは学んでいるけど。だけどそれを使うのはどうかなぁ……
「お困りのようですね、翼さん、調さん」
とか思ってたら今まで消えていた緒川さんがカメラ片手に持って急に湧いてきた。思わずビックリしたけど、まぁ忍者だし……この人水上を走れるし。
……もしかしてわたしを運んだのって緒川さん? わたしと翼さん抱えて海走ってきた?
いや、今はそんな事どうだっていい。翼さんはそこまで困っていないとかほざいてるけど、わたしは困っている。とりあえず翼さんにはモモパーン! して黙ってもらってから緒川さんに助けを求める。
「ここに安心安全な筏の作り方とこの島の食べれる物を記した図感があります。ノコギリ等の道具も用意してありますからどうぞ使ってください」
と言って緒川さんがドサッと地面に何かを置いた。その中からは確かにノコギリやロープ。他にも手作りの図鑑らしきものまであった。製作者は……エルフナイン。右下に書いてあった。
いや、こんなの作るくらいなら休もう?
……まぁいいや。翼さんは刀が無くて残念そうにしているけど、ノコギリの扱いならわたしが装者一。これはわたしが筏を作る事になるのかな。
「……っていうか、筏の材料って」
「この島で集めてください」
「ちょっ。それ帰るのに一か月くらいかかりませんか!? 場所だって分かってないんですよ!?」
「大丈夫です。ここに方位磁石はありますから」
「わーい方位磁石だぁ。これでどっちがどっちか分かるぞぉって馬鹿ぁ!!」
思わず乗っちゃったけど! これ方位磁石だけでどうしろっていうの!? 水に浮かべてわぁ楽しいとか言えばいいの!? っていうか方位磁針じゃなくて方位磁石!?
あぁもうどうしろって言うの!?
……だめだ。かっかしてたら体力が先に無くなっちゃう。
「……とりあえずわたしが材料になりそうなもの集めてくるので翼さんは食材集めてください。幸いにもここは色々と漂流してますから」
「う、うむ。では海にでも潜ってくるとしよう」
……絶対に帰ったらみんなをリアルスマッシュブラザーズでボコボコにしてやる。
****
筏の材料集め中。
「調さん調さん。今のお気持ちはどうですか?」
「友達全員の顔面にワンパン入れたい気分です」
****
時の流れは早い物で二日が経過した。
寝床としてわたしが適当に屋根だけ作った簡単な家とも言えない物を使いながら筏の材料を集めて翼さんに力仕事と食料集めは任せてっていう分担作業をして何とかなんとか生きながらえてきた。
この海はそこそこ食べられる海産物があったらしくて、毎回翼さんは大量に魚とかを取ってきてくれた。そのおかげで毎日お腹いっぱいになるくらいは食べられた。そうして元気いっぱいだったのもあって筏はそこそこいい物が作れた。まぁ、説明書通りだけどね。
着替えと水……それと、小道具の中に調味料と火が用意されてるのが本当に救いだった……なかったら精神的にきつかった。ちなみに、シャンプーとかも入ってたから誰も居ない所で自由に使える水をお湯にしてシャワー浴びたよ。
「ふぅ……翼さん、荷物とか忘れてませんよね?」
「大丈夫だ。パドルもちゃんと持っている」
「もう筏というよりはちっちゃい船ですけど……なんとか二人で漕いでいきましょう」
そう。作った筏はもう筏というよりは小さな船。二人で乗ってパドルでえっちらおっちら漕ぐ物。
一応水に浮くかどうかは実験したし、翼さんの水上拠点としてちょっと運用してもらったけど硬度は問題なかった。流石エルフナインの設計した筏。なんともないぜ。
「おめでとうございます。これから無人島脱出ですね」
「あ、緒川さん」
とか思ってたら緒川さんが沸いてきた。
……この人、出てくると毎回スーツだけど着替えとかお風呂とかはどうしているんだろう? 一応聞いてみた。
「え? 普通にこの島の裏から船を出してもらって毎回深夜に本島に戻っていますが」
「それにわたし達を乗せていってくださいよ!!?」
「そんな事したら映像にならないじゃないですか」
「笑顔でそんな事言います!?」
「諦めろ月読。緒川さんはこういう人だ」
ぐ、ぬぬぬ……!!
はぁ……あきらめよう。これを機にわたしの人気も上がると信じて。多分上がるのはバラドルとしての人気だろうけどもさ。
「本島はここから西の方角にあります。この筏ですと大体一時間から二時間くらいかかりますね。頑張ってください」
「そんな簡単に……」
「藤尭さんも一度やったんですから」
「え……?」
ちょ、それどういう事……
「それでは僕はまたカメラに戻らせていただきます」
あ、見えなくなった……
……え? 藤尭さん? マジで? あの人一回これと同じことやったの? もしかして一人で?
そ、そういえば翼さんへのドッキリが終わってから暫く藤尭さん見なかったし、戻ってきたときはかなり疲労困憊で大変そうだったけど……まさかそれが? 風鳴司令は出張で少し遠くに泊まりで行ってもらっているって言ってたけど……まさかそれ、このリハーサルに?
――ちなみにこれは後から知った事なんだけど、この会話の時右下に小さく藤尭さんが悲鳴を上げながら筏を漕ぐ姿が映されていた。名前は緒川マネージャーの部下藤尭って書いてあった。なんというか……お疲れ様です――
……と、とりあえず一旦藤尭さんの事は忘れて行きましょう、翼さん!!
「あ、あぁ……帰ったら藤尭さんを何かしらの方法でねぎらおう。きっとあの人はこれまでも何度か私達の前身として人柱になっている……」
「そ、そうですね……」
……わたし達って、沢山の人に支えられているんだなぁ……でも装者のみんなとはリアルスマッシュブラザーズだ。
****
なんとか筏で渡海は成功。装者じゃなかったら心が折れていたかもしれないけど、まぁそこはわたし達。苦戦こそしたけどなんとかなった。案外本島も近かったからね。数分海に向かって漕いだら本島見えたし。
で、本島に着いたわたし達だったんだけど……
「……え? ここって」
「青森……だな」
青森県でした。
……え? なんで青森? 沖縄じゃないの? てっきり沖縄に着いたらそこからは飛行機で……って思ってたんだけど。……ん? 本島?
あっ。
「……本島本島言っているから沖縄なんて着く訳ないじゃないですか」
「あっ……」
「はい。という訳でここからは歩いてリディアンまで帰ってもらいます」
とかなんとか話していたら緒川さんが沸いてきていきなりこれからの事を説明してきた。
え? 歩いて? 歩いてリディアンまで? 嘘でしょ? 流石にそんな訓練したこと無いからキツいんだけど。いや、やるしかない。やらないとお家に帰れない……!!
そうしてわたしと翼さんによる、十二日間にも及ぶ徒歩帰宅が開始されたのだった。
……つらっ。
****
道中。それはそれは辛かった。
女の子だからって理由で道中にある温泉には一日一回入らせてもらえたんだけど、それ以外は基本的に野宿。テント張れる所は自分たちで張って、無かったら野宿。緒川さんが居るから安全面だけは完璧だったからそこら辺の心配は一切しなかったんだけど、お腹が空いたら無人島から持ってきた魚の干物だったり、わたし達のファンの人からの差し入れを食べたり。お金なんて一切ない物だから、一回山の中に入って野草取ってきたし。
途中からどうしてこんなことを……って思って思考が虚無に陥ったけど、なんとか回復したり。そんな事が多々あって。
「やっと着いた……」
やっとこさ見慣れた街並みに突入して、クラスメイトの人とかとすれ違ってビックリされて。そして最終的にはようやくリディアンの周囲百メートル付近にまで到着した。
疲れた。本当に疲れた。装者の中ではトップクラスに体力のある翼さんですら木の棒を杖にして歩いているんだもん。わたしも木の棒を杖にしてるし、足の感覚がもう無い。何が悲しくて青森からここまで歩いてこなくちゃいけないんだろう……家に戻ったらケーキ食べたい。
「全くだ……まさか本当に着いたと思ったら青森とはな。沖縄関係ないではないか……」
本当にそれです。
沖縄とは真逆の所に連れていかれるなんて思いもしませんでしたよ……一応お土産とかは緒川さんが買ってくれたみたいだけども。時々翼さんと夜ご飯をかけたゲームをして勝ったらご当地の食べ物食べれたから全部が全部悪い事だったとは言えないけどさ。
「服とかは緒川さんが用意してくれましたけど、食料とかは自分たちで採ってましたからね……本当に地獄かと……ん?」
やっとリディアンの校門が見えた、と思ったら校門に誰かいる。
あれは……装者のみんなとエルフナイン? まさか出迎えに来て……んっ?
みんなが手にもっている物……看板? なんか大きく文字が……ドッキリ大成功ぅ?
……へぇ、人の気も知らずにそんな番組の備品みたいな看板もって待ってたんだ。わたし達が青森付近の無人島に流されてあんな大変な思いして帰ってきたのに……みんな呑気にベッドで寝て美味しいご飯食べてテレビ見て笑ってたんだぁ……
へぇ……
「人の気も知らないで……」
「呑気に待っていたとはなぁ……」
チラッと翼さんの方を見た。今までに見た事ないような表情浮かべているし額に青筋浮かんでる。多分わたしも同じ。
そんな事思っていると翼さんと目が合った。
……うん、殺りましょう。処しましょう。その権利がわたし達にはあります。
『……ぶっ殺す』
アイドル? そんなの知らない。
今のわたしはこのイライラとモヤモヤをぶつけて発散したい阿修羅すら凌駕した存在!!
「あ、二人ともお帰り……あれ? なんでそんな見た事もない表情を浮かべながら走って――」
『ぶっ殺してやる!! 覚悟ッ!!』
「し、調と翼さんが豹変したデスゥ!!?」
「ちょ、全員で抑えるぞ!!」
このあと滅茶苦茶リアルスマッシュブラザーズした。
こんな感じでバラドルもびっくりな事して帰ってきた二人でしたとさ。
なんかここの人たち、みんな無人島にトラウマ持ってるみたいだからギャグで上塗りしてみたよ!!(いらない親切)
さて、次回はどうしましょうか。アイドル時空か声優時空か実況時空辺りで何か書くか……
できれば早く更新したいものです。ちなみに今回筆が早かった理由は体属性とか知属性のマルチバトル無理ゲー過ぎて気分転換していたからだったりグラブルで武器全然落ちなかったりしたから。星4知調ちゃん限界突破したいのに素材集まらないんよ……ついでにティア銃落ちない……