月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

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ハロウィン調ちゃん、十連で一発ツモ。前回のチャレンジカップで初ゲットした風穴クリスちゃんに続いて二人目の怒属性星5。
カボチャ型丸鋸を帽子の中にしまうの可愛すぎでは……? というかハロウィン型、クッソ可愛すぎでは? きりしらで一枚絵になるの最高に可愛いし、片っぽだけストライプのニーソなの最高に可愛いですし、魔女っ娘ですけど、どこかゴスロリっぽくて可愛いし。やっぱ調ちゃんにはゴスロリが似合うじゃないか!! 露出少ないのも調ちゃんっぽくてもう最高じゃないか!!

あ、今回はタイトルを見ればわかる人はいる……かもしれないです。
とりあえず今回はカブト狩り時空の続きです。どうぞ。


月読調の華麗なるせんぷうき

 わたし達のカブト狩りは失敗に終わった。

 それもこれも全部、わたし達の身内という名の恥となった装者共のせいだ。馬鹿とお気楽と防人とシスコンが変な事やらかして、ついでにグラビティレズが犠牲者をとうとう作り出して。結局わたし達はマジ泣きして山を下山して返ってくるハメになった。その日以降、わたしは私物の大半を持ってクリス先輩の部屋に泊まっている。

 だって、あんな事やらかした切ちゃんと前みたいに接するなんて無理だよ。もう暫く一緒に居てほしくないもん。顔すら見たくない。顔見るたびに泣きそうになるだろうから。

 でも、当初の目的だったクーラーは未だにご臨終したまま。わたしとクリス先輩は、はしたないのを理解しながら下着だけで着てフローリングに寝転んで、冷たい場所を求めてゴロゴロ転がっている。

 保冷剤、氷枕、扇風機。使える物全部使ってもクーラーという文明の利器に体の隅々まで甘やかされた現代っ子のわたし達には、そこまで使える物を使っても暑さにやられている。

 

「何もやる気起きねぇ……」

「水風呂浴びます……?」

「歩くのめんどい……」

 

 それに、この暑さのせいで立つことすら億劫。おさんどんする気にもならないから、ここに来る前に買い込んでおいた冷凍食品とかで毎日食い繋いでいる。でも、それもそろそろ限界が来ている。

 夏休みの宿題もやらなきゃいけないし、訓練も最近サボりがちだし、他にもやらなきゃならない事が盛沢山。本当にどうにかしないと……どうにか……あれ?

 

「……なんか、風が来ないような」

「……扇風機止めたか?」

「いえ……」

 

 急に扇風機先輩から送られてきていた風が止まってしまった。

 クリス先輩が扇風機先輩を独占しているんじゃ、なんて思ったけどクリス先輩の方にも来ていない。横を見てみれば妬ましい程大きな胸部装甲を、わたしには無縁なブラと一緒に晒しているクリス先輩が寝転がってる。じゃあどうしてと思い扇風機先輩を見てみれば、扇風機先輩はその首を振っていなかった。

 しかも、扇風機先輩は何もしていない。完全な置物になっていた。

 動くのは面倒だけど、扇風機先輩は最早わたし達の命そのもの。付けないと死ぬ。だから動かしてみたんだけど……

 

「う、動かない……?」

「はぁ!? そんな馬鹿な……ま、マジかよ」

 

 扇風機先輩はうんともすんとも言わない。

 つまるところ……ご臨終です。

 

「冗談だろ!? おい動けよ扇風機先輩! 生きるのを諦めてんじゃねぇぞ!!」

 

 クリス先輩が扇風機先輩に喝を入れるけど、扇風機先輩は動いてくれない。しかもクリス先輩の喝に耐えられなかったのか首がボキっと折れて生首が床に落ちてしまった。

 黙るクリス先輩。クソうるさいセミの声。天を仰ぐわたし。これはもうだめかもしれないね。

 一気にモワっとし始めた部屋の中。どれだけ窓を開けても扇風機先輩が部屋の中の空気を回さないからどうしても部屋の中は暑くなってしまう。わたし達は扇風機先輩の微力ながらも多大な功績を改めて理解する。このままじゃこの部屋は外に居るのと変わらないくらい暑い部屋の中になってしまう。

 

「……これは緊急事態だ。誰かがどうにかしないといけない」

「でも外に出たくないです」

 

 こんな外に出るなんてしたくない。

 死が見えるっていうのもあるし、何より服を着ないといけない。外を歩ける程度の衣服を纏うという事は、それだけ暑くなってしまうという事。つまり死。保冷剤とか抱えられないから死ぬ。

 

「出なきゃどうにもならんだろ。アタシが金出すから扇風機先輩を買ってきてくれ」

「嫌ですよ」

「ほら千円」

「ナメてるんですか」

 

 千円でどうしろって言うんですか。それだけじゃ扇風機買えませんって。

 

「じゃないとアタシはお前を部屋に送り返さなきゃならなくなるんだがなぁ?」

「ぐっ……!」

 

 でもそう言われると少なくとも外へは出ないといけない。

 もしクリス先輩に部屋を送り返されてしまったら、切ちゃんと顔を合わせないといけない。それは嫌だ。もうちょっと心の整理をする時間が欲しい。

 だから、わたしはクリス先輩に泊めてもらった、泊めてもらうお礼として外へ出ないと……!

 恨むよ切ちゃん……!!

 

「……分かりました。行ってきますけど、千円じゃ買えないかもですよ?」

「歩いて十分ちょっとの場所に個人経営のリサイクルショップがある。そこ行ってこい。多分あるだろ」

「ぐぬぬ……これも自分のため……未来への投資……!!」

 

 行くしか……ない……

 でも千円で扇風機なんて買えないような……

 

 

****

 

 

 外は人間を溶かす事すら容易なんじゃないかというほどの暑さ。どうして歩けるのか自分でも不思議なほどの暑さの中、タオルで汗を拭きながら近くの自販機で買った水をコマめに飲む。

 歩いている最中周りを見れば、今にも死にそうな顔で歩いているスーツ姿の男性や、日傘をさしている主婦らしき女性。そして走り回る子供。どうしてこんな暑さの中を笑顔で走り回れるのかがマジで理解できない。でも子供にとって暑さなんて笑顔で耐えられるモノなんだろうなぁ……

 一応自衛用の訓練用LiNKERをポケットに入れて歩いてはいるけど……このLiNKER、体に打ち込んでも大丈夫? 変に温くなって変な副作用起こりましたとかないよね? 使う事は無いんだろうけど……でも心配ではあるよ。

 そんなワケで、わたしは十分ほど歩いてリサイクルショップにたどり着いた。店名は……地球防衛基地? なんともまぁ壮大な店名なこと。あー、暑い……はやく扇風機を買おう……

 

「いらっしゃい」

 

 不愛想な女性の店主がクーラーの効いた店内でこっちを見てくる。

 あー涼しい……もうここに根を張ってしまおうか……

 とりあえず扇風機が無いかな……あれ? ない? 扇風機置いてないのかな……? 聞いてみよう。

 

「あの」

「何だい」

「扇風機、無いんですか?」

 

 そう聞くと、店主の女性は目を見開いた。

 え? なにか気に障ること聞いた? 大丈夫だよね?

 

「『せんぷうき』か、懐かしい名前だね。あんた、どこでそれを聞いたんだい?」

 

 え? いや。

 

「普通に知ってますけど」

 

 扇風機だよ? それが分からない人なんていないでしょ?

 っていうか何でそんなにビックリしたというか驚愕したというか。そんな予想外な言葉を聞いたみたいな顔になっているの。たかが扇風機だよ?

 

「これで何とかしてください。扇風機譲ってください」

 

 でも、なんだかこの人危ない人っぽいからもうお金だけ渡して扇風機を譲ってもらおう。千円じゃ門前払いかもしれないけど、とりあえず交渉あるのみだよ。

 だけど女の人は特に何も言わない。というか、何でかすっごい渋い表情してる。やっぱ千円じゃ買えないよね。諦めるしかないかな。

 

「そうかい……ちなみにあんた、名前は?」

「名前……? 領収証ですか?」

 

 えー……なにそれめんどくさい。

 

「……もう上様でいいです」

「そうか、上様かい」

 

 あれ? なんか空気が不穏に……

 まぁいいや。これで扇風機が買え――

 

「悪いけど、アンタみたいな悪の組織に『せんぷうき』は渡せないよ!!」

 

 と言って女の人はカウンターの下から拳銃を……はぁ!!?

 

「あばよ上様!!」

「あぶなっ!?」

 

 女の人は拳銃をこっちに向けてきたけど、なんとか下から拳銃を叩き上げて銃口を上に向けさせる。直後に引かれた引き金によって弾丸が天井へ向けて放たれて木製の天井に傷が付いてしまう。

 っていうか、どうして拳銃なんて持ってるのこの人!? わたし扇風機買いに来ただけだよ!? なんで扇風機買うだけで拳銃向けられなきゃならないの!? 装者みたいに日常的に訓練していなかったら確実に死んでたよ!?

 

「何するんですか!?」

「黙りな! 『せんぷうき』だけは何があっても渡さない!!」

「いや、たかが扇風機に何言ってるんですか!?」

 

 こ、このままじゃ撃たれるかも……ギアを纏う? いや、こんな所でギアを纏ったりしたら機密保持だったり何やらに引っかかるし、一般人……一般人? に対してシンフォギアを使うなんてそれこそ駄目。でも、相手も拳銃を向けてくるような人だし……

 そうだ、普段着とあまり変わらないようなギアを纏えば!

 

「Various shul shagana tron!」

 

 纏うのは、ハロウィン型ギア! 完全に季節外れだし、わたしがゴスロリ趣味の痛い子ってなるかもだけど、普段着と言い張れるハズ!!

 

「なっ、変身した!?」

「大人しく、して!」

 

 LiNKERを打つ前にギアを纏ったから身体的な負荷がかなり大きい。だから、拳銃を力づくで奪って投げ飛ばしてから腕を掴んでわたしが入ってきた入口の方へ向かって投げ飛ばす。そしてすぐにLiNKERを打って適合率を上げる。

 とりあえず拳銃にはカボチャ型の丸鋸を投げて破壊しておく。女性の方はシンフォギアの力で投げ飛ばされたのに普通に着地したらしく、こっちへ向かってどこに隠していたのか分からないナイフを向けている。大丈夫、ナイフ程度なら刺されても無傷で済む。

 だから今はわたしの身の心配じゃなくて。

 

「まさか悪の組織にこんな手品を使うやつがいたなんてね」

「一体何なんですか、悪の組織って! わたしは扇風機買いに来ただけなんですよ! 千円しかないけど扇風機が欲しいだけなんです!」

「『せんぷうき』を使ってその千円札を増やす事が目的だって事は分かってんだよ!」

 

 ……ん?

 扇風機を使ってお金を増やす? 一体どういう……

 

「アタシは何があっても扇風機を渡しはしない! だからここで死んでもらうよ!」

 

 くっ……ここは何とかあの人を無力化して話をしないと。それに、あの人が何か変な事考えているんなら銃刀法違反ということでとっ捕まえて警察に預けなきゃ。でも無断でギアを使ったこと、どう報告しよう……

 

「覚悟っ!」

「覚悟するのは貴様だ、地球防衛軍!」

 

 来る、と思って構えた瞬間。

 店主の後ろから男の声が響いて、更に銃声が聞こえるとともに店主の人が倒れた。

 う、撃たれた!? 一体どういう事!? さっきから何が起きてるの!?

 

「ようやく見つけたぞ、地球防衛軍の生き残りよ」

 

 ち、地球防衛軍?

 ズカズカと店の中に入ってきた男は、何かこう……明らかに悪の組織ですよ的な格好をした男の人が、右手と一体化しているらしい銃を構えている。

 その後ろには全身タイツの……なんだろう、悪の組織の雑魚敵みたいな。簡単に言っちゃうとショ〇カーみたいなのが沢山いる。正直変態にしか見えない。

 

「ふむ。で、そこの小娘は何だ? 季節外れのハロウィンでもしているのか?」

 

 と言いながら男はこっちに銃を向けてきた。

 いや、別にそういう訳じゃないんだけど……わたし、扇風機買いに来ただけなんだけど。

 

「ぐっ……あんたらの仲間じゃないのか……!?」

「違うな。だが、その小娘も我等と同じ『せんぷうき』を求めていると見た。どうだ、そこの小娘。我等の仲間にならぬか?」

 

 ……えーっと。

 なんかもう脳が追いつかないんだけど。なに、地球防衛軍とか悪の組織とか。理解できないししたくないし。そもそもわたし扇風機買いに来たら拳銃突きつけられて自衛しただけなんだけど。なんで変なオッサンにスカウトされてるの? わたし、もうSONG所属って肩書あるんだけど。

 なんかもう分からないけど……とりあえず今は。

 

「……殺X式、悪戯変化!」

「なにぃ!?」

 

 帽子の中からカボチャ型丸鋸を発射して変態集団を吹き飛ばす。その後すぐに撃たれて倒れている店主の人を回収して外へ飛び出し、建物の屋上を飛び跳ねて移動してから適当な路地裏に着地して店主の人を降ろしてギアを解除する。

 これで多分撒けたハズ。

 この人も銃をいきなり撃ってきたけど、今は負傷しているしこの人を助ける事を優先した。よく分からないけど、この人たちはシンフォギアの存在を知らないから、今頃爆発したカボチャ型丸鋸に困惑しているはず。

 

「あんた、どうして……」

「悪の組織とか地球防衛軍とか分からないけど、流石に放っておけない」

 

 応急処置は一応できるからするけど……早いうちに病院に連れていかないと。

 早いうちに救急車を呼んで……

 

「ま、待ってくれ」

 

 と思って携帯を取り出したら、その手を抑えられた。

 まだ何かする気……?

 

「あんた、悪いヤツじゃないんだな」

「……えぇ、まぁ。広義的には」

 

 シンフォギア装者っていう影から人々を守る機密そのもの……ではあるから悪い人にはならないと思う。大きな災害には人助けのために動いているし。

 だからそう告げると、店主の人は懐からメモ用紙を一つ取り出して渡してきた。これは……住所? 多分、ここから数キロ先の廃工場かな? 確かあそこには何もなかったはずだけど……

 

「ここに『せんぷうき』がある。頼む、アタシの代わりに『せんぷうき』を破壊してくれ」

 

 ふぅん、ここに扇風機が……

 はい?

 

「いや、扇風機買いに来た人に破壊を頼むって馬鹿なんですか!?」

「頼んだよ……地球の未来はアンタにかかってるんだ……」

「だからわたし扇風機買いに来たんですけど!? ちょっと、何RPGのちょっといい事言って離脱する人みたいな事言って気絶してるんですか!! お願いだから話を……」

 

 ……

 …………あー!!

 あーもう!! わかったよ! 行けばいいんでしょ行けば!!

 どっちにしろなんか変な事に巻き込まれているんだから解決しないと後々厄介な事になるパターンでしょこれ!!

 なんで扇風機買いに来ただけでこんな事に巻き込まれるかなぁ!!

 

「Various! shul shagana! tron!!」

 

 半分やけっぱちで叫んで聖詠。今度は和装型になって建物の上を走る。わたしの和装型は忍者だから、こういう場所を人目に付かず走るには和装型が丁度いい。

 数キロ先だから暫くかかるけど……と思いながら走っていると、SONGの方から連絡が来た。多分、わたしのフォニックゲインを感知したから急遽連絡してきたんだと思う。

 

『調くん、一体どうした!』

 

 ギアを纏わないといけない状態というのは、少なくとも警察組織とか自衛隊じゃ解決できないような状況に出会ってしまっているという事。だから風鳴司令はかなり焦った感じで連絡をしてきたけど……すみません、なんか巻き込まれたので自衛のために纏っただけなんです。

 一応一から十まで包み隠さず伝えると、あちら側の反応がちょっと変わった。

 

『扇風機に地球防衛軍……? …………まさか銭封機の事か!!?』

 

 え? 何を言っているの?

 

「何か知ってるんですか?」

『実は江戸時代のとある時期に大量の偽造小判が市場に流れたという記録が残っている。その際に銭封機というカラクリの名が幾度か出てきてな。その時この銭封機を誰の目にもつかない場所に運んだ組織の名が『地球防衛軍』だったという話だ』

 

 ……はぁ?

 

『すまん、俺達も眉唾か創作だろうと思っていたのだがな……だが、こうなった以上調べなくてはならない。それに、もし銭封機が実在するのなら、恐らく銭封機には聖遺物の力が一部使われているだろう』

「聖遺物、ですか?」

『詳しくは分からんがな。ただ、放っておくと面倒な事になるかもしれん』

 

 でも、そこまで大量の偽造したお金を作れるのなら、ちょっとした聖遺物の特性を利用していると思っても……どうなんだろう? 風鳴司令も困ったような声出してるし。

 

「面倒な事とは」

『偽札が大量に刷られ、混乱が起こるかもしれない。小判を作るだけなら今の世の中ではそこまで重要ではないが、念のためだ。調くん、銭封機の回収、もしくは破壊を正式な任務として頼みたい』

「……まぁ、任務ならやります。なんか馬鹿らしくて気は乗りませんけど……」

『すまんな……』

 

 気が乗らない……はてしなく面倒……

 でも、正式に任務として依頼されたならやるしかない。相手はシンフォギアを知らないってことは異端技術は出てこないだろうし、わたし一人で戦力は事足りる。っていうか暑いしとっとと片付けたいから早く終わらせちゃおう。

 そんなワケで廃工場に到着。立ち入り禁止って書いてあるけど、今のわたしに指図できるのは風鳴指令くらい。ズカズカと廃工場の中に入る。

 えっと、銭封機ってカラクリなんだし、何かメカメカしいのか……な?

 

「……えっと、なにこれ」

 

 廃工場に入ってすぐ見つけたのは、何というか……

 巨大な招き猫。まさかこれが……?

 

『極僅かだが聖遺物の反応がある。調くん、そこには何がある?』

「巨大な招き猫です。五メートルくらいはありますね」

『無駄にデカいな……とりあえず、気を付けて調査してほしい。もし危険があるようなら破壊してくれて構わない』

「分かりました」

 

 とりあえず招き猫を調査することに。

 えっと……特に動くような場所は見当たらないかな? 強いて言うならちょっと風化している程度で、でも最近までちゃんと整備はされていたみたい。使った跡は……よく分からない。重さは……うん、わたしじゃ無理。多分響さんなら投げ飛ばしたりはできるだろうけど、少なくとも中身は何か入ってる。

 とりあえず色々と触ってみて……あ、前足が動きそう。とりあえず動かしてみよう。

 ガシャッと。

 

「……あっ、お札が」

 

 前足がレバーみたいになってたから全身を使って引いてみると、招き猫の口が開いて札束がドバドバ出てきた。

 でもこのお札、風鳴司令の言う通りなら偽札。とりあえず一枚だけ手に取ってみてよく見てみると、透かし絵がない。精密に作られているけど、透かし絵だけは出てこない。でも、これをお会計の時とかにサラッと出されたら、ちょっと一目じゃ理解できないかも。

 ……風鳴司令が言っていた事、本当だったんだ。確かにこれは混乱を起こす前にどうにかして破壊するか回収しないと。

 

「それこそが銭封機の力よ!」

「早くそいつを壊してくれ!!」

 

 とか思ってたらわたしが入ってきた入口からさっき聞いたばかりの声が聞こえてきた。

 そしてすぐに右腕が銃になったオッサンと、全身黒タイツのオッサン達が入ってきた。ついでにさっきの店主の人がなんか人質になってる。はぁ……

 

「それはかつて存在した天才カラクリ技師十徳が作り上げた――」

 

 その後、なんか銭封機の正式名称みたいなの言ってたけど、忘れた。

 だってあまりにもバカバカしい名前だから聞く気にもなれなくて……風鳴司令やSONGの職員の人もなんか溜め息吐いてるし。でもね、こんな物のためにこんな暑い思いしてるわたしの方が辛いんですよ。和装型、結構露出多いし丈も短いけど、暑い物は暑いの。

 

「ここまで道案内ご苦労だったな。では、銭封機を渡してもらおうか。それとも我らの仲間となるか? 早く決めねばこいつの首が飛ぶぞ?」

「それは人を惑わす悪魔の装置だ! アタシの事はいい、早くそれを壊しとくれ!!」

 

 ……あのさぁ。

 わたしさ、扇風機買いに来ただけなの。

 なのにさぁ。

 

「クリス先輩からたった千円だけ渡されて扇風機買いに来て、これだけ汗かいて見つけたのがこのキモい顔した招き猫って……」

 

 もうね、いくらわたしがクールな美少女だからと言っても、キレたくなるよね。

 というわけで、プッツンします。

 

「いいからつべこべ言わず扇風機売れぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 そして八つ当たりでキモイ招き猫の腕を破壊!!

 なんかギニャーとか聞こえるけど知らない!! こっちはさっきから暑さと三文芝居にイライラしてんの!! しかも成り行きで任務にまでなってるし!! わたしの自由時間奪っておいて変な装置の破壊させんな!!

 

「ああああああああああああ!!? き、貴様! それがどれだけ価値のある物なのか――」

「知るか!! 殺X式、裂風残車輪ッ!!」

「なっ、手裏剣だとぉ!!?」

 

 もうこうなったらこのキモイ招き猫も変なコスプレしたオッサンもなんかキモイ全身タイツのオッサンも!!

 全部全部全部否定してぶっ壊す!!

 わたしのストレス解消の道具になってしまえぇ!!

 

 

****

 

 

『……調くん、イライラしているのは分かるが、そこまでにしてやってくれないか』

「はぁ……はぁ……そこまで言うのなら」

 

 今、わたしの周りには再起不能になったオッサン共と銭封機だったものが転がっている。ひたすらアームドギアを投げまくって、イライラしていたわたしはついつい絶唱も使って大暴れした。

 その結果、オッサン共はボロ雑巾になって銭封機は銭封機だったものになって、廃工場は廃工場だったものになった。やりすぎたとは思っている。でも反省も後悔もしない。こんなあっつい中変な事に巻き込んだお前らが悪い。

 

「……帰ろ」

 

 結局、扇風機購入のための足は完全に無駄足だった。

 帰ったらどうクリス先輩に言い訳しようかな……はぁ、大暴れしたのに全然スッキリしないや。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 とか思ってたら店主さんに声をかけられた。

 早く帰りたいんですけど。

 

「アンタはこの街を……いや、この国を救ってくれた英雄だよ」

「はぁ……」

 

 わたし、国どころか世界を二、三回救った人の仲間なんだけどね。

 

「お礼なら何でもする。扇風機だって用意するし、何だったらエアコンだって用意するよ」

 

 ……え?

 エアコン、本当に?

 

「エアコン、あるんですか? 千円で売ってくれますか?」

「あぁ、むしろタダでいい。何台だってプレゼントするさ」

 

 ……うん。

 偶には巻き込まれるのもいい物だね!!

 

 

****

 

 

「と、いう訳でエアコンを取り付けてもらいました。わたしとクリス先輩の部屋に二つ」

「マジか……今、アタシにはお前が後光がさしているように見えるぜ……」

「ふふふ。褒めてください、存分に褒めてください」

 

 わたしは地球防衛基地にあったエアコンを二つもらい受けて、一個はクリス先輩の部屋、もう一つはわたしと切ちゃんが住んでいる部屋に取り付けてもらった。

 これで扇風機先輩に頼らなくてもかつて存在したあの天国を……あの極楽が再び……!!

 手にはエアコン。そして視線の先にはエアコン。なんだかボロいけど……この夏を乗り切るための力を貸してくれるはず!!

 

「では、スイッチオン!」

 

 さぁ、エアコン先輩! 今こそわたし達に救いの手を!!

 ……

 …………

 ………………

 ……………………あれ?

 

「……おい、全然涼しくならねぇぞ」

「う、動いてはいますけど……」

 

 な、なんというか……

 動いてはくれるけど、オンボロのせいか全然風が来ない。というか、なんか地味に風は来るんだけど、これだと涼しくなるのに相当時間がかかるような……あっ。

 

「止まったぞオイ」

 

 エアコン先輩はピーという音を立てて動かなくなった。

 リモコンで何度操作しても操作を受け付けてくれない。エアコン本体を弄っても動いてくれない。

 これは……

 

「……クリス先輩」

「なんだ」

「水風呂に入りましょう!!」

「うっせぇ期待させやがってぇ!! 大層な作り話作ってぶっ壊れたクーラー拾ってきてんじゃねぇぞゴルァ!!」

 

 わたしは上様へと書かれたエアコン本体を叩いてから、修羅の形相になって追ってくるクリス先輩から全力で逃げ始めた。

 もう二度とあんな面倒事に首突っ込まない!! 絶対に!!




元ネタは銀魂の10巻81訓、そして21話Bパート『扇風機つけっぱなしで寝ちゃうとお腹こわしちゃうから気を付けて』でした。一応シンフォギア風にアレンジしました。そしてエアコンがこの後どうなったかは皆様の想像次第。

ハロウィン型、出てきて即出番。一番そこまでシンフォギアっぽく見えないギアがハロウィン型しかなかったし、仕方ないね。

ハロウィン型については前書きで語ったので、機械仕掛けの奇跡についででも。
前編はビッキーママ……とか言ってましたけど、後編のストーリーは立花響の正義ッ! って感じでしたよね。
ビッキーが自分の正義を信じ握りしめてシャロンちゃんを助けると決めた事や、それを無茶してでも実行に移す事……限界突破G-beatの歌詞のようにヒーローじゃなく、ただ正義を握った自分の手で守り抜いたように思えて、なんというか、ビッキーの今までの集大成みたいな感じに自分は思いました。
そこに加えて新曲のKNOCK OUTッ! はビッキーが心の中で燃やしている戦う理由や立ち上がる理由、拳を握る理由を最短で真っ直ぐに一直線に伝えているみたいで、機械仕掛けの奇跡のラストを飾り、そしてビッキーを表すにはピッタリな曲だと感じました。

なんか思いっきり語ってしまった……でも、それぐらいには機械仕掛けの奇跡はトップクラスでいいシナリオだと思いました。片翼、閃光と並ぶレベルでいいシナリオだと自分は思いました。KNOCK OUTッ! のFULLが早く聞きたい……

ではこれ以上は鬱陶しいと思うので後書きはこの辺で。次回は恐らくつばしらの話である『月読調の華麗なる憧れ』になると思います
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