月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

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なんだか途中から憧れじゃなくなったけど憧れです。

今回はきりしら、ひびしらのどちらでもなく、つばしらです。公式だと刃物繋がりなのかちっちゃい(意味深)繋がりなのかで風月ノ疾双を使いましたし、メモリアだと調ちゃんが翼さんの腕枕で寝てたり調ちゃんが翼さんにアーンしてたり。そこそこ絡みは多いですよね。

っていうか調ちゃんの出てるメモリア、今確認したら高確率でひびしらかクリしらっていう。そもそも調ちゃんのソロメモリアが結構多めなのに驚いた。

まぁそんな事はさておいて。今回はつばしら。なんやかんやイケメン枠に収まることが多い翼さんですから、書いててあまり違和感なかったという。


月読調の華麗なる憧れ

 わたしには一人、憧れの人がいる。

 いつも切れる刀の擬人化みたいに落ち着いていて、それでいて激しい時には激しくなって。それでいて慕ってくれる人が多い。かくいうわたしもその一人で、響さんも、あの素直じゃないクリスさんもあの人にはあまり頭が上がらない様子。

 唯一、切ちゃん以外の誰ともユニゾンできなかったわたしと根気強く向き合ってくれて、それでいてわたしにすら分からなかったわたしの心を分かってくれて、一緒に戦ってくれた人。

 

「ん? どうしたのだ月読、いきなり呆けて。今は訓練中だぞ」

「あ、はい。ちょっと考え事をしてました」

「そうか。今は構わぬが、あまり考え事に気を取られるなよ?」

「大丈夫です。実戦ではちゃんとやりますから」

 

 そう、翼さん。

 わたしはこの間から……パヴァリア光明結社との戦いが終わったあたりから、ずっと翼さんに視線を吸われてしまっている。訓練の時も、装者のみんなで集まった時も、それこそ切ちゃんと居る時も、マリアとのライブの時も。ずっとわたしの視線は翼さんの方へと向いている。

 どうしてかは分からない。この気持ちがどういう物なのかは分からないけど、それでもわたしの視線は確実に翼さんの方へと吸い込まれている。

 今も訓練中だけど、翼さんの方に……

 

「っ、危ない月読!」

 

 急に翼さんがわたしの方へと刀を片手に走ってきた。

 何が起こったのかよく分からないせいか、動かないわたしの体。でも翼さんは一直線にわたしの方へと走ってきて、そのまま構えた刀をわたしの後ろへ向かって振り抜いた。髪の毛が持っていかれそうになったけど、振るわれた刀はそのままわたしの後ろに忍び寄っていたらしい、訓練で出されたノイズを切り裂いた。

 訓練用だけど、ダメージはちゃんと来るのがこのシミュレーションルーム。だからもし攻撃を許していたら、ダメージこそ少なかったけど擦り傷程度は負ったかもしれない。

 

「あっ……ありがとうございます、翼さん」

「いや、あのノイズはエルフナイン辺りが作った隠密特化だろう。気づけなくても仕方がない。だが」

 

 そう言うと、翼さんはわたしの頭に手を置いて、そのままゆっくりと撫でてくれた。

 

「月読に怪我がなくてよかった」

 

 そう笑顔で……っ。

 

「うっ……ほ、ほら! ノイズも前から来てますし前を見ましょう! ちょっとだけわたしが前に出ますから!」

「ん? そうか。なら、私は後ろから援護に回らせてもらおう」

 

 この人はどうして……どうしてこう、わたしの心というか、精神というか……よくわからないけど、急にわたしをドキッとさせて!

 人の気も知らないでニコって笑顔で!

 嫌な気こそしないけど、顔が凄く熱い。本当によく分からないけど……とりあえず今は、翼さんの顔はあまり見たくなかった。きっと、翼さんに赤い顔を見せる事になっちゃうから。

 

 

****

 

 

「それって……恋なんじゃないかな?」

「ぶっ!?」

 

 と、そんな感じで最近翼さんの顔すらマトモに見れなくなったのを未来さんに相談したんだけど、その結果返ってきた言葉に思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまった。

 まさかそんな事を言われるなんて思ってもいなかったし、まさか原因をこんなに早く口にされるとは思っても居なかった。ついでに言えばあり得ないとしか言えない事だったから思わず飲んでいた物を吹き出してしまった。未来さんは慌ててハンカチを渡してくれるけど、一応自分で持ってきているから口元とか最低限の箇所だけ拭いて、一度お茶を飲んでから一息ついた。

 恋なんて……あり得ない。あり得ないったらあり得ない。だって、翼さんは女性で、わたしも女の子だよ? それなのに恋なんて……

 

「ん? いきなり見つめてきてどうしたの?」

 

 ……この人見てると、あり得ないとか口ごなしに否定できないなぁ。

 だって、未来さんだよ? 満場一致でみんなから重いって言われる未来さんだよ? そんな強烈な前例が身内に居るから、そんな女の子同士なんてあり得ない、なんて否定できない。響さんも満更じゃないみたいだし……

 そうすると、わたしのこの気持ちも……いやいや!

 

「でも、わたしは常識人だし、それにそんな気持ち翼さんには……」

 

 きっと、これが恋だとしても翼さんには迷惑に違いない。

 だって翼さんは世界的歌手だし、装者としても先輩だし、カッコいいし、ファンの人もたくさんいるし……そんな人がこんなわたしに恋煩いの感情を向けられたとしても、迷惑に決まってる。

 恋人なんてきっと選り取り見取りな翼さんが、こんなわたしの言葉に振り向くわけが……

 

「大丈夫だよ。プラスな感情を向けられて嫌な気持ちになる人なんていないって。それも、後輩から向けられる気持ちはね」

「ですけど……やっぱりわたしと翼さんじゃ……」

「もう。そういうのはやってみないと分からないのよ? 最近は女の子同士も男の子同士も結構あるみたいだし」

 

 そう、なのかなぁ。

 確かにアメリカにいた頃は、同性愛を育んでいる人っていうのはちょくちょく見かけたし、わたしはそれを見ても特に何も思わなかったけど……ついでに最近になってからソレが可愛く見えるレベルで強烈な人が身近になった事だし。

 だけど、やっぱり普通ならそうやって両想いになるのって珍しいし……出会いの場で出会ってそこからってイメージの方が強いから……というか自分がそうなるなんて一切思ってなかったよ。

 

「でも調ちゃんはまず自分の気持ちを確かめる事から始めないとね」

「自分の気持ちを……」 

「それが恋心なのか、ただの憧れなのか、ね?」

 

 ……たしかに、わたし自身この気持ちが一体何なのか、まだ完全に理解はできていないからそれを確かめるためにも何かしらの行動を起こすのは必須だと思う。じゃないと翼さんの顔を見られないままになっちゃうだろうし、それで翼さんに嫌われたり余所余所しくされたら嫌だから……

 とりあえず今は未来さんの言う通り、自分の気持ちを確かめてみよう。それをするだけなら、別に翼さんにも迷惑かからないし。うん、そうしよう。

 

 

****

 

 

 あくまでも自分の気持ちを確かめるだけ。

 そう思ってわたしは翼さんとなるべく一緒にいる事にした。できるだけ迷惑にならない距離感で、それでいてしっかりとわたしがいるという事を意識してもらえる距離感。つまりは一歩引いた距離。その距離を保ちながらわたしは翼さんに引っ付く。

 もし迷惑していると分かったのならすぐにやめるつもりだったけど、翼さんは笑顔でわたしに接してくれている。それが心地よくて、ついつい一歩引いた距離を忘れてしまいそうになる。

 そんなある日の事。わたしは翼さんが何代目かの愛車の整備をしているのを眺めていた。じーっと。声を出さない様に、バイクを整備する翼さんを眺めていると、翼さんは困ったように声を出した。

 

「……言いにくいのだが、月読。バイクの整備を見ていて楽しいか?」

「はい、なんだか新鮮で」

「う、む。あまり面白い作業ではないとは思うのだが……月読がそれでいいのなら私も無理に帰らせるわけにはいかないな」

 

 困った声と困った笑顔。多分、ファンの人には見せないのであろうこの顔と声は、響さんやクリス先輩もあまり見ないし聞かない物だと思う。翼さんはいつもいい意味でハッキリとした人だ。伊達にわたし達をまとめ上げて引っ張っていない。

 だから、翼さんの煮え切らないような表情と声はレアなんだと思う。わたし自身、こんな表情を浮かべる翼さんはあまり見たことが無い。

 本当なら手伝いたいんだけど、流石に勝手が分からないからそんな事できず。ただ、近くにある道具を渡す程度ならできるから、翼さんを眺めつつ道具を手渡す。

 そうしている内に翼さんのバイクの整備は終わったらしく、何度かハンドルを捻ってバイクを唸らせて、満足げに頷いた。

 

「よし、どうやら機嫌は直ったようだ」

「どこか壊れてたんですか?」

「いや。ちょっと最近放っておいたがために、若干声に元気がなかったものでな。恐らく拗ねていたのだろう。だが、今の声を聞いて機嫌は直ったと確信した」

 

 そういうもの、なのかな?

 機嫌とか拗ねているとか……多分、というか確実に比喩な表現なんだろうけど、それでもわたしの視線は翼さんに磨かれたバイクじゃなくて、笑顔を浮かべる翼さんに吸われてしまう。

 あぁやっぱり。こういう時に自然と笑顔の翼さんを見てしまうという事は……

 

「……そうだな。月読、どうせならタンデムといかないか?」

「え? タンデム……二人乗り、ですか?」

「あぁ。こいつも機嫌がよくなったことだし、一っ走りしたくなってな。どうせなら月読も、と思ったのだが。どうだ?」

 

 そんな素敵な事、断るわけがない。

 少し食い気味にそれを了承すると、翼さんはいつも通りの笑顔でわたしにジャケットと、ヘルメットを渡してくれた。安全はしっかりと、という事なんだと思う。それを拒むわけもなく、一も二もなく了承して少し大きなジャケットとヘルメットを身に着ける。

 どうやら翼さんの予備らしいんだけど……うん、特に何も考えてないよ? ホントだヨ?

 あとは翼さんが最初にバイクに座った後にわたしも翼さんの指示通りに座って、後ろから翼さんの腰に抱き着く。

 

「なるほど、月読はそういうイメージが強いのか」

 

 ヘルメットを被っているから声が届かない……はずだけど、どうやらヘルメットの内側に通話するための装置がついているらしく、耳元から翼さんの声が聞こえてきた。

 ちょっとビックリしたけど、声は上げない。代わりにどういうことですか? とだけ質問を投げておく。

 

「雪音は後ろのバーを掴んで、立花は手を伸ばしてグリップを掴んできたからな。こういうのは案外、人が出るのかもしれぬな」

「……つまりわたしは?」

「本質的には甘えん坊なのだろう。可愛いではないか」

「っ――」

 

 こ、この人はほんと……!

 急に人が照れるような事言って……この人はほんとにもう!!

 

「全力で絞められても特に痛くないあたり、雪音や立花とは違った可愛さがあるな」

「むぅぅ……!!」

「ははは、少々からかいすぎたか。では、これ以上姫の方が機嫌を損ねてしまう前に行くとしよう」

 

 翼さんはわたしに恥だけかかせておいて、グリップを捻った。

 何をしているのかは分からないけど、ただわたしは翼さんの腰にしがみついておく。元々外に出した状態で整備していたバイクだから、車庫から出るなんて事はせず、ゆっくりとバイクは前に進み始めてそのまま車道へ。そしてすぐにスピードは上がって景色が流れていく。

 

「わっ、速い……!」

「本当ならもう少しスピードを出したいのだがな。生憎、これ以上は制限オーバーだ」

 

 翼さんはそんな事を言うけど、バイクは十分なスピードを出している。

 わたしもギアでの高速移動……つまり禁月輪を使って高速道路を爆走した事はあるけど、バイクの後ろに乗って走るというのは新鮮で、自分が操作に関与していない状態で風をこんなにも切っていくというのは少し違和感もあって。でも翼さんに抱き着いてこうやって走るのは、なんだかとても幸せ。

 もうわたしは確信した。

 わたしの中にあるこの気持ち。もうあり得ないとか信じられないとか、そんな事を言って否定なんてできない。だってこの気持ちは、絶対に――

 

「どうだ、月読。私の相棒も見事な物だろう?」

「はい」

「雪音や立花も興奮こそしたが、一回で満足したらしくてな。私的にはバイク仲間が居てくれればいいのだが」

「……ならわたし、バイクの免許取ります。バイクの免許を取って、翼さんと一緒に走ります」

「と、いうことは……そうか、月読もこの世界に惹かれたか」

 

 わたしは翼さんの見せてくれたこの世界に……ううん。

 翼さんと一緒に見るこの世界に惹かれた。翼さんと一緒に、翼さんの隣で。翼さんの後ろで。

 こうして翼さんと楽しい事を共有できるのが、楽しい。だから。

 

「だから、隣を走れるまでは、こうして後ろに乗せてくださいね?」

「あぁ、任せておけ。共に走れるその時まで、月読にこの世界の魅力をこうして伝える事を約束しよう」

 

 もし隣を一緒に走れるようになったら。

 この気持ちも一緒に伝えて、もし受け入れられたのなら、二人で一緒に――




あと調ちゃんがカップリングできそうなのって、クリスちゃんくらいですね。あとは……メモリアだとエルフナインちゃん? エルしら? しらエル? マリアさんは……保護者なので。でもクリスちゃんもあまり想像が……w

とりあえず、これで調ちゃんのヤンデレの矛先or調ちゃんへのヤンデレの矛先がまた一つ。また禁じられた世界線が完成してしまいそう。そろそろ奏さん巻き込む?

さてさて。とりあえず今回はこんな所で。次回は未定です。

あ、ヘキサセレナ一枚落ちました。一枚落ちたところでどうしろっていうんですか!!(バナージ)
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