月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

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プラトニックな話の直後の話がこれである。乙女な調ちゃんはどこ……?


月読調の華麗なるドM

「我流・星流撃槍(死なない程度)!!」

「きゃああああ!!?」

 

 響さんの渾身のライダーキックがわたしを蹴り飛ばす。

 もう何だか慣れてしまった高速で前へと流れていく景色をどこか達観した気持ちで見ながら、わたしの体はコンクリートでできた柱に激突して止まった。勿論死なない程度に手加減はされているから死にはしないけど、結構痛い。いくらシンフォギアを纏っているとは言っても痛い物は痛いし、軽減されているとはいえコンクリートの柱に体が埋まるなんて普通に再起不能レベル。

 もしこれが貯水タンクだったら花京院ごっこができたんだろうなぁ、なんて思っていると、ギアが強制解除された。あーあ、今回はこれで終わりかぁ……

 

「だ、大丈夫!? ちょっと力入れすぎちゃった!!」

 

 今回の訓練は二課組とF.I.S組に分かれての模擬戦。最初はわたし達三人でユニゾンしていたけど、翼さんにいい感じにマリアと分断されて、わたしと切ちゃんもいい感じに響さんがわたしを引き付けたせいで一対一になって、素の力がわたし達お薬ずぶずぶ組よりも強い二課組に各個撃破……という感じ。

 ちなみに切ちゃん、マリアの順にK.Oされて、最後にわたしが吹き飛ばされました。

 シミュレーターが解除されてわたしの体が空中に放り投げられる。けど、それを響さんがキャッチしたから、また新たな痛みを感じる事はなくなった。

 

「まさか柱にめり込むなんて……ごめんね、調ちゃん」

「いえ、大丈夫です。寧ろもっと強くしても大丈夫ですよ?」

「もっと強くって……それじゃあ調ちゃんを本気で再起不能にしちゃうよ」

 

 響さんはそう言って笑うけど、むしろそのレベルで殴ってくれていいですよ?

 むしろS2CAレベルの一撃を叩き込んでくれても笑顔で受け止めます……なんて事は言えない。流石にそんな事言ったら、模擬戦にかこつけながら、わたしが自分の趣味と性癖を満たしているってバレちゃうから。

 ……まぁつまるところ。わたしはこの間から痛い事が気持ちいい事だと感じるようになっちゃいました。

 なので響さんの星流撃槍……とっても気持ちよかったです。

 

 

****

 

 

 発端はアダムとの戦闘中だった。

 わたしと切ちゃんが自分たちの真後ろでなり始めた謎の黒電話……黒電話? に気を取られた時だった。

 

「余所見している場合かね? この僕から!!」

 

 そう言いながら怪物と化したアダムはわたしと切ちゃんを思いっきり薙ぎ払った。その一撃は今まで受けたどの攻撃よりも強大で、たった一撃でわたし達の意識を刈り取りかけた。しかもついでに。

 

「いたた……調、大丈夫デス、って調ぇ!?」

 

 わたしは切ちゃんの鎌が思いっきり頭のてっぺんに突き刺さってた。

 慌てて切ちゃんはわたしの頭から鎌を引っこ抜いてくれたけど、思いっきり鎌が頭のてっぺんに刺さっていたんだからぴゅーって血が噴水のように出ているわけで。切ちゃんが思わずと言った感じに生唾を呑んでいる。

 でも、わたしにはその感覚と全身に走る痛みがどうしてか苦痛ではなかった。むしろ気持ちよく感じた。

 その瞬間、わたしは悟った。わたしは多分開いちゃいけない扉開いちゃったんだなぁって。でも、開いてみたら開いてみたで特に何も変わらないし、ついでに言えばなんだか頭がスッキリしたような気がするよ。

 

「大丈夫だよ、切ちゃん。むしろ頭がスッキリしたかも」

「そ、そうデスか……?」

「っていう訳でアダムに特攻するからッ!!」

「へ? し、調ぇ!!?」

 

 その日、わたしは多分五、六回はアダムに吹き飛ばされた。途中でアダムは「ひ、開いてしまったようだね、禁断の扉を……この僕のせいで」って言ってたけど、自覚あるならわたしをもっと吹き飛ばして誠意を見せてほしかった。あと十回はぶっ飛ばしてほしかったけど、途中で必死な顔した響さんが殴り合いしてたからついていけなくなっちゃった。残念。

 まぁその日からわたしは性癖がガラッと代わった。はいそこ。頭に鎌刺さったから頭おかしくなったんじゃない? とか言わない。ちょっと自覚あるから。

 でも、人間は目先の欲望にはちょっと弱いわけで。

 わたしはそれからというもの、一人で自傷行為を快楽目的でするようになったし、訓練でわざと仲間からの誤射に当たったり模擬戦で痛そうな攻撃をライフで受けた。一番やばかったのは翼さんの天ノ逆鱗とクリス先輩のMEGA DEATH INFINITYかな。あれは流石に死ぬかと思ったよ。でもそれ相応に気持ちよかった。でも最近ハマってるのは絶唱のバックファイア。あれ結構キツイからいい感じに気持ちいいんだよね。ちょっとLiNKERの実験データ獲得のためにって名目で協力したいって言ったらエルフナインは心配しながらも了承してくれたし。

 まぁそんな感じで日常的に痛みを快楽として受けているわたしだけど。それでも装者としての何かが無い時は生傷が増えない。そういう時は大抵。

 

「よいしょ……っと。ふぅ、できた」

 

 一人自室で自分を縛ってます。

 天井から吊るしたロープに自分の手を縛って、足が付くか付かないかの限界スレスレの高さまで体を持ち上げて、腕の痛みを楽しむ。本当はリストカットでもと思ったんだけど、それやるとわたしが病んでるみたいになっちゃうからね。いや、これも十分アレだけど。

 でも、貧血の感覚が大分いいんじゃないかなとは思う。こう、頭がボーっとして物音も聞こえにくくなって。今すぐ死ぬぞって言われてもおかしくない感覚だから、大分いい感じだと思う……けど、貧血なんて日常的に起こすものじゃないし。献血にでも行けばなるのかな? 今度行ってみるかな。針で腕刺せる機会でもあるし。

 

「い、たた……でも気持ちいい……」

 

 気分は牢獄の囚人。手枷に付いた鎖を天井からつるされて、立たないといけないくらいで吊られてる感じ。やりすぎると痣になっちゃうからそこそこで止めないと。

 ちなみにやめる時は、手で昇降するための縄を握ってるから、それを操作して降ろす。ちょっと操作間違うと宙づりになるから気を付けるけど……一回宙づりになるのは癖でもある。で、それで降りてからテーブルの上のカッターでロープを切断して終わり。ロープが若干勿体ないけど、また買えばいいからね。

 でもそろそろこれにも飽きてきたかも。何か新しい境地でも開拓すべきかな……?

 あー……いい感じに腕が痺れてきて痛くなって気持ちいい……でもそろそろやめないと手に青痣が残っちゃう。気持ちいい時間も終わりにしてそろそろ……

 

「しらべー。ちょっと聞きたい事があるんデ……」

 

 ……

 …………なにこのタイミング。コント?

 

「あ、あの……調? 一体何が……」

 

 ちょうど今、わたしは腕を下ろしている真っ最中だった。

 少なくとも今の切ちゃんには、わたしは何故か天井から垂れているロープに腕を縛られているという謎の状態になっているのがはっきり見えているだろうし、わたしは現在進行形で手を下ろしてロープを切断しようとしていたから、これが第三者の手によって行われたものではなくわたしが勝手にやって勝手に終わらせようとしているというのがはっきりと分かったと思う。

 まぁつまるところ。わたしが勝手に腕を吊って楽しんでいるドMだという事が切ちゃんにバレてしまった。がってむ。

 

「……そ、そのね。これには深いわけが」

「絶対浅いデス」

 

 うん。

 

「まさか調、自分で痛い事して気持ちよくなっちゃうような非常識な人に……」

「装者なんて非常識でなんぼでしょ」

「そうデスね」

 

 うん。

 

「だから今さらわたしが非常識になっても誰も困惑しないでしょ?」

「少なくともあたしが困惑するデス。というかしてるデス」

 

 うん。

 

「相槌打ちながらまた自分の腕を吊ろうとするの止めてもらっていいデスか?」

 

 やだ。

 

「あぁ……調がどこか遠い所に行っちゃったみたいデス……」

 

 むしろ今まで遠かったみんなに対してわたしが追いついたとも。あ、でも行ってる道全然違うから逆に遠くに行っちゃったのかな? とりあえず見られながら腕吊るのが案外気持ちよかったからもう一セット。なんだかお外で変態プレイする人の気持ち、ちょっとわかっちゃったような気がする。見られるのって案外いい。

 あ、でもそういう人って隠れてしているから、見られそうで見られないギリギリを楽しんでいるのかな? 自分の体を縛って、見られない様に走り回るのも……うん、いいかも。

 

「あーもう! いいからそのロープどうにかするデスよ!!」

 

 とか思ってたら業を煮やした切ちゃんがカッター片手にこっちに走ってきた。あ、ちょ、危ないよ!?

 でもここで抵抗して切ちゃんを傷つける訳にもいかない……けどこれを邪魔してほしくない。結果抵抗して、わたしは暴れるけど切ちゃんは全力でロープを切断して。

 

「きゃっ!?」

 

 結果、わたしの抵抗も空しくロープは切断されて、わたしはギリギリつま先が付くレベルで腕を吊っていたから、支えを無くしちゃって、上手く着地することもできず倒れちゃった。そして。

 

「うわわわ!!?」

 

 わたしの顔の真横をカッターが通り抜けて、その際に頬が傷ついたのか若干の熱と痛みが走る。

 そして切ちゃんはわたしの顔の横にカッターを突き刺した状態で何とかもう片方の手でバランスを取って、わたしを押し倒したような感じになる。

 切断したのは、わたしの両手の中間じゃなくて少し先の部分だったから、未だにわたしの両手は自由を取り戻していない。どうせこうなったんなら早くこの両手を縛るロープを解いてしまいたいんだけど、切ちゃんはわたしを押し倒したまま動かないし、ちょっと頬が赤くなっている。流石に見ながらじゃないと解けないから早く退いてほしいんだけど……

 

「……ちゅっ」

「ひゃあ!?」

 

 とか思ってたら切ちゃんがわたしの頬から流れる血を舐めて……えぇ!?

 な、なにするの切ちゃん!? 一体全体どうしたの!?

 

「いや、その……調の血を見てたらつい、美味しそうだなって……」

「お、美味しそう……?」

 

 ま、まさかの切ちゃん吸血鬼説……? いや、そんなことない。だって切ちゃんは普通に日の下を歩いてるし。

 でも、一体どうして……? 流石のわたしも血が美味しそうとかは思わない。さっき頬をカッターが通り抜けていった時の痛みと、今も続いている痛みは気持ちいいけど……

 

「ちなみに、どうだったの……?」

「美味しかったデス」

 

 お、美味しかったんだ。

 でも、とりあえずは今この状況をなんとかしよう? だから早く退いてくれると助かるんだけど。

 そう言ってみるけど切ちゃんは動いてくれない。それどころか、さっきからずっとわたしの頬を見ている。正確には、わたしの頬の傷を。

 ちょっと嫌な予感と同時にいい予感を感じながら時が経つのを待っていると、切ちゃんは顔を赤くしたまま顔を落としてきて、そのままわたしの傷あとを。

 

「ひゃん!?」

 

 また舐め始める。

 ううん、違う。舐める所の話じゃなくて、吸っている。わたしの傷から血を吸って飲んでいる。今まで感じたことのない感触に立つ鳥肌と、傷跡をダイレクトで舐められて、傷を舌で少し広げられて直接傷を舐められる痛み。それが重なって身を捩りながらも気持ちよさを感じるという、なんとも危ない状態になってしまう。

 でも、切ちゃんはそれでも止めず、結局わたしの傷から血が流れるのが終わってから顔をあげた。

 

「はぁ……ち、違うんデス。そんなつもりは……」

 

 多分、ロクに息継ぎをしていなかったからか息を切らして酸素を荒く求めながら切ちゃんは赤くした顔を隠そうとせずに弁明する。表情から見ても嘘は言っていない。言っていないけど、それでも切ちゃんはわたしを……正確にはわたしの血を求めている。

 わたしが痛みと共に外へと流す血を、切ちゃんは求めている。本人にそれを言っても首を横に振るんだろうけど、ただ切ちゃんはわたしの血を求めてしまっている。

 

「でも、そんな状態で大丈夫なの? 外でもしわたしが怪我したら……我慢できるの?」

「そ、れは……」

 

 わたしの予想だけど。

 多分、切ちゃんの鎌が頭のてっぺんに刺さったあの時に切ちゃんが飲んだ生唾の意味は、どうしてそれで生きているんだという驚愕じゃなくて、わたしの血を無意識下に求めてしまったから。そしてさっき、わたしの血を見て、耐え切れなくなった。

 どうしてかは分からない。でも、この程度で思わず飛びついてしまった切ちゃんが外で耐えられるなんて思えない。流石に外で血を夢中に吸う切ちゃんとか誰にも見せたくない。

 だからわたしは、ちょっと視線を落としてすぐに両手のロープを解いてから、未だに切ちゃんが握っているカッターを床から抜いて奪い取って、自分の指の上に刃を落とした。肉と皮を少しだけ削ぎ落すように。

 

「し、調!? いきなりなんでそんな……」

「ほら、舐めて?」

 

 わたしは包丁で何度か指を切った事がある。その経験の一つに、皮と肉をそぎ落とす感じで少しだけ指を抉るかのように傷をつけてしまったことがあった。まだ野菜の皮むきに慣れていなかったときの事だけど……その時の傷は、残っていない。だからこの傷も、舐めた後にしっかりと処置をしたら傷跡なんて残らないのは分かっている。

 手首でもよかった。けどわたしが病んでる云々かんぬんがあるからやらなかった。

 指を伝って手から床へ向かって流れていく血。それを見て切ちゃんはまた唾を飲んだ。

 そして、そっと。まるで割れ物を触るかのようにわたしの手を取って、そのまま流れる血を舐め始める。くすぐったさに声が出て、その度に切ちゃんの動きが止まるけど、すぐに切ちゃんは自制心を忘れた動物のように一心不乱にわたしの血を舐める。

 ゆっくりと。指から腕の方へ、肩の方へと伝っていく細い血の道を舐めていって、そしてそのまま指へ。未だに走る自傷の痛みは心地よくて。そしてすぐにやってきた、切ちゃんの舌が傷を舐める痛み。背筋をぞくぞくっと走っていく甘い快感はわたしの頭を駄目にしていく。

 やっぱり一人よりも二人がいい。

 わたし達二人は、どうしようもなく二人で一人の半人前なんだと。この痛みと快楽が教えてくれる。

 

「……しらべ」

 

 傷を舐めて、そしてまた血が流れだすまでの間に切ちゃんはわたしの名前を呟いた。

 

「切ちゃん、さっきはわたしが遠くに行ったみたいだって言ったよね」

「……いったデス」

「なら、今の切ちゃんは?」

「しらべと、同じところにいるみたいデス」

 

 そう、二人で一人。二人で一つ。

 だから、わたし達は離れられない。ちょっとギャグ的な感じから始まったわたしの自傷だけど。

 でも、それは必要な事だったんだ。切ちゃんが、わたしが傷を作る理由になってくれて、わたしが切ちゃんの舐める血を流す。二人で延々と回る快楽と享楽。一人じゃできなくても二人ならできる。一人じゃ満足できなくても二人なら満足できる。

 何日も飲んでいなかった水を求めるかのようにわたしの血を求める切ちゃんの顔を見て、わたしは笑う。痛みと快楽に身を浸しながら。切ちゃんは、わたしの血を甘美の毒だと分かりながらも舐めていく。

 それからわたしの日課は、腕を吊ることじゃなくて体のどこかに傷をつけて血を流し、それを切ちゃんに舐めてもらうという事に変わったのは言うまでもない。




おかしいなぁ。ギャグしていたのに気が付いたら共依存的な変態きりしらに変わっていたでござる。最後は適当にSMしてるきりしらで終わらせようかと思ってたのに……あれぇ?

あ、前回の投稿から今回までの間に行われた精錬マルチバトル対策ガチャてきな物で新XD調ちゃんを三十連で三枚入手しました。やったぜ。そしてセレクトガチャで超巨円投断の調ちゃんゲット。やったぜ。あと二十連分の石があればサンタかライダーがゲットできるのに……ぐぬぬぬぬ……っていうかユニゾンクリスちゃんが強すぎて笑えない。これ、ユニゾンズバババンとか出てきて環境ぶっ壊れるんじゃ……

実はこの話書く前に一つシリアスなお話を書いてたんですよ。セレナの時みたいにカルマノイズがF.I.Sにダイナミックお邪魔しますして壊滅した結果、調ちゃんだけ生き残った結果調ちゃんがやさぐれた平行世界に切ちゃんが行って、調ちゃんを助ける的な。でもここに投下するにはシリアスすぎるなぁと。

だからいつも通りの話を生み出そうと思い生まれたのがこの共依存変態世界線である。結局いつものに落ち着くのである。ヘキサクエスト開催してるの忘れててキャリアウーマン凸るの絶望的になったのである(10/29 0:50分現在)。ちゃんちゃん
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