前回はプラトニックだったのに今回は……あーもうめちゃくちゃだよ。
あー、先日はひどい目にあった。
まさかUFOの形をした聖遺物的なナニかにキャトられてケモ耳と尻尾を生やされて送り返されるとは。そんなん誰も予想していないって。あの後エルフナインがこう、神獣鏡的なナニかのビームを全員に照射してなんとか事なきを得たけど。
あの時は全員があのUFO撃墜する事しか考えてなかったし……まさかのエルフナインも風鳴司令もみんながみんな、まずは殴ってから落ち着かせて話し合おうっていう戦闘民族ムーブしてたんだから。
「っていうか今日も遅くなっちゃった……夜中に出歩くとまた何か起こりそうで嫌なんだけどなぁ……」
そう思って一度星空を見て気分を落ち着けようと思い、視線を真上に上げた。
すると、そこにあったのは空中で浮遊する謎の飛行物体で、そこからみょみょみょみょと音を立ててこっちへ発射される謎の光があった。
思考が一瞬中断されると同時にグッバイ地表をするわたしの両足。
うん、これは……
「またぁぁぁぁぁぁ!!?」
わたし、またキャトられるようです。あっ、意識が……がくっ。
****
気が付くと、そこは自宅前でした。
今回はメディカルルームじゃなくて思いっきり部屋のドアの前で切ちゃんと一緒に転がされていたから体が痛むし、思いっきり体が冷えて寒いし、ついでに全身くまなく冷えたからか若干お腹痛いし。
バッキバキの体を起こして伸びを一つすると、体からどえらい音が鳴る。うーん、寝袋もなしに野宿した次の日みたいな感じがする。さて、家の中に入る前にエルフナインに連絡しなきゃ。また体のどっかが改造されているかもしれないし。
携帯取り出しポパピプペ。デートしてくれますか? ……じゃなくって。
『ふぁいもひもひ……』
心の中でふざけていると、エルフナインがかなり眠そうな呂律の回っていない声で電話に出てくれた。もしかして寝てたのかな? そうすると思いっきり邪魔しちゃったって事になるし申し訳ない事をしたかも。
「あ、エルフナイン? もしかして寝てた?」
『いえ……またキャトられたので、解決法を徹夜で……ふああああ……』
サラッとエルフナインがキャトられたって言った。
つまりこれ、またわたしの身内を巻き込んだ変な話って事になるんだよね? とりあえずわたしもキャトられたから真っ先に連絡したとだけ告げると、エルフナインはやっぱり、とでも言いたげな声色で返事を返してきた。
うん、その……いつもお疲れ様。今度ご飯奢るから。
『んんっ……よしっ。それで調さん。キャトられてどこを改造されたか分かりますか?』
「あ、そこ確認してなかった」
電話の向こう側からエルフナインの若干色っぽい声が聞こえてすぐ、わたしは自分の体のどこを改造されたのかを確認に入った。
まず顔。特に変化なし。髪の毛も特に変わらず、体も……うん。ひんそーでちんちくりんなまま……ひんそーでちんちくりん……どうせなら豊胸でもしてくれればわたしは一切相手を恨まずお礼までするのに……
それで、足も特に問題なし。頭から猫耳が生えていることも腰から猫尻尾が生えていることもないから、特に何か変わっているという事も……あれ? じゃあわたし、ただキャトられてここに返されただけ? とりあえずそれを知らせないと。えっと、とりあえず家の鍵……かかってないね。とりあえず人差し指のドライバーを変にぶつけないようにドアを開けて……ん?
ちょっと待って。今なんかおかしかった。具体的には人差し指。
「……えっと」
右手の人差し指を見て、思わず震える。
前回はまだ日常生活に支障が出るとかはなかった。いや、外へ出るのが不便になっただけでそれ以外は特に何もなかった。なのにも関わらず、今回ばかりは日常生活に思いっきり支障が出そうな程になってた。
「み、右手の人差し指が、プラスドライバーになってる……!!?」
『あー……はい。まだ軽い方ではありますね』
……な、何故ここでプラスドライバー!!?
い、いや、待とう。落ち着いて落ち着いて。今エルフナインなんて言った? まだ軽い方? これが? 指一本潰されたこれがまだ軽い方?
じゃあエルフナインは一体……?
『ボクですか? ボクは……』
エルフナインは……?
『ボクは……!』
エルフナインは……!? あっ、急に画面が映像に……
……はっ!!?
『……ドライバーやってます』
エルフナインは、なんか巨大なドライバーになってた。
****
先に結論から言ってしまうと、わたしの症状……症状? は一番軽かった。他のみんなはある意味わたしよりもひどい状態になっているから、口が裂けてもわたしが一番ひどいなんて事は言えない。それぐらいにはわたし以外の全員……というか前回キャトられた組は酷かった。
まず、既に知っているだろうけど、わたしとエルフナインの症状には既に天と地ほどの差がある。わたしは右手人差し指がドライバーになっている。対してエルフナインは全身ドライバー……というか、ドライバーからエルフナインの顔と手と足が生えているとでも言った方がいいか……なんか新手の怪物みたいな事になっている。
で、わたしの次に症状が軽かったのは切ちゃんだった。
「あ、あたしの左手の親指が万能ドライバーに……」
切ちゃんの左手の親指は万能ドライバー化した。どんな感じかと言うと、切ちゃんの親指には穴みたいなのが空いていて、そこに市販品の万能ドライバーの先端がはめ込み可能……って感じかな。つまりわたしの細いプラスドライバーよりはまだ利便性がある。
とは言っても、親指を万能ドライバーにされた物だから切ちゃんの凹みようが凄い。多分、不便性で言えばわたし、切ちゃん、エルフナインがトップクラスじゃないかな? って感じ。
他のみんなはまだ表に出る事がそこまでないから、多分隠し通す事は可能だろうけど……悲惨性で言えばわたし達はまだ軽かった。特にヤバいのは響さん、未来さん、マリアの三人。あの三人はヤバイ。
その三人は後にするってことで、まずは翼さん。翼さんは……
「確かこんなキャラクターが居たな。ふんっ!」
両手を握ると、指と指の間から様々なドライバーがシャキン! と音を立てて飛び出すようになった。
多分、一番分かりやすいように言うならば、ウルヴァリン。それが今の翼さんを表すのなら一番だと思う。っていうかそれ暴発しないんですか?
「暴発はしないな。自分の意志一つで仕舞うのも出すのも自在だ」
「いいなぁ……わたしもそんな感じで格納式だったらよかったのに……」
「それは……まぁ、仕方ない」
そんな感じで、多分一番被害が少ない人だったりする。指の間から出てくるのはプラスドライバーにマイナスドライバーに六角ドライバーに……と、計六種類のドライバーが出てくる。それを見て響さんが思わずと言った感じで声をあげているけど……仕方ないと思う。
で、次は……クリス先輩かな。クリス先輩もある意味では被害が少ない……というか、唯一ドライバーが関係ない改造をされてしまった人だ。
「クリス先輩は……」
「こうやって指で銃の形を作るとグルーガンみたいに接着剤が出てくる。しかも無限に」
「便利だね、クリスちゃん」
「あ、あぁ……うん。お前に比べりゃな……」
両手がグルーガンになった。一人だけ本当にドライバー関係ない。
グルースティックがどうやら必要ないみたいで、まぁ便利っちゃ便利だし指で銃の形を作っても接着剤が出ないようにする事は可能みたいだけど、面白人間なのは変わりない。しかも勢いも調整できるみたいで、ある程度の距離が離れていても届くらしい。
ちなみに、無限に出てくるとは言ったけど、出している間は自分の中から何かが外へ出ていく感じがしてすっごい気色悪いらしいからあんまり使いたくないとか。
で、さっきからちょくちょく絡んできている響さんだけど、恐らくマリアと並んで一番きっつい。
全員で一旦集合して、どんな改造をされたか報告をしていた時。響さんはいきなり履いていたズボンとパンツを下ろしながら叫んだ。
「なんか、股間からT字ドライバー、しかも極太が生えました……ッ!!」
つまる所……まぁ、うん。肌色に塗られた明らかに男性のソレとしか見えない感じのT字ドライバーが響さんの股間から生えていました。
思わずわたし達全員が顔を真っ赤にしたけどすぐに哀れみの視線を響さんに向けた。なんせ、股間からT字ドライバー。下ネタ以外の何物でもない。
「これ、わたしって女の子なのか男の子なのか分からなくなってくるよ……!!」
「しっかりしろ立花! お前がどれだけイケメンで一級フラグ建築士だとしても女だろう! 気を確かに持て!! 股間から生えているのはあくまでもドライバーだ!!」
「響のドライバーでわたしの……閃いた」
「通報した」
「どうしてよクリスっ!!」
「残当だボケ」
うん、これに関しては残念ながら当然だと思います。
実は被害報告会場に風鳴指令、緒川さん、藤高さんを始めとした男性職員が出禁になっていたんだけど、その理由が初めてここで分かったのでした。
まぁ、響さんに付いちゃ色んな意味でいけない物が付いたのが発覚した所で次は未来さんなんだけど……
「わたしも股間にT字のラチェットドライバーがね」
「こっちは着脱可能か」
「キャトったやつは何考えて股間にラチェットドライバー付けたんだよ……」
未来さんは持ち手がT字のラチェットドライバーがくっついていた。まぁ、切ちゃんの万能ドライバーと似たような物だね。それの持ち手がT字になったバージョン。
お二人そろって仲がいいと言えばいいのか何といえばいいのか。全員が微妙な気持ちというか思わず溜め息を吐きたくなった。これをやった下手人に対して呆れかえってもう何も言えないというね。
で、ラスト。マリアなんだけど……マリアで、まぁ酷い。というか一番コメントに困った。
「私は……ご覧の有様よ」
そう言ってマリアは徐に服を脱ぐと、ブラを取ってそのたわわな果実を晒した。みんなが一瞬顔を赤くしたけど、すぐにマリアの胸にある物を見て困惑した。
「え、えっと……ま、マリア? それは……」
思わず翼さんが声を上げた。正直、響さんと並ぶレベルでコメントに困る物がマリアの胸には付いて……植え付けられて? いる。
「見れば分かるでしょ」
「いや、見ればって……」
分かるけども。分かるけども、なんというか。
「そうよ! 乳首が六角ドライバーになったのよクソッタレェッ!!」
そんな空気を察してかマリアがやけっぱちになって叫んだ。
そう、マリアの両胸にある乳首が、六角ドライバーに似た何かに変わっていた。正直、響さんなら普段がイケメンで男だったら絶対にラノベ主人公とか言われているから笑い話にできたけど、マリアの場合はちょっと……あんまり大声で笑えないというか。ほんとコメントに困る有様と言いますか。
存在そのものがギャグになったエルフナインと、なんか微妙なわたしと切ちゃん、ウルヴァリン翼さんに唯一ドライバーじゃないクリス先輩。そして下の響さん、未来さん、マリア。もうカオス以外の何物でもないよね。
まぁそんな感じで被害報告会場がお通夜状態になってから暫くしてマリアが涙目で叫んだ。
「エルフナイン! もう被害報告は終わったのだからとっとと戻してちょうだい! 前みたいに神獣鏡的なビームで治る筈でしょう!?」
顔を赤くしながら涙目のマリア。やっぱ乳首が六角ドライバーってパワーワードすぎるし何より色々と女として複雑だよね。わたしもこれじゃあ日常生活が不便だしとっとと治してほしいんだけど……
「それが、治らなかったんです」
「は?」
エルフナインの言葉にマリアが思わず聞き返した。
そしてその言葉の意味を理解した人たちから顔を真っ青にしていった。正直、ここで被害報告をしてからエルフナインに治してもらって、キャトった奴許さないで報復を仕掛ける気満々だったわたし達はその言葉を聞いて顔を青くするしかなかった。
かくいうわたしは、すぐに治されなかった時点でちょっとは察していたから顔に手を当てる程度で済んだけど……正直、ショック。
「恐らくこれは聖遺物由来の人体改造ではありません。というかそもそもドライバーが関連する神話や聖遺物なんて存在するわけがありませんし」
「ちょ、ちょっと待ってよエルフナインちゃん! それって……つまり」
「響さんの想像通り……元凶を探して叩いてとっちめない限り、ボク達の体は死ぬまでこのままです……ッ!!」
あはは……
なんとなく予想はしていたとはいえ……どうすりゃいいの、これ……
「っていうかちょっと待てよ! 聖遺物由来じゃないって事はこの件はどう説明するつもりだ!? まさかマジで宇宙人が来たとか言うんじゃないだろうな!?」
悲観に暮れていると、クリス先輩が急に叫んだ。
そうだ、大体こういう状況下で物事が停滞しないように口を開いてくれるのはクリス先輩だった。そんなクリス先輩の言葉だけど、確かに相手が聖遺物由来の改造をしてこないっていう事は、相手は人間の体を鉄や鋼同等の硬度に変えて固定する技術や、ウルヴァリンみたいな事にする技術、指先から銃口もないのに接着剤が出るグルーガン人間に変える技術があるという事になる。
そんなの、聖遺物でしかありえない。わたし達がもしかしてと思い込んでいることを除けば。
「そのまさかです。こちらに映像をご用意しました」
と言ってエルフナインは手元のリモコンを操作してモニターに映像を映した。
どうやら衛星からの映像のようで、空には色んな星と地球が少しだけ映っている。急にそんな映像を見せてどうしたのかと聞こうとしたけど……次の瞬間、なんか銀色の円盤みたいなものが衛星の真横を横切ってそのまま地球へと落下していった。
思わず全員で映像から顔を逸らして見合わせてしまう。
響さんがマジっすか? と小さく呟いている。
「これが、最初の被害者である調さんがキャトられる数分前の映像です。そこから一時間以内にボク達全員がキャトられて自宅、もしくは本部前に戻されています」
「……つ、つまり?」
「SONGではこの謎の未確認飛行物体、ないしそれを操縦する者を天人と命名し、現在その行方を……」
サラサラっと事実だけを無表情で説明するエルフナインに思わずマリアが口を挟んだ。
「待て待て待て待て待ちなさいッ!! つまりエルフナイン! あなたはあれを、あの物体を、本当に宇宙人のUFOと断定するわけなの!!?」
その言葉にわたし達全員が頷いた。
だって、UFOなんて聖遺物以上にあり得ない存在がこの地球にやってきて、しかも何でか装者とその関係者を狙って拉致して変な改造施して家に帰すなんておかしいにも程がある。
だからどうせ前回のアレみたいに馬鹿な人がなんか勝手に大回転して迷惑かけているだけだと思うんだけど……マリアの言葉を聞いたエルフナインが無表情だった顔を崩して泣きそうなのか怒っているのか、それとも両方なのか分からない表情で声を荒げた。
「だってそうじゃないと説明できないじゃないですか!! ボクだって昨日目が覚めてからこの映像が合成じゃないかとかUFO型聖遺物が作られた痕跡とかこの改造がどうやって成されてのか調べ尽くして結局何の成果も得られなかったんですよ!!? 世界各国に交渉とハッキング仕掛けて秘密裏に処理された真っ黒な文章にまで目を通して、人間の体の一部をドライバーに変えるっていう謎技術を真顔で探し続けて、結果何一つそんな馬鹿らしい情報はどこにも載ってなかったんですよ!!? っていうかキャロルから貰ったこの体をこんなにされて結構精神的にキツイ中でこんな冗談ぶちかませるほどボクは精神的に余裕を持ったホムンクルスじゃないですからね!!?」
叫び終えたエルフナインは息を荒げながら近くに置いてあったエナジードリンクを思いっきり煽った。
思わずマリアが目を逸らして謝る程の剣幕で叫んだエルフナインだけど、確かにエルフナインだって被害者なんだし、キャロルから貰った大事な体に変な改造をされてるんだから真っ当な精神状態でいる方があり得ないよね……うん。
世にも珍しい……というか、今まで一度たりとも起こらなかったエルフナインのマジギレにわたし達は一歩退いていた。普段大人しい人がキレると怖いって、本当なんだね……わたし達、案外キレやすい人で構成されてるから知らなかった……
「はぁ……はぁ……すみません、迷惑をかけました」
「い、いいのよ……エルフナインも頑張ってるものね。少し無遠慮だったわ……」
「そ、そんな事は。ボクが皆さんの事を考えず事実だけを口にしてしまったから……」
そして始まるマリアとエルフナインの謝罪合戦をわたし達で何とか止めて、改めてエルフナインからの説明を聞くことにした。
確か、あれは本当のUFOだと現状は断定して、宇宙人は天人と命名したんだっけ。
「えぇ、まぁ。ボクも馬鹿らしいとは思うんですけど、上層部の決定ですから。それで、現在は天人を衛星から捜索中です。今回の件も、もしボク達みたいな人間じゃなくて一般市民に起こってしまえば混乱は避けられません」
エルフナインが本気で疲れた様子でぼそぼそと丁寧に説明してくれた。
確かに、混乱が起こる前に片付けないとまずいけど……作戦とかはもう決まっているのかな?
「前回と同じく、発見し次第こちらからアプローチを仕掛けます。ただ、今回は天人が相手という事で、あんまり乱暴な手には出られません」
「どうしてだ? 別に撃ち落としゃいいだろ」
「少なくとも相手は人間の体を自由に改造して、恐らく恒星間飛行のできる小型円盤を生産できてしまう程の科学力を持っている相手です。もし敵対した場合、皆さんの命が危険となる可能性が高いんです」
あ、そうか……確かに前回は前情報を得ている状態で、相手も聖遺物だからこちらも聖遺物で対抗できると踏んでの戦いだったけど、今回の相手はこちらの科学力を純粋に超えてきている上に、もしかしたらシンフォギアを纏った装者を一撃で倒せてしまうような兵器を持っている可能性もあるんだ。もしかしたら言語が通じない可能性もあるし。
だからまずは穏便に……っていうことなのかな?
「じゃああたし達はUFOに対して交渉をするという事で大丈夫デスか?」
「そうですね。最初はこちらから通信を飛ばすか、自衛隊の戦闘機で直接相手にアプローチを仕掛けます。それで交渉してくれるならいいんですけど、そうでなければ皆さんに直接UFOに乗り込んでもらいます」
なるほど、つまりは戦闘民族式交渉術だね。
「まぁそうなります。先ほどのクリスさんの問いへの答えと正反対の事をしてもらうことにはなりますが……」
まぁ、言葉が通じないなら肉体言語で分かってもらうしかないからね。仕方ないね。多分肉体言語なら宇宙人相手でも会話ができるはず。でも、あんまり乱暴な手は使いたくないかも。だってそれで前回色々とあったわけだし……
でも、それしか無いというのならわたし達は頷く。多少強引な手を使うのもいつもの事だしね。
「できうる限りすぐさま解決にこぎつけたいわね。私の乳首をとっとと元に戻させないと……!」
「わたしもちゃんとした女の子に戻してもらいたいです……」
そして解散の直前、ボソッと呟いたマリアと響さんの声には哀愁が漂っていた。
****
結論から言うと、UFOは次の日に見つかった。どうやら日本のとある山奥にカモフラージュされていた状態で着地していたらしく、翌日になって急に浮いて地上からギリギリ見えない程度の高度まで上がると、そのままそこで滞空しているらしい。
その間に日本政府や他国の政府が様々な方法で通信をしようと企んだけど、結果的に言えばそれは失敗。相手が出ていないのか、それともこちらからの通信を受け取る設備が存在していないのか。それは分からないけど、少なくとも会話でどうにかするという方法は限りなく不可能に近い状態になってしまったと言える。だからこそ、わたし達はすぐさま召集された。このままUFOを放っておき、また何か変な事をされる可能性を残しておくよりも戦闘民族式交渉術をわたし達にしてもらうのが手っ取り早く問題解決ができると踏んだんだと思う。
「一応、相手がしっかりとした言語を使って会話に応じても言語が分からないから会話できない、という事態は避けるためにこちらの方で翻訳機……という名の聖遺物の欠片を取りよせました。使えないという可能性は十分にありますが、無いよりはマシなので」
で、会話に関してだけど、もし相手が不法侵入したわたし達に対して言葉を投げかけてきた場合、対応できるようにエルフナインが相手の言葉を翻訳し、こちらの言葉を翻訳できるという聖遺物の欠片を取り寄せてくれた。ほんっと、聖遺物って何でもありだよね……
まぁ、そんな事はさて置いて、わたし達は相手を逃がさないために一刻も早くUFOに取り付くため、急いでミサイルに搭乗した。もうミサイルに搭乗っていう言葉を違和感なく使えている時点で結構アレだなぁ……とは思ったけど、まぁ速いからね。それにどこへでも行けるし。
『それでは皆さん。気を付けてなんとか説得をお願いします。前回みたいなことはくれぐれも……くれっぐれも!! ないようにしてください!! 本当にお願いします!!』
『あ、あはは……こんな必死なエルフナインちゃんの声、初めて聴いたかも……』
だけど、それはみんな同じだ。
わたしだって人差し指がプラスドライバーの面白人間なんてごめんだし、他のみんなも体の一部がドライバーになったり、卑猥な所にドライバーが付いていたりなんていうのは真っ平ごめん。だから多少荒い手を使ってでも絶対に元の体に戻って見せる。
『それではご武運を。発射!』
エルフナインの声と同時にミサイルが細かく振動してそのまま空へ向かって射出される。うーん、この感覚、何度やっても慣れないかも……
暫く待っていると予測高度へと到着したのか、自動的に外壁がパージされてわたし達が空中に飛び出す。今回はミサイルで相手を追うんじゃなくて、みんなで同時にUFOへ向かってダイナミックエントリーするから、ここでミサイルとはお別れ。
「みんな、各々で飛んで突撃よ!!」
マリアの声に従ってみんなが飛行のために体勢を整える。響さんは両手のバンカーを展開し、翼さんは蒼ノ一閃用の刀をブースターに、両足の刀で細かい姿勢を制御して、クリス先輩は空中で展開したミサイルに取っ手を付けてしがみついて、切ちゃんは肩のブースターで一気に加速。マリアはSERE✝NADEで空中で一気に加速。わたしは双月カルマでゆっくりと優雅に飛行。
そしてまず最初に響さんと切ちゃんが思いっきりUFOに突っ込んだ。
「だっしゃああああああああ!!」
「あたしの親指返せデスぅぅぅぅぅぅ!!」
突っ込んでいった二人はそのままの勢いで壁を殴り抜いてUFO内部に侵入した。なんて脳筋……
でも、二人が壁を殴り抜いてくれたからこちらも安心してUFOの中に侵入できる。ミサイルから手を離したクリス先輩、翼さん、マリア、わたしの順で続々とUFOの中に雪崩れ込むと、既に二人の宇宙人らしき存在の胸倉を思いっきり響さんが掴んでいた。
あ、これ響さんも結構キレてるやつだ……普通あの人が胸倉を掴むなんてまず無いよ?
「お、お前らなんなんだよいきなりぃ! マナーってもんしらねぇのかぁ!?」
で、肝心の宇宙人なんだけど……なにこれ。
なんかね、その……黄色い全身タイツ着たオッサン二人なんだよね。いや、ホント、そうとしか言えないんだってば。一応わたしはこう、タコ的なえいりあんを想像していたんだけど、これが宇宙人……? いや、なんかこう拍子抜けと言うか何というか……こいつら程度ならギアが無くてもどうにかなるような。
おっと。そんな事言って話を先送りにしている場合じゃない。とっとと交渉に入らないと。
「あの、わたし達の――」
「私の乳首返しなさい!! 今すぐに!!」
「ついでにわたしの股間のち〇こみたいに生えてるドライバー外せェッ!!」
響さん! 思いっきり叫んでる!! 誰もが年頃の少女だからって言わなかった単語思いっきり叫んでる!!
「あ? お前ら何言ってんの?」
「ほらあれっすよ。一昨日辺りにドライバー見つからないから適当にキャトってきたやつら。多分あれっすよ」
「え? あー……あー! あったなぁんな事。ゲーム機分解用のドライバーがねぇから適当にキャトったやつを改造したんだった」
え? ゲーム機……え?
いやいや、ちょっと待ってどういう事と言おうとしたけど、無言でクリス先輩がわたしの肩を叩いてどこかを指さした。そっちを見ると、確かにそこには山のように積まれたゲームと、恐らく分解してもうこれ以上どうにもならなくなったんであろうゲーム機の残骸が……
えぇ……なんでぇ……
「いいから戻しなさい!! 私の乳首を!!」
「わたしのち〇こも外せェ!!」
あーもう二人とも黙って!! 特に響さんは落ち着いて!!
「これのせいで昨日未来に襲われたんだよ!!? どうせ外すんなら一度は使ってみないととか言って襲われたんだよ!!? もう二度とごめんだよそういう事はッ!! っていうかドライバーなのにどうやってそういうコトに使うのさ!!? 痛いだけだよ!!」
……あ、はい。ごめんなさい。
「っていうか急に殴りこんできておいて要望聞けとか君たち何なん? 蛮族なん?」
「人を拉致って改造しておいてよく言えたなこいつら」
クリス先輩の冷静なツッコミ。確かその通りです。確かにわたし達のやってる事は蛮族臭いけど、こちらからは最大限の通信をしたんだし、こちらなりの譲歩は思いっきりした。それでも自分たちのマナーに合わせろって言うんならそっちから合わせるのが普通でしょ。だってそっちが勝手に来たんだからさ。
っていうか何この自分たちは悪くないとでも言いたげな態度。クリス先輩もだけど、ここに居る全員が若干キレかけてるの分かってるのかな。
そろそろわたしも電鋸で脅すよ?
「いやだってここの星に来た時は適当な生物拉致って改造すんのがマナーって聞いたし」
「んなマナーあってたまるかボケ共ッ!! それで満足してたら被害者一同がこうして突撃お前の宇宙船してねぇんだよ!!」
そもそもそんなマナーあるわけがないよ。こう、スーパーパワーを手に入れたとかじゃなくて体をドライバーに変えられただけで喜ぶ生命体いないでしょ。
「あーもうこいつらの容姿と言い話してるだけで頭痛くなってくるわ……」
「とにかく、私達と地上に居る私達の仲間の体を元に戻してもらおう」
「じゃないと死神の鎌がそっと首を撫でる事になるデスよ」
「切ちゃん、それじゃあ前回と変わらないどころかもっとバイオレンスになってるから」
わたしも電鋸で切り刻みたいのは山々だけど、そもそもわたし達だけじゃもうどうしようもないからこうして相手尾本拠地に乗り込んで体を直せと言っているわけで。それを殺しちゃったらどうにもならないじゃん。
でもどうしてか、この宇宙人たちはさっきからへらへらしたままで治すと言わない。いいから治さないと、そこのガチギレしてるガングニール姉妹がマジで手を上げ始めるよ。
「えー、めんどくせぇんだけどぉ」
「立花響。一度ぶん殴った方がよさそうよ」
「そうですね。わたしの拳はぶん殴ることしかできませんから今回も不可抗力ですよね」
「お、お前ら人殺す気かよ!? あんな威力のパンチ受けたら死んじまうぞ!?」
「一人が塵も残さず消えてももう一人が何とかするわよね?」
「そのもう一人も殴って言うコト聞かせれば何も問題はないよね?」
あー、だめだこれ。この二人もう沸点が限界に近い。
でもそれだけキレるのも仕方ないけどさぁ。仕方ないけどもうちょっと落ち着こうよ。逆にわたしと翼さんとクリス先輩は落ち着き始めてるよ。
とにかく、わたし達三人で響さんとマリアを引きはがしてからわたしのヨーヨーで一度拘束する。多分二人が全力を出したらすぐに解除される拘束だから、翼さんの影縫いで更にその上から拘束して一度二人を落ち着かせる。じゃないとこの二人、交渉以前に本気であの宇宙人を一人間引きそうだし。
「っつーかさぁ。人に物事頼むんならもうちょっと誠意を込めんのが普通じゃねぇの?」
「こんな事されて言う事を聞く宇宙人なんていないっすよ」
「……なぁ、アタシも本気で一人に自由落下の旅をプレゼントした方がいい気がしてきたんだけど」
「落ち着け。こうやって人の神経逆撫でするのがこいつらの常套手段やも知れぬ」
だけど、この人たち自分が悪い事したって自覚が無いみたい。
……腕の一本や二本を落とす『改造手術』をしてあげれば自分たちのやらかしたことの重大さに気が付いたりしないかなぁ? そうだよね、わたしが指一本改造されたんだからこのオッサンの右手人差し指を一本改造手術してあげるのが一番いいよね。だって相手が最初にやってきたんだから同じような事される覚悟、あるんでしょ?
「月読、落ち着け。殺人鬼の顔をしている」
だって翼さん。こいつらには自分の罪の重さを自覚させた方がいいですって。それかもうホントに宇宙船叩き落して地上でエルフナインにこのアホ共の技術を吸収してもらった方がまだ早いと思うんですよ。
「いいから落ち着けと言いたいが、確かに一度この宇宙船を下ろした方がいいかもしれんな。叔父様や緒川さんに交渉させれば多少は物事もいい方に向くかもしれぬ」
「は? なんで船を下ろさなきゃなんねぇんだよ」
「やっぱ指一本……」
「いいから落ち着け月読!!」
さっきからほんっとうに腹立つ!! 本気で指一本どころか腕一本落とすよ!? シュルシャガナなら最大限に痛みを与えつつ人体を切断するっていう拷問すら簡単にできるんだからね!? 分からず屋にはいい
「そんなに下ろしたいんなら勝手におろしゃいいんじゃねえの? まぁ、俺達以外の手でこの宇宙船を止めたいんならあのメインブレインを破壊するしかねぇけどな」
と言って宇宙人の一体が指さしたのは、壁の一部かと思っていた巨大な機会だった。
その中心にはちょっと変わった六角ドライバーの形の溝が作られていて、恐らくあそこにドライバーを突っ込んで回転させることによってメインブレインっていうのを破壊できるんだろうけど……
「最も、あのドライバーは特殊な上に一昨日無くしちまったからなぁ。無理だと思うけどやってみりゃ……」
「へぇ……まさかこんな所にそんな物があるなんてねぇ……」
もうこうなったらこの宇宙人共を拉致ってこの宇宙船を吹き飛ばしてしまおうか、と四人で顔を見合わせた時だった。マリアがいつの間にかわたしのヨーヨーの拘束から抜け出して立ち上がっていた。
だけどマリアは不思議な事にギアを纏っていない。流石に素手じゃあれを破壊する事なんてできないと言おうとしたけど、誰かが声を出す前にマリアは自分の服に手をかけてそのまま脱いだ。そして現れるマリアの胸に引っ付いた六角ドライバー……に似たドライバー。
そう。六角ドライバーに似たドライバー。みんな六角ドライバーって言ってるけど、あれは正確には六角ドライバーじゃない。六角ドライバーに似た何かだって、わたしは最初に言った。
そしてその六角ドライバーに似た何かは……
「な、なにぃ!? お、おまっ、そのドライバーをどこで!!?」
「お前らの自業自得よ、変態全身タイツ宇宙人! これでゲームセット、お前らに罪の意識を植え付けてあげるわ!!」
駆けだすマリアとそれを止めようとする宇宙人。その宇宙人を翼さんが影縫いで拘束し、その間隙をマリアが走り抜ける。
「パイルダー・オンッ!!」
マリアの気合の入った声と共にマリアのドライバーがメインブレインにハマる。なんていうか……絵面が酷い……
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
胸を機械に接触させたまま回転するとか言う、なんとも言えない光景を生み出すマリアだけど……ふと何かが気になったのか切ちゃんが声を上げた。
「あの、一ついいデスか?」
「あ?」
切ちゃんの鎌を付きつけながらの質問に宇宙人は声を返す。
「さっきメインブレインを破壊って言ったデスよね?」
「そうだが?」
「この船を下ろすにはあれを破壊するか止めるしか無いんデスよね?」
「そう言ってんだろ」
「あれを破壊したらどうなるんデス? 普通に落ちるだけデスか?」
「んなモン爆発するに決まってんだろ。あれはこの宇宙船の全システムを統括してんだぞ? それが破壊されたらどこかもかしくも爆発してぶっ飛ぶわボケ」
…………え?
「……な、なぁ。あれ止めねぇとマズいんじゃねぇの? なんか宇宙船揺れ始めたし……」
「ま、マリア!! 一旦落ち着け!! このままじゃこの宇宙船が爆発する!!」
「おおおおおおおおおおおあああああああばばばばばばばばばばばば!!」
「おい前回もこんなオチだったろ!!? こんなんでいいのかよこれ!!」
「いいワケが無かろうが!! おいマリア、本当に止めろ!! このままじゃ宇宙船が爆発して体どころの騒ぎじゃなくなる!! おい、マリ――」
その瞬間、床に亀裂が走ったと思うと同時にそこから光があふれ出し、視界が真っ白に染まった。
こ、こんなの……こんなの!!
「爆発オチなんてサイテー!!」
あっ、なんか光が溢れて――
****
「……結局、ボク達の体は……?」
恐らく宇宙船であろう物が起こした爆発を見上げながら、ボクは呟くのでした。
……これ、どうしましょう。
乳首が六角ドライバーに似た何かにたやマ、生えても問題ないかもしれない物に似たドライバーが生えてしまったビッキー、着脱可能な393。改めて見るとひっでぇ……
世界線的には前回のキャトられ時空からの続きと思ってもらっても構いませんし、そこから派生した世界の一つとして考えてもらっても構いません。多分この続きというかキャトられ時空の続きはもうありませんし。
そしてなんかまたビッキーのフィギュア化が決定してましたね。そろそろ調ちゃんも初のフィギュア化をですね……
あとプレラーティが十連三回目でやっとこさ出ました。初錬金術師な上に巧属性は層が薄かったのでちょっと嬉しかったり。あの人元オッサンなのに覚醒後のイラストのお尻がエロい……落ち着けあれは元オッサンだと言い聞かせてもやっぱり性癖には勝てなかったよ。
あ、ヘキサマリアは無事完凸しました。現在上限突破のための素材集め中ですが、技属性に完凸星五なんて当たり前のように居ないので体属性マルチHARD辛すぎる……
次回は未定です。ネタが特に無ければ声優時空やアイドル時空等の不定期連載系時空を書くと思います。でわでわ。