月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

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声優デビューの続き。多分声優時空はこれにて終わり。

シンフォギアライブ、当たるといいなぁ……


月読調の華麗なるリベンジ

 わたしは楽屋の中で何度も深呼吸を繰り返す。

 服装は何時もの私服ではなく、わたしが声を当てているうたずきんの変身後の衣装をアレンジしたステージ衣装。そして勿論顔は見られないように仮面をしている。多分わたしの事を知っている人が見れば普通に分かるかちょっと迷った挙句分かるか、程度の物だけど赤の他人が見たらわたしの素顔をその後に見てもわたしの正体が分かる事はない。ついでに髪型も何時ものツインテールじゃなくうたずきんの髪型。だから、きっと知り合いに見つかっても誤魔化しきれる、とは思う。一部のスタッフさんとかメイクしてくれた人には素顔バレちゃってるけど。

 え? どうしてわたしがこんな事しているのかって? それはまぁ、実際に見たほうが早いとは思うけど。わたしはもう何度目か分からない深呼吸を終えてから楽屋内の時計を確認する。もうすぐ、もうすぐだ。

 

「大丈夫ですよ、調さん。今日まで頑張ってきたじゃないですか」

「緒川さん……でも」

「案外上手く出来る物ですよ、こういうのは」

 

 同じ楽屋でわたしを何だか暖かい視線で見ていた緒川さん。今日は翼さんの仕事が無いのでわたしの送迎をしてくれた。折角の休みだったのに申し訳なかったけど、緒川さんは気にしないでください。って言いながらニコニコしていた。何だか娘を送迎する親みたいな顔していたけど、緒川さんの内心は余りわからない。

 緒川さんの励ましを受け取ってまた一度深呼吸をして胸の高鳴りを抑える。既に部屋の外からは溢れる程の歓声が響き渡っている。それがわたしの緊張を加速させるが同時に楽しみを増やしてくれる。

 今日のわたしは完全なサプライズゲスト。普段顔出しNGなので色んなイベントにも録音した声だけの出演だったりするわたしが初めて舞台に……ライブに立つ日。そのために今日まで何度も練習を繰り返してきた。振り付けも、ステップも、全部完璧だと緒川さんに言われるまで頑張った。時々翼さんも見てくれたけど、翼さんも問題ないって太鼓判を押してくれた。何でわたしが振り付けの練習しているのかは最後まで分かっていなかったみたいだけど。

 最後に目元とその少し下を隠してくれる仮面がズレていないかを確認して水を一口。うん。大丈夫。コンディションは完璧。少しだけ声も出して調子を収録時に近いものにする。歌って動くのは、慣れている。なんならヨーヨーしながらだって出来る。だから、大丈夫。装者としての経験も活きている。

 

「月詠さん、スタンバイお願いします」

「あ、はい!」

 

 スタッフさんの声に答えてわたしは立ち上がる。

 衣装が最後に崩れていないか、メイクも大丈夫か。仮面も激しく動いてもズレることはないかを確認して、楽屋から出る。

 

「頑張って、楽しんできてください」

「はい。全力で、楽しんできます」

 

 緒川さんの言葉に笑顔で返して楽屋を出る。そしてスタッフさんの誘導に従っていると途中でカメラがこっちを見ていた。あれは確か……そうだ。このライブのDVDとBDが出たときに付ける特典に裏での出来事とかを収録するんだっけ。で、これは確かわたしの意気込み的なものを言うやつ。

 カメラの裏でカンペも出てる。意気込みをどうぞって。

 

「ファンの皆さんを驚かせてきます」

 

 そう告げてから手を振ってスタッフさんの後を小走りで付いていく。

 連れていかれたのはステージの真下。多分ファンの人たちはわたしが来ないのは想定済みなのでこれは相当ビックリすると思う。

 どうして顔出しNGのわたしがこうしてステージに立つのを決めたのか。それは、マリアと翼さんへの憧れが少しあったから。あの二人はステージの上でとても楽しく歌っている。だから、わたしもそういう機会はあるのだしやってみたい。そう思い、何度目かのライブにこうしてお邪魔させてもらうことになった。最初は裏で実際に歌い姿は見せない予定だったけど、それをわたしは拒んで仮面で顔を隠した状態で実際にステージの上に立つ事にした。

 そして、それが今、現実になろうとしている。

 大丈夫。リハーサルも完ぺきだった。わたしはイントロが流れたらステージの下で歌いながら実際にステージの上に打ち上げられるのを待ち、イントロが終わった後の間奏が入った所で打ち上げられ、着地。そのまま客席のテンションを上げてから歌い始める。

 

「それでは次の曲になります!!」

 

 来た。これが合図。わたしは既に手渡されていたマイクを手にし、電源が入っているのを確認してからしゃがみ、打ち上げられる衝撃に備える。

 

「次の曲は、なんとこちら!!」

 

 その瞬間。イントロが流れ始める。

 それと同時に既に立っていた声優さんが横へと走り去り、わたしは歌い始める。

 流れるわたしの声に観客席の戸惑いの声が響いてくる。そして最初の部分を歌い終わり間奏が入った瞬間。スタッフさんの合図と共にわたしの視界が一気に動き、気が付けばわたしの体は空中にあった。

 けど、それも慣れた物。すぐに着地して間奏が流れている間に頭の中で決めていた言葉を口にする。

 

「どうも初めまして! うたずきん役の月詠了子です! まだまだライブは続きます、盛り上がっていきましょう!!」

 

 わたしの声と挨拶。それに気が付いた観客の人たちは一気にテンションがマックスに。音取り用のイヤホンからしっかりと音を聞き、イヤホンを付けていない方の耳で観客の人達のコールを聞く。

 すごく楽しい。わたしは自分の顔が自然と笑顔になっていくのを自覚しながら歌を歌っていく。

 出てみて良かった……!!

 

 

****

 

 

 わたしはあの後、二曲程ソロ曲を歌わせてもらい、最後に全体曲にも混ぜてもらった。

 そしてライブの後は打ち上げとかにも誘ってもらったので行き、ライブの感想を、楽しかったという感想を暴露させてもらった。わたしがやっている声優としてのツイッターにも同じような事を書くと、ファンの人達の感想や驚きが返ってきた。どうも一時期トレンドにも上がっていたようでファンの人達からすると相当ビックリする事だったらしい。

 ドッキリを成功させたような気分でちょっと楽しい。やっぱり顔出しNGだから殆どの人がわたしの参加を諦めていたみたい。わたしの声って今までライブ会場だと最初の諸注意とか位だったしね。実はあの時わたしが直で諸注意とか言ってみたんだけど、その時にもしかしたらって思った人は結構居たみたい。仮面着用は予想外だったらしいけど。

 

「調、何だか最近楽しそうデスね」

「ん? そうかな?」

 

 で、それでわたしは最近結構ご機嫌だったんだけど切ちゃんを初めとしたわたしと関わりが深い人達には大体バレた。理由までは分からない、というか分かられたら色々と困るけど、わたしはこういう時の言い訳としてとある事を口にしている。

 

「もうすぐ学園祭だからじゃないかな?」

 

 そう、リディアンはもうすぐ学園祭。既にわたし達の制服は冬服。パヴァリア光明結社の一件も既に終わっている。あの時は学業と声優と装者の三枚挟みになって結構辛かった。バルベルデに行った時も実はわたし、一回だけ声優のお仕事があったから帰国していたし……

 でも、今は装者として動くときなんて災害が起こったとき位だし学業も順調……順調…………じゅ、順調だから特に問題ない。声優の方は勿論大成功。最近お小遣い増えてるから嬉しい。

 

「そ、そうデス……今年こそはクリス先輩にリベンジデス!」

「そうだね。去年は判定が出る前に出て行っちゃったから」

 

 そういえばクリス先輩、この間響さんの友達に連れていかれてカラオケでうたずきんの主題歌を歌ったとか。しかも結構ノリノリで。

 も、もしかして見てるのかな? 案外あの時のライブに居たりして……バレてない、よね?

 

「なぁに言ってんだこいつら。あたしがそう簡単に負けると思うか?」

「うっほぉ!? く、クリス先輩いつの間に!!」

「今さっきだ」

 

 とか思っていたらクリス先輩がいつの間にか後ろに立っていた。それと切ちゃんのその声は女の子としてどうなんだろう。

 でも、クリス先輩の言葉に満ちている自信は本物だ。わたし達には負けないって気持ちが籠っている。確かにクリス先輩はそんじょそこらのプロなんかよりも格段にレベルが上の歌唱力を持っている……けど、わたしだって声をお仕事にしているプロ。今どきの声優だから歌は何曲も歌っている。

 そんなプライドもあるから、負けない。絶対に。

 

「絶対に負けません」

「お? 言ったな」

 

 クリス先輩は笑顔でわたしの宣言を受け止める。そして暫くしてからじーっとわたしの顔を見てきた。

 な、何だろう……

 

「……いや、気のせいか。何でもねぇ」

 

 あ、これ明らかにクリス先輩がわたし=月詠了子じゃないかって疑ってる。疑ってるけど、確証が掴めないって感じだ。という事はやっぱりクリス先輩、うたずきんのライブに来ていたんじゃ……

 

「なぁ、今度カラオケ行かねぇか? ちょっと歌ってもらいてぇ曲があるんだけど」

「え、えっと……じゃ、じゃあ今度行きましょうか」

 

 あぁ、どうにかしてやり過ごす方法を考えないと……歌っちゃったら確実にバレるぅ……

 

「っていうか、クリス先輩は去年かなり嫌々登壇したって聞いたデス」

「ははは、もうとっくに裏固められちまってもう逃げれねぇ」

 

 そう言ったクリス先輩は少し遠い目をしていた。けど。

 

「まぁ、嫌いじゃねぇけどな。あんなノリも」

 

 凄く楽しそうに笑った。

 

 

****

 

 

 そして時間は過ぎて学園祭になった。

 わたし達はいくつかの出し物を見て回ってご飯を食べたりしながら時間を潰し、勝ち抜きトーナメントへの登壇時間となった。既にクリス先輩は歌を歌い終わって去年の王者。そして現段階で最も高得点を叩き出した参加者となっている。わたし達は一番最後だけど、その前に歌っていた響さんのお友達三人がフルで全て歌い終わる前に歌を打ち切られた。

 アニソンは別にいいんだけど……何でうたずきんをチョイスした上にコスプレまでしたのか。これが分からない。打ち切られた理由はなんか間奏の間に劇というか劇中再現というか……そんな感じのをしたから。ここに本人いるのに。

 まぁ、それは置いておく。ドナドナされてきた三人を切ちゃんと一緒に微妙な顔で見送ってわたし達は登壇する。

 

「次なる挑戦者は去年乱入した物の途中退場してしまったお二人、暁切歌&月読調ペアです!」

 

 クリス先輩の挑発的な笑み。わたし達の視線。それが交わってすぐにわたし達の選択した曲が流れ始める。

 曲名は、不死鳥のフランメ。

 

『3、2、1、Ready Go! Fly!!』

 

 やっぱり、切ちゃんとの息は完璧。

 どうしてこの曲をチョイスしたかは、クリス先輩がこの間翼さんの出した新曲、ルミナスゲイトを歌ったからわたし達も翼さんの絡んでいる曲にしよう、っていう事になってわたし達は翼さんとマリアのデュエット曲、不死鳥のフランメを歌うことにした。

 全力で、ちょっと練習した振り付けもして、切ちゃんと完璧なデュエットを披露する。見てくれている人も乗ってくれて合いの手も入れてくれる。

 そうして五分近くの曲が終わり、切ちゃんは息をちょっと切らして。わたしは案外余裕だからいつも通りの平然を装って結果を待つ。

 

「素晴らしい歌声でした! これは得点が気になる所です!!」

 

 わたしと切ちゃんのデュエットだもの。クリス先輩にだって、負けはしない。

 そうして待っていると、結果が出た。

 

「これは……今回選ばれたチャンピオンは!」

 

 司会の人の声に合わせて会場のライトが消え、代わりにセンターライトが動き回る。

 そして幾つかのライトが動きを合わせ、捉えたのは。

 

「去年王者、雪音クリス選手だぁ!!」

 

 クリス先輩だった。

 ま、負けた……がくっ。

 

「得点を見ましたが、物凄い僅差ですね。本当に、本当に僅かに雪音選手の得点が上回っていました」

「へっ。まだまだ後輩には負けてらんねぇからな」

 

 くぅ。悔しい……

 

「そういえば王者には何か望みを叶えられる権利があるんだったよね?」

「えぇ、そうですけど。もしかして、早速使いますか?」

「おう。って訳で」

 

 何かこの場でやりたい事でもあるのかな? わたしはクリス先輩を見る。

 クリス先輩は何か企んでいそうな笑顔でわたしに近寄ると、わたしの手にマイクを握らせた。

 え?

 

「ちょっと届けHappy! うたずきんを歌ってもらおうか。勿論、全力で」

「え゛っ」

 

 ちょ、それは……

 

「拒否権があると思うな? これは正当な権利だからな」

「え、あ、ちょ、それは……」

 

 ま、まずい……ここで歌えば確実にバレる。折角ここまで隠しぬいてきた事がバレる。なんかステージの脇で響さんのお友達の一人……弓美さんがよくやったとか言ってるし! あの人もわたしに当たりつけてたの!? 確実にあの時のライブに居たよねこの人達! じゃないとこうしてマイク握らされる理由がわからないし!

 ど、どうしよう……どうすれば……あばばばば。

 

「どうした? 歌えない理由なんて無いだろ?」

「か、歌詞わからない……」

「その画面に音程も歌詞も出るだろ? それだけあればあたし達みたいなのなら余裕で歌えるよなぁ?」

 

 シンフォギア装者って胸のうちの歌詞だけで歌ってるからね。元の歌なんてないから新曲もその場で歌詞とメロディがあれば歌えちゃうくらいだからね。

 もしかして、本当に詰み? 歌うしかないのこれ。もう正体バレちゃうのこれ?

 も、もう諦めるしか……

 

「狼狽えるな!!」

 

 と、思っていたら客席の方から声が響いてきた。

 こ、この声は……

 

「確かこの大会には乱入があったわよね?」

「え、えぇ……そうですけど」

 

 その募集、さっき終わったよ……?

 

「ならば今、この場で乱入させてもらうわ! この私、マリア・カデンツァヴナ・イヴとッ!!」

「風鳴翼! そして!」

「え、えっと……立花響です。って、何でわたしまで引っ張られてるんですかぁ!?」

 

 名前を叫んで乱入者である三人、マリア、翼さん、響さんがやけにスタイリッシュに登壇してきた。響さんは困惑しているけど。それにマリアと翼さん、来ているとは言っていたけどまさか見ていたなんて……

 でも、マリアと翼。トップアーティストである二人の登壇に会場は大盛り上がり。割れんほどの歓声が響いている。

 

「狼狽えるな、調。今さっき緒川さんから全部聞いたわ」

「まさか声優をやっていたとはな。ここは私達に任せるといい」

「えっ……?」

 

 って、緒川さん来てたんだ……それと言っちゃったんだ……

 でも、知ってからこうして登壇してくれるっていう事は……もしかして助けてくれるの?

 

「言いたいことは色々とあるけど、妹分が困ってるんだもの。助けるに決まってるわ」

 

 マリアはそう言うとわたしが握らされていたマイクを手に取った。

 

「さぁ準備しなさい。歌うのはこの私、マリア・カデンツヴァナ・イヴと」

「風鳴翼。そして」

「えっと……? わたしもなんですか? あ、はい。立花響で!」

『逆光のフリューゲルのアレンジ。虹色のフリューゲルッ!!』

 

 その瞬間。逆光のフリューゲルの伴奏が流れ始める。

 虹色のフリューゲル。それはわたし達六人が装者として歌う、逆光のフリューゲル。六人で行うユニゾンの中で歌う曲の一つ。逆光のフリューゲルの歌詞の一部を変えて六人で歌えるようにシンフォギアが調整した物。

 元が逆光のフリューゲルだからかわたし達は全員、もう歌詞を見なくても歌えるようになっている。それを、三人で歌う……?

 

「調、切歌。あなた達も歌いなさい」

「クリスちゃんも! ほらほら!」

「え、うわ、ちょ!?」

 

 マイクは三つしかないからマリアと翼さんが同じマイクを。響さんとクリス先輩が同じマイクを。そして、わたしと切ちゃんが同じマイクを手に持つ。

 あれ? これってクリス先輩まで乱入したら結果ってどうなっちゃうんだろう……なんて思いながらもわたし達は歌い始める。なんやかんやで最初は不服気味だったクリス先輩もサビに入ったあたりからノリノリで響さんと並んで歌っている。

 そうしてわたし達は六人でのユニゾンの時と同じように全力で歌って。そして歌い終わって普段は聞こえない客席からの歓声を聞きながらハイタッチをした。

 

「では、審査とまいりましょう!!」

「……って、これあたしまで参加するとどうなんだ!?」

「はい結果が出ました! まぁ王者である雪音選手が居る時点でこの六人の優勝です!!」

 

 あ、そうなるんだ。

 

「ろ、六人のって……まぁいい! ほら歌え! チャンピオン命令だ!」

「ならチャンピオン命令で拒否権を発動します」

「んなの有りかよォ!?」

「狼狽えるな!!」

「うるせぇ!!」

 

 クリス先輩がわーわー言ってるけど気にせずに視線をマリアと翼さんの方へ向けると、二人とも笑顔で親指を立てていた。どうやら、二人は響さんを連れ出してクリス先輩を巻き込ませて歌わせる事で確実にトップを確実に食い込むのが作戦だったらしい。別に二人なら確実にチャンピオンになれたと思うんだけど……

 そう思った直後に翼さんが視線を客席の一部へと向けた。そこには緒川さんが居て、もうクリス先輩に言っちゃって的な事が書かれたカンペを持っていた。

 まぁ、こういう大きい場所でバレるのを避けるためにも、仕方ないよね。マリアと翼さんにもバレちゃってるんだし、あと一人くらいどうという事もないか。

 

「クリス先輩、後でホントの事言いますから、今は落ち着いてください」

「うっ……ぐぅ、ならいい、か……」

 

 それで結局クリス先輩は諦めてくれて、やっぱりチャンピオンとしての権利は温存。後日何かで使う事になった。

 ちょっとした修羅場も起きたしリベンジも失敗したけど……まぁ、楽しかったからいいかな。

 

 

****

 

 

 トーナメントが終わって、わたしはクリス先輩と人気の少ない場所に移動していた。

 

「多分、気付いてると思いますけどわたしが月詠了子です」

「やっぱりか……なんかうたずきんの声を聞いたとき、お前に似てるなとは思ってたしライブの時もお前と背格好がそっくりだったからまさかとは思ってたが……」

「それで確認のために歌わせるつもりだったんですか……」

「そういう事だ」

 

 わたしが嫌がる素振りを見せた当たりで分かりそうな物だけど……まぁ、そういう事でわたしはクリス先輩にわたしが月詠了子だということをバラした。

 っていうか、クリス先輩、うたずきん好きだったんですね。

 

「うっ……まぁ、あの馬鹿の友人に誘われてな。偶々見たら、その、ハマった」

「ライブにまで来るなんて相当だと思いますけど」

「う、うるせぇ!!」

 

 赤くなっているクリス先輩可愛い。

 それはともかく。こうやってバラしたからにはちゃんと釘は刺しておかないと。

 

「クリス先輩。くれぐれも、この事は誰にも言わないでくださいね? 身内とかなら……まぁいいですけど」

「誰にも言いやしねぇよ。ってか、お前は何でいきなり声優なんてやってんだ?」

「まぁ大人の事情とか色々とありまして」

 

 真相はわからないけど。

 

「じゃあ、わたし、切ちゃんの所に戻りますね」

「あ、いや、ちょっと……一つだけいいか?」

 

 なんだろう?

 

「そ、その……なんかこう、うたずきんの声でメッセージ的な物を、その……」

 

 クリス先輩は顔を赤くしながらそう言った。

 なるほど、つまり生うたずきんをやってほしいと。なんかヤケに可愛いクリス先輩にちょっと笑いながらもわたしはすぐに喉を調整して声を出す。

 

「いつも応援ありがとう、クリスちゃん」

 

 いつも収録の時に出している声で、一言。

 クリス先輩はその声を聞くと、そっと頷いた。

 

「これであたしは後十年は戦える……!」

「いやなにとですか」

 

 そして学園祭の後、わたしはクリス先輩にカラオケに連れ込まれてうたずきんメドレーを歌わされた。万が一誰かに聞かれたらちょっと問題があったけど……まぁ、楽しそうなクリス先輩が見られたから別にいいかな。

 けど、それでテンション上がったクリス先輩がつい弓美さんにわたし=月詠了子って漏らした結果第二次うたずきんメドレーがカラオケで行われた。ライブじゃないんですからサイリウムを持ち込んで振るのはご遠慮ください恥ずかしいです……ッ!!




(狼狽えるなの)ノルマ達成。出る度に狼狽えるなと叫ぶ女マリア。妹の出演予定は現在無し

きねくり先輩って何だか崩壊させやすいし書きやすい。その内調ちゃん以外のキャラが主役の話でも書いてみようかな? あ、幼児退行の時はほぼビッキーが主役だったっけ……

では、次回予告。
NINJA「和風ユニットもいいですね……調さん、アイドルデビューしてみませんか?」
調「え?」
翼「ふむ……それはいいな。是非ともやろう」
調「えぇ……」

次回、月読調の華麗なるアイドルデビュー。声優の次はアイドル……っ! わりと可愛いと旅客機のパイロットから言われた調ちゃんのアイドルデビューは果たして。なお次回の内容は予告と違う場合があります。そしてネタ切れが近い。
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