本当は長くても一万文字くらいで終わるだろーとか思っていて、前回と合わせて一万六千文字。うん、そんぐらいだなとか思ってたら今回だけで一万七千文字を叩き出しました。
もうこれなら前回の話も統合して月読調の華麗なるガールズバンドとして一話分に纏めた方がよかった……とか思ったんですが、まぁやっちまったもんは仕方ない。
あと日菜ちゃん書くの難しい。
それでは、どうぞ。
2019/10/13
ライブシーンに歌詞を追加
わたしと彩さん、それから千聖さんの買い物は特別何か問題が起こることもなく終わりかけてる。ちょっと二人がファンに囲まれかける時があったけど、そこら辺はまぁなんとかした。
買い物についてはわたしと千聖さんが身長は同じで体型も結構似ているから今着ている服を交換してみたり、お互いに選んでみたり彩さんに選んでもらったり。そんな感じで選んだり遊んだりしながら結局そこそこの量を買っちゃった。あと、わたしがあっちでやっている変装とかを教えたり、逆に千聖さんの変装方法を教えてもらったり。あとついでに彩さんの自己紹介を教えてもらったり。
まん丸お山に彩をって、ホントに上手く考えてるよね。わたしの名前はなんというか、そういう可愛いふわふわな感じじゃないから何とも言えないけど。
それと、あっちで組んでる風月ノ疾双ってユニット名を教えたら微妙な顔をされたというのは完全に余談。
「それでその時にイヴちゃんがすっごい顔しちゃってね~」
「なんというか、筆舌し難いキリっとした顔だったわよね……」
「ど、どんな顔してたんですか……」
あと、こうして話していると案外パスパレの皆さんも非常識に塗れているような気が。
彩さんと千聖さんはまだ常識的だし、麻弥さんも常識的、なんだろうけど、ちょっと行動がぶっ飛んでる時が……日菜さんとイヴさんはかなり非常識な気がする。日菜さんは天才っていう非常識があるし、言動もちょっと響さんとか切ちゃんとか、そこら辺に通ずるものがある気がする。
あとイヴさんは……可愛い翼さん? いや、違う。なんかこう、よく外国人に見る日本の文化を勘違いした人……? でもそんな所がイヴさんは可愛いよね。
まぁとにかく。この世界の人も結構行動がおかしい人いるよね。
「えっと、こんな顔よ」
「ふっ、くく……!! あ、アイドル、ですよね?」
「あ、アイドルだよ……? 最近芸人みたいな感じになってるけど……」
「言ってしまえば全員芸人気質なのよね……」
流石にこれは誰でも笑うってば。
というか何でこんな顔になっちゃったの? 緊張とか表情筋とかで片付く問題じゃない気が……
響さんの話を聞く限りポピパも結構凄い人がいるみたいだし、ロゼリアもクールに見えて中身は可愛い感じとかちょっとイメージしがたい事があるみたいだし。あとは……ハロハピは凄いみたいだね。アフグロは常識人枠? なのかな?
「と、とりあえず次はどこに行く?」
「あ、それならわたし、CDショップに行ってみたいです。パスパレのCD、前に来た時はバタバタしてて買えなかったので」
「CDショップ……ってこの近くにあったかしら?」
「あ、それならそこのお店にCDコーナーがあるから行ってみたら~?」
「じゃあそうしよっか……って、あれ?」
……ん? なんか一人分声が増えたような……
「……って日菜ちゃん!? いつのまに!?」
わたし達三人が首を傾げて後ろを向くと、本当にいつの間にかやってきたらしい日菜さんがシレっと混ざっていた。彩さんは結構ビックリしているし、わたしも内心はビックリしてるんだけど、千聖さんはある程度予想できていたみたいで苦笑してる。
なんで天才な人ってこう、すっごく突拍子も無い事とかするんだろうなぁ。
「いや~、なんかこう、るんってする方に来てみたら彩ちゃんと千聖ちゃん、それから調ちゃんが居たんだ~」
「るんってする方……なんか日菜さんらしいですね」
「まあねー」
日菜さんとは最初にパスパレの皆さんと出会った時はあんまり関われなかったけど、二回目以降ちょくちょくこっちに来ている間に仲良くなれた。日菜さんは感覚派の天才みたいな感じで今までの知り合いにはいなかったタイプだけど、まぁもっと厄介な天才でクソッタレな英雄と話したことがあるから、全然日菜さんは普通に思えた。
……まぁ、あっちでぶっ飛んでいる人に分類される人がぶっ飛びすぎていて、日菜さん程度なら何とも思わなくなっただけとも言えるんだけどね。少なくとも身内に天才じゃないけど日菜さんよりも身体能力とか運動神経がヤバイ感じの人、数人いるし。司令とか響さんとか緒川さんとか。
ただ、イヴさんと麻弥さんとはまだあんまり話せてないんだよね。基本的に彩さんと千聖さん繋がりでパスパレの人とは繋がってる感じだから、二人と一緒に居ないとあんまり話す機会が無いというか。
日菜さんは謎の嗅覚で接触してきたから比較的仲は良いけど。
「それよりも今日はなにしてるの? 調ちゃん、明日はCiRCLEでライブでしょ?」
「久々にこっちに来れたので彩さんと千聖さんと一緒に買い物でもと思ったんです」
「えぇ~。それなら私も誘ってくれたらよかったのに」
「日菜ちゃん、今日はオフだし家で紗夜ちゃんと一緒なのかなーって思って」
「いや、私も最初はお姉ちゃんと一緒にごろごろーって思ってたんだけど、お姉ちゃんってば練習に行っちゃったんだ~」
「それならどっちにしろ誘っても来るって言わなかったじゃない……」
「あはは~」
なんというか、日菜さんって色々と軽いよね。
響さんとか切ちゃん辺りとはかなり相性よさそう。あの二人もお気楽だから日菜さんの感じとはすごいマッチしそう。
能天気に笑っている日菜さんがで、CDショップ行くの? と話を切り替えてきたからそれで大丈夫ならとわたしが許可を取って、三人から一人増えて四人で日菜さんが知ってるCDショップに行く事に。
「それでお姉ちゃんがその時、急にポテェ……って言い出しておかしくってさ~」
「ぽ、ポテ……?」
「お姉ちゃん、フライドポテトが大好きだから」
「最早禁断症状のレベルね」
「しかもそこら辺の感覚を共有してるっぽくて、私だけがポテト食べてるとお姉ちゃん、物凄くポテトが食べたくなるみたいで」
「双子ならではってやつ……? っていうか、わたしの中の紗夜さんのイメージがただの面白キャラに……」
ロゼリアでギターやってた時は凄くカッコ良かったのに、紗夜さんにはそんな秘密が……
確かに未来さん、ロゼリアの皆さんの事を話す時って笑いをこらえながらよく話してたけど……紗夜さんがそんな面白キャラの一人だから? 確かボーカルの人……友希那さんも結構な人って聞くし。
あれだけカッコいい曲とか歌うのにそんな感じなんて。やっぱり人って外見じゃ判断できないね。
身内に外見だけじゃ判断しきれない人、相当数いるからちゃんと学ばないと。特にマリアとか。表立ってはかなり真面目と言うかキリっとしてるのに裏だと庶民感満載なマリアとか。
……そういえばどこかのバンドにマリアと似た声の人いたよね? アフグロだっけ?
「あ、あとね、さっきイヴちゃんから写真が…………あれ?」
日菜さんが笑顔で話しながら携帯と取り出そうとした時、ふと日菜さんの笑顔が消えて進行方向とは別の方向に視線を向けた。
あっちに何かあるのかな……? でも特に何も見えないような……
「……なんか、あっちから変な感じがする」
「変な感じ? いつものるんっじゃなくて?」
「うん。でもなんだろこれ。ライブ中に変な異音が混ざったような感覚……」
「っていうかあっちから何か聞こえない? さっきから悲鳴と言うか叫び声と言うか、そんな物が聞こえる気がするのだけど……」
ライブ中に異音……? それってつまり歌の中にノイズって事なのかな?
それだけじゃ何も分からないけど、すぐに千聖さんが言った言葉を聞いてからちょっと耳を澄ませてみると、確かに何か尋常じゃない音が聞こえてくる気がする。
ノイズ……悲鳴……
…………ま、まさか。
「……すみません、わたし、ちょっと行ってきます」
「え、調ちゃん?」
ノイズ。わたし達の世界の災厄。
それがこの世界に出てきたなんて情報は無い。ノイズが齎す特殊災害なんてものもない。
でも、この間この世界にはカルマノイズが現れた。つまりそれはノイズがこの世界に出現する可能性が多少なりとも存在してしまうという事。
もしもノイズが本当にいるのなら、行かないと。この場で歌を響かせる事ができるのは、わたししかいない。
「そ、それなら私も行くよ! 何かあったんなら人手は多い方がいいと思うし!」
「そうね。何かあったのなら避難誘導くらいは手伝えるわ」
「え? 何のこと? まぁいいや。私も行こ―っと」
「彩さん、千聖さん……あと日菜さん、軽いですね……」
ま、まぁそれが日菜さんのいい所なのかもだし。
とりあえず、もしもの場合は三人に避難を手伝ってもらってわたしが殿になる。わたし一人で行くよりは全然マシな結果にはなると思うし。
それに気のせいなら気のせいで笑って終わらせられるし、とりあえず今は三人に着いてきてもらおう。
……一応、念のために響さん達に一言連絡だけしておこう。もしかしたらわたし一人じゃキツイ案件かもしれないし。
****
大体走ってから数分も経たない内に日菜さんが違和感を感じる場所……つまりは悲鳴の中心に来ることができた。道中で逃げてくる人とすれ違ったけど、そのほぼ全員が顔を青くしていた。
間違いない、何か起きている。そんな確信を得つつも走りながらLiNKERを首に打ち込みシュルシャガナを握りこんでわたしは騒動の中心へ。
逃げてくる人を追いかけるように現れたソレは、カラフルなマスコットみたいな存在と、それの色違いで黒と紫が基調になっている存在。つまりは。
「ノイズ……!! やっぱり、この世界にも!」
「の、ノイズ……? あ、でもあの黒いのはあの時出てきた奴だよね?」
「何だかマスコットみたいね。あれにみんな悲鳴を上げてたの?」
ノイズ。それから、その中心にいるのは間違いなくカルマノイズ。それも、ここに最初に来た時にわたしたちが見つけた、あのカルマノイズ。
そうだ。わたし達はアレを倒しに来たのに、よく考えればわたし達はカルマノイズの最後を見たわけじゃない。音響怪獣とも呼べるアレを倒してCiRCLEを元に戻して、そのままわたし達は事件全部を終わらせた気でいた。
今日感じていた何かを忘れている感じって、カルマノイズだったみたい……
「へぇ~。なんかかわい~」
わたしが固まっていると日菜さんがノイズに近づいて……って危ない!?
「駄目です日菜さん! それに触ると死んじゃいます!」
「え? ってわお危ない!?」
自らノイズに触りに行くっていう自殺行為をしに行った日菜さんだったけど、わたしの声を聞いてすぐにノイズに触るのを止めて、逆に触りに来たノイズを華麗に避けてこっちに戻ってきた。
よ、よかった、取り返しの付かない事にならなくて。
でも、これで安心していられない。これ以上取り返しが付かない事になる前にわたしが止めないと。
「彩さん、千聖さん、日菜さん! 今すぐ取り残された人を連れてここを離れてください!」
「そ、それはいいけど……調ちゃんは!?」
「あれが本来わたし達が戦うハズの敵です。確かに生身なら死んじゃいますけど、わたしの
見た所、ノイズが襲おうとしている人は今、三人。ノイズに囲まれてる人、腰が抜けてるのかノイズから逃げられない人、車の上に乗ってノイズを追い払おうとしている人。
その人達の周りには炭が舞っている事から、多分あの人達はノイズに分解された人を見てしまった人……その人達を新たな犠牲者にする訳にはいかない!
「various shul shagana tron」
詠い、腕を振るう。
服とギアが一瞬で入れ替わってわたしが腕を振るうと同時にノイズに囲まれている人、ノイズから逃げられずに震えている人の周りにいるノイズを一気に蹴散らして、そのついでにその人達をヨーヨーの糸で縛ってこっちに引っ張って救出。
「この人たちをお願いします。わたしはあっちの車の人を助けます!」
「う、うん! 頑張ってね!」
「うわ~、調ちゃんの変身初めて見たけど魔法少女みたいだね~」
「日菜ちゃん、あんまり呑気な事言ってないで逃げる準備!」
多分わたしだけじゃあの三人を助けても避難まではさせられなかったから三人についてきてもらってホントに良かった。とりあえずツインテールの方から巨大鋸を展開して振り回しながらわたしは残り一人、車の上でノイズから逃れようとしている人の元に行ってその人を助け出す。
「大丈夫ですか!?」
「ひ、人が! あれに触った人が、黒くなって!」
「大丈夫です、あとはわたしが何とかしますから、今は避難を!」
その人を抱えて来た道を全力で戻って彩さん達の元へ。
彩さん達もどうやら助け出した人から人が炭になった事を聞いたらしくて、表情が強張っている。
触っただけで即死。ノイズを常識として知ってるわたし達ならまだしも、それを知らない彩さん達からしたらそれは恐怖でしかないと思う。
「し、調ちゃんはあれに触っても平気なの?」
わたしが抱えた人を下ろしてもう一度戦いに向かおうとすると、彩さんがそんな事を聞いてきた。
多分、わたしがさっきから思いっきりヨーヨーとかでノイズを消し飛ばしている所をみていたからそう思ってるんだろうけど、そこら辺の説明は位相差とか中和やらでめんどくさいから……
「シンフォギアを纏っているならノイズに触れても大丈夫なんです。元々シンフォギアは対ノイズ戦を想定したモノですから」
その証明のためにすっごい勢いでこっちに近づいてきていたノイズの頭をアイアンクローで握りつぶしてみると、三人ともなんか微妙な顔をしていた。
……流石にアイアンクローはやり過ぎたかな?
「とりあえず皆さんは避難を。ノイズは壁もすり抜けてきますから、なるべく建物の中じゃなくて広い場所にいてください。あと、わたしの事は秘密でお願いします!」
あんまり悠長に話しているとノイズが広範囲に散ってしまうかもしれない。それに、徐々にノイズもこっちに寄ってきているからそれを百輪廻で一気に片付ける。
シュルシャガナは一対一の火力は低い方だけど、一対多の状態でなら真価を発揮できる。つまりここは響さん達よりもわたしの土壇場!
「たかだかノイズならわたし一人で……!」
ヨーヨーを振り回して鋸を発射しながら注意を引き付けて彩さん達が逃げた方には一切行かせないようにしてるけど……流石にカルマノイズが混ざっている以上、油断はならない。
さっきから一撃でももらえば大ダメージは確定な攻撃をバンバン飛ばしてきてるし、それを回避して攻撃してもノイズが減ってる気がしない。もしかしてどこかでバビロニアの宝物庫が開いてる……とかは無いと思うけど。ただ、わたし一人じゃ減らしきれない程度には湧いてきたんだと思う。
負担は少ないけど、流石に数が多いしカルマノイズから目を離せないから結構辛い……!
「そこ動くんじゃねぇぞ!!」
そう思った矢先、聞きなれた声が聞こえた。
その声に従ってわたしは足を止めて攻撃も一旦止める。その瞬間だった。
「ドシャブリな百億連発!! サービスだ全弾持ってきやがれェ!!」
「クリスに続くよ!!」
クリス先輩と未来さんの声が響き、直後にわたしに被害が及ばない調整が成されたミサイルとガトリング、それからビームがわたしの周囲を一気に焼き払った。
「行くよ切歌ちゃん!」
「任せるデス! 今この場はあたしが剣となるデス!!」
直後、上から降ってきた響さんと切ちゃんが残っていたノイズに向かって突撃していった。
よかった、ちゃんと連絡に気付いてくれたみたい。わたしは少しだけ上がった息をすぐに整えてからヨーヨーを握りなおして、響さん達と同じように降ってきたクリス先輩と未来さんに並ぶ。
「チッ。カルマノイズの野郎、あの怪獣に食われたもんだと思ってたが……」
「あの音響怪獣を倒したから全部終わったって思ってたけど、最初に見てからずっと姿を隠してたもんね」
「しかもそれがノイズを引き連れてまた出てくるなんて……」
「けど今のアタシ等の敵じゃねぇ。五つの歌がありゃ黒いブドウなんざ!」
クリス先輩がそう叫んでガトリングを構えた瞬間だった。響さんと切ちゃんの向こうで何もしていなかったカルマノイズの姿が急に黒い靄に包まれてそのまま消えていってしまった。
「チッ、また逃げやがった!」
「カルマノイズ、本当に厄介だね……」
未来さんの言葉に頷いてわたし達はノイズの残党を片付けてからギアを解除する。
一応民間人が他に居ないかを確認したけど、逃げ遅れた人はわたしが見つけた三人で最後だったみたい。多分警察がもうすぐ来るだろうから急いで退散しないと。
ギアを纏ったままの方が早く移動はできるけど、SONGが無いから情報規制もできないし、見られたら見られたでその分情報が拡散するからあまり長時間ギアを纏っているのは現実的じゃない。だからすぐに五人でこの場から退散しようとした時だった。
「皆さん、人目が付かない場所まで送ります。お乗りください」
猛スピードで走ってきたリムジンがわたし達のすぐ横に止まって、窓から顔を出した黒服さんがわたし達に声をかけてきた。まさかこんな所にまで飛んでくるなんて思っても居なかったけど、こういう支援は本当にありがたい。わたし達はすぐにリムジンに乗り込んで警察や野次馬が来る前に移動を始めた。
「まさかノイズまで出てくるとはな……しかもカルマノイズもまだ生きてやがった」
「SONGや二課があれば出てきたらすぐに現場に迎えるんだけどね……」
クリス先輩と響さんの言葉にわたし達は首肯する。
今回、ノイズの事に気が付けたのはわたしが偶々近くに居たから。もし、わたし達の誰もがその場にいなかったら被害は拡散し続けて、わたし達が到着するまで人が死に続ける所だった。
いや、もう何人かがノイズの犠牲になってる。この世界はノイズの存在が政府に理解されてないから、今回死んだ人たちは家族に死んだと認識される事もなく、きっと行方不明扱いのまま……
「皆さんはあの生き物をご存知なのですか?」
わたし達が暗い顔をしていると、黒服さんが声をかけてきた。
そう言えば黒服さんにはノイズの事をちょっと教えた程度で終わってたっけ。
「あれがわたし達が本来相手にしている敵、ノイズです」
「強いて言うなら、人間の天敵。現代兵器の攻撃は一切通らず相手は一方的に攻撃してくる……その上、ノイズに触ると人間は炭素分解されて炭になって……」
「っ……それは、とんでもない非常識ですね」
「だからこその
錬金術でもそういう事はできるのかもしれないけど、この世界には多分異世界からの来訪者であるわたし達しか対抗する事は叶わない。
「あの生き物……ノイズ、でしたか。アレはどのような条件で出てくるのですか?」
「ソロモンの杖っていう聖遺物がノイズの住み家であるバビロニアの宝物庫を閉じる事ができますけど……多分、あのノイズはバビロニアの宝物庫から来たノイズじゃない」
「多分カルマノイズが出してきたノイズデスよね。だからカルマノイズさえ倒す事ができれば……」
カルマノイズさえ倒す事ができれば。
でも、カルマノイズの逃げ足は早い。一瞬でも目を離せば逃げ出す程度には。わたし達が行けば被害を食い止めることはできるけど、ノイズの数が多ければ多い程手間取って倒せなくなる。
だから、次にあれが出てくるまでにわたし達の方でどうやって相手するか対策を立てなきゃいけない。
「分かりました。こちらの方で関係各所にノイズの事を知らせ、被害は最小限にするようにしましょう。ですが、私達だけではノイズを倒す事はできませんので……」
「大丈夫です。あれを倒すのはわたし達の仕事ですから」
「カルマノイズさえ倒しゃ全部終わるんだ。次見つけたら何が何でも倒すぞ」
クリス先輩の言葉に頷いて、わたし達は今借りている部屋に……と思ったんだけど、わたしは彩さん達の所に顔を見せなきゃいけないから、三人の居る近くに車を止めてもらって下ろしてもらった。
彩さん達は思いのほかすぐに見つかった。わたしが心配なのかうろうろしていたけど、わたしの姿を見つけると露骨にホッとして走り寄ってきた。
「調ちゃん! よかった、無事だったんだね」
「はい。ノイズ程度に遅れは取りませんから」
彩さんの言葉に余裕綽々で返せば、後ろの方で千聖さんが若干呆れた感じの顔をしていた。
だけど、日菜さんの方が携帯を見て顔を顰めている。
「日菜さん? 何かあったんですか?」
「あ、うん。実はさっきの事が色んな所に漏れているみたいで。ほら、この写真とか」
日菜さんが差し出してきた携帯を見ると、そこにはノイズを真正面から撮った写真が。しかもその人のアカウントはその次に人が炭になったという書き込みの後、もう書き込まれていない。それに、もう動画サイトにその様子があげられているみたいで、人が炭になっていく所が録画された動画まであった。
あんまりいい状況じゃない。ノイズの驚異が知らされるのはいいんだけど、ノイズの特性が十分に分かっていない以上、変に攻撃する人とかが出てくるかもしれない。
「こ、これ、どうしたらいいんだろ……私達だけじゃもうどうしようもない気が……」
「また出てきたらすぐにわたし達が元凶を潰しに行きますけど……彩さん達はあまりノイズの事に触れないようにしてください」
「どうして? 私達のような芸能人が注意喚起した方が……」
「その場合、千聖さん達が危険です。どうしてノイズの情報を知っているのか、どうして見たことがあるのか、どうして生き残れたのか。それが火種になって千聖さん達を苦しめる可能性があるんです。わたしはノイズの災害から唯一生き残ってしまったがために誹謗中傷を受けた人を見たことがありますから……」
そう、響さんの事。
今の千聖さん達はあの場にいたことがバレていないし、何か言われても人違いで通せる。けど、こちらから何か言ってしまえば千聖さん達はノイズについて詳しい事、あの惨劇から逃げ出した事を自ら知らせる形になってしまう。
しかも、この世界でノイズは未知の存在。その情報を知っているとなるともっと変な事に巻き込まれることになる。
千聖さん達の場合はSNSでちょっと口にするだけで一気に情報は拡散していくだろうけど、その分だけ千聖さん達の身が危機に陥っていく。だからこそ、千聖さん達には迂闊な行動をしてほしくない。
だからわたし達は一刻も早くカルマノイズを倒してノイズと言う存在をこの世界から淘汰しないといけない。
「……そうね、その通りだわ。ちょっと迂闊だった」
「とりあえず三人はノイズの事は知り合い以外に聞かれても知らぬ存ぜぬでお願いします。ただ、友達とかご両親とか、大事な人にはノイズを見かけても絶対に近寄らない事を教えてから口封じもお願いします。公な注意喚起と情報提供はこっちの方で何とかしてみますから」
とりあえずこの世界で捨てアカウントを作ってそこからノイズの情報を纏めて、発信しておこう。
何もしないよりはその方がマシだと思うから。
「そんじゃ、堅苦しい話も終わったしCD見に行こっか!」
わたし、彩さん、千聖さんが重い空気を出していると、その外からいつの間にかいつも通りの笑顔を浮かべた日菜さんがわたしの後ろから肩を叩てそう言ってきた。
ちょっとびっくりしたけど、日菜さんの笑顔に笑顔で答えて重苦しい表情の二人に声をかける。
「そうしましょうか。大丈夫です、ノイズなんてわたし達が何とかしますから」
「……そうね。餅は餅屋というし、調ちゃんに任せて私達はいつも通りにしていましょうか」
大丈夫。わたし達は絶対に負けない。
だってわたし達、もう何度も世界を救ってるんだから、もう一度世界を救う事なんて容易い。装者足るモノ、世界を救ってなんぼだよ。
ちなみにパスパレのCDはちゃんと全部買ってきました。帰ったら聞こっと。
****
翌日。わたし達はバンド衣装に身を包んでCiRCLEの控室で待機していた。
確かにカルマノイズの事は重要だけど、カルマノイズの方から出てこないとわたし達は手出しできない。それに、折角CiRCLEの方でわたし達の枠を取ってくれたんだから楽しまないと。できる女は切り替えが早いんだよ。
そうこうしている間にわたし達の前のバンド、ハロハピが演奏を終わらせたらしく、歓声に包まれて舞台袖に戻ってきた。
「お疲れ様デス、こころ、ミッシェル! あとはあたし達に任せるデスよ!」
「えぇ、切歌! 切歌たちの歌でみんなをもっと笑顔にさせるのよ!」
「合点デス!」
「いやー、元気だね二人とも…………あっつ……」
切ちゃんとこころさんがハイタッチしながら言葉を交わして、その横をミッシェルが通り抜けていく。なんか素の声が聞こえた気がしたけど気にしない。
その後ふぇぇ……やら儚い……やら色々と聞こえた気がしたけど、とりあえずわたし達はわたし達で最終チェックを済ませて後は表に出ていくだけ。切ちゃんを呼び戻して、響さんからの提案で円陣を組むことに。
「それじゃあチームシンフォギア初ライブ、思いっきり歌いつくそう!」
「ったりめぇだ! で、掛け声とかどうすんだ?」
「…………未来!」
「響、言い出しっぺの法則だよ」
「うぐっ……」
あ、響さん何も考えてなかったんだ。
ほら、何でもいいですからやっちゃってください。時間ないですよ?
「そ、それじゃあ……よし!」
響さんが覚悟を決めて息を吸い込む。
「解放全開ッ!!」
解放全開。その後に続く言葉は、きっと。クリス先輩も、未来さんも、切ちゃんも分かってる。いや、分からないわけがない。四人でちょっと笑ってから響さんに視線を向けると、響さんも笑ってもう一度声を出す。
「イっちゃえ!!」
『ハートの全部でっ!!』
叫んで五人同時にステージの上へと走っていく。
ステージの上は真っ暗。既にチューニングを終わらせたベースを片手にわたしは所定の位置について切ちゃんの方へと視線を向ける。
暗闇の中、切ちゃんが一つ合図をした瞬間、響さんが小さく曲名を宣言する。
「激唱インフィニティ」
その言葉の直後、未来さんのキーボードが音を鳴らし始め、もうすぐわたし達全員の音が重なるというタイミングでわたし達は遅れてバンド名を叫ぶ。
「皆さんはじめまして! わたし達!」
『シンフォギアです!!』
わたし達の名乗りに観客の声が重なり、そして同時に演奏は一瞬で音を重ねてヒートアップしていく。
最初に歌う曲は、盛り上がりが多い曲。三人が同時に歌う激唱インフィニティ。今回は最初だからという事でかなり長めにしてある前奏を流し、未来さんが務める翼さんのパートから三人が歌い始める。三人の強さを裏付けるような強い歌声に一気に観客のボルテージはマックスに。
ロゼリアやアフグロとはまた違う、闘争心、戦う覚悟、守る誓い。そんな強い思いが込められた曲は一気に観客のハートを掴んでくれた。
そして最初のパートが終わり、短い伴奏に。
「それじゃあ自己紹介! ギター、立花響! それから同じくギター、雪音クリス! キーボード、小日向未来! そしてベースとDJ、月読調と暁切歌!! そしてこの曲のボーカルはわたし、クリスちゃん、未来の三人!!」
「っしゃあ!! 上げていくぜお前らァ!!」
クリス先輩の煽りに観客からの声が答える。そして。
「レッドゾーンガン振りしてねじ込む拳ィ!」
「一片の曇りなく、防人れる剣」
「零距離でも恐れなく踏み込めるのは」
「背中を託してッ!」
「番える!」
『君を感じるからッ!!』
流れる三人の歌声は、装者という戦い、世界を救うという偉業すら成し遂げた自信から織りなされる力強く心強い歌声。三人の心象風景が織りなす優しく強い歌は観客のハートを鷲掴みにしていく。
最初は上手くベースを弾けるか少し心配だったけど、演奏が始まればそんな事は無い。ただひたすら楽しくて、ついつい三人の歌声にコーラスをちょっと入れるくらいにはテンションが上がっている。そして伴奏中は切ちゃんと並んでカッコつけてみたり、前に出て響さんと並んで演奏してみたり。
わたしは普段楽器を持たずに歌ってるけど……でも、楽器を持って演奏するのも凄く楽しい。だから、五分の曲は本当にあっという間だった。
『激唱ッ! インフィニティ!!』
最後のフレーズを歌い終わり、演奏は余韻を残しながら消えていく。
そして曲が終わった直後、歓声が響き渡る。
ライブハウスという閉じた狭い空間の中で響き渡る歓声は、アイドルとしてのライブと比べてどこか力強さを感じる気がした。
次の二曲目。今度はわたしと切ちゃんの番。切ちゃんがDJ台を操作して特徴的な前奏を流し始める。
「さぁ、待っている時間も惜しいデスから二曲目、バーンと行くデスよ、調!!」
「うん、切ちゃん。一曲目は響さん、クリス先輩、未来さんで激唱インフィニティだったから、今度はわたし達の番」
「はいデス!! じゃあ二曲目、曲名はORBITAL BEAT!!」
前奏と重なる部分を丸々口上に置き換えてわたし達は歌い始める。
切ちゃんがマイクを片手にステージの上を駆け回り、わたしも響さんと場所を交代して前の方でORBITAL BEATを歌う。装者だからこそ、マイクを片手にステージの上を駆け回って観客を煽りながら歌うなんて楽勝。一切息切れなんて起こす事もなく、切ちゃんは最小限の操作をDJ台の方でしつつ、わたしと並んで歌う。
そして、ORBITAL BEATも本当にあっという間。いつの間にか曲はラスサビに入って、わたし達は並んで叫ぶように歌う。そのまま、最後。背中を合わせ、最後のフレーズを口にする。
『この闇を、越えて!!』
ギターとDJ台からの音が最後の音を掻き鳴らし、曲は一瞬で締まる。
激唱インフィニティとはまた違ったカッコよさを秘めた曲に観客からの歓声は一切衰えることは無い。
そして二曲を終えてから一旦MCと休憩タイム。
「……二曲目はわたし、月読調と切ちゃん、暁切歌でORBITAL BEATでした」
「いやー、思いっきり歌うとやっぱり楽しいデス!」
「うん、ホントに。もう十分近く経ってるのが信じられないくらい」
「こうやってステージの上で歌うのは初めてデスけど、楽しすぎて我を忘れちゃいそうになる程デスよ!」
……切ちゃん、ほぼ我を忘れて前で飛び道具してなかった?
まぁ、楽しいからいいんだけどね。プロとしてのステージならもうちょっと言うんだろうけど、これはあくまでもアマチュアの人のためのステージ。抱える気持ちはプロ同然だとしても、楽しむ心で楽しんでも全然大丈夫。
切ちゃんと一つのマイクでMCしつつ後ろに下がれば、その代わりに響さんが前に出てくる。
「やっぱり二人のデュエットは凄いね。これはわたし達も負けられないよ、クリスちゃん!」
「後輩共に負けられるかってんだ! ここからはラストスパートの三曲目だ! 付いてこれる奴だけアタシ等に付いてきやがれ!! まぁ付いてこれねぇなんて言わせねぇけどなッ!!」
そして流れる三曲目。
壮大なコーラスとキーボード。その音に負けない程の熱さを持つ二人の声が響き渡る。
「三曲目もまたまたわたし達オリジナル! 曲名は逆光のフリューゲル! ボーカルはわたしとクリスちゃんのギターコンビ!! 行くよ、クリスちゃん!!」
「アタシ等二人の翼、とくとその目に焼き付けな!!」
そして前奏が本格的に始まる。
二人の歌うパートは、ガングニール繋がりで奏さんの所を響さん。翼さんの所がクリス先輩の構成にしてある。わたし達は後ろでパフォーマンスをしつつ二人の歌声に負けないような音楽を奏でる。
二人の歌声は奏さんと翼さんの歌声にも負けないくらい力強く、そして心地いい。そのせいか自然とわたしの指も気分よく音を奏でる。でも、楽しい時間はあっという間。すぐに歌はラスサビにかかり……
『もっと高く! 太陽よりも高く!!』
最後のフレーズを弾き終わり、余韻が響く。
同時に、歓声。歌い終わった響さんがクリス先輩とハイタッチして、その後すぐに駆けよってきた未来さんともハイタッチ。そしてわたしは横から飛びついてきた切ちゃんを抱き留めて笑いあう。
演奏はまだプロの人とかには遠く及ばないけど、それでも楽しみ尽くせた。わたし達の今できる最高を伝える事ができた。
そして。
『アンコール! アンコール!!』
「うわわ、アンコール!? ちょ、どうしようクリスちゃん!」
「あ、アタシに言うな!」
なんとアンコールまで貰っちゃった。
いや、一応最初にどの曲をやるか決まってなかったときは六曲くらいは平行して練習してたけど、流石にアンコールとなると……それに、時間的にも押してるだろうし。
そう思って五人で舞台袖を見ると、そこにはスタッフさんが居て、頭の上で丸のマークを作っていた。
つまり、やっちまえとの事。その後ろにいるこころさん達ハロハピメンバーも笑顔でゴーゴーって言ってるし。
「もうこうなったらやるしかないですね」
「一応練習しててよかったデスね」
「でも、何にする? 虹色のフリューゲルは逆光のフリューゲルとほぼ同じだし、折角全員ボーカルできるんだから最後は全員で……」
「ならあれしかないよ! 一応パート分けも終わってるし、盛り上がりもアンコールに負けないから!」
響さんの言葉。多分、響さんの言っている曲は一応五人でも歌えないことは無いあの曲。
本来は翼さんとマリアを交えた六人で歌う曲だけど、一応パート分けはバランスよく、違和感ないように済ませている。響さんの言葉に頷き、わたし達はもう一度配置へ。
「それじゃあアンコール受けたので、もう一曲だけ。最後だから全員でボーカルをやる、この曲で。曲名は、アクシアの風」
直後、旋律が流れる。
わたし達全員の聖詠と、絶唱と、激唱と旋律を一曲に纏めた、わたし達の新たな象徴とも言える六人ユニゾン曲。それを、五人でパートを分けた五人で奏でるアクシアの風。
『Croitzal ronzell Gungnir zizzl』
まずは五人での聖詠。奏さんのガングニール、全ての始まりとも言える聖詠。
そして、そこから響さん、響さんとクリス先輩、クリス先輩がガングニール、天羽々斬、イチイバルの聖詠を。次のF.I.S組は切ちゃん、わたしの順番でそれぞれ二回聖詠を口にし、そして最後は未来さんの神獣鏡の聖詠。
それらを締めくくるのは、五人の絶唱。
『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl――』
絶唱を奏で終える。
シンフォギアの切り札である、絶唱。それを歌い終えれば戦いはほぼ終わりのような物。まるで戦いそのものが終わたった後の静けさを生み出す。全ては終わり、歌は潰える。
けれど、激唱と旋律は消えたりしない。
『激唱旋律、歌になれ!!』
二課組とF.I.S組を表す二つの単語は音となって混ざり、同時に曲は一気に盛り上がる。
始まり、そして終わり。けれどそこから歌はまた紡がれる。翼さんのパートを未来さんに、そしてマリアのパートを響さんに任せる。響さんと未来さんがクリス先輩と手を繋ぎ、そして響さんは新しくわたしと切ちゃんとも手を繋ぐ。それを表すパートはそれぞれの曲名を象徴とし、歌へと変える。
「負けない愛が拳にあるッ!」
「美しき刃で月下に翼舞う!」
「GUN BULLET X-Kiss-! 力に変わる!」
「Stand up! Ready! 示せ、天へと歌い!」
「メロディ明日に繋ぐんだ」
「サンシャインとなり」
『絆束ね!』
六人の曲名を歌へと変えて歌えば、五人での合唱パートに。
わたし達装者が胸に抱く歌をそのまま直接ぶつけるような歌。それが激唱インフィニティ、逆光のフリューゲル、ORBITAL BEATに負けるわけがない。
激唱と旋律を歌とし掲げる。決して諦めず戦い、そして守り抜く。その直接的な歌詞は観客を煽り、ボルテージを上げ。
『歌は、死なないと!!』
掲げ、吠え、終わる。
歓声を受け、それを噛みしめる前にもう時間が押しているというちょっとしょうもない理由から響さんを急かして最後の挨拶をしてもらう。
「それでは、シンフォギアでした! 今日は本当にありがとう!!」
そしてわたし達は楽器を抱えて舞台袖へと捌けていった。
「いえーい、大成功!!」
「やったなオイ!」
「観客の人たちも満足してるみたいだし、上手くいってホントによかった」
「ステージで立って歌うのって凄く気持ちいいデスね、調!!」
「うん、こうやって歓声を浴びるのって、いつでも最高。だから切ちゃんもあっちでアイドルしよ?」
「い、いやー、それは流石に……」
「ふふっ、冗談だよ」
五人ではしゃぎながら控え室に戻ると、一足先に控え室に戻ってたらしいこころさんが真っ先に切ちゃんへ向かって飛び出してきた。
「凄いわね、切歌! 私、聞いててすっごく熱くなっちゃったわ!」
「そりゃああたし等の歌は激唱で旋律デスから! 火傷するまで熱くなるもの当然デス!」
控え室の前でテンションを上げて話すこころさんと切ちゃんをいつの間にか来ていた美咲さんがそっと横にずらしてわたし達の道を開けてくれた。美咲さん、なんだか凄い疲れてるけど何かあったのかな? ライブにも居なかったし。
……もしかしてミッシェルの中身? 今度聞いてみよっと。
「凄いね、クリス。演奏もそうだし、歌声もバンドを初めてすぐとは思えないくらいだったよ」
「いや~、流石モカちゃんが見込んだだけの事はあるな~」
「へっ、これがアタシ様の実力ってやつさ!」
そしてクリス先輩もハロハピの一個前に演奏していたアフグロの人たちの所へ行って楽しそうに話している。
で、わたしと響さんと未来さんだけど、今日はパスパレ、ポピパ、ロゼリアの人たちは出演してないから控室でそれぞれ話す事はできない。だから一足お先に衣装を着替えたり楽器を片付けたりしてる。
「ほんと、ステージで歌って演奏するの、すっごく楽しかった!」
「わたしも、こんなにみんなの前でキーボードを弾いて歌うのが楽しいなんて思わなかった」
「ほら二人とも、アイドルって道を歩めばパスパレみたいにアイドルバンドできますよ? 五人であっちでもアイドルバンドしましょ?」
『それは流石に……』
くっ、手ごわい……
響さんと切ちゃん辺りが来たら確実にバラドル路線はその二人に引き継がれてわたしは正統派アイドルとして復帰できるというのに……!!
とりあえず話している切ちゃんとクリス先輩もようやく楽器を片付けたり更衣室へ向かって着替えたりしている。そうしてライブの余韻も冷めぬままにちょっと興奮して喋っている時だった。いつの間にか室内にいたこころさんお抱えの黒服さんが切ちゃんに耳打ちしていた。
どうやらわたし達シンフォギア組を呼んでほしいとの事らしく、わたし達が集まると、黒服さんが改めて要件……というよりも発生した問題を口にした。
「どうやらノイズが現れたそうです。現在、私達の方で周囲を封鎖していますが、あまり持ちそうにはありません」
ノイズ……ノイズ、か。
「黒いノイズはいましたか?」
「はい。中心に他のノイズとは違う色合いのノイズが居るとの事です」
いつもなら身構える所だけど……今のわたし達は違う。
「こんな時に出てくるなんてカルマノイズがちょっと可哀想になるよね」
「へっ。テンション上がってこんなに気分のいいアタシ等を相手取るなんざ同情して泣いちまいそうだなぁ!」
「任せてください。すぐに終わらせてきます!」
そう、今のわたし達は気分も良ければテンションも高い。シンフォギアは気の持ちようも出力に関係してくるところがあるから、今のわたし達はベストコンディションもいい所。
カルマノイズ? 二体でも三体でも相手にできる自信があるよ。
すぐに向かって叩きのめす!
「どうしたの切歌? 何か用事?」
「ちょーっと、世界を救うヒーローとしての用事ができたんデス。ちゃちゃっと行ってパパっと終わらせて今日は打ち上げにでも行くデスよ!」
「あ、どうせなら私、みんなで打ち上げがしたいわ! 近くのファミレスなんてどうかしら?」
「大賛成デス! それじゃあちょっくらミサイルに乗ってヒーロー見参してくるデス!」
「おー、頑張ってね……って待って。ミサイルに乗って?」
わたし達は即座に控え室を出てCiRCLEの裏手に出ると、そのまま聖詠。シンフォギアを纏ってクリス先輩が出した五つのミサイルに乗って空へと飛び出した。
「……ホントにミサイルに乗ってっちゃったよ…………」
「すごいわね、美咲! 私達も今度あれをやりましょう!!」
「え? 待ってこころ。ミサイルに乗る気? マジで? え、ちょ、黒服さん、その電話は一体どこに――」
……なんか、美咲さんの心労が増えた気がするけど気にしない気にしない。
――これは余談だけど、後日ハロハピの野外ライブでは空から降ってくるハロハピメンバーと空を飛ぶ一つのミサイルがあったとかなかったとか。
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ミサイルに乗ったわたし達はあっという間に現場に到着。そして戦闘……なんだけど。
まぁテンションが上がったわたし達が苦戦なんてするわけもなく。
『ザババサンムーンッ!!』
「全身凶器でミサイルパーティーの時間だオラァ!!」
「消えちゃえぇ!!」
「かーらーのー!! S2CA、今回はおまけしてなんとペンタゴンバージョン!! という事でぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
まぁこんな感じで蹂躙しつくしてカルマノイズは哀れにもオーバーキルにも程があるS2CAペンタゴンバージョンを貰ってお空の彼方へと消えていきました。まぁ、装者が五人もいるんだし負ける理由なんてないよねって。
そんな訳で最初はどうしようかと悲観していたカルマノイズも無事消し飛ばしたわたし達は黒服さんの用意したリムジンに乗ってこころさんが言っていた打ち上げ会場であるファミレスへ。もうみんな来ているみたいで遅れてはいると、なんとハロハピとアフグロの他にもパスパレ、ポピパ、ロゼリアの皆さんまで混ざった大所帯がわたし達を出迎えてくれた。
どうやらパスパレ、ポピパ、ロゼリアの人たちは今日のライブを見に来てくれていたみたいで、こころさんがそれを発見して拾ってきたみたい。
で、みんなはそのままそれぞれのバンドの所へ散っていって、わたしもパスパレの皆さんの所にお邪魔した。
「凄かったよ調ちゃん! すっごくカッコ良かった!」
「調ちゃん達があんな熱い曲を歌うなんて思っても居なかったから驚いたけど、とっても楽しかったわ」
「ほんとほんと! わたしもるんって来た!」
「私も皆さんの歌にブシドーを感じました!」
「いや、イヴさん、どこにもブシドーっぽい感じは……」
「あ、分かりました? 実はこの間話した防人の人をイメージしたフレーズもあったんですよ」
「ってマジっすか!?」
そんな感じで感想をわいわい言い合って、一緒に食べ物食べて、なんか日菜さんがポテトを大量に食べていて、それを横からロゼリアに居る日菜さんのお姉さんの紗夜さんがジーっと見てたりして……
打ち上げはまぁそれこそ語り切れないくらい色々とあったけど、わたし達チームシンフォギアの初ライブは無事、大盛況で終わり、この世界に残っていた災厄の芽も無事摘み取り終えて全部ハッピーエンドで終わったのでした。
と、いう訳でどうでしたでしょうか、今回の話。
この話を書いた理由としましては、カルマノイズくんいつの間にか行方不明になってて草生やしたんで、じゃあこっちでその続きを書いてカルマノイズくん焼き払うと同時にガルパキャラを使った話を書いちまえと思いまして。アイドル時空を使った理由としては単純にパスパレもアイドルだからって理由です。
ちなみに今回セリフがあったガルパキャラは自分のお気に入りキャラだったり。みさこことモカらんすこ。
これにてガルパ時空のちょっと真面目な話はこれでおしまい。次回からはいつも通りの華麗なる日常に戻ります。それと、ギャラルホルンが存在する時空での話ではちょくちょくガルパキャラの名前や話題が出てくるかも。
恐らく次にガルパキャラを交えた話を書く時はギャグ中心となる事でしょう。個人的にはガルパピコとかいう非常識な話にシンフォギアの非常識をぶち込んでカオスに仕立て上げたいとか思ってたり。
ではまた次回、お会いしましょう。
っていうか最近、めちゃくそポテト食いたくて仕方ないんですけど、これって氷川姉妹の姉の方からぶつけられた呪いかなんかですかね?
~おまけ~
調「日菜さん日菜さん。こんな事ってできます?」
日菜「え? えっと~……この水面走るやつ? 流石にこんなCGみたいなことはどんな天才でも無理だよ~」
調「で、ですよね。あはは……(これ、CGじゃないんだけどなぁ……)」