という事で今回はグリッドマンコラボ。一応アプリのストーリーの後という設定です。
世界が、崩れていく。
響さんも、翼さんも、クリス先輩も。みんな、みんな倒れた。全平行世界の装者達を再び結集させて、また一つ世界蛇に襲われる世界へと戦いに赴いた。でも、世界蛇は強くて。
XDモードになる事もできず、スクルドの力も借りれず。
それでもそれぞれの全力を果たして戦ったけど、勝てなかった。続々と現れる世界蛇の末端。そしてカルマノイズ。それに苦戦を強いられているうちに、再び空は紫色に染まって世界蛇がその姿を現しかけている。
電子で構成されたこの世界は徐々に崩壊していく。この世界がもしも崩壊したら、わたし達も間違いなく終わる。
いつの間にか緑色の輪郭と、黒で構成された、この電子の世界の骨格とも呼べるものがむき出しになった。この電子の世界の住人達も世界蛇に吸い上げられていく。
もう、どうする事もできない――
****
「また、ギャラルホルンのアラートが発生したんですね」
司令に呼び出されてすぐにわたし達は今回の騒動についてを聞いた。
どうやらまたギャラルホルンがアラートを発したらしく、わたし達は至急、本部へと呼び出された。何せ、ギャラルホルン関係と言えば、ついこの間、わたし達装者全員の力を結集しても勝てなかった相手が出てきたばかり。それから暫く、世界蛇とはご無沙汰だったけど、また遭遇する可能性もある。
だから集まった、わたし含めた七人の装者の顔は、かなり険しいものになっている。
「あぁ。しかも、今回のアラートはあの時の……世界蛇が出現した時と似ている物だ」
そして、その言葉を聞いて全員の表情が更に強張った。
世界蛇が初めて出現したあの日。ギャラルホルンが発する警告は今までの比ではなかったから。それと似ているような警告が出たという事は、世界蛇が出現する可能性が高いという事。
それを理解したうえで想像するのは、最悪の未来。
また、あの時のような地獄が目の前で繰り広げられるという地獄。
それでも、戦わないといけない。例え一欠片でも勝てる未来が残っていると言うのなら。完全聖遺物ミョルニルがアレに対抗できたのなら、わたし達だってできる筈だから。
「今回もいつも通りチームを分ける。そして平行世界の問題がそれで解決できたのならいつも通りだ。だが、世界蛇が出現した場合は、一旦こちらに戻ってきてくれ」
「皆さんの力を信じていないわけではありませんが、それでも万が一があります。なので、奏さんとセレナさんも呼んで万全の体制で挑みます」
「今回は翼、マリアくん、調くんに行ってもらう。大丈夫か?」
「はい。問題ありません」
「寧ろ問題なんて探す方が難しいわね」
翼さんとマリアの言葉にわたしも頷いて、今回はわたし、翼さん、マリアの三人が平行世界へと向かう事になった。
作戦が決まったのならすぐさま。わたし達はギャラルホルンの前でギアを纏って準備完了。後はあっちで流れに任せて事件を解決するだけ。そうやって毎回解決してきたからね。
「マリア、調、危なくなったらすぐに撤退してくるデスよ!」
「全く、心配性ね、切歌は」
「うん、本当に。でも、大丈夫だよ切ちゃん。引き際を見誤るなんて事、しないから」
「それでも心配な物は心配デスよ……」
切ちゃんの言葉にマリアと一緒に苦笑しながらもわたし達はギャラルホルンのゲートをくぐる。
ギャラルホルンのゲートはいつも通り虹色の輝いている。少しばかり目が痛いけど、それでも平気。だけど、なんだろう。虹色の中に電流が走っている感じと言うか、いつもと違う感じに見えるのは。
でも、カオスビーストの空間のように赤色じゃなかったら敵は出ないハズ。そう思いながらも一応はいつでも交戦できるように構えながらゲートを潜って、そしてゲートの出口に到着した。
到着したけど……出てきたのはいつもの公園じゃなくて、どこかの駅の出入り口。
なんともまぁ、変な所にゲートが……
「出口がいつもと違う……? これは一体……」
「ちょっと前の、音響怪獣が出た世界と同じですから、大丈夫です。未来さんみたいに別の場所に弾かれたとかではないので」
「それならいいのだけど……」
マリアの言葉に翼さんも頷いた。
今回の世界は出入り口がいつもとは違うだけで特に問題はないね。けど、何だろうこの世界。ちょっとだけ違和感があると言うか。
でもそれはいいとして、一旦ここら辺を歩いて拠点を確保しないと。流石に野宿をしながら平行世界の問題を解決するっていうのはちょっとハードモード過ぎる。一旦太陽を見て軽く時間をかくに…………
「ん? どうした月読。急に固まって」
「い、いや、翼さん! あ、あれ! あれ見てください!」
「あれ? あれとは……なっ!? あれは!?」
「どうしたの二人とも……って、怪獣!?」
わたし達の視線の先には、巨大な怪獣が居た。
それも一体や二体なんかじゃない。もっと大量に、十何体も。写真を撮ってみたりしても、しっかりと映っている。あれって一体……?
いや、でも動いていないみたいだから死んでいる……のかな? それともただの怪獣型の建造物?
「……動いては、いないみたいだな。害が無いと言うのならこちらからあまり手を出すものではないだろう」
「そうね。アレが動き始めた時の対処は、動き始めてからにしましょう。にしても、まさか人生で二度も怪獣を目にする羽目になるなんて……」
翼さんとマリアの言葉に頷き、先を歩く二人の後ろをついて行く。
あ、そういえば駅名だけ確認しておこう。えっと、駅名は……ツツジ台駅? そんな駅、日本にあったかな。
****
一応街中を一通り歩いてみたけど、特に異常な所は何も見つからなかった。時々怪獣の事について聞いてみたんだけど、それについてはわたし達以外見えてないみたいで、変な人を見る目を向けられるだけで終わった。
この世界は、いたって普通。戦いの跡とかがあるわけじゃないし、大きな歴史の変化もない。裏の事……つまり装者絡みの事は流石にあっちから接触してこない限り調べられないから何とも言えないけど、一応表面上はかなり普通な世界みたい。
三人纏めて数時間は歩いていたからちょっと座りたくなって、わたし達は一旦喫茶店に訪れた。
かなりいい雰囲気。それにここにも特に問題はなし。ノイズが出ているっていう情報も無いから本当に平和な世界っぽい。
いや、平和な世界だったらギャラルホルンのゲートが繋がる訳ないんだけど……
「数時間歩いて手ごたえ無し、か。カルマノイズが現れなければ何もする事ができないというのがもどかしいな」
「この世界にはノイズが存在していない。そしてそれに近しい存在の出現も確認されていない。現状はお手上げね」
マリアがコーヒーで口を潤しながらボヤいた。
こうなったら先に拠点を確保して長期戦を覚悟で挑んだ方がいいかも。それか三人が分散してカルマノイズを捜索……いや、これは悪手。一人でカルマノイズと遭遇したら、戦える事には戦えるけど決定打を与える事ができない。だから、最低でも二人で行動したい。
そう考えると結局三人で移動する事が一番……ってなっちゃうんだよね。
ドン詰まりかぁ。
「ボヤいても仕方ない。明日までは情報を集めよう。何も集まらないようだったら誰かがそれを叔父様の元へと報告しに向かう。これでどうだ?」
「異議なしね。そうなると情報を集めながら適当なホテルでも探しましょうか」
「お金、普通に使えたからね」
あとお金に関しては普通に使えた。一応三人とも現金を結構持ってきておいたから、適当なホテルに数日泊まるくらいならできそう。それに、無駄遣いしなきゃ経費で落ちるし、心配ないね。
作戦が決まったところでコーヒーを一気に飲み干して空のカップをゴミ箱に捨ててからわたし達はもう一度外へと歩を進めた。
さて、それじゃあどっちに……ってあれ? 何だか外に出た瞬間慌ただしく……
「き、君たち! 死にたくなかったらあっちへ逃げるんだ!」
と思ったら目の前を走り去ろうとしていた男の人が足を止めて声をかけてきた。
死にたくなかったらって……まさかあの怪獣が!? と思って視線を上にあげたけど、怪獣は動いていない。じゃあ、一体何が……
「え? 一体何があったんですか?」
「怪物だ! 黒い怪物みたいなものが怪物を沢山呼び出して襲いかかってきたんだ!」
黒い怪物……! 間違いない、カルマノイズ!
すぐに翼さんとマリアに視線を向け、二人とも頷いたのを見てからわたし達は即座にカルマノイズを倒すために男の人の静止を無視して、逃げてくる人並みの中を逆走した。
大きな被害が出る前に、倒さないと!
「……あの子達、もしかして」
****
カルマノイズは無事に倒した。
これにて一件落着……と思いたいけど、ギャラルホルンのアラート的にもカルマノイズが一体だけとは思いにくい。だから戦闘が終わってから暫くはギアを解除していなかったけど、ノイズは出てこないし人も集まってくるだろうからギアを解除した。
「なんとかなりましたね」
「あぁ。カルマノイズ一体だけだったからまだ良かったものの……」
「けど、周りの建物に被害が出てしまったわね……」
マリアの言葉に従って周りの建物に視線を向けると、そこには戦闘の跡が。
カルマノイズを倒すために結構全力を出したから、電鋸とか刀で思いっきり傷つけちゃったところがあって。こういう時、SONGがあったら気にしなくてもいいんだけど、ノイズが出現しても何も無かったって事はそういう機関はないわけで。
ど、どうしよう。謝る、とかできないし……逃げるしかないのかな。
「あー、建物? それなら気にしなくていいよ。後で勝手に直るから」
「ッ!? 誰だ!!」
三人でちょっと暗い顔をしていたら、急に後ろから声をかけられた。翼さんが一番に反応して後ろを向いて、わたし達もいつ襲われてもいいように身構えながら振り向いた。
そこに居たのは、武装した人間とかじゃなくて、一般人にしか見えない女の子。多分、わたしと同年代くらいの子だと思うけど。
紫のパーカーを着崩して、内側にはシャツを着ているから多分学生だと思うんだけど、今って普通に学校ある時間だよね……? いや、そんな時間に出歩いているわたしも異常なんだろうけど……
「あのゆるキャラもどきだけはあたしでもどうにかできないから見ているしかなかったんだけど、倒してくれてありがとね?」
「あ、あぁ……それが私達の義務だからな……」
女の子のマイペースな声に翼さんが毒気を抜かれたのか声に覇気がない。
「で、あなた達って何者? どうやってこの世界に来たの? さっきのコスプレは?」
「話してもいいのだけど……その前にあなたの素性が知りたいわ。素性の知らない相手においそれと話せる事じゃないのよ。あと、さっきのはコスプレじゃないわ」
相手が聖遺物関係者とかなら話してもいいんだけど、生憎と相手がそうじゃないなら話すわけにはいかない。だから、そういう人なら先に素性を話してもらって、それからこっちの事情を全部話して協力を得ないと。
じゃないと話が変にこじれる可能性だってあるから。相手に理解があると分かったうえで色々と聞かないと。
「あたし? えー、なんであたしからー? ……まっ、いいけど」
女の子はちょっと不機嫌そうになったけど、すぐに表情を元に戻した。
何と言うか……感情の起伏が激しいのかな? いや、面の皮が厚いとも……? どうなんだろう。よくわかんないや。
「あたしは新条アカネ。この世界の神様やってるんだ~」
……か、神様?
……えっと、精神病院ってどっちにあったかな?
「まぁ、あなた達はこの世界の味方みたいだし、ついて来て。そっちも何も分かってないみたいだし、人目の付かないトコで説明するよ。あたしもちょっと見つかると厄介な子がいるから……」
ちょっと暗い感じの顔をしたアカネさんはそのまま背中を向けて歩き始めた。
説明する……って事は、この世界の事を色々と知っているのかな? それに敵意はないみたいだし。翼さんとマリアも毒気をすっかり抜かれたのか、両手を軽く広げて首を横に振った。お手上げ、よく分かんない、って事なんだと思う。
わたしも同じ動作を返してから、とりあえずアカネさんについて行くことにした。今は闇雲に敵対者を増やすよりも事情を知った方がいいだろうし。
そう思ってアカネさんの後ろを歩く事数十分。わたし達は普通の民家に案内された。横は……喫茶店、なのかな? でも家具とかも売ってる。後で見に行ってみようかな。
そんな事を考えつつアカネさんに家の中に通され、そのまま適当なソファに座らされるとお茶を出された。あ、普通のお茶だ……
「ここなら誰にも話を聞かれないから大丈夫。それで、三人は一体どうやってここに来たの? それにさっきの怪物。あれもどうやって倒したの?」
「い、いや、それを話す前にまずそっちの素性をだな」
「だーかーらー、神様だって言ってんじゃん。この世界を作った神様。正確には、元だけどね」
……えっ?
この世界を作った、神様……!?
「どうやってこのコンピュータの世界に入ったのかは分かんないけど、わざわざここに来たって事はそれを知った上で来てるんでしょ?」
「初耳なんですけど……えっ、コンピュータの世界? この世界を作った神様……?」
「……えっ、嘘。知らないの? マジで?」
わたし達からしたらいきなり語られた真実に驚いたけど、アカネさんはこっちの無知っぷりに驚いている様子。
いや、でも、えっ? この世界がコンピュータの世界? コンピュータの世界なんて精々0と1で構成されている程度しか分かんないし、それならこの世界の住人って一体……
「うーん……調子狂うなぁ。とにかく、あたしはそういう存在。一旦リアルに戻ったんだけど、あの怪物が現れてこの世界を滅茶苦茶にしてるって知ったから一旦出戻りしてきただけ。街の被害もあの怪獣が明日までには直してくれるから心配しなくていいよ。明日まではちょーっと騒ぎになってるけど」
で、そっちは? とアカネさんは若干不機嫌な感じで聞いてきた。
なんだか胡散臭いし信じられない。そんな言葉を飲み込みながらどうしたものかと視線を合わせていると、我慢がちょっと限界に至ったのかアカネさんに家の中の一室を見せられた。
そこに広がっていたのは、なんだかサイバーチックな世界。確かにSFっぽくてコンピュータ感がある世界で、次に外を見せられると、青空に紛れて同じような世界が天井には広がっていた。確かにこれを見せられると信じざるを得ない。
わたし達は、ギャラルホルンのゲートでコンピュータの世界に来たという事を。
……ギャラルホルンって孤立した世界にゲートを繋げてたけど、まさかコンピュータの世界にも繋げられるなんて思わなかったよ。
「……こうなっては仕方あるまい。こちらの事情も話すとしよう」
アカネさんが神様である証拠とかは見られなかったけど、それでもここがコンピュータの世界だという事は確かに理解できた。だから、翼さんとマリアは秘匿する事を諦めて、いつものテンプレを口にしてわたし達がどういう存在なのかをアカネさんに教えた。
するとアカネさんはうっそー、とか最初は言っていたけど、ノイズの説明とかカルマノイズの説明、それから装者の事を聞いて口を閉じた。どうやら納得してくれたみたい。
「装者とノイズとカルマノイズって……アニメかなにか? っていうかそんな方法でこの世界に来れるなんて……」
「そのセリフ、そのままお返しするわ」
全く持ってその通り。
アカネさんとこっちで互いに渋い顔を作って数分。互いに嘘を言っていないのは分かるんだけどどこか信じられない。そんな感じの間。
でも結局。
「実際見ちゃったし、信じるしかないよねー……」
と、アカネさんが納得してくれたことでこっちもなし崩し的に納得する事に。
ここで口論していても始まらないからね。
「とりあえずそっちは今回の件の解決方法、知ってるんでしょ?」
「一応は、な」
「なら物理系はよろしくね。あたしにはもう、この街の人達の記憶と、街そのものをリセットするくらいしか力は無いから。最も、それも壊れた借り物を何とか使えるようにした程度、だけどね」
一応、わたし達が戦う見返りにアカネさんはこの家の一室を貸してくれて、あと食事とかも用意してくれるみたいだけど、どうにもアカネさんのペースが掴めないというか、何と言うか。
あと、お隣さんと、赤髪の子と、眼鏡かけた子にはなるべく会っても話しかけないように、会ったとしてもアカネさんの事は言わないようにって釘を刺された。どうしてなのかは分かんないけど、無理に火種を作る必要もないから、とりあえず頷いておいた。
****
このコンピュータの世界に来てから、二日ほどが経過した。
その間に倒したカルマノイズの数は、なんと六体。明らかにカルマノイズの量が多すぎる。だからわたしは一旦SONGに戻ってからいつでも奏さんとセレナを含めた装者全員を呼び出せるようにだけしてから、今日もまた戦った。
アカネさんの言う通り、一日経てば街の人達から記憶は消えて、建物も同様に元に戻った。だけど、根本の問題を解決していないから、カルマノイズはこれからも出続ける。
あの世界蛇とは別にカルマノイズを生み出している要因が存在するのか、それとも世界蛇が現れる兆候なのか。翼さんとマリアがソレの調査のために街中を歩きまわって、わたしはアカネさんからもっと情報を聞き出すために一旦拠点としているアカネさんの家に戻ってきた。
戻ってきたんだけど……
「アカネ! 居るんでしょ、アカネ!」
「ちょ、落ち着けって。何度もインターホン鳴らしたのに出ないんだから、日を改めようぜ? 本当に留守にしてるだけかもしれないだろ?」
「そ、そうだよ……新条さんに迷惑だよ……」
「二人は黙ってて!」
『はい……』
戻ってきたら赤髪の子と眼鏡をかけた子と、確かお隣の喫茶店兼家具屋さんの娘さんが居た。
……うわー、アカネさん、明らかにわたし達には言えない厄ネタ抱えてるじゃん。女の人は結構ご立腹と言うかなんというか……思いっきりドア叩いてるし。
ちょっとアカネさんの部屋がある二階部分を見てみると、丁度下を見てどうしようと狼狽えていたアカネさんと目が合った。えっと……追い払って? そんな無茶な。
「ほら、六花! そこで人が見てるから!」
「え? うわっ、マジだ……」
赤髪の子にどうやらわたしは既に気づかれていたみたい。三人の視線を受けてついついわたしは苦笑い。
えっと……これ、どうしよう。
逃げた方が……いいのかな? でもアカネさんが上から早く早くってジェスチャーしてるし……ど、どうしたら……
「……そういえばこの子、ちょっと前にあの怪獣の事について聞きまわってたような」
「えっ、内海、それホント?」
「いや、知り合いから聞いただけなんだけどさ。なんか見慣れない人が街の怪獣が見えないかって聞きまわってたって」
あっ、これヤバい。
……っていうかこの人達、もしかしてあの怪獣の事が見えている? 確かあの怪獣はこの街を直して夜中の間に霧でここの住人の記憶を消すって役目があるだけで……それで、普通の人には見えない筈じゃ。
もしかしてこの人達、アカネさんと結構親しい感じの人?
いや、だとしてもアカネさんからどうにかしろって言われてるし、無視するわけには……
「ねぇ、ちょっといい?」
女の子から話しかけられた……
え、えっと……こういう時は!
「ご、ごめんなさい!」
三十六計逃げるに如かず! 背中を向けて即逃走!!
「あっ、逃げた!」
「やっぱ事情通か! 追うぞ、裕太!」
「う、うん!」
「ちょっと待ってよ! 別に取って食おうってわけじゃないんだから!!」
「ごめんなさい無理です!」
そこから繰り広げられるわたしVSアカネさんの友人らしき方々による逃走劇。
あっち行ってこっち行って。できる限り迷わないように死ながら十分以上は走った。途中から後ろの方で速すぎ、とか体力多すぎ、とか文句が聞こえたけど、いつの間にか聞こえなくなっていた。
まぁ、装者は体力勝負みたいな所もあるから、一般人に追いつかれるような真似はしないって事。とりあえず暫く辺りをうろちょろして完全に撒いたのを確認してから、わたしはアカネさんの家にようやく戻ってきた。疲れた。
「おかえり~。ごめんね、急に六花たちのこと、任せちゃって」
「別にいいですけど……」
名前を知っているって事はやっぱりあの人たちはアカネさんの知り合い……もしくは友達だったみたい。
でも、それならどうして会う事を拒否するんだろう。友達、それも態々家まで様子を見に来てくれるような仲なら、そんな居留守とか使わなくてもいいと思うんだけど。
「なんでそこまで会おうとしないんですか?」
そんな思いを込めたわたしの問いに、アカネさんは言いづらそうに顔を逸らして、それから呟くようにその答えを口にした。
「……ここは、あたしが居ていい世界じゃないから。だからあたしは、神様の真似事して、ここを作って、壊したことに対する責任を取ろうとしてる、だけだから」
呟いたアカネさんは、暗い顔をしていた。
でも、どこか吹っ切れたような。それでいいんだと納得しているような表情で、わたしもそれ以上言及する事はできなかった。
間違いなくアカネさんは何かをわたし達に隠している。わたし達にそれを追求して全てを知る権利も、それをするだけの恩知らずっぷりもないけど、暗い顔をしているのならどうにかしたい。
だからわたしは、その日の夜。翼さんもマリアも寝付いた深夜にアカネさんが起きているのを確認してから、夜食の代わりに大量にストックされていたトマトジュースを飲みつつ、何も無い私室の窓際で黄昏るアカネさんの元へと向かった。
アカネさんはわたしが部屋の中に入ってきたのを見て、視線をこっちに向けたけど、すぐにまた外を向いた。
窓の外……空は変わらず緑で縁取りされた黒い空間のような物が埋め尽くしていて、ここが電子の世界だという事を嫌にも認識させられる。
「……なぁに? あんまり夜更かしすると、背が伸びないよ?」
「とっくに成長限界ですよ。もう十六歳なので」
「えっ? あっ……ご、ごめんね?」
悪かったですね、ロリ体系で。
というかアカネさんの中でわたしは一体何歳に見られていたんだろう。そこが気になるけど、それは飲み込んで。一緒に窓の外を眺めて暫く無言の時間を経てから、今度はわたしの方から口を開いた。
「アカネさん。一体何を隠しているんですか?」
「……ちょっと、自己嫌悪するような事」
ひび割れた眼鏡を軽く押し上げて、アカネさんはどうしてか部屋の中を見渡した。
綺麗な部屋。布団とタンスの、必要最低限しかない部屋にはクーラーすらついていない。そんなアカネさんの部屋はちょっと寂しいけど、まるで今のアカネさんの心情を表しているように見えた。
「……あたしはね、本当はここに逃げてきたんだ」
アカネさんの声には、寂しさと、ちょっとした嬉しさが含まれているように聞こえた。
「で、逃げてきて、口車に自分から乗って好き勝手して、あたしはこの世界を作った神様だからここを好き勝手してもいいんだ、なんて思って。でも、それが間違いだって気付かされたんだ。それを教えてくれたのが、さっきここに来てた響くん達」
響……
あの人と同じ名前だからか、その人がアカネさんに色々とお節介を焼こうとしている場面がなんとなーく浮かんだ。多分、あの赤髪の子。
「でもね、ここはあたしが作っただけで、あたしが居るべき世界じゃないの。あたしの世界はリアルの方にしっかりとあって、ここは響くんや内海くん。それから、六花達の世界。三人と、お節介なヒーローにお説教されて、あたしはリアルに戻ったんだ」
「……じゃあ、あの三人に顔を見せたくないのは、また心配されないために。」
「いや、あんな別れ方したのにポンって戻ってきたらちょっと顔合わせづらいと言いますか……」
おい。
「じょ、冗談だよ! 調が言ったことが殆ど正解だから!」
ちょっと肩に手を乗せて思いっきり肉を掴んだらしっかりと本心を喋ってくれた。時には物理的解決も必要だって事を、わたしは響さんで学んでるから。
いたたた、なんて大袈裟に言って肩を抑えるアカネさんに白い眼を向けつつ、わたしは外に立つ怪獣に目をやる。
今も霧を吐いて街の人と、街をリセットしているあの怪獣。わたし達には効かないけど、それでも街の人にはしっかりと効いているのはわたしも知っている。
「……今、この世界はね。霧でこの街と他の街を区切ってるの」
「霧で……?」
アカネさんが次に口にしたのは、この世界の現状。
この電子の世界が今、どうなっているかの説明。
「少しでもあの怪物の被害を抑えるために、標的をこの街だけに絞ってるの。本当はそんな事したら六花達が危険だって分かってるけど、それでもこうしなきゃ世界中がパニックになっちゃうから。でも、あたしにはそれが限界。過去の遺物を引っ張ってきて、昔みたいに管理しても戦う力は無いの。だから、調達が来て、すっごく助かってる」
「アカネさん……」
「それに、六花達と会えない約束……実はもう一個だけあるの。だからこの事件、六花達が全部知っちゃう前に解決して、元の世界に戻りたい。あたしはここで見てる事しかできないけどね」
アカネさんの言葉にわたしは何も言い返せず。
そのまま二人で空を眺めて自然解散となるまで、わたし達はずっと無言のままだった。
でも、一つ決めた事はある。
この世界は電子の世界だけど、アカネさんの事を心配する大事な友達と、そんな友達を心配するアカネさんのためにわたし達は戦わないといけないって事。例え世界蛇が現れても、友達思いなアカネさんに悲しい涙だけは流させてはいけないって事。
――どこからか、罅割れるような音が聞こえたのは、多分気のせい。そう、気のせい。
****
翌日もわたし達がやる事は変わらなかった。
「調! そっちに飛行型ノイズが!」
「大丈夫!」
「マリア! カルマノイズに仕掛ける! 合わせてくれ!」
「任せなさい、翼!」
「道はわたしが切り開く!」
現れたカルマノイズに対してわたし達が戦い、そして勝つ。アカネさんが街中にドローンを飛ばしてわたし達はそれでノイズの出現を知ったらすぐさま戦いに向かう。
そんな風に戦って、今日もわたし達はノイズ集団とカルマノイズを何とか倒し終えた。
「今日もカルマノイズか……少し嫌な予感がするな……」
「そうですね。こうも多いと……」
「待ちなさい二人とも! まだ勝負は終わってないわ!」
戦いも終わったからギアを解除しようと思ったその矢先、だった。マリアの声に半分反射的に体を動かすと、視線の先にはもう何度も見た瘴気が集まってきて、そのままさっきとは別のカルマノイズが出現した。
「また現れた、だと!?」
翼さんとわたしが構えるのとほぼ同時だった。再び瘴気が集まって二体目のカルマノイズが出現した。
しかも、その駄目押しと言わんばかりにもう一体のカルマノイズまでもが現れた。こっちは三人しか居ないのに、三体ものカルマノイズ……! これはちょっと厳しい……!
――そう思った、直後だった。何かが罅割れるような音が聞こえたのは。
――その音は徐々に大きさと、激しさを増して。最悪の予感と共に空を見上げると、そこには罅割れていく青い空と、その隙間から見える赤色の空間。そして、紫色の体と黄色の瞳。
――世界蛇。それが、現れてしまった。
「世界蛇……だと!!?」
「次はこの世界が標的って訳……!!」
あれが現れたって事は、間違いなくこの世界はあの世界の破壊者に狙われたという事。
しかもこの場には装者が三人だけ。いくらなんでも手数が少なすぎる。
「翼! すぐにみんなを呼んできなさい!」
「だが、お前達二人だけでは!」
「時間なら稼ぎます! だから、できるだけ早く!」
だからこそ、この場で求められるのは何よりも戦力。
マリアとわたしで時間稼ぎをして、翼さんが響さん達を呼びに行く。そうでもしないと、世界蛇まで現れたこの戦場は確実にわたし達の敗北で終わる。
翼さんは顔を顰めて一言だけ謝ると、ギャラルホルンのゲートへと向かって走り始めた。その直後にギアにアカネさんからの通信が届いた。
『し、調だよね!? あの蛇なに!? 新しい怪獣!?』
「ちょっと今までよりもヤバい敵ですけど……なんか、アカネさん、楽しそうですよね?」
『えっ!? い、いやいや! あれ、なんかナースに似てるよねー、とか思って怪獣好きの本能が擽られたわけじゃないよ!? ホントだよ!?』
……怪しい。マリアも何とも言えない顔してるし。
「とにかく、アレが今回の元凶です。この世界を食らおうとしている、平行世界の破壊者。世界蛇」
「アカネ、絶対に家から出ないで。世界蛇は私達でも勝てるか、分からない」
『えっ? 勝てるか分かんないって……』
「今、わたし達の仲間を呼んでいます。絶対にこの世界を破壊させはしません。だから、アカネさんは信じて待っててください」
それだけ言って、通信を切る。
絶対に、負けられない。あんな食欲だけで世界を壊すような存在に、負けたりはしない……!!
****
空に、怪獣が現れた。
だからあたしは、あたしが作ったんじゃない天然の怪獣にちょっと浮かれちゃったけど……すぐにあの怪獣はあたしの好きなウルトラ怪獣とかなんかよりも、もっと邪悪で、そして気持ち悪い物だってものを見せつけられた。
黒い霧みたいなので壊される世界。それに吹き飛ばされる調達。調の仲間が現れたけど、あの蛇は多勢に無勢って言葉なんて知らないように調たちを蹂躙している。
それをあたしは見ているだけ。ドローンで遠目から。
あたしには何となく分かった。何度も敗戦したからこそ、感覚で分かっちゃった。
調達じゃ、アレには勝てない。決定的に、戦力が足りていない。火力も、防御も、何もかもが。
既に調たちは肩で息をしながら、それでもこの世界を守るために戦っている。あたしが守らなきゃって思っていた世界を、必死に守ろうとして。
あたしは、何もできてない。できたのは、この街を隔離して被害を最低限に抑えようっていう魂胆と、せめて死んでしまった人を忘れられるような優しい嘘を塗りこむ霧を生み出すだけ。それ以外、何もできていない。
――ウルトラマンが欲しい。
あたしが今まで見てきたウルトラシリーズの主題歌に、そんな歌詞があったのを何となく覚えている。あたしの目的はあくまでも怪獣で、ウルトラマンには興味が無かったけど。でも、今ならその言葉の意味が何となく分かる気がする。
この場にウルトラマンが居れば。この場に、光の戦士が居れば。
この場に、グリッドマンが居れば。
気が付けばあたしの足は動いていて、六花の家へと向かっていた。店の中に入れば、そこにはジャンクを前に歯噛みしているグリッドマン同盟の三人が。
「えっ? あ、アカネ!?」
「新条さん!?」
「お、おまっ、どうしてここに!?」
三人は思い思いに驚いている。
そりゃそうだ。だって、今までいるとは確信していたけど姿を頑なに見せなかったあたしが、自ら現れたのだから。
でも、あたしが聞きたいのはそんな声じゃない。
「グリッドマンは!?」
グリッドマン。
彼なら。この世界と、敵であるあたしまで助けてくれたあのヒーローなら、きっと調たちを救って、この世界を救ってくれる。
そんな確信があるからこそ、あたしはここに来た。
「いや、その前に! 新条アカネ! 外のアレはなんだよ! またお前が何か――」
「いいから! グリッドマンはどこ!?」
内海くんのあたしを疑う声は、最も。
怪獣と言ったらあたしで、あたしと言ったら怪獣。だから、あれもあたしが生み出した怪獣なんだと思っている。それは仕方ないと思う。
けど、今内海くんに構っている余裕はない。響くんに半ば掴みかかるように迫って、グリッドマンの事を聞く。
そこまでしても響くんは困ったような表情を浮かべるだけ。ジャンクPCには何も映っていなくて、六花も、内海くんも、あたしの声を聞いて、あたしがグリッドマンを倒すためにグリッドマンを探しているという考えはすぐに省いてくれたけど、肝心のグリッドマンは。
「居ないよ。この前、変な怪物が現れた時も、あの街を直す怪獣が出てきた時も。グリッドマンは来ていない」
六花の声に感じたのは、絶望じゃなかった。
やっぱり。そんな言葉。
ここまで騒ぎになって、怪獣も出ているのにグリッドマンは出てこない。その理由は、この世界にグリッドマンは居ないから。
「で、アカネ。どうしてここに居るのかは今は聞かないけど……あれは? あの怪獣は、なんなの?」
唇を噛んで、ヒーローなんてやっぱり……と思っていると、六花が世界蛇について聞いてきた。
あたしだって世界蛇の事はあまり分からない。さっき、調が漏らしていた言葉だけ。でも、一応情報は共有しようと、口を開いた。
「世界蛇……平行世界を食べる怪獣だって!?」
「しかもそれと戦っている人たちがいるって……まさか、この間新条さんの家の前に居たあの子が!?」
「あの子と、その仲間が数人。でも、全然歯が立っていない。だからグリッドマンに、この世界を、あたしの新しい友達を助けてって……」
徐々に空は紫に染まっていって、世界蛇の腹らしきものが空を覆いつくしている。
世界の終わり。それを表すにはこれ以上ない程の光景。それに六花達もあたしの言っていることが冗談でも何でもないって十全に信じてくれた。
でも、信じてくれたところで、グリッドマンは。
「こんなんどうしろって言うんだよ……グリッドマンは居ないってのに……!!」
内海くんの言葉は最も。
調達も絶対に勝つって言ってたけど、あんなの人間にはどうしようもないよ。あんな、怪獣なんて枠には入らないような、悍ましい化け物相手なんて――
『――太! ――う太! 裕太!!』
その時、声が聞こえた。
****
「ぐっ……! こんな、ところで……!」
世界蛇の攻撃に響さんまでもが倒れた。
もう、装者は誰一人として立てていない。辛うじて生きているけど、それでももう戦う力が残っていない。
翼さんも、クリス先輩も、マリアも、切ちゃんも。平行世界から来てくれた奏さんとセレナまで、既に地に伏せている。わたしも立ち上がろうとするけど、膝を付いた状態から体を持ち上げる事はできない。
既に世界蛇はその本体を現しかけている。そして、既にこの世界の全部を食らおうとして、渦のような物を生み出して電子の世界の人々を、そしてこの世界を食らい始めている。更にはこの街を直す役割を持っている怪獣も。この街を隔離していた霧も、いとも簡単に世界蛇に壊れされた。
何とかしないと。アレを倒して、この世界を守らないといけないのに。それでも、立ち上がる事ができない。
「だめ……! まだ、戦わないと、いけないのに……!!」
でも、体は動かない。
わたし達を睨む世界蛇の末端が、口を開いた。その中に集まってくる瘴気。
逃げるか、防御しないと。そう思っても体は動いてくれない。マリアとセレナの防御も、もう適わない。
既にこの世界はテクスチャのような物をはがされて、内側にある空の世界と同じような輪郭が見え始めている。人々も、食われ始めている。そして、わたし達も殺される。
でも、諦めたくない。
こんな所で、終わりたくない。
アカネさんに約束したから。この世界を守るって、約束したから……! だから……!
奮起しても、体は動かない。それどころか前のめりに倒れて、それ以上動いてくれない。そして、瘴気は完全に溜り切ってしまう。
「こんなのに……! こんな、好き勝手に世界を滅ぼすような奴に……!」
瘴気は、無情にも放たれた。
わたしを含めた、倒れた装者達は倒れた状態でも、何とか瘴気を相殺しようと攻撃を放つけど、その全てが弾かれた。
――アクセス、フラッシュッ!!――
暴力とも呼べる破壊の力を持った瘴気は、そのままわたし達の視界を覆いつくして――
「グリッドォォォォォォォ……!! ビィィィィィィィィィムッ!!」
「グリッドナイトォォォォォォォ……!! サーキュラァァァァァァァァッ!!」
――直後、後ろから風を切って飛んできた金色の光と紫色の光輪が、そのまま瘴気と世界蛇を覆いつくし、世界蛇を瘴気ごと消し飛ばした――
い、今のは……!?
「遅れてすまない! 我が友、シンフォギア装者達よ!」
「この世界なら、俺達は実体化できる! 後は任せろ!!」
振り向けば、そこには巨人が居た。
赤青白の巨人と、紫と赤の巨人。あの姿は、確か響さん達のデータで見せてもらった、異世界の正義のヒーローたち……! 確か名前は……
「グリッドマン!!?」
「グリッドナイト! 来てくれたのか!!」
グリッドマン。そして、グリッドナイト。
ちょっと前に響さん達が向かった平行世界で響さんと翼さんに力を貸してくれた正義のヒーローたち。五十メートルはありそうな全長を持つその二人の巨人がそこには立っていた。
直後に、アカネさんから通信が入った。
『調! 大丈夫!? 生きてるよね!?』
「な、何とか……満身創痍ですけど……」
『よかった……もう大丈夫だから! グリッドマン達が来てくれたから!』
アカネさんはグリッドマンを知っている……? いったいなんで……
いや、そんなのは関係ない。今は立ち上がらないと……!!
「グリッドマン、来てくれたんだ……!」
「すまない、響。この異常を察知するのが遅れてしまった。だが、君とこうして共に戦える日がまた来たことを、心から嬉しく思う」
「グリッドナイト、あなたも来てくれたのですね。感謝します」
「俺はグリッドマンを倒す者だ。だからこそ、グリッドマンと共に立ち、グリッドマンの敵を倒す。それ以上の理由はない」
グリッドマン達が世界蛇の末端を一つ潰してくれたから、わたし達も一旦立てるだけの時間を確保する事ができた。でも、全員が満身創痍で立っているだけでやっとの状態。これで世界蛇やカルマノイズと戦うなんて……
「皆ボロボロのようだな……今は君たちの傷を治そう。フィクサービーム!!」
ふらつきながらも立ち上がったところでグリッドマンからビームがわたしに向かって放たれた。ちょっと身構えたけど、あの光は優しい光だったから、避けようなんて気にはならなかった。
光に当たると、わたし達の体の傷や内側から来る痛みは一気に無くなっていって、物の数秒で傷は完全に無くなってしまった。
すごい……これが正義のヒーローの力……
そう思っていると、そこら中に現れている世界蛇の末端から瘴気が放たれて、わたし達の周りにカルマノイズが大量に出現した。
「シンフォギア装者達よ! あの怪獣の相手は私達がしよう! 君達はその小さな怪獣を倒してくれ!」
「でも、グリッドマンとグリッドナイトだけで世界蛇の相手なんて……!」
「大丈夫だ。私には心強い仲間が居るからな。来てくれ! キャリバー、マックス、ボラー、ヴィッター!!」
グリッドマンの声に応えたのか、空に青色の紋章のようなものが現れて、そこから巨大な剣と、トラック、ドリル装甲車、戦闘機の四つが姿を現した。
あれは一体……?
「新世紀中学生も来てたのか!」
クリス先輩が声を上げた。
えっ、新世紀中学生……? あれ中学生が乗ってるんですか……?
「いや、それには色々とあるのよ、色々と……」
マリアの何とも言えない表情にとりあえずそれで納得しておく。
空から現れた四つの武器や乗り物は空に居る世界蛇たちに攻撃を仕掛けながらわたし達の周りに集まってきた。
『ったく、あんな奴らに負けるなんざ情けねぇぞ!』
って喋った!?
しかもなんか響さんの声に似てる!?
「ボラーちゃん! いや、あれ結構強いんだよ! だから油断しないで!」
『ま、任せておけ。巨大な相手は、俺達の得意分野だ』
「すみません、キャリバーさん。世界蛇の方はお願いします」
『お前達はこの小さな敵を頼んだ。私達ではいささか小さすぎるのでな』
「任せておきな! 終わったらファミレス奢ってやるからよ!」
『そんじゃま、一つお仕事といきますか』
「終わったらこの間言った通り、カフェにでも行きましょうか!」
どうやら新世紀中学生という方々は響さん達と結構仲がいいらしくて、軽口をたたき合っていた。
そしてグリッドマンが空へと跳躍すると同時に、新世紀中学生の四人……四機? どうなんだろう。とにかく、四人はグリッドマンと共に空へと飛びあがり、空中でそれぞれのパーツに分裂した。
も、もしかして合体するの!?
「今こそ我らの力、合わせる時!」
『応ッ!!』
グリッドマンの声に合わせて新世紀中学生のパーツがグリッドマンの体に合体していく。そして完全に合体が完了するとグリッドマンの全長はかなり大きくなって、同時にヒーロー感というよりはロボット感が強くて。でも、それ以上に力強さを感じる姿になっていた。
『超合体超人ッ! フルパワーグリッドマンッ!!』
フルパワーグリッドマン……! すっごくカッコいい……!
だけど、合体はそれだけじゃ終わらなかった。
「グリッドナイト!」
『俺を使え!』
「あぁ! グリッドナイトッ! キャリバーッ!!」
フルパワーグリッドマンの持っていた金色の剣がグリッドナイトへと投げ渡されて、グリッドナイトの手に収まると金色の刀身は紅に染まって、グリッドナイトのカラーになった。なんかグリッドナイトも忍者っぽい感じがしてカッコいい……!!
間違いなくグリッドマン達は全力。そしてわたし達の体力も全快! これなら世界蛇だって倒せるかもしれない。そう思った時、更に奇跡は起こった。
『~♪ ~♪』
「えっ? なに? 急に音楽が……」
急に世界に音楽が、響き渡った。
ふと近くの建物の屋上を見上げると、そこに女の子と怪獣が居たような気がしたけど、瞬きをすると消えていた。でも、音楽は聞こえる。
力強くて、わたし達を応援するような。そんな、ピアノの音が。
もしかして、この音を……フォニックゲインを使えば!!
「響さん! S2CAを!」
「うん! みんな、手を繋ごう!!」
わたしの声に響さんは反応し、そして響さんの声にみんなが答えて手を繋ぎ、絶唱。
絶唱のエネルギーを響さんに渡し、マリアがこの世界に溢れるフォニックゲインを再配列して響さんへと手渡し、そして響さんがそれを束ねる。
「S2CA! ジェネレイトエクスドライブッ!! いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
響さんが絶唱のエネルギーを解放すると同時にわたし達のギアのロックが限定的に全て解除されて、エクスドライブへと変化する。
八人でグリッドマンとグリッドナイトの顔の横に並び、そして空を見上げる。
「それが君達の全力か。心強い!」
「うん、グリッドマン!」
「響さん、カルマノイズ程度ならエクスドライブ五人でも十分に相手になるデス! だから、響さん達はグリッドマン達と一緒に世界蛇を!」
「分かった!」
グリッドマン達と世界蛇と戦うのは響さん、翼さん、クリス先輩、マリアの四人。そしてカルマノイズを掃討をしてから合流するのがわたし、切ちゃん、未来さん、奏さん、セレナの五人。前はエクスドライブ八人とアイギスを使う未来さんの九人でも勝てなかったけど、今回はグリッドマンとグリッドナイト、それから新世紀中学生達が居る!
負ける道理なんて、一切ない!!
「行こう、切ちゃん! この街のカルマノイズを一気に倒して、グリッドマン達の援護を!」
「合点デス! エクスドライブになった以上、怖いものなしデス!!」
エクスドライブならカルマノイズなんてただのノイズ同然。街中を一気に駆け巡ってカルマノイズとノイズを一気に切り裂いていく。未来さんも空からビームを撃って一気にノイズたちを消し飛ばしているし、奏さんとセレナも協力してノイズたちを殲滅していっている。
そして、グリッドマンと響さん達も。
『世界の前にこいつを食らいやがれ!! ツインドリルブレイクッ!!』
「数が多い程度! グリッドナイトォォォォォォ……ッ!! ストォォォォォォォォムッ!!」
「ブレストッ! スパァァァァァァァァァァクッ!!」
「二人に負けてられない! 我流・超特大撃槍ッ!! こいつでぇぇぇぇぇぇ!!」
「グリッドマン達と立花に続くぞ、雪音、マリア!!」
「任せなっ! 後方支援はお手の物ってな!!」
「世界蛇だろうと、この戦力なら!!」
グリッドマンとグリッドナイトは必殺技を盛大に放って世界蛇の末端を一網打尽にしている。それに負けじと響さん達もコンビネーションとグリッドマン達からのアシストを受けながらで一体ずつ確実に世界蛇の末端を倒していっている。
そしてわたし達もエクスドライブの機動力に物を言わせて一気にカルマノイズとノイズを駆逐する。その最中にアカネさんの家の前にも飛んできて、集っていたノイズたちを一気に殲滅した。
「調!」
そしてまた他の場所に向かってノイズを、と思った時、お隣の喫茶店の中からアカネさんが出てきた。
「アカネさん!? どうしてここに……いや、危険なので避難しててください!」
「大丈夫、調があの怪物を倒してくれたから!」
どうやらさっきまで結構なピンチだったらしく、アカネさんの額には少しばかり冷や汗が浮かんでいた。
そしてアカネさんが出てきてからちょっとして喫茶店の中からアカネさんのお友達の二人が出てきた。赤髪の子がいないから……えっと、六花さんと内海さん、だっけ?
「うおっ、特撮ヒーローと怪獣の次は魔法少女って……」
「しかも飛んでるし……」
「ま、魔法少女……?」
いや、魔法少女じゃないんだけど……
……でも一般人から見るとあんまり変わらない、のかな? こんな電鋸持ってる魔法少女なんていないと思いたいけど。あっ、でもこの間チェーンソーとかトゲ付きバットを持った魔法少女を見たような気が……
って、そんな事どうでもいいから。
「調、頑張って! こんなに勝ちフラグ建ってる中で負けちゃだめだよ!」
「はい! アカネさんも、余波に巻き込まれないようにしてください!」
「と、とりあえず頑張れ魔法少女! 応援してるからな!」
「色々と聞きたい事あるけど、今は頑張って!」
「任せてください!」
アカネさんからの声援と、六花さんと内海さんからの応援も貰ってわたしはもう一度空へと駆け上る。
空の方ではフルパワーグリッドマンが世界蛇の末端を相手に大立ち回りをしていて、グリッドナイトも飛びあがって建物を足場にしては世界蛇の末端を一気に斬り裂いて撃破している。そして、響さん達もフルパワーグリッドマンと一緒に空で世界蛇の末端と戦っている。
そしてカルマノイズとノイズの掃討も何とか終わったわたし達が合流して、空で戦っている響さん達とフルパワーグリッドマンの元へと合流する。
「響さん!」
「調ちゃん! 下の方はもう大丈夫なの!?」
「なんとか!」
前はここまで空に上がる事なんて、世界蛇の攻撃が激しすぎてできなかったけど、世界蛇の攻撃の事如くをフルパワーグリッドマンが防御して無効化しているから攻撃がほぼこっちに来ない。しかも下からグリッドナイトも攻撃してくれているから世界蛇の末端が何もできずに斬り裂かれている事も。
けれど、埒が明かない。いくらグリッドマン達が圧倒的な戦闘力を持っているからと言っても物量が多すぎる。グリッドマンもそれを察したのか周りの世界蛇の末端を一気に蹴散らしてから一度地に足を付けてグリッドナイトと並び、わたし達もそれに続いた。
「一気にやるぞ、グリッドナイト!」
「任せろ、グリッドマン!」
二人が声をかけあって、そして構えた。
『ツインバスタァァァァァァァァッ!!』
「グリッドォォォォォォォォォォ……ッ!!」
「ナイトキャリバァァァァァァァァ……ッ!!」
フルパワーグリッドマンと、グリッドナイトの武器に凄いエネルギーが集まってくる。これ、S2CAなんか目じゃないほどのエネルギーなんじゃ……!?
「ビィィィィィィィィィィィィムッ!!」
「エンドォォォォォォォォォォォォッ!!」
フルパワーグリッドマンのツインバスターグリッドビームと、グリッドナイトのナイトキャリバ―エンドが同時に空に向かって放たれた。それが世界蛇の本体であろう腹に直接ヒットして爆発。その爆発が一気に連鎖していって姿を見せていた世界蛇の末端が一気に消滅していった。
そして見えるのは、先ほどの攻撃のダメージが効いたのか悶えている世界蛇本体の物であろう腹のみ。
あれさえ倒してしまえば!!
「グリッドマン! あれが本体だよ!」
「まだ顕現しきってはないみたいだな……! 今なら、攻撃を与えれば引かせる事ができるかもしれん!」
「ならば全力を叩き込む! グリッドナイト、もう一度やれるな!」
「当然だ、グリッドマン!」
グリッドナイトがフルパワーグリッドマンにキャリバーを返して、キャリバーが再び金色に。
そして二人には再びとてつもないエネルギーが集まってきた。
わたし達の攻撃はアレに届かないし、当たったとしてもダメージを与えられるかどうか分からない。なら、わたし達の力をグリッドマンに合わせたら。
そんなわたしの思考はみんなと一致したらしく、装者全員が近くのビルの屋上に降り立った。
「グリッドマン! わたし達の力も!」
「微力かもしれんが、使ってくれ!!」
響さんと翼さんが同時に手を向けてエクスドライブの力をグリッドマン達に与えるに合わせて、わたし達も自分達の力をグリッドマン達に向ける。
九つの力が集まってグリッドマンキャリバーとグリッドナイトの腕に先ほどのエネルギー以上のエネルギーが集まった。
「これは……! 感じるぞ、装者達の力を!」
「これならば、どんな敵だろうと!」
フルパワーグリッドマンが剣を構え金色に輝き、そしてグリッドナイトも腕を掲げる。
『グリッドォォォォォォォ!! ハイパーフルパワァァァァァァァ!!』
「グリッドナイトォ! ハイパァァァァァァァァ!!」
いっちゃえ! グリッドマン、グリッドナイト!!
『フィニィィィィィィィィィィィィッシュッ!!』
「サーキュラァァァァァァァァァァッ!!」
グリッドマンが巨大な金色の刀身を得たグリッドマンキャリバーを振り抜き、そしてグリッドナイトも巨大な紫の光輪を放った。
そしてそれらが世界蛇の体に当たり、爆発。更にグリッドマンはダメ押しと言わんばかりに縦に振り抜いたグリッドマンキャリバーを横に振って十字に世界蛇を斬り裂いた。
――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!――
世界がそれだけで壊れるかもしれない程の叫び声が聞こえた気がした。
だけど、それだけ。グリッドマンとグリッドナイトと、そしてわたし達の力を合わせた全力の一撃は世界蛇本体に確実なダメージを与えたらしく、世界蛇の姿は薄れていって、そのまま紫色の空は青空を取り戻した。
その光を受けて立つグリッドマンとグリッドナイトの姿は、正しく正義のヒーローという佇まいだった。
****
世界蛇との戦いは、無事わたし達の勝利で終わった。
それでも、世界蛇は完全に討伐できたわけではない。グリッドマン達の全力で退いただけ。でも確実に傷は与える事ができた。
「ありがとう、グリッドマン! 助けに来てくれて!」
「グリッドナイトも。改めて感謝します」
『私達は仲間だ。仲間のピンチとなれば助けるのは当然の事だ。寧ろ遅れてしまった事に詫びなければならない』
「そんな事! 寧ろベストタイミングだったよ!」
響さんと翼さん、それからクリス先輩とマリアはグリッドマンとグリッドナイトが入っているらしいPCや新世紀中学生と話している。
けどわたしはそれに混ざらず、アカネさんの元に。
「アカネさん。勝ちましたよ」
「……うん。ありがとね、調」
この世界の被害は、グリッドマンのフィクサービームによって完全に元の形を取り戻した。そしてアカネさんの怪獣も同時に直って、明日にはこの世界で起こった世界蛇との戦いは無かった事になって、それを最後のお役目としてアカネさんもこの世界を去る。
そしてわたし達も。世界蛇との戦いは済んだから、これ以上この世界に留まる事はあまり良くない。だから、すぐに帰らないといけない。
それが分かっているから、アカネさんは寂し気な表情を浮かべている。けど、そんなアカネさんに近づく影が一人。
「アカネ」
「六花……」
六花さんだった。
戦いが終わってから自己紹介されたけど、本名は宝田六花さん。アカネさんの親友。
「……アカネは、この世界がピンチって知って来てくれたんだよね」
「うん……でも、あたしは何もできなくて……」
「したよ。アカネはあの怪獣を使って、街を直していた。アカネはしっかりと戦ったよ」
うん。アカネさんのサポートが無かったら、わたし達はあそこまで大きく動けなかった。それに、装者の事が割れて変な所から狙われるかもしれなかった。
それを無くしてくれたのは、アカネさん。アカネさんもしっかりと戦っていた。
だから、何もしていないわけじゃない。
「ただ」
六花さんはアカネさんを励ましてからすぐ、俯いているアカネさんの額を軽く小突いた。
「そういう時は私にも相談してよ。友達、でしょ?」
「六花……」
「そ、そりゃあ、あの時、アカネにあんなお願いをしたのは私だけど……でも、友達にまた会えて喜ばないような薄情者じゃないよ? 私は」
アカネさんは六花さんの言葉を聞いて、色々と決壊したのかそのまま六花さんに抱き着いた。
多分、アカネさんはわたし達が来る前から戦っていた。その緊張の糸とか、自分では戦えない事とかに不甲斐なさとか、感じちゃってたんだと思う。それに、六花さんに会えない事とか。
だから、色々と決壊しちゃったとか、そんな感じ。
「そっちの……調、だっけ? ありがとね。アカネと一緒に戦ってくれて」
「いえ。わたしは装者としての義務を果たしただけですから」
「へぇ。まだちっちゃいのに凄いや」
「……一応十六です。こんな成りでも」
「えっ? あ、あはは。ごめんごめん」
終いにゃ怒りますよ。
まぁ、でもいいかな。二人ともまた友達として会えたみたいだし。その程度で怒ってたらキリ無いしね。
「ってアカネ。そんな泣かないの」
「だってぇ~……」
「全くもう。久しぶりに会えたんだし、遊びに行こ? もうすぐまた帰っちゃうんでしょ? ならこんな所で泣いてないでさ」
「うん……」
「調も、一緒に行く?」
「いいんですか? それじゃあ、お言葉に甘えますね」
全部終わって平和になった事だし、コンピュータの世界で遊ぶのも悪くないよね。
その後、わたしは泣き止んだアカネさんと、そんなアカネさんに苦笑する六花さんに並んで二人と一緒にそのまま遊びに行って、夕方になるまで遊びつくしたのでした。
という事で、アプリ版がグリッドマン達に焦点を当てていたのでこちらではグリッドマンのキャラクター……アカネちゃんのその後に焦点を当ててみました。
アカネちゃんがコンピュータワールドに来れてる理由とか、グリッドマンが何か等身大のまま合体してんだけどとか、なんで技がハイパー化してんねんとかあると思いますが……そこはこう、勢いだ! 特撮に深い理由を求めるな!!(ごめんなさい)
もう会えませんようにって願いと共に別れたからこそ、アカネちゃんは六花ちゃんに会わないように戦っていましたが、事件が解決して六花ちゃんと会ったからまた一緒に遊びに行って……な話が書きたかった。
そして今回の敵は初登場の世界蛇さん。読み方分かりません。
グリッドマンと戦うのだから相手は怪獣……でもアカネちゃんサイドの話だし、アレクシスは捕まってるし、カーンデジファー復活させんのも……せや、世界蛇ボコしたろ、的な軽い理由で世界蛇さんを出しました。
そしてグリッドマンとアクセスフラッシュしたのはアニメ通り響裕太です。最初は内海にしようかなとも思いましたが、そこら辺は原作通りに。グリッドマンも急いでたんや。
という事でグリッドマンコラボでした。多分これから先、グリッドマンのキャラは出ないんじゃないかなぁ……アカネちゃんが確実に出せないのが痛い。とりあえずネタが出てきたら今度はグリッドマン側に焦点を合わせた話を書くかもしれませんが、とりあえずこの作品のグリッドマンコラボはこんな感じ。
では次回、お会いしましょう。