独自設定をぶち込んで、前回はGXで必要な部分は大体回収したので、今回で機械仕掛けの奇跡を終わらせます。
グレ調が主人公だからか、信号機トリオが空気になってしまいましたが……まぁ、この作品は調ちゃんが主人公ですし、今さらだよネ!!
「チッ。オレが研究室に居れば……」
「ごめんなさい、まさか本部内に侵入されるなんて……」
オートマシンとアルカノイズの殲滅はあの後すぐに終わった。
でも、シャロンは攫われてしまった。シャロンと、ヤントラサルヴァスパが。
ヤントラサルヴァスパは悪用しようとしたらどれだけでも悪用できる聖遺物。それを、シャロンの体を度外視で使われたらどうなってしまうかなんて……!
「……オレがアルカノイズなんて作らなければこんな事にはならなかったか」
「……それは、どういう事ですか?」
「昔、とある組織に言われて大量に作って売ったんだよ。丁度、この世界を壊そうと思ってた時にな。その時のアルカノイズがこうなるとはな……若気の至りだったとはいえ、謝罪する」
確かに、キャロルがアルカノイズを作った事には多少の責任があるかもしれないけど、そんな責任はそれを私用に運用して人を殺そうとした人間の責任。キャロルが謝る事じゃない。
だから、それは一旦置いておくとして、考える事は相手が何をしようとしているか、何がしたかったのかの分析と、シャロンが攫われた先の特定。
相手の目的はアルカノイズを使ったシンフォギアの無力化と、万が一、アルカノイズに対する対抗策が出てきてしまった場合の時間稼ぎ。それで戦力が一通りシャロンから目を離した瞬間、シャロンを攫う。
これが相手の目的。そうして攫ったシャロンの中にあるヤントラサルヴァスパを使って、何か悪だくみを。そこからが不明な点。
「調べたところ、本部内の壁に穴が空いていた。恐らく、アルカノイズで分解した物だと思われる」
「アルカノイズ一体で壁を分解。そのままシャロンを攫い、アルカノイズには自壊させ自分はテレポートジェム、か。オペレーターが拾った反応はアルカノイズ一体の物だろう」
相手の作戦は、上手い具合に噛み合ってしまった。
本来ならこんな事、無いハズなのに。思わず歯噛みするけど、事実は変わらない。
シャロンは攫われた。なら、シャロンを助けるのが最優先。
「ならば、これよりシャロンくんの救出を最優先事項として行動する」
「シンフォギアは間に合わぬかもしれんな。万が一の時はオレが動く。エルフナイン、アレの最終調整を頼めるか」
「いいですけど……本当に使うの?」
「構わん。オレが撒いた種でもある。お前の言う通り、相応の責任は取る事にする。もしも失敗したら、お前、うるさいだろう?」
「はいはい。素直じゃない姉だこと」
エルフナインはやれやれと首を振りながら、研究室へと戻っていった。
対してわたし達は何かしらの手掛かりが見つかるまではここで待機するしかないんだけど……歯がゆい。
この場は一度解散になって、次の日、改めて管制室に装者一同と協力者達で集まる事になった。だから、私室に一度戻ったんだけど……なんだか、寂しい。
シャロンが居た痕跡がまだ残っているからか、すぐにシャロンが部屋に戻ってきてくれるような気がした。けど、そんな事はなくて、昔も最近も感じることは無かった、自分の部屋で一人きりという感覚に、何となく慣れずにいた。
マムは常に警戒態勢を敷かれているから今日中は部屋に戻ってくる事は無さそうだし、部屋から出たらピリピリした空気だし。わたしは、まだ未成年だし、装者は体力勝負。寝不足なんてあったらいけないからという事で、すぐに部屋に返されたんだけど……正直、寂しい。これなら、誰かと一緒に起きて何かしていた方がまだマシなくらいに。
……絶対に、連れ戻すから。だから、待っててね、シャロン。
****
シャロン奪還の切欠は、なかなか掴めなかった。
何せ、相手は異端技術を使って逃亡した相手。こちらが保有する異端技術なんてシンフォギアくらいなもので、追跡に異端技術を使用できない分、分が悪かった。
キャロルとエルフナインも、そういった追跡やら逃走やらに使うための錬金術は持ち合わせていないみたいで、本当にキャロルは攻撃、エルフナインは補助に回った錬金術が得意なんだっていう事が分かった。
既にシャロンが攫われてから四十八時間が経過した。わたしはその間にザババギアを何度も動かして、その力の強さとかを確認したけど、響先輩達のシンフォギアはまだ改修と改良が終わっていなかった。
――ちなみに、ザババギアの運用実験中に絶唱も一度だけ試してみたんだけど、なんでかすっぽ抜けて鎌がちょっとだけ刺さっちゃったんだよね。あんまり痛くなかったから特に問題は無いと思うけど――
前にもちょっと言ってたけど、キャロルは技術方面の事はあまり得意じゃないみたいで、どうしてもシンフォギアの改修に手間取っているみたい。
エルフナインは何かの調整をしつつ捜査に協力しているみたいだけど……
そうやってザババギアの調子を確認して、管制室でそのデータをマムと確認しながら、戦い方の粗を出している最中だった。
「司令、秘密回線から何かが飛んできました。暗号化されているようです」
「一体なんだ」
「分かりません。ただ、ボイスメッセージのような物だと思われますが……解析には数分ほど要します」
「構わん。やってくれ」
シャロンの手掛かりが無いからと頭を抱えていたけれど、何かが飛んできた。
このまま空気を掴むような事をしていても変わらないからという事で、司令は飛んできたメッセージの解析を許した。一応この場にはエルフナインもいるけど、エルフナインに近代技術の知識はあっても、それを使うだけの技量はオペレーターの藤尭さんや友里さんには負けているみたいで、大人しく後ろからそれを見ていた。
わたしも、一旦データの確認を止めてから、そのメッセージの解析を大人しく見ていることにした。
そして、数分後。
「解析結果、出ました。どうやらただのボイスメッセージのようですが……送信者は不明です」
「ふむ……再生しろ」
「了解、再生します」
少し怖いけど、再生しない事には始まらない。
だから、再生をした。
『どうも初めましてだな、SONGの諸君。私の名はオズワルドという。元々はF.I.Sの所属機関、NEXTの所長をしていた者だ』
「ナスターシャ教授、調くん。聞き覚えは?」
わたしは、そんな人の名前は聞いた事が無い。
というか、あの時代のわたしに人の名前を覚えるだけの人間らしさは無かったし。
でも、マムは顎に手を当てて、まさかと言わんばかりの表情をしている。
「まさか、あのオズワルドですか……? しかし、NEXTはネフィリムの暴走事件の際に解体された筈……オズワルドはその時、本国の研究所に家族と共に身を移したと聞きましたが……」
「どうやら、知っている者みたいだな……続けてくれ」
そんな人居たんだ、っていうわたしの心を他所に、話は続く。
『この度は私の娘であるシャロンが世話になったようだな。礼を言わせてもらうぞ』
「娘、だと?」
シャロンの、お父さん……?
でも、シャロンは孤児だし……いや、もしも、この人がシャロンを孤児という事にして研究所に売ったのだとしたら。
『ヤントラサルヴァスパの依り代となった娘を保護する、なんて真似をしてくれた事には少し遺憾だったが、あの馬鹿共は聖遺物の融合を早め、シャロンを完全に聖遺物と一体化させるところだった。それを治療してくれた事には礼を言おう。そのおかげで、シャロンは人としての意識を持ったまま、私の言葉を聞く操り人形となってくれたからね』
「こいつ……まさか、シャロンくんの父親でありながら、シャロンくんを利用しようとしているのか!?」
「墜ちる所まで墜ちましたか、オズワルド……!!」
そうだ。シャロンのお父さんなら。シャロンの事を案じているのなら、警察に行方不明届の一つでも出すはず。なのに、それをしなかった。
しかも、シャロンの身柄を異端技術で攫うという形でどこかへと移動させた。その時点で、この人はシャロンの事を一切案じていない。それに、この口草。明らかにシャロンの事を道具としてしかみていない。
多分この人は、あの違法研究所にシャロンを売ったんだ……! ヤントラサルヴァスパを埋め込ませるための触媒として、自分の娘を……あんな子を!!
『くだらん話はここまでにしよう。SONGの諸君、取引と行こう』
取引……?
『これから私がやる事に、一切の手出しをしないでもらおうか。そうしたら、君達の身の安全は保障させてもらおう』
「身の安全、だと?」
『私達は聖遺物、ヴィマーナを起動させた。君達の構成員にはF.I.Sの者もいるのだろう? ならば分かるはずだ。あの聖遺物の力が。シンフォギアなどという木端程度では太刀打ちできない絶対の力が!』
「ヴィマーナを起動させた、ですって? 馬鹿な、そんな事が……! アレは発見こそされましたが、起動できない程破損していた聖遺物のはず……」
『きっと疑問に思う事だろう。ヴィマーナは動くはずがないと……だが、こちらにも異端技術を使う同盟者がいたという事だ。錬金術という名のな』
「錬金術……まさか、錬金術でヴィマーナを修理し、動かせる程に……?」
『それでは、お別れだ。矛を交える機会が生まれない事を期待しているよ』
ボイスメッセージだからなんだろうけど、オズワルドは言いたい事を言ってそのまま。
けど、聖遺物の起動とシャロンの、ヤントラサルヴァスパの力は多分繋がっている。ヴィマーナという聖遺物を起動させるためにヤントラサルヴァスパが必要だったんだろうけど……
それでもシャロンの手掛かりは掴んだ。相手は錬金術師と結託している以上、恐らくは非合法組織。いや、聖遺物を始めとする異端技術を扱う合法的組織は現状、SONGとその直轄の組織しかない。だから、非合法組織に違いない。だから、SONGの権限を持ってすれば、シャロンを一時的に預かって、オズワルドのやってきた事を暴くことができる。
シャロンを助ける事ができる。
「ナスターシャ教授。説明してもらっていいだろうか。聖遺物ヴィマーナとオズワルドの事を」
「えぇ、勿論です。ヴィマーナは――」
マムがオズワルドが口にした聖遺物、ヴィマーナについての説明を始めようとした瞬間だった。
本部の床が唐突に揺れ始めた。
「じ、地震か。しかし、デカすぎる気が……」
地震で本部が揺れるのは仕方ないけど、司令の言う通りどこか揺れ方がおかしい気がする。
そんな事を考えた直後だった。
「司令! 太平洋沖から何かが浮上しました!」
「なに!? くそっ、この間から驚かされてばかりだな! 映像繋げ!!」
司令の軽い愚痴を挟みつつ、指示が飛んで映像が映された。
そこに映ったのは、異形の戦艦だった。
青と白の、巨大な戦艦。それが、猛スピードで本島へと接近してきている。それを見て、誰もが確信した。あの戦艦こそが聖遺物ヴィマーナであり、あの中にシャロンが居る事を。
「ッ! 司令、同時にノイズの反応です! カルマノイズの反応まで存在します!」
「こんな時にカルマノイズだと!? 一体何が起こっているんだ!!」
しかもカルマノイズの出現。
ヴィマーナの対処をしなきゃいけないのに、同時にカルマノイズまで……! これは本当に、平行世界の切ちゃん達にも助けを求めないとまずいかも……あんまり褒められたことじゃないけど、背に腹は代えられないから。
「ヴィマーナ、市街地及びカルマノイズ上空に到達! 続いて、ヴィマーナより高エネルギー反応!」
「なんだと!?」
こ、高エネルギー反応ってなに!?
モニターを見ていると、ヴィマーナの下部に光が集まっている。明らかに危ないしこれが発射されたらと思うとゾッとしない。なんて思った直後だった。
ヴィマーナの下部が光った瞬間、本部にまで伝わってくる揺れと轟音が響き渡った。
「ど、どうなった!」
「待ってください! モニター回復……来ます!」
そして再び来た映像に、わたし達は絶句するしかなかった。
辺り一面が焦土となった街並み。この街に避難勧告なんて出ていなかったから、恐らくここに居た人は全員……! 幸いにも響先輩達が暮らす場所は無事だったし、すぐに装者とソレに近しい人の無事は確認できたから良かったけど……!
オズワルド……シャロンを利用してこんな事を……!!
「か、カルマノイズの反応、ありません! 先ほどのヴィマーナの砲撃によって消し飛んだものだと思われます!」
「同時にヴィマーナに高エネルギー反応! 同時にロックオンアラート!」
「くっ……先手を潰されたか……!」
確かにカルマノイズを始めとする異端の存在にヴィマーナは有効打になる。
けど、その度に街を焦土にされるんじゃ、たまったものじゃない。アレは、シンフォギアなんかよりも扱いが難しくて、この世にはあってはならない異端の力……!
だけどわたし達は既に矛を突きつけられている。あれを受け止めるのは、相応の準備をしてからじゃないと……!
「くだらん。エルフナイン、出るぞ」
「はいはい」
ヴィマーナを相手にわたし達が頭を抱えていると、キャロルとエルフナインが立ち上がった。
「待て。どうする気だ」
「知れた事を。アレを止める」
「先ほどの攻撃を貰えば、君達とてタダでは済まんぞ」
「だろうな。だが、やるしかあるまい。アレはオレ達の責任でもある。それに、錬金術師が関わっている以上、同じ錬金術師であるオレ達が出るしかあるまいよ」
言いながら、キャロルは何かを取り出した。
アレは……琴? にしては大きすぎるけど……
「……それに、オレ達は弱者を虐げ、世界を守った気でいる存在が気に食わん。あのオズワルドとやらは言うだろう。シンフォギアなどという矮小な存在ではこの世界を守り切れない。だからこそ絶対的な力でこの世界を征服し、人を守るとな。だが、そこに無辜の民と罪もない少女の死が関わるというのなら、見過ごせん。オレが直々に叩き潰す」
「キャロルが出ている間、ボクがあの攻撃を防ぎます。SONGはこの世界を守るため……正義を暴走させた人間達から罪のない人を守るために必要な組織です。だから、ボクが命を懸けてでも守り抜いてみせます」
エルフナインは軽くそう言うけど、アレを防ぐ錬金術なんて、きっと代償が凄い。
エルフナインは言った。思い出を、記憶を焼却する事で、その対価として錬金術を行使するのだと。二人が持ち合わせている他人のどうでもいい思い出が無くなったら、きっと二人は自分の記憶を焼却し始める。
もし、二人が自分の記憶全てを焼却したら? それは、数百年を生きた二人の死が確定する事になる。肉体を入れ替えて、記憶を上書きし続けた二人の死は、きっとそうやって。
「……ったく。そういう時は協力者である我々を頼れ。アレはカルマノイズと共に市民を虐殺した。ならば、俺達が出ねばなるまいよ」
けど、わたし達はそんな事を許しておけない。
ここには、シンフォギア装者たるわたしが。
そして、人類の最終防衛ラインである司令、風鳴弦十郎が居る。
「SONG司令として命令だ。ヴィマーナを止めるため、協力者であるキャロルくんとエルフナインくんに協力する。今回は、俺も出る」
「待ってください! 調さんならまだしも、生身の人間では!」
「心配するな。こう見えても、鍛えている」
キャロルとエルフナインは言っている意味が分からないとばかりに目を見開いているけど、わたし達は安堵している。
司令がここを守る気で外に出たのなら、万が一もあり得ない事に。
「まぁ、任せておけ。調くん、キャロルくんと共にヴィマーナに行けるな」
「任せてください。必ず、シャロンを連れて帰ります」
キャロルとエルフナインの意見は無視して、実働隊が決まった。
SONGからヴィマーナ攻略組としてわたしが。そして、協力者としてキャロルが。本部護衛の任には、司令と協力者であるエルフナインが。二人は溜め息と苦笑を浮かべたけど、どうせ止めてもついて来るのが分かったからか、呆れ混じりにそれを了承してくれた。
たった四人だけの最終決戦だけど、あの時だってわたしは四人で戦い抜いた。
負ける気なんて、一切しない。今は、ザババギアもあるんだから。
あまり時間をかけていると、ヴィマーナが何をしてくるか分からない。だから、行動は迅速に、すぐさま行われる事になった。
わたしとキャロルはミサイルに乗ってヴィマーナに直接取りつき、司令とエルフナインは本部の前で待機。そして、わたし達が打ち上げられてから作戦開始になる。指揮は、一時的に司令からマムへと移されて、マムがわたし達に指示を飛ばしてくれる感じになる。
「調。これを」
LiNKERを打ち込んで、いつでもシュルシャガナを纏えるようにしていると、マムが何かを手渡してきた。
受け取ってみると、それは壊れたギア。セレナのギアだったアガートラーム。
「お守り代わりです」
「……うん。ありがとう、マム」
きっと、マムはずっと持ってたんだと思う。わたしがイガリマを持っていたように、マムもアガートラームをずっと。
シュルシャガナ、イガリマに続いて三つ目のギアを首からかけて、改めてミサイルに乗ろうとすると、今度はキャロルから何かを投げ渡された。
「こ、今度はガングニール? しかも直ってないし……」
「元々はお前の仲間のギアだったんだろう? ならば、お守り代わりにでも持っておけ。お守りは多い方がいいだろう」
「そう、なのかな?」
「知らん。だが、ここで腐らせるよりはマシだろ」
シュルシャガナ、イガリマ、アガートラーム、ガングニール。F.I.Sの装者が持っていたギア四つ。それが、わたしの首に。
なんか、ジャラジャラして音が凄いし、一瞬どれがどれだか分からなくなるけど、確かにキャロルの研究室で腐らせておくよりはいいかな。ザババギアみたいにはならないけど、マリアとセレナも一緒に居てくれる気がして安心するし。
そういう事で、わたしとキャロルはミサイルに搭乗し、ミサイルハッチが開いた。
きっと、この瞬間に。
『ヴィマーナの高エネルギー反応、収束!』
『攻撃、来ます!!』
わたしが持ち込んだ携帯端末には本部の入り口の様子が。ヴィマーナに対峙する司令とエルフナインの様子が映されている。
すぐにエルフナインが魔法陣のような物を展開しようとしたけど、その前に司令が飛び出した。
直後、閃光と轟音。そして、衝撃波。
『装者搭乗ミサイル、発射します!!』
ソレに紛れるようにミサイルが発射された。
と、同時にわたしの背中側からキャロルの声が。
「オイ、一体どうなった!?」
さっきの衝撃波が尋常じゃない事を察知してか。それともエルフナインが錬金術を行使していないのが分かったからか、キャロルが焦ったように声をかけてきた。
どうなった、かぁ。
普通なら信じられないだろうけど……
「その、ね?」
『ヴィマーナからの攻撃、司令の拳により完全に相殺! 本部及び司令、無傷です!!』
「……は?」
司令が拳でやってくれました。
映像には呆然として尻もちついているエルフナインと、完全に無傷の司令が。
まぁ、うん。こうなるのは分かってたよ。そして、司令からの通信が。
『本部は俺に任せろ!! 君たちはシャロンくんを頼んだ!!』
「はい、任せてください」
「……なぁ、お前らの司令官、異端技術の塊だったりしないよな?」
「ふ、普通の人間だよ? 美味しいご飯食べて、映画見て、寝てるだけの……」
「…………もうあいつ一人でいいんじゃないかな」
『……ボク、いらなかったですね』
で、でも、ノイズやアルカノイズ相手には流石に負ける……と思うし。
切ちゃん達が行った平行世界には、RN式なんとかかんとかでノイズを殴り倒せる司令が居たとかいう話を聞いたことあるけど……完全聖遺物を殴り倒したとか聞いたし。
「と、とりあえずそろそろヴィマーナ上空だし、出撃準備しよう?」
「なぁ。オレが普通の人間でもノイズに触れる装置を作れるとか言ったらどうする?」
「わたし達が不要になるよ」
「そうか……そうかぁ……」
キャロルの何とも言えない感じの声を聞いた瞬間、ミサイルの外装がパージされた。
眼下には、ヴィマーナが。それを確認した瞬間、もう一度ヴィマーナから攻撃が……ビームのような物が本部に向かって飛んだけど、それは何かに激突して四散していった。
それを見た、一緒に降下しているキャロルはあんぐりと口を開いている。
司令があのビームを相殺しているのが見えて、ビックリしたんだと思う。しかも、直後に本部から何かが飛んできて、一瞬ヴィマーナの何かに阻まれたけど、次の瞬間にはヴィマーナの下部が爆発した。
「……なぁ。オレの目にはあの男がエルフナインの作った簡易的な槍をぶん投げたと思ったら、ヴィマーナの防御フィールド的な物をブチ抜いてヴィマーナの砲台が爆発したように見えたんだが」
「錯覚じゃないよ、それ」
「……もう何も言うまい」
流石司令だなーって思わないと、この世の法則に疑問を感じる羽目になるからね。
そんな事はさておいて、わたし達はヴィマーナの上に着地。キャロルは大きな琴を片手に。わたしはシュルシャガナを纏ってヴィマーナの中を駆ける。
とりあえず、虱潰しに移動しながらシャロンを探さないと。
えっと、この部屋は……何も無い。この部屋は……うん、何も無い。この部屋は……な、なんかピンク色の部屋が……べ、ベッドが回転してるしお風呂まであるし……
「ラブホかっ!」
キャロルがツッコミを入れて、わたしを担いで部屋を出てからドアを閉じた。
何でそんな部屋が聖遺物の中に……と、とりあえず次に行こう。
この部屋は……うわっ。なにこれ、カプセルみたいなものが大量に……
「……なるほど、そういう事か」
わたしより先行してキャロルが入ってな部屋の中を見たけど、そのカプセルの内の一つを見て、キャロルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてカプセルの中を指さした。
わたしもその中を見て、絶句した。
そこにあったのは、人じゃない。人じゃないけど、わたしがこの間見たばかりの存在。
「オートマシン……!」
「どこから来ているのかと思ったら、ヴィマーナ産だったか。どうやらこれを止めれば、オートマシンはこれ以上出てこないらしいな」
アルカノイズとオートマシンは協力体制を取っているとは思ったけど、まさかオートマシンがヴィマーナ産だったなんて……
という事は、オズワルドは元から錬金術師と協力してこのヴィマーナを動かすためだけに……!
でも、キャロルの言う通りヴィマーナを止めればオートマシンも出現しないようになる。だから、一刻も早くこれを止めないと……
「調。来客だ」
そう思っていたら、キャロルがそんな事を言った。
キャロルが向いている方を向けば、そこには黒ローブの集団がいた。
「ネズミが入り込んでいると聞けば……貴様か、キャロル・マールス・ディーンハイム。裏切り者の錬金術師がどうしてここにいる?」
「裏切り者だと? 元よりオレはお前達に協力したことは無いがな。というかお前達誰だ。割とマジで知らんぞ。誰かと勘違いしてないか?」
「なんだと……! 貴様、数百年前にパヴァリア光明結社内の我等の派閥に入れてやろうと思い声をかけてやった事を忘れたか!!」
「あー……? えー…………ん? うーん…………あっ、アレか。チフォージュシャトーの建設協力を求めて弾かれた時に、なんか意味わからんことを言ってきた奴ら。確か、なんだったか。この世界を支配するから力を貸せとか胡散臭い事を言ってきたことは覚えているが……えっ、お前らいい歳こいてそんな事してんの? えっ、マジ? ウケるんだが。そういうのを言って許されるのは中学二年生までだぞ?」
なんかわたしが知らない内に話が進んでいるけど、キャロルがすっごい勢いで煽っている。
確かにそんな中二病臭い事を言っているのはウケるけど、あちらさん、結構マジらしいしそこら辺にしておいてあげよう? 黒ローブの内側から見える顔がなんか真っ赤になりかけてるし。
「そ、そもそもだ! 貴様、錬金術師でありながら国家の犬共に取りつくとは何事か!」
「そんなのオレ達の勝手だろうが。というかオレ達がそうやって生きる事はパヴァリアには伝えておいたはずだが? アダムもそれで納得したし、表立って錬金術を公表しない限りは好きにしろと言ったしな」
「我等はあの後すぐにパヴァリアからは抜けたわ!!」
「あっそ」
キャロルが至極どうでも良さそうに相手の言葉を受け流す。
わたしもよく分からないしどうでもいいので、早くシャロンを助けに行きたいです。
キャロルもさっきから耳の穴ほじってどうでもよさそうにしているし。痒いなら後で耳かきしてあげるから、そういう事はしないようにしよう? はしたないからね?
「んで、なんだ。ご用件をどうぞ?」
「どこまでも我等を侮辱してからに……! キャロル・マールス・ディーンハイム! 本当は貴様を我等の仲間に入れてやろうと思ったが、気が変わった! ここで殺してくれるわ!!」
キャロルが最後に煽ると、錬金術師達の周りにアルカノイズが出現して、更にオートマシンまでもが稼働してわたし達の前に立ちはだかった。
煽ったはいいけど、流石にこの数はザババギアを使っても少し時間がかかるかも……!
ザババギアを起動させようと胸に手を当てるけど、わたしの前に手を出して、キャロルが一歩前に立った。その手には、さっきからずっと持っていた巨大な琴がある。
「ふん。木端の錬金術師程度が大きく出たな! いいだろう、貴様らのような木端とは違う、本当の錬金術を見せてやる!!」
キャロルが叫んで、琴をつま弾いた。
直後。琴が光に包まれて変形し、キャロルの体に纏わりついた。その光に一瞬目を隠しちゃったけど、次にキャロルの姿を見ると、キャロルの服装は……いや、装備は変わっていた。
シンフォギアと同じような感じの、でもシンフォギアではない何かに。
しかも、なんか成長してる。色んなところがボンキュッボン。
は?
いや、その……うん。そんな簡単に大きくできるんならわたしも……なんでもない。別に最近、クリス先輩やあっちのマリアや切ちゃんが羨ましいなんて思ってないもん。
「ダウルダブラのファウストローブだと!!? キャロル・マールス・ディーンハイム、貴様、いつの間にそんなものを!!」
ファウストローブ……?
「錬金術師のシンフォギアのようなものだ。オレの切り札でもある」
わたしの表情を見て、キャロルは簡単にだけど説明してくれた。
錬金術にもシンフォギアみたいなものがあったんだ……後でダウルダブラについても調べてみよう。
「力の違いを見せてやる。オレの歌は、少しばかり高くつくぞ?」
直後、キャロルが腕を振るうと、ワイヤーのような物が伸びて一瞬にしてオートマシンとアルカノイズを斬り裂いた。
す、すごっ……これ、ザババギアよりも強いんじゃ……
「行け、調。お前がシャロンを助けろ」
「えっ。で、でも……」
「木端の相手に時間を潰す気にはならん。それに、シャロンもお前が行った方が安心するだろ。オレもこいつらを片付けてすぐに追いつく」
そう言いながら、キャロルが魔法陣のようなものを出して近づいてきていたアルカノイズとオートマシンを消滅させた。
た、確かにキャロルを心配するよりも早くシャロンを助けてあげた方がいいね。
よし、行こう!
「それでいい。さて、ここで一つ、お前らに絶望を教えてやろう」
「な、なんだと?」
「オレの歌は、たった一人で七十億の絶唱を凌駕する。オレが完全体セルで、貴様等はチャオズだ! 分かったらとっとと去ねィ!!」
「くっ……! だが我らとて幾多もの同胞を犠牲にしてきたのだ! ここで諦めるわけには!」
「お前もその仲間に入れてやるってんだよォ!!」
なんか衝撃的な事実が聞こえたけど、七十億の絶唱とか言われてもピンとこないからシャロンの元に向かいます。
後ろから破壊音と爆音と悲鳴が聞こえてくるけど無視無視。
シュルシャガナのチェーンソーの上に乗って高速移動をしていると、途中でアルカノイズが出てきた。けどそれを全部斬り裂いて素通りして、暫く移動していると目の前に大きな空間が見えた。きっとあの中に……
「ほう。あの錬金術師が来ると思ったらシンフォギア装者が来たか」
あの中のどこかにシャロンが居る。そんな確信と共に部屋の中に入ったけど、直後に誰かに声をかけられた。
チェーンソーの上から降りて構えれば、中央にある装置の後ろから男の人が出てきた。多分、あの人がオズワルド。シャロンのお父さんで……シャロンを聖遺物の苗床にした、張本人!
「来なければ死ななかったものの。君はシャロンの友人らしいからな。せめて生かしてやろうと思ったのだが……」
「ふざけないで。今すぐシャロンを解放したら、手荒な真似はしない」
「君は状況が分かっていっているのか? ここはヴィマーナの中。全てが私の手の中だ」
シャロンはどこっ……!
見れる範囲内では見つからないけど……!
「しかし、シンフォギアか。そんな矮小な存在で何ができる」
「……どういうコト」
「ヴィマーナの力を見ただろう。シンフォギアでは適わない、あの黒いノイズだろうと一撃で倒してみせた。例えルナアタックがまた起ころうと、完全聖遺物の暴走が起ころうと、このヴィマーナはそれを打ち砕く! 最早シンフォギアは時代遅れの産物なのだよ!」
……確かに、シンフォギア単体での出力は、とてもじゃないけどヴィマーナには及ばない。例えエクスドライブになったクリス先輩が絶唱を重ねても、さっきのヴィマーナの一撃には届かないかもしれない。
だけど、そうじゃない。
わたし達の力は、戦うだけにあるんじゃない!
「矮小でも、時代遅れでもない! このギアは、みんなが託してくれた、この世界を守るための力! あなたの敵を倒して誰かを虐げる事でしか、世界を守れない力よりも、よっぽど優しくて、強い力!」
「ふん。平行世界の装者の力を借りなければマトモに戦えん小娘が何を言うかと思えば!」
「だとしても、あんな胡散臭い錬金術師と結託して、人々を巻き込んで、たった一人の少女も救えず、圧倒的な力でねじ伏せるだけの力なんて、この世界を守る力足りえるわけがない!」
例え世界のお偉いさんが自分達は助かるからとヴィマーナを認めようと、世界中の誰もがそれに巻き込まれることをおびえ続ける日々に納得しようと、わたし達は絶対に認めない。
「シャロンはどこ! 話が通じない以上、力づくで連れ戻す!」
「ほう、できるとでも?」
「わたしは、他の装者みたいに甘くない! 大事な人を助けるためなら、拷問だってやれる。痛い目を見たくなければ、今すぐ言って!」
シャロンを傷つけて殺そうとしている人なんて、例えシャロンの父親なのだとしても容赦はしない。殺す寸前まで痛めつけて吐かせてやる。
あんな男なんかよりも、シャロンの方が数億倍大事だから。死んだとしても、不慮の事故だとか何とかでもみ消す。
響先輩達ならそんな事はしないだろうけど、わたしはあの人達みたいに優しくはない。大事な人を守るためなら、その程度の覚悟!
「脅されなくても教えてやる。この装置の中だ」
そう言ってオズワルドが指を指したのは、中央にある装置を指さした。
まさか、あの中にシャロンを閉じ込めて、利用しているの……!? だったら、アレを破壊してシャロンを助け出す!!
「シャロン!!」
「させん!」
シャロンを助け出すために走り出したけど、直後にオートマシンがわたしの周りに出現して、行く手を遮った。
くっ、こんな時に……でも、こっちにはザババギアがある!
「切ちゃん、お願い。力を貸して!!」
胸に手を当てて、暖かな光を身に纏う。
ザババギアの展開は一瞬。ハルペーと鎌を手に、オートマシンに斬りかかる。
この間みたいに簡単に倒せる程じゃないけど、それでも全然余裕。例えどれだけオートマシンが居ても、ザババギアなら倒していける!
「チッ。量産型だけではダメか……ならば!」
オートマシン達を斬り裂いている最中だった。オズワルドの声に反応したのか、壁が変形して一体の赤いロボットができあがった。
しかも、あの中にシャロンが組み込まれた装置までもが組み込まれてしまった。
あの赤いオートマシンを無暗に攻撃したら、中に居るシャロンが無事じゃ済まない……!!
「さぁ、シンフォギア装者よ、これをどうする!」
くっ……! どうにかしてあの中からシャロンを助けないと……!!
****
歌が、聞こえる。
誰かの歌が。
誰だっけ? 誰の声だっけ? なんでここにいるんだっけ? わたしって、誰だっけ?
『待ってて、シャロン! 絶対に、助けるから!!』
シャロンって……誰だっけ?
あっ……わたしだ。
なんでわたしって、ここに居るんだっけ……なんでわたし、この人を攻撃してるんだっけ……
……そうだ。パパが。パパが、わたしの中のヤントラサルヴァスパを使ってヴィマーナを動かさないと、みんなを殺すって言ったから……
……だめ。みんなを殺させちゃ、だめ。調お姉ちゃんを守らないと。
わたしを守ってくれた調お姉ちゃんを、守らないと。だから……お願い、ヤントラサルヴァスパ。調お姉ちゃんに、力を貸してあげて。
****
一体一体のオートマシンの性能は、ザババギアには及ばない。
けど、管制塔でもある赤いオートマシンを攻撃できないし、普通のオートマシンも無尽蔵に湧いてくるから、手数が足りないわたしじゃじり貧になる。
それに、オートマシンの攻撃は徐々に激しさも強さも増してきている。それが、疲れを感じるわたしに当たり始めて、ギアのアーマーが砕け始めている。外見上はボロボロだし、ザババギアの負荷がイグナイトで想定されているよりも低いとしても、それでも負荷がかかるギアなのには変わりない。その負荷も、徐々に体を蝕んでいる。
幸いなのは、フォニックゲインの補給はわたしが歌う限り可能だって事だけど……!
「くっ……」
「どうした、シンフォギア。もう終わりか? ならばギアを破壊して私に楯突くものを皆消してくれようか!」
「わたしの裸は、そんなに安っぽちじゃない!!」
「何をいきなり!」
「わたしの裸が見たいなら、もっとイケメンになって若くなって、精神面でSONGのみんなに負けないようになってから出直せ!」
「お前のような貧相な娘の裸なぞ金払ってでも見たくないわ!」
「こいつ殺す!! 絶対殺す!! 何があっても殺す!! ぶっ殺してやる!! 解体し尽くしてこの世に産まれたことを後悔させながら殺してやる!!」
「な、なんだこいついきなり……怖っ」
周りのオートマシンを吹き飛ばしてオズワルドを解体しにかかるけど、またオートマシンは湧いてくる。
歌でエネルギーは補給できても、体力の補給はできない。
しかも、赤いオートマシンは攻撃しちゃいけない上に、明らかに性能が他のオートマシンと比べて上……! 下手をしたら、ザババギアと並ぶくらいに強い!
全力で戦えば倒せるだろうけど、そのためには他のオートマシンとシャロンの存在が……!
『調お姉ちゃん……』
「え……?」
この声、誰の……?
……もしかして、シャロンの声!?
『負けないで、調お姉ちゃん……!』
シャロン、こんな可愛い声してたんだ……
……大丈夫、負けない。
「絶対に、助けるから。絶対に、連れて帰るから!!」
ハルペーと鎌を構える。
例えギアが砕けても、ハルペーと鎌があるのなら、負けない。まだ、戦える……!!
――そう、思った直後だった。ギアペンダントが急に光始めたのは。
「な、なんだ!?」
この光……ザババギアを纏う時と同じような……
きっと、この光は。そう確信した直後だった。ギアペンダントが強い光を放って、ザババギアが再び変化した。
シュルシャガナのハルペーは消えて、代わりに手には槍が。そして、左手には大きな白いとオレンジのガントレットと、背中には黒いマント。そして、わたしの周りには短剣が沢山浮いている。足の部分には、セレナのアガートラームについていた透明な羽根みたいな物が生えている。
間違いない。これは全部、F.I.Sのシンフォギアの武装だ。
髪のアームドギアと足の部分はシュルシャガナ。肩と鎌がイガリマ。マントと槍とガントレットの一部がガングニール。ガントレットの一部と、足の部分の側面から生えている透明な羽根。そして、わたしの周りに浮いている短剣はアガートラーム。
インナーの方も、ピンク、緑、白、黒の四色にオレンジと淡い黄色が加わってもっとカラフルになってるし。さ、流石に派手すぎるような……
……ほんと、てんこ盛りって感じ。でも、ザババギアよりも出力が上がっているのは明らか。
「……名づけるなら、F.I.Sギア。今回だけの、奇跡のギア!」
きっと、シャロンがヤントラサルヴァスパの力を使ってガングニールとアガートラームも起動してくれたんだと思う。大分無理矢理だし、ゴテゴテしているけど……このギアなら、絶対に負けない! どんな事だってできる!
「ま、まさか、四つのギアの多重起動だとでもいうのか!? そんな馬鹿な事が!! ……まさか、シャロンか!? 薬で自我を奪ったはずの人形風情がそんな奇跡を必然にしたとでも言うのか!!」
「シャロンと、みんながくれたギアだから。絶対に、シャロンを助けてみせる!!」
機動力は変わらないけど、武装は増えた!
赤いオートマシンの元へと突っ込みながら、シュルシャガナのアームドギアを使って前方のオートマシンを一気に蹴散らす。そして、後ろから迫ってくるオートマシンは大量の短剣を動かして近づく前に細切れにする。そして、それでも残っている敵は鎌と槍で蹴散らしていく。
赤いオートマシンがビームを飛ばしてくるけど、それをマントで防いで四散させる。同時に、鎌と槍を変形。鎌の刃を飛ばしてから、槍の矛先からビームを出しつつ、辺り一帯を薙ぎ払う。
「わたし達を、F.I.Sの装者をナメるなっ!!」
例え包囲されても、このギアなら。
オートマシンの攻撃をマントで全て防いで、短剣を近くに引き戻す。そしてもう一度放たれた赤いオートマシンからのビームを短剣で展開したバリアで防ぎ、赤いオートマシンの腕に付いているビーム発射口に向けて短剣を蹴り飛ばして突き刺し、腕の発射口を完全に破壊する。
けど、その間にまたオートマシンが囲んでくる。しかも、こっちが長物しか持ってないからと距離を詰めながら。
それに対応してこっちも武器を一度ダウンサイズ。小型化させてから腰にマウントして、両手に短剣を持つ。それを蛇腹にして周りの敵を一刀両断。
直後にそれを隠れ蓑に接近してきたオートマシンを見て、跳躍。両手の短剣の柄を連結して一本の剣にしてから地面に向かってぶん投げて、爆破。突っ込んできていたオートマシンを一気にせん滅する。
これで道が!
「土壇場の奇跡に計画を壊されてたまるか! アルカノイズも投入だ!!」
道が開けた。だから赤いオートマシンに近づこうとしたけど、その直前にアルカノイズが行く手を阻んだ。
こんな時にアルカノイズまで! でも、このギアなら!!
「止められると、思わないで!!」
腰の鎌を取り外してサイズを元に戻して、回転しながら振り回し、更にそこにマントまで纏った状態でコマのように動いて一気にアルカノイズを切り刻む。
それを止めた瞬間に降り注いでくる、鳥型のアルカノイズは短剣で自動防御させて斬り裂いて、鎌をもう一度腰にマウントしてから肩のアーマーから一つ、小さな鎌を取り出して短剣と接続。鎌を鎖鎌に変化させてぶん回す。
「くそっ、シンフォギアにここまでの機能があるなんて聞いていないぞ!」
「これはわたしだけのシンフォギアじゃない! わたし達の、F.I.S全員のシンフォギア! だから、わたしだけじゃできない事だってできる!」
ガントレットから数本の短剣を取り出し、それを投げつけてから腰の槍を取り出し、先端の装甲を分離。長槍と短槍に変えて一気にアルカノイズとオートマシンに斬りかかる。
目に見えてアルカノイズとオートマシンが減ってきた所で槍を一本に戻して、地面に突き刺す。それが自動で変形して砲台に変化した所で、槍の一部に腕を突き刺してドッキング。そのままビームをぶっ放す。
「なんでも有りか奇天烈め!!」
「あなたが言うか!」
オートマシンとアルカノイズの混成部隊に加えて人質とかやったオズワルドに言われたくなんてない!
叫びながら鎌と槍の柄を小さくして、その石突同士を合体させる。
それを振り回せば、周囲に竜巻ができあがる。その中にマントを纏ってわたし自身が入り、ドリルのように固定したマントで竜巻の中を飛び回り、一瞬でアルカノイズとオートマシンを細切れにする。
これで、雑魚の大半は片付けて、道は開けた!!
「ガングニールとアガートラームなら!!」
左手の、二つのギアが合体したガントレットを構えながら、オートマシンに向かって飛ぶ。
二つのギアが合体したガントレットは、銀色と金色の巨大な手に変化して、赤いオートマシンに突き刺さる。大丈夫、さっきシャロンの声が聞こえた時、シャロンの大体の位置は割り出した! あとはそこを、このガントレットでえぐり抜けば!!
「や、止めろぉ!!」
「掴んだ! ハアァァァァァァァ!!」
そのまま、えぐり取る!!
赤いオートマシンに巨大な穴が空いて、わたしの体がその中を通り過ぎる。
そして、巨大な銀と金の手の中には。
「調お姉ちゃん!」
「シャロン、助けに来たよ!!」
無事なシャロンの姿が。
これで、ヴィマーナの中核をなすシャロンを助け出せた! 後は、この赤いオートマシンと、その後ろに居る雑多のオートマシンとアルカノイズを吹き飛ばす!
シャロンを右手で担いで、左手のガントレットを再び変形させる。
短剣と槍と鎌を組み込んで、巨大な砲台に。一人で支えるには重すぎるけど、腕から伸びた支えがしっかりと腕を固定させてくれる。
照準、良し!
「吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ぶちかます!!
砲台から発射されたのは、白、オレンジ、緑、ピンクの砲撃。それがシャロンが居なくなった赤いオートマシンとその後ろに居た雑多のオートマシンとアルカノイズを文字通り消し飛ばし、残るのはオズワルドただ一人となった。
……自分でやっておきながら、とんでもないなぁ。流石、四つのギアが合体したギア……
「……オズワルド。お前をぶっ殺」
槍を構えてぶっ刺してやろうと思って振り上げたけど、シャロンがマントの裾を引いて、首を横に振っていた。
……命拾いしたね。事故に見せかけて殺すのは勘弁してあげる。
「……逮捕します」
「そ、そんな馬鹿な……我がヴィマーナが……」
このままオズワルドも拘束して引きずりながら、ボロ雑巾にして連れて行きたい所だったけど、なんかヴィマーナが揺れ始めてから、念のために持ってきておいたテレポートジェムをオズワルドにぶつけて本部の管制室に直接転移させる。勿論、直前に管制室の方には伝えておいたから、問題なし。
……指の一本でも詰めておけば良かったかな。
キャロルの方は、ついさっき無限湧きオートマシンを片付け終わって、わたしがシャロンを助け出してヴィマーナが揺れ始めた時点でボコった錬金術師を抱えて帰還したみたいだから、このヴィマーナに残っているのはわたし達だけ。
……さて。
「それじゃあ、帰ろっか、シャロン」
「うん。一緒に帰ろ」
どういう心境の変化があったのか分からないけど、喋れるようになったシャロンを抱えたまま、わたしはマントを纏い、ドリルみたいにヴィマーナの床をガリガリと削っていってそのままヴィマーナの底を抜けて地上に帰還。そのままシャロンを抱えたまま、無事SONG本部に帰還した。
はぁ……なんだか疲れたなぁ……
****
結局、わたしのF.I.Sギアはたった一回だけの奇跡のギアとなり、データを収集しようとした矢先に消えちゃったものだから、ギア本体に残ったデータしかF.I.Sギアを証明する物はなくなった。
けど、ガングニールは響先輩の物だし、これでいいのかなって思った。
後はヴィマーナの事なんだけど、ヴィマーナはシャロンを失った事により、太平洋沖に墜落。恐らく、もう誰も発掘できないような場所まで沈んでいったと思う。それに加えて、オズワルドと、手を組んでいた錬金術師は無事に逮捕され、檻の中に。近い内に判決が下るそう。
それと、シャロンのヤントラサルヴァスパは、攫われてから二日の内に、再び体内に馴染んでいたらしいんだけど、エルフナインが一日でその分を取り戻し、二日も経てば無事にシャロンの体内からの摘出に成功。ヤントラサルヴァスパは、キャロルとエルフナインに返すには暴れすぎたから、深淵の竜宮という聖遺物を補完する場所に保管される事になった。
キャロルもエルフナインも、元々は自分達で悪用されないように保管するために動いていただけだから、それに同意。ついでに、持っておくには危ない聖遺物もそこに保管しておく事になった。一部の、必要な聖遺物……ダウルダブラや余ったダインスレイブは持っているらしいけどね?
で、暫く経って面倒な報告や手続きも終わって、三つのギアの改修も無事終わったから、キャロルとエルフナインとの本来の協定条件はこれで達成。二人はこれからどうするのかってなったんだけど……
「それじゃあオレ達はまた旅に出る。なんか追加報酬も貰ったしな」
「そうか……君達さえ良ければ、特別待遇で雇おうと思ったんだが」
「と、特別待遇だと……?」
「ちなみに、お給料って出るんですか……?」
「これぐらいだ」
「暫くお世話になります。キャロルの事は馬車馬の如く使ってください」
「おいエルフナイン!? ……ま、まぁ、アレだ。旅の路銀集めに、暫くは協力してやる。ここに居た方が好きに動けそうだし、弱きを助けるにはもってこいだからな。だ、断じて金に目がくらんだわけじゃないからな!!」
二人をお金で釣る事に成功。二人はSONGの特別協力者として日本政府と国連にも公認された唯一の錬金術師となった。まぁ、異端技術の塊だから、国家機密なんだけどね。
あとは、二人とも雇われる条件として思い出の収集に協力してもらうっていうのが加わった。どうやら、この間使ったダウルダブラっていうファウストローブはかなりの思い出を消費するみたいで、今回で相当量の思い出を消費してしまったとか。
だから、職員のどうでもいい記憶とかを収集して、政府関係者の忘れたい記憶とかを貰うのを雇われる条件にしたみたい。
二人を悪用しようとしても、収集した思い出は閲覧して映像で映し出す事も可能らしいから、あくどい記憶の隠滅とかはできないみたい。
そうやって色々と丸く収まった後。シャロンとキャロル&エルフナインはと言うと。
「シャロン、ご飯できたから持って行って」
「はーい」
まず、シャロンはわたしとマムと一緒に住むことになった。
だから、わたしも本格的に住む場所をSONGから支給されたアパートの一室に移して、緊急時以外はシャロンと一緒にここで過ごす事に。そろそろシャロンも小学校に行く準備ができるみたいだし、こうやって毎日ずっといるのは難しくなるけどね。
で、キャロル&エルフナインだけど。
「おっす、調。飯食いに来たぞ」
「すみません、お邪魔します」
「はぁ……そろそろ来ると思った。キャロルとエルフナインの分も作っておいたから、並べるの手伝って」
「こういう時、お前が隣の部屋で本当に良かったと思うぞ。タダで飯が食える」
「お金は渡してますからね? それにしても、いつもボクまでいいんですか? 面倒だと思うんですが……」
「別にいいよ。キャロルにご飯あげないと不機嫌になるし、三人分も四人分も変わらないし」
わたし達の部屋の隣を借りて、そこに住んでます。
いっつもわたしの所にご飯をたかりにくるキャロルと、謝りながらもちゃっかりと食べていくエルフナイン。
二人とも、自分の部屋で仕事をしているみたいだから、毎食こっちに来るんだよね。だから、最早この部屋が三人部屋から五人部屋になりかけているっていうのが……
「シャロン、今日こそはポーカーで勝つからな!」
「ふふん。キャロルお姉ちゃんになんて負けないから!」
「このガキッ……! いいだろう、今日こそはお前の泣き面を拝んでやる!」
「はぁ……キャロル、いい加減にしたら? ただでさえシャロンさんにボロ負けして面目なんて立ってないのに……」
「うるさいエルフナイン。お前とはポーカーじゃなくて喧嘩で泣き面を拝んでやっても――」
「一年間お小遣い無し」
「イキりましたすみません」
『よわっ』
でも、賑やかになったしいいかな。
シャロンもよく喋って笑うようになったし、キャロルもエルフナインもなんやかんやで楽しい人たちだし。
だから、別にいいんだけど……
「やっほー調ちゃん! 遊びに来たよー!! あれ、ご飯中? わたしも混ぜてー!」
「ちょっ、響! 迷惑だから!」
「全く……立花は変わらんな……」
「センパイは呆れてないでこの馬鹿を止めろっての! オイ、一旦出直すぞ馬鹿!!」
「えー、わたしだってー」
「いいからこっちに来い!!」
「あー!!」
……騒がしすぎるのも考え物だよねって。
あーもう!
「今日は多めに作っちゃいましたから、入るんなら入ってきてください! 玄関前で騒いでたら本当に追い出しますからね!」
騒がしすぎるけど……楽しいからいいかな!
~ザババギアの特訓中~
調「ザババギアの絶唱ってどんな感じになるんだろう。一応、出力抑えて一回だけ……あっ」スポッザクッ
フィ(眠)『う゛っ』スーッ…
ナ「し、調!? 大丈夫ですか!?」
調「う、うん。なんか急に鎌がすっぽ抜けてちょっと刺さっただけだから……うーん、なんですっぽ抜けたんだろう? それに、心なしか体が軽くなったような気が」
ナ「そ、そうですか……しかし、イガリマには魂を斬り裂く特性があった筈では……いえ、ちょっと刺さっただけですし特に問題はありませんね」
〜設定簡易解説〜
月読調【IF】
平行世界の切歌に助けられて、共に戦って、心強い先輩もできた事で精神面はかなり正史に近い感じになっている。学校には通っていないが、ノイズの出現が無くなったこと、新たな戦力であるキャロル達の参入、シャロンに格好が付かない事から、大人に諭され、学校に行く事も少し考え始めている。
オシャレ雑誌を読んだり、ドラマを見たり、先輩達と美味しいご飯を食べに行ったり遊びに行ったりしてキャッキャする程度には普通の女の子をしている。
任務の時や戦闘中に激昂した時に昔の冷徹だった面が出てくる時がしばしば。任務を受けた時の返答は昔からの癖で少しばかり味気ない。
ただ、最近は全体的に小さい自分の体にコンプレックスを抱き始めている。昔はコンプレックスなんて抱けるほどの精神的余裕なんて無かったため、ちゃんと人として成長してはいるが、キャロルに金を差し出しながら頭を下げる日は近いかもしれない。
月読調【IF】ザババギア
キャロルがイグナイトの代わりに搭載したシュルシャガナの決戦装置とも言える代物。瞬間火力はイグナイトに劣るものの、継戦能力はイグナイトを圧倒しているため、十分に決戦機能となりうる。
ザババギアのためにはイガリマをシュルシャガナ内に取り込む必要があるうえに、本来想定されてない機能であるため、最初の起動は結構不確定要素だらけだったりしていた。外見はメカニカルギア(イガリマ)にピンクを加えた感じ。
調【IF】の心象変化もあってか、大分正史の調に近づいてきている。また、エクスドライブを経たからか、ザババギアとなった瞬間、シンフォギアのロックも少し外れ、武器がチェーンソーからハルペーへと変化している。
月読調【IF】F.I.Sギア
誰もが想定していないシュルシャガナ、イガリマ以外の二つの聖遺物を重ねて起動させた、奇跡の形態。フォニックゲインを使わない聖遺物及びシンフォギアの同時起動が必要なため、この奇跡を必然にするにはヤントラサルヴァスパが必要不可欠となる。
ザババギア、イグナイトを超える出力を叩き出す事が可能であり、四つのギアのアームドギアと特性を全て使い、それを重ねる事が可能なため、単体での戦力及び戦場への適応力はイグナイトを超えるが、エクスドライブには劣る。
今回は全体的にバランス良くギアを使っていたが、槍だけを使い単純なガングニールの上位互換として、鎌だけを使い単純なイガリマの上位互換として、という運用することも勿論可能。
調【IF】の心象風景故か、全ての武装は彼女の心の中に残っていた各ギアの装者が使用していた物に片寄った。ガングニールのマントがあったのは、彼女自身マリアのガングニールに……?
またもや中編を見ていただき、ありがとうございました。この後はAXZとXVがありますが……まぁ、現状はグレ調時空はこれで終わりという事で。
グレ調時空は、最後ばかりは平行世界の力を借りず、この世界の戦力だけで解決させると考えていたので、F.I.Sギアのために信号機トリオが参加できない状態でも何とか話を纏められたので良かったです。
代わりに司令が暴走しましたけど。
前回の片割れでやりたかったこと、ザババギアとF.I.Sギアを出す事だったんですけど、それも全部できましたし。
これで片割れから撒いておいた伏線も回収しましたし、同時にGXもキャロルが仲間になるという形で解決しました。次回からはまた普通の短編に戻ります。それと、グレ調時空もこれで完全に終わりになると思います。
それでは、また次回、お会いしましょう。