店舗代表にもなれない俺が手段を選ばず世界を救います 作:しめ鯖ty
もう少しちゃんと設定作ってから書き出せば良かった…orz
…2年前
初めてCS参加資格を取った日。
それまで利用すらしなかったバトスピ部への登録が必須との事で、登録する名前について三山君に相談していた。
「ツヨシさん、別に本名でも良いんじゃ無いですか?」
「んー…Twitterも一緒に始めるし、本名はちょっとなー」
個人情報を晒すのは流石に抵抗がある。
例の冷凍庫寝そべり炎上事件も記憶に新しく、炎上から個人特定だけは避けたい。
「とりあえず、他人と被らず格好良すぎない名前が良いな…」
あんまりカッコイイ名前を付ければ中2病を疑われる可能性もあるし、名前に対して成績がショボいと非常に恥ずかしい。
その辺りを相談調整の末、三山君が辿りついたのは「カトンボ」だった。
格好良すぎないを通り越して非常に弱そうだと思うのだが、三山君は気にしていない様子だった。
三山君が言うにはシロッコのセリフがかっこよくて印象に残っているそうだ。
…カトンボは落とされる側だったと思うが。
三山…カトンボ君がこう言った名前をつけた以上、第一候補であった「ストロング軍曹」などと言う程々に格好良い名前は名乗れない。
「じゃあ、成績がヘッポコな俺は…ヘッポ…いや、へっとこにする!」
「マジすか…」
牛脂美味しいしな!
…今思えば、この時気付くべきだったんだ。
あの時のカトンボ君の形容し難い表情の意味を。
きっと知っていたんだろう…いつかこうなると!
異世界に召喚されてすぐに嘲笑されるって…
「許さんぞぉー! カトンボーーー!」
「…いや、その理論はおかしい。」
「ちゃんと止めなかったカトンボ君にこの状況の責任を取らせるべきだと俺は主張するね。」
「クズか…」
正体不明な少女(14~15歳位?可愛い)が中々の切れ味で突っ込んでくる。
可憐なジト目もありがとうございます。
我々の業界ではご褒美です。
まぁ、自分で言っててクズだとは思う。
冗談はさておき…とりあえず状況を確認したいな。
世界を救うと言われても、この少女が誰か分からないし、何をすれば良いのかもまったく分からない。
まぁ、流れ的にバトスピで悪いやつらに勝てば良いんだろうが。
俺は正体不明の少女(つり目が可愛い)…服装的に巫女かなんかだろう…に質問をしようとしたその時
「ソコまでだ!スダドア界の巫女育成学校2年生…見習い巫女ミコよ!!」
ダミ声が森に響き渡る!
たったこれだけで聞きたかった情報の半分を手に入れる事が出来た。
…このまま話が進めば残りの情報も手に入れる事が出来るだろう。
しかし、スダドア界か…惜しいなぁ…。
「どこ!?どこにいるの!?」
ミコ(金髪可愛い)と呼ばれた少女が声の相手を探す素振りをする。
…視線は正面右方向に定まったままだが。
お互い無言のまま時(30秒ほど)は過ぎ、観念したかのように茂みから大柄なマッチョがブーメランパンツで出てきた。
…変態に違いない。
「我こそは魔王ディアリガズ様が僕、スダドア界方面軍係長…レッドカーテンのエン=ジョー!」
「「肩書きーーーーー!!」」
見事にミコとハモった。
欲しい情報は全て揃ったのは重畳だが、魔王方面軍と来て肩書きが係長とか…
まぁ、相手の立場が分かりやすくていいんだけども。
「驚くのも無理はない…このような僻地に係長クラスが来るのは異例だからな…本来なら主任クラスで十分なところだ!」
完全に違う意味で驚いてたミコと俺を見てエン=ジョーが満足そうに嗤う。
中々見事な肉体だが、ブーメランパンツはミコには刺激が強すぎる気がする。
それにしても、主任クラスとか係長クラスとか…世知辛い事この上ないな。
「このエン=ジョー様がわざわざここに来たのは勇者…貴様を討ち滅ぼす為だ!!」
ビシっと音が出そうな勢いで俺を指差すエン=ジョー。
その手にはデッキが握られている。
アニメなんかでもそうだが、スリーブ位使ってあげて欲しいと心底思うんだ、俺は。
…予想していた通りだが、やはりバトスピで解決する様だ。
まぁ、あんなマッチョとガチンコ肉弾戦なぞしたくないから助かるけども。
「どうした…臆したか、勇者へっとこ!!」
「ブフッ…へ…へっとこ…ブフォ」
大声でその名を呼ぶのは遠慮願いたいし、ミコは笑いすぎ。
今まで気にしたこと無かったけど、流石に凹むので今後は本名を名乗る事にしよう。
しかしレッドカーテンか、なんか聞き覚えがあるがどんなデッキだっただろうか?
赤デッキなのは間違いないと思うが。
まぁ、良い。
何も出来ずに負けた店舗代表決定戦と、名前で散々笑われた憂晴らしと行こうじゃないか!!
足元のカバンからUトリックスターのスリーブを装着した青νジークを取り出し構える。
心なしかエン=ジョーとミコが顔をしかめた気がする。
なんでや、Uトリックスター可愛いやんけ
コールと共にバトルフィールドへ移動するだろうからコアは持たなくて良いだろ。
「かかってこい、エン=ジョー! 文字通り炎上させてやる! あと、俺の事は今後ツヨシと呼んべ! 良いか、絶対だぞ!」
…ミコ、お前もだ!
「勇者ツヨシ…良い啖呵だ! さぁ尋常に…」
「「ゲートオープン…界放!!」」
俺とエン=ジョーの間に光が溢れる。
…ダブルドライブや烈火魂形式のバトルフィールドではないようだ。
ワクワクしながら光が収まるのを待つ。
広がる空、古代ローマのコロッセオを思わせる闘技場…ついにバトラー全てが夢見たと言っていいバトルフィールドに…俺は来た!
…足元のカバンは来ないのか。
フィールドにはいつの間にか俺の青νジークデッキがセットされている。
コアは…ライフに5つ、リザーブに4つセット済みだな。
あとはお互いデッキをシャッフルして、
先攻後攻を決めるじゃんけんを…
「先攻は私が頂く!」
…するわけ無いよな。
第1ターン
エン=ジョー
「ふむ…貴様には悪いが、此方は最高の手札だ!」
「ゴラドン、ロクケラトプスを召喚!」
フィールドにあらわれた立体的な赤シンボルが砕け、中からスピリットが登場する。
…素晴らしい…
「更に、ダブルドローを使用! デッキから2枚ドローだ! …ターンエンド!」
ん?…なんだ、この違和感??
第2ターン
ツヨシ
「じゃあ、ターン貰います。」
スタート、コア、ドロー、リフレッシュ…っと。
手札は…緑鳥童子、マントラドロー、ガンズバルムンク、ランパートウォール…と、今ひいたストロングドロー。
まぁ、悪くは無い。
エン=ジョーには悪いがこのまま頂くとしよう。
「緑鳥童子を召喚!ソウルコアを…って、あれ?」
無いぞ?
ソウルコアが…無い!
「ちょ…此方にはソウルコアが無いぞ!!」
エン=ジョーに向かって叫ぶ。
「ソウル…コア? なんだ、ソレは。 そんなもん此方も持っておらんぞ!!」
エン=ジョーも持ってない?
…て事はもしかして…
「そもそもそのスピリットは何だ! 緑鳥童子など見たこと無いぞ!」
…この反応、間違いないな。
このスダドア界は…烈火伝以前の環境だ!
カードパワー的に考えれば此方が断然有利。
しかし、ソウルコアが無いと言う事は煌臨を使えない事を意味する。
νジークの煌転装を主軸としたこのデッキは非常に大きなハンデを背負っている状態だ。
そして相手のデッキは恐らく赤速ビート。
…これ、マズいかも知れない!
とりあえず…
「マントラドローを使用!3枚ドローし2枚破棄!」
νジーク、クイックドロウ、グリズクラッシュをドロー。
…これなら行けるか!
「グリズクラッシュとストロングドローを破棄! グリズクラッシュは自信の効果でノーコスト召喚!」
青シンボルからグリズクラッシュが登場!
…結構迫力あるな!
「な…7コストスピリットをノーコスト召喚だと!? 」
まぁ、そうなるわな。
「バーストをセット…ってバーストエリアも無いな。」
…覇王編以前の環境なのか?
「やるだけやってやる!バーストセット!」
フィールドの一角に伏せたカードがあらわれる。
…やれば出来るもんだな。
「な…なんだそのカードは! バーストとはなんなのだ!!」
説明すんのが面倒くさいので放置。
グリズクラッシュをLV2にする。
「アタックステップ! 行け、グリズクラッシュ!」
「フラッシュはない! ライフで受ける!!」
エン=ジョーの前に張られたバリアが砕ける。
衝撃は…殆んど無いようなので安心だ。
俺はこのあと相手のターンに2~3回はライフで受ける予定だからな。
「ターンエンド。」
第3ターン
エン=ジョー
「うぅむ…ノーコストで召喚出来るうえLV2でBP10000だと…」
難しい顔をしてるなぁ…無理もないけど。
俺だってグリズクラッシュはどうかと思うもんな。
「だが…今ブロッカーはBP1000のスピリットのみ!
ロクケラトプス、ドラグザウルス、ワイアームを召喚!」
んー…5体並べて来やがったな…
ってワイアームってなんぞ?知らんスピリットだな。
「アタックステップ!行け、ゴラドン!」
「その前にワイアームのカード確認良いですか?」
「え?」
「え?」
…確認…しちゃダメなのか?
「あの…初めて見るスピリットなので、カードの確認をしたいのですが…」
口調がやたら丁寧になってしまった。
「あ、お、ど、どうぞ…」
エン=ジョーもつられて丁寧な言葉遣いに的にしまらないなぁ。
お、カード情報はホログラフィーで出てくるんだな。
…カード確認中…
なんだ…バニラか。
「ありがとうございます。こちらフラッシュありません。」
「此方も無いぞ」
「ではライフで受けます」
目に前にはバリアが展開する。
そこに襲いかかってくるゴラドン。
うほーーー!大迫力!!
ガラスが割れるような音と共に、砕かれたバリアが辺りに散らばる。
衝撃は来ない。
「続け!ロクケラトプス!!」
「フラッシュはない!」
「ではフラッシュタイミング。フレイムダンスだ! 不足コストはゴラドンから確保。」
フレイムダンスか、確か効果は…
「BP4000以下のスピリットを1体破壊する! 散れ、緑鳥童子! これで貴様にはブロッカーはいない!」
炎に包まれた緑鳥童子が破壊される。
あー…なんだ。
破壊されるのは予定通りだが、目の前で見ると流石に来るモノがあるな。
アニメキャラが謝ってしまうのも分かる。
「すまない、緑鳥童子! バースト発動、ランパートウォール!」
伏せたカードが立ち上り、その全容を明らかにする。
「トラッシュから破壊された緑鳥童子を回収し、系統:武装を持つスピリットかブレイヴをコストを支払わず召喚する!」
俺が召喚するのは…
「νジークフリード!LV1で召喚!」
地面が左右に開き、階下からνジークが登場する。
格好いい!!
「またノーコスト召喚かよ! 」
エン=ジョーがキレ気味に叫ぶ。
「フラッシュ効果は使わない! νジークでブロック!」
恐らくこのあとはアタックしてこないだろう。
…って事は、ここで使わないと勿体無い!
「フラッシュタイミング、クイックドロウ!
不足コストはグリズクラッシュから使用し、ガンズバルムンクをνジークへ直接合体。
更にガンズバルムンクの此方も以下のスピリットを破壊する…ワイアーム、お前だ!」
ガンズバルムンクから発射された光線がワイアームを貫き爆散させる。
へー、こう言う演出なのか…。
「今度はスピリットが合体だと? …ぐぅぅ…フラッシュは無い…」
おや?ブレイヴも知らないのか?
どんだけ古い環境なんだよ。
ロクケラトプスをνジークが踏みつけ破壊する。
俺の残りライフは4。
どうやってもこのターンでは決められない。
「ターンエンドだ。」
ですよねー
第4ターン
ツヨシ
さて、決めるとするか。
「メインステップ、νジークをLV3にあげ…アタックステップ。 νジーク…行け!」
ガンズバルムンクを構えたνジークがエン=ジョーへ向かって突撃する。
「ガンズバルムンクの効果発揮。 煌臨をもつれスピリットと合体しているとき…ブロックされない!」
「な!?」
「更にνジーク合体時LV2.3効果、このスピリットは相手の効果を受けない…あーんど、ターンに1回だけバトル終了時に回復する!」
「ア…アンブロッカルダブルシンボルが回復するだと!? インチキ効果もいい加減にしろーーーー!!」
エン=ジョーの絶叫が響く。
発売当初から言われてるんだよなー、ソレ。
「さぁ、これでトドメだ!νジークで再度アタック!」
当然このアタックも通り、エン=ジョーのライフは0に。
勝敗が決した瞬間、周囲が光を帯び俺とエン=ジョーはバトルフィールドから森へ戻って来た。
「こ…これで勝ったと思うなよ~ぉ~」
ドップラー効果を発生させながら、もはや感動すら覚えるレベルの負惜しみを残して逃げていくエン=ジョー。
なんと言うか、環境に違いが有りすぎて可哀想な位だったな。
これ、魔王ディアリガズとやらも割りと楽に倒せんじゃねぇの?
「お疲れ様でした、勇者ツヨシ様。」
うむ、ちゃんと本名で呼んで貰えるのはありがたい。
…そうそう、ミコには幾つか確認したい事があったんだ。
「なぁ…なんで俺なんだ? あの店には強い人が他にも居ただろう?」
ミコは何か言い難そうにしていたが、意を決したように口を開いた。
「そりゃ、ツヨシ様より強い方々は皆様CSに参加されますので。」
…は?
「加えて24歳にもなって無職のお独り様などツヨシ様以外あの場所におりませんでした。
…ツヨシ様のようなニートがおられて本当に幸運でしたわ。」
…一々言葉にトゲがあるな、この娘は。
「…大体わかったよ。 ところで俺はどうすれば元の世界に帰れるんだ?」
これだけはしっかり確認しておかないと…
やっぱり魔王を倒すまでは帰れないのかなぁ?
さっきのが係長だからなぁ…一週間はかかるよなぁ。
ダブルドライブみたいに、戻ったら時間経過無しとかなら良いんだけど…
俺の質問にミコは、引き戸を指差しながらアッサリ答える。
「お帰りはそこにあるゲートからどうぞ。 こちらのゲートは、日本時間にして9時から17時の間スダドア界と地球を行き来することが出来ます。 ある程度なら転送位置も変更出来ますので、御自宅に直接帰る事も可能ですよ。」
ふーむ、9時5時ってのが公務員みたいで気になるけど、結構便利なシステムだ。
部屋からスダドア界に直行直帰が可能だとは…
「結構普通に帰れるんだな…」
「生活基盤を此方で負担するのも大変なんですよ。 」
そりゃそうなんだろうけど、世知辛いなぁ。
「では、明日また9時にゲートを開きますのでよろしくお願いします …と言うか、明日9時以降に開く扉は全てゲートとなりますので御注意下さいね。」
結構迷惑なシステムだな!!
朝風呂には気をつけないといけないな…
俺は地面に置いていたカバンを持ち、スマホで時間を確認する。
16:42…やべ、そろそろ時間じゃないか…
森の中にポツンと佇む引き戸に手をかけると、少し開いた隙間から俺の部屋が見える。
ホント便利だな。
「では勇者ツヨシ様…また明日。 …待ってますから。」
「…ん…また明日…」
ドキドキしてしまった…反則級の可愛いさだったぞ、アレ!
よくよく考えてみれば可愛い女の子連れてバトスピ三昧出来るんだから、良いことだらけじゃね?
選ばれた理由はアレだけど、ラッキーだったわ!
なーんてこの時は気楽に考えていた。